1 さて,さばきつかさの統治第二十九年の初めに,アモロンは捕虜を交換することを求めて,使者をモロナイに送ってきた。
2 そして,モロナイはこの要請を非常に喜んだ。というのは,捕虜のレーマン人を養うのに使っている食糧を自分の民を養うのに充てたいと思い,また民を返してもらって自分の軍隊を増強したいとも思っていたからである。
3 ところで,レーマン人は多くの女子供を捕らえていたが,モロナイのすべての捕虜,すなわち,モロナイが捕らえていた捕虜の中には女と子供はいなかった。そこでモロナイは,できるだけ多くのニーファイ人の捕虜をレーマン人から取り返すために,一つの策を講じることにした。
4 それでモロナイは手紙をしたため,自分に手紙を持って来てくれたアモロンの部下にそれを託した。彼がアモロンに書いた言葉は次のとおりである。
5 「アモロンよ,見よ,あなたがわたしの民に仕掛けたこの戦争,いや,あなたの兄弟がわたしの民に仕掛け,あなたが兄弟の死後もなお続けようとしているこの戦争について,わたしは以前に少しあなたに書き送ったことがある。
6 見よ,わたしは,神の正義と神の激しい怒りの剣について,少しあなたに告げたい。あなたがたが悔い改めて,軍隊をあなたの土地,すなわち,あなたの所有地であるニーファイの地に撤退させなければ,神の激しい怒りの剣があなたのうえに迫るであろう。
7 まことに,もしこれらのことを聴く度量があなたにあるならば,まことにわたしはあなたに告げたい。すなわち,あなたがたが悔い改めて残忍なもくろみを捨て,軍隊を率いて自分の土地へ帰らなければ,あの恐ろしい地獄があなたやあなたの兄弟のような殺人者を迎え入れようと待ち受けていることを,あなたに告げたい。
8 しかし,あなたはかつてこれらのことを拒み,主の民に敵対して戦ったので,わたしはあなたがまたそのようにするであろうと思う。
9 さて見よ,我々にはあなたがたを迎え撃つ用意ができている。また,あなたは自分のもくろみを捨てなければ,見よ,あなたが拒んだあの神の激しい怒りを自分の身に受け,完全な滅亡を被るであろう。
10 あなたがたが撤退しなければ,主が生きておられるように,我々の軍隊はあなたがたに攻め上り,あなたがたは間もなく死に見舞われるであろう。我々は自分たちの町と土地を保有し,また自分たちの宗教と神の大義を守るつもりだからである。
11 しかし見よ,これらのことをあなたに述べても無駄であるとわたしには思われる。また,あなたは地獄の子であるようにわたしには思われる。したがってわたしは,手紙を結ぶに当たって告げる。一人の捕虜に対して男一人とその妻とその子供たちを引き渡すという条件に同意しなければ,わたしは捕虜の交換をしない。もしあなたがたがそのようにするならば,交換をしよう。
12 見よ,もしあなたがたがこれを行わなければ,わたしは軍隊を率いてあなたがたを攻めるつもりである。まことに,わたしは女たちと子供たちを武装させてあなたを攻め,我々の最初の受け継ぎの地である現在のあなたがたの地までも追って行こう。そして,血には血を,命には命を求めよう。そしてわたしは,あなたがたが地の面から滅ぼし去られるまで戦おう。
13 見よ,わたしは怒っており,わたしの民も怒っている。あなたがたはこれまで我々を殺そうとしてきたが,我々は防衛にのみ努めてきた。しかし見よ,もしあなたがたがこれ以上我々を滅ぼそうとするならば,我々もあなたがたを滅ぼすようにしよう。そして,我々は自分たちの土地,すなわち我々の最初の受け継ぎの地を手に入れるであろう。
14 これでわたしは手紙を結ぶ。わたしはモロナイであり,ニーファイ人の民の指揮官である。」
15 さて,アモロンはこの手紙を受け取ると腹を立て,モロナイに手紙をもう一通書いた。彼が書いた言葉は次のとおりである。
16 「わたしはレーマン人の王,アモロンであり,おまえたちが殺したアマリキヤの兄弟である。見よ,わたしはおまえたちに,兄弟の血の報復をするつもりである。またわたしは,おまえの脅迫など恐れないので,軍隊を率いておまえたちを攻めよう。
17 見よ,おまえの先祖は自分の兄たちを不当に扱った。統治権は正当にはその兄たちのものであったのに,おまえの先祖はそれを兄たちから奪った。
18 さて見よ,もしおまえたちが武器を捨てて,統治権の正当な所有者の統治に服するならば,そのとき,わたしも民に武器を捨てさせ,もう決して戦争をさせないようにしよう。
19 見よ,おまえはわたしとわたしの民に脅迫の言葉をたくさん吐いたが,見よ,我々はおまえの脅迫を恐れない。
20 しかしながら,わたしは喜んでおまえの求めるとおりに捕虜を交換することを認め,食糧をわが軍の兵たちのために蓄えておくようにしよう。そして,我々はニーファイ人が我々の権威に服従するまで,そうでなければ,ニーファイ人を永遠に絶滅させるまで,いつまでも戦争を続けよう。
21 また,我々が拒んだとおまえの言うその神についてであるが,見よ,我々はそのような者を知らないし,おまえにも分かるはずがない。しかし,もしそのような者がいるとすれば,その者はおまえだけでなく,我々をも造ったことになる。
22 また,もし悪魔がおり,地獄があるとすれば,見よ,わたしの兄弟を殺したうえに,彼はそのような場所に行ったとほのめかすおまえたちも,悪魔によってそこへ送り込まれ,わたしの兄弟とともにそこで住むことにならないだろうか。しかし見よ,これらのことはどうでもよい。
23 わたしはアモロンであって,おまえの先祖によって無理やりにエルサレムから連れ出されたゾーラムの子孫である。
24 そして見よ,今やわたしは勇敢なレーマン人である。見よ,この戦争はレーマン人が受けた不当な扱いの報復をし,レーマン人の統治権を守り,手に入れるために行われてきたものである。これでモロナイにあてた手紙を結ぶ。」