あなたの可能性,あなたの特権
聖文を読み,全身全霊を傾けて預言者の言葉に耳を傾けるなら,主が神権の特権を生かして生活する方法を教えてくださるでしょう。
神権の栄光と偉大さ
秘めている可能性を発揮するために何ができるでしょうか
1.取扱説明書を読む
2.御霊の啓示を求める
3.神権の務めに喜びを見いだす
結 び
かつて豪華客船で地中海を旅することを生涯の夢としていた男性がいました。ローマ,アテネ,イスタンブールの通りを歩くのが夢でした。可能なかぎり節約して,ついに船に乗れるだけの資金がたまりました。お金に余裕がなかったので,余分に用意したスーツケースに豆の缶詰やクラッカーの箱,粉末レモネードの袋をいっぱい詰めて持って行き,毎日それを食べました。
船で用意されていたたくさんの活動に,できることなら喜んで参加したいところでした。ジムで運動したり,ミニチュアゴルフをしたり,プールで泳いだり。映画やショー,文化交流イベントに行く人々をうらやましく思いました。そして,ああ,船で見た見事な料理を一口でいいから食べてみたいと,どんなに思ったことでしょう。食事は毎回祝宴のようでした。でも男性はできるかぎりお金を使いたくなかったので,活動にも食事にも一切参加しませんでした。ずっと訪れたかった町を見ることはできましたが,旅の大半を自分の船室で過ごし,食事も持参した質素な食べ物だけで済ませました。
船旅の最終日のことです。乗務員からどのお別れパーティーに出席したいかを尋ねられました。このとき初めて,男性はお別れパーティーだけでなく,船内でのほとんどすべてのものが,つまり食事も娯楽活動も,すべてのものが,チケットの料金に含まれていたことを知りました。男性は自分の特権をほとんど生かさずに過ごしていたことを知ったのです。でももう遅すぎました。
このたとえが問いかけていることはこうです。神の神権を持つわたしたちには神聖な力,賜物,祝福という機会と権利が与えられていますが,わたしたちは神権者として自分の特権を生かさずに生活してはいないでしょうか。
わたしたちは皆,神権が単なる名称や肩書きをはるかに超えたものであることを知っています。預言者ジョセフ・スミスは次のように教えています。「神権は永遠の原則であり,日の初めもなく年の終わりもなく,・・・神とともに永遠から永遠にわたって存在するものです。」1 神権は「神の知識の鍵」2を持ちます。実際,神権によって「神性の力が現れる」3のです。
神権がもたらす祝福はわたしたちの理解力を超えたものです。忠実なメルキゼデク神権者は「神の選民となる」4ことができます。彼らは「御霊により聖きよめられてその体が更新され」5,最終的に「〔御〕父が持っておられるすべて」6を受けることができます。これは容易に理解できないかもしれませんが,神権はすばらしいものであり,わたしはそれが真実であることを証します。
天の御父がこの力と責任を人に託しておられることは,御父がわたしたちを深く愛しておられる証拠であり,また,わたしたちが神の息子として秘めている,後の世での可能性をあらかじめ示すものでもあります。
それにもかかわらず,わたしたちの行動を見ると,わたしたちはこの可能性をほとんど発揮せずに生活しているように思えることがあまりにも頻繁にあります。神権について尋ねられれば,わたしたちの多くは正しい定義を暗唱できます。しかしわたしたちの日々の生活の中には,暗唱した言葉以上にわたしたちが神権について理解していることを示す証拠がほとんど見られないかもしれません。
兄弟の皆さん,わたしたちは選択を迫られています。神権者としてできる一部の限られた経験で満足し,特権をほとんど生かさずに妥協することもできます。または,霊的な経験をする機会という豊かなごちそうと,大きな神権の祝福にあずかることもできるのです。
聖文に記されている言葉や総大会で語られる言葉は,「自分たちに当てはめる」ためのものです。7 ただ読んだり聞いたりするためのものではありません。8 非常によくあることですが,わたしたちは集会に出席し,話にうなずきます。承知しているというふうにほほえんで同意することもあるでしょう。なすべき事柄を書き留めて,「実行しよう」と思うかもしれません。ところが,話を聞いてスマートフォンにメモしてから実際に行うまでのどこかで,「実行」のスイッチが「後で」に切り替わってしまうのです。兄弟の皆さん,「実行」のスイッチをいつも必ず「今」の位置に合わせましょう。
聖文を読み,全身全霊を傾けて預言者の言葉に耳を傾けるなら,主が神権の特権を生かして生活する方法を教えてくださるでしょう。御霊の導きを実行するための行いを何もせずに一日を終えることのないようにしてください。
もし皆さんが世界最先端の高価なコンピューターを持っていたとしたら,ただ机に飾るだけにしておくでしょうか。見た目もすばらしいかもしれませんが,きっとたくさんの可能性を秘めていることでしょう。ただし,取扱説明書を研究し,ソフトウェアの使い方を学び,電源を入れて初めて,その秘めた力を十分に利用することができます。
神の聖なる神権にも,取扱説明書があります。聖文と手引きを,これまで以上に目的を持ちさらに焦点を絞って読むと決意しましょう。まず教義と聖約の第20章,84章,107章,121章を読み返すことから始めましょう。神権の目的と,その秘めた可能性と実際の用途について研究すればするほど,その力に驚くことでしょう。そして,その力を受け,その力を用いて家族や地域社会や教会を祝福する方法を御霊が教えてくれるでしょう。
わたしたちは一つの民として,当然ながら,この世の学問や職業において進歩成長することを重視しています。学問や職業上の技能に秀でた者となることを望んでいますし,そうならなければなりません。皆さんが教育を受け,自分の分野の専門家になるために熱心に努力していることをたたえます。そして同時に福音の教義,特に神権の教義の専門家にもなるようにお勧めします。
わたしたちは世界の歴史におけるどの時代よりも,聖文と現代の預言者の言葉を容易に手にできる時代に生きています。しかし,実際にその教えに手を伸ばしてつかむことはわたしたちの特権また義務であり,それはわたしたちの責任なのです。神権の原則と教義は壮大で崇高なものです。神権の教義とその秘めた力について研究すればするほど,また神権を実際の用途に応用すればするほど,心が広がり,理解力が増すでしょう。そして主がわたしたちのために何を備えてくださっているかを知ることができるでしょう。
イエス・キリストと回復された主の福音についての確かな証を得るには,知識以上のものが必要です。福音の原則を正直かつ熱心に応用することによって裏づけられた,個人の啓示を受ける必要があるのです。預言者ジョセフ・スミスは,神権は啓示を受ける経路であると説明しています。「この経路を通じて,全能者はこの世の創造の初めに御自分の栄光を現し始められました。またこれを通じて,神は現在に至るまで人の子らに御自身を現してこられ〔ました〕。」9
もしこの啓示の経路を求めて使うという経験がないなら,わたしたちは神権の特権を生かさずに生活しています。例えば,信じていても,気づいていない人がいます。長い期間にわたって静かな細い声により様々な答えを受けているのに,その霊感が非常に小さく取るに足りないもののように思われるため,ありのままに認めることができないのです。その結果,疑いの心が邪魔をして,神権者に秘められた可能性を発揮できずにいるのです。
啓示と証は必ずしも圧倒的な力をもって与えられるわけではありません。多くの場合,証はゆっくりと,一度に一かけらずつ与えられます。非常に少しずつ与えられるために,福音が真実だと実際に知った瞬間をはっきり思い出すのが難しいこともあります。主はわたしたちに「ここにも少し,そこにも少しと,教えに教え,訓戒に訓戒を」与えてくださるのです。10
ある意味で,わたしたちの証は転がるごとに大きくなっていく雪玉に似ています。最初はかすかな光から始まります。信じようとする望みを持つだけかもしれません。それから徐々に,「光は光に結びつき」11,「光を受け,神のうちにいつもいる者は,さらに光を受け〔ます〕。そして,その光はますます輝きを増してついには真昼とな〔り〕」12,「定められたときに〔わたしたちは〕父の完全を受け〔る〕」13のです。
地上での限りある力を超えて,理解の目が開かれ,日の栄えの源から光と知識を受けることが何と栄えあることであるかを考えてみてください。神権を持つ者として,わたしたちは個人の啓示を求め,聖なる御霊の確かな証によって自分で真理を知る方法を学ぶ特権と機会が与えられているのです。
霊感の光を熱心に求めましょう。わたしたちの特定の状況や問題,神権の義務について聖なる御霊の神聖な導きを受け,それに気づくことができるように,わたしたちの思いと心に信仰の火種を授けてくださるよう,主に嘆願しましょう。
航空機パイロットとしての経歴の中で,わたしはほかのパイロットの技能の審査と訓練を担当する機会がありました。仕事の一つは,経験豊かなパイロットの訓練と試験を行い,巨大なジェット機を安全に効率よく操縦するのに必要な知識と技術があるかどうか確認することでした。
パイロットの中には,長年にわたって仕事で空を飛んでいても,大空へ昇って行くときの感動,「無愛想な大地の束縛を逃れ,陽気な銀色の翼に乗って大空を舞う」14ときの感動を少しも失っていない人がいました。彼らは激しく流れる空気の音,力強くうなるエンジンの音,「風と一つになり,前方に広がる暗い空と星たちと一つになる」15感覚をこよなく愛していました。その熱意は周囲の人も熱くするほどでした。
ただ機械的に働いているだけのように思われる人も何人かいました。彼らはジェット機の装置や操縦方法は習得していましたが,「ひばりや,わしさえも飛んだことのない」16大空を飛ぶ喜びをいつの間にか失ってしまっていました。海や大陸を渡って行くうちに,輝く日の出,神の創造物の美しさに畏敬の念を抱くことがなくなってしまっていました。所定の要件を満たしていればわたしは資格を認めましたが,同時に気の毒にも思いました。
皆さんも,自分は神権者としてただ機械的に働いていないだろうかと自問してみるとよいでしょう。期待されていることを行ってはいるものの,得るはずの喜びを得ていないことはないでしょうか。神権を持つわたしたちには,アンモンが次のように言い表した同じ喜びを感じる機会がたくさんあります。「大いに喜んでよいのではないだろうか。・・・わたしたちは神の御手みてに使われる者となって,この大いなる驚くべき業を行ってきた。だから,わたしたちは誇って喜ぼう。まことに,主を誇って喜ぼう。まことに,わたしたちの喜びは満ちているので,喜びを味わおう。」17
兄弟の皆さん,わたしたちの宗教は喜びに満ちたものです。神の神権を持つわたしたちはこの上なく祝福されています。詩篇には次のように書かれています。「祭の日の喜びの声を知る民はさいわいです。主よ,彼らはみ顔の光のなかを歩み〔ます。〕」18 求めさえするならば,わたしたちはそのような大きな喜びを味わうことができるのです。
わたしたちは神権の実際の務めを日常的に果たすことによって得られる喜びを味わっていないことが多すぎます。時に割り当てが重荷のように感じられることがあります。兄弟の皆さん,疲れと不安と不平という3つの否定的なものに埋もれて生活することのないようにしましょう。この世の障害物に妨げられるままに,特に自分自身の家庭の中で,忠実に神権の務めを果たすことで得られる豊かな喜びを得ていないとき,わたしたちは自分の特権を生かさずに生活しています。神が神権を持つ忠実な僕に豊かに与えてくださる幸福と平安と喜びというごちそうにあずかっていないとき,わたしたちは自分の特権を生かさずに生活を送っています。
若い男性の皆さん,もし教会に早く来て聖餐の準備を手伝うことを祝福よりも苦痛のように感じるとしたら,つらい1週間を過ごしたかもしれないワードの会員にとってこの神聖な儀式がどのような意味を持つかについて考えるようにお勧めします。兄弟の皆さん,もしホームティーチングの取り組みが効果的でないように思えるなら,主の僕の訪問は隠れた問題を抱えている家族にとってどれほど有益であるかを,信仰の目で見るようにお勧めします。神権者として自分の奉仕の神聖な可能性を理解するなら,神の御霊によって皆さんの心と思いは満たされ,皆さんの目と顔は輝くでしょう。
神権を持つ者として,主がわたしたちに託してくださっているものがもたらす驚嘆と畏敬の念に決して鈍感にならないようにしましょう。
愛する兄弟の皆さん,どうかわたしたちが聖なる神権の教義を学ぶように熱心に努め,御霊の啓示を受けることによって教えに教えと少しずつ証を強め,日々の神権の務めに真の喜びを見いだすことができますように。これらのことを行うとき,わたしたちは神権者として自分の可能性を発揮し特権を生かして生活し始め,「〔わたしたち〕を強くして下さるかたによって,何事でもすることができる」19ようになるでしょう。このことを主の使徒として証し,わたしの祝福を皆さんに残します。イエス・キリストの聖なる御名により,アーメン。