1 さて，ヘテと彼かれの家いえのすべての者ものは，シェズを除のぞいて全ぜん員いん飢き饉きんのために死しんでしまった。そこで，ヘテの子し孫そんであったシェズは，離り散さんした民たみを再ふたたび立たて直なおし始はじめた。

2 そしてシェズは，先せん祖ぞが滅ほろびたことを忘わすれず，義ぎにかなった王おう国こくを築きずいた。彼かれは，主しゅがヤレドと彼かれの兄きょう弟だいに大おお海うみを渡わたらせるに当あたって行おこなわれたことを覚おぼえていたからである。そして彼かれは主しゅの道みちを歩あゆみ，また息むす子こたちと娘むすめたちをもうけた。

3 ところが，シェズという名なの彼かれの長ちょう男なんが彼かれに背そむいた。しかし，このシェズは非ひ常じょうに多おおくの富とみを持もっていたために，強ごう盗とうの手てで殺ころされてしまった。そして，再ふたたび彼かれの父ちちに平へい和わが戻もどった。

4 さて，彼かれの父ちちは地ちの面おもてに多おおくの町まちを築きずき，民たみはまた地ちの全ぜん面めんに広ひろがり始はじめた。そしてシェズは高こう齢れいになるまで生いき長ながらえた。また彼かれはリプレーキシをもうけた。そして，彼かれが死しぬと，代かわってリプレーキシが統とう治ちした。

5 さて，リプレーキシは，主しゅの目めから見みて正ただしいことを行おこなわなかった。彼かれは多おおくの妻つまとそばめを持もち，また堪たえ難がたい重おも荷にを人ひと々びとの肩かたに負おわせたからである。彼かれは重おもい税ぜいを人ひと々びとに課かし，その税ぜいで多おおくの大おおきな建たて物ものを建たてた。

6 彼かれは自じ分ぶんのために非ひ常じょうに美うつくしい王おう座ざを作つくり，また牢ろうもたくさん建たてた。そして，課か税ぜいに服ふくそうとしない者ものを牢ろうに入いれ，また税ぜいを納おさめる能のう力りょくのない者ものも牢ろうに入いれて，彼かれらを絶たえず働はたらかせて生せい計けいを立たてさせた。また彼かれは，働はたらくことを拒こばむ者ものを殺ころさせた。

7 また彼かれは見み事ごとな品しな物ものをすべて手てに入いれた。彼かれは牢ろうの中なかで純じゅん金きんを精せい錬れんさせ，あらゆる見み事ごとな細さい工くを造つくらせて，それを自じ分ぶんのものとした。そして彼かれは，みだらな行おこないと忌いまわしい行おこないをして民たみを苦くるしめた。

8 そこで，彼かれが四十二年ねん間かん統とう治ちした後のち，民たみは彼かれに対たいして謀む反ほんを起おこした。そして，国くにでまた戦せん争そうが始はじまり，リプレーキシは殺ころされ，彼かれの子し孫そんは国くにから追つい放ほうされた。

9 さて，それから長なが年ねんたって，（リプレーキシの子し孫そんであった）モリアントンが追つい放ほうされた者ものたちを大おお勢ぜい集あつめ，出でて行いって民たみを攻せめ，多おおくの町まちの支し配はい権けんを得えた。そこで，戦せん争そうは非ひ常じょうに激はげしくなり，何なん年ねんもの長ながい間あいだ続つづいた。そして彼かれは全ぜん地ちの支し配はい権けんを得えて，自じ分ぶんで全ぜん地ちを治おさめる王おうになった。

10 彼かれは自じ分ぶんで王おうになった後のち，民たみの負ふ担たんを軽かるくして，民たみの好こう意いを得えた。そこで民たみは彼かれに油あぶらを注そそいで，彼かれを自じ分ぶんたちの王おうとした。

11 彼かれは民たみに対たいしては公こう正せいであったが，自じ分ぶん自じ身しんに対たいしてはそうではなかった。多おおくのみだらな行おこないをしていたからである。そのために，彼かれは主しゅの前まえから絶たたれてしまった。

12 さて，モリアントンは多おおくの町まちを築きずき，民たみは彼かれの統とう治ちの間あいだに非ひ常じょうに豊ゆたかになった。そして，建たて物ものや金きんや銀ぎん，また穀こく物もつの栽さい培ばい，大だい小しょうの家か畜ちくの群むれ，および彼かれらに回かい復ふくされたそのほかのものに富とむようになった。

13 また，モリアントンは非ひ常じょうに高こう齢れいになるまで生いき長ながらえ，老ろう年ねんにキムをもうけた。そして，キムが父ちちに代かわって統とう治ちし，八年ねん治おさめたときに父ちちは死しんだ。キムは義ぎをもって統とう治ちしなかったので，主しゅの恵めぐみを受うけなかった。

14 その後のち，彼かれの兄きょう弟だいが彼かれに対たいして謀む反ほんを起おこし，彼かれを囚とらわれの身みに陥おとしいれた。そして彼かれは生しょう涯がい囚とらわれの身みで過すごし，囚とらわれの身みで息むす子こたちと娘むすめたちをもうけた。そして彼かれは年とし取とってからレビをもうけて死しんだ。

15 さて，レビは父ちちの死し後ご四十二年ねん間かん，囚とらわれの身みにあって仕つかえた。その後のち，彼かれは国くにの王おうと戦たたかい，その戦せん争そうによって王おう位いを得えた。

16 彼かれは王おう位いを得えた後のち，主しゅの目めから見みて正ただしいことを行おこない，民たみはこの地ちで栄さかえた。そして彼かれは高こう齢れいになるまで生いき長ながらえ，息むす子こたちと娘むすめたちをもうけた。彼かれはまたコロムをもうけ，油あぶらを注そそいで自じ分ぶんに代かわる王おうとした。

17 そして，コロムは生しょう涯がい主しゅの目めから見みて善よいことを行おこない，また多おおくの息むす子こたちと娘むすめたちをもうけた。彼かれは多おおくの日ひを過すごした後のち，世よのほかの人ひと々びとと同おなじように世よを去さった。そして，キシが彼かれに代かわって統とう治ちした。

18 そして，キシも世よを去さり，リブが彼かれに代かわって統とう治ちした。

19 さて，リブも主しゅの目めから見みて善よいことを行おこなった。また，リブの時じ代だいに毒どく蛇じゃが全ぜん滅めつしたので，人ひと々びとは南なん方ぽうの地ちへ行いき，狩かりをして民たみの食しょく糧りょうを手てに入いれた。その地ちには森もりの動どう物ぶつが満みちていたからである。そして，リブ自じ身しんも卓たく越えつした狩人かりゅうどになった。

20 また，彼かれらは地ち峡きょうのそばに，すなわち海うみによって陸りくが分わけられている場ば所しょの近ちかくに一つの大おおきな町まちを築きずいた。

21 また，彼かれらは南なん方ぽうの地ちを，猟りょうの獲え物ものをとる荒あれ野のとしてそのまま残のこしておいた。そして北ほっ方ぽうの地ちには，全ぜん面めんにわたって人ひと々びとが住すんでいた。

22 彼かれらは非ひ常じょうに勤きん勉べんであり，売ばい買ばいし，互たがいに交こう易えきして利り益えきを得えた。

23 また，彼かれらはあらゆるあらがねで物ものを造つくった。彼かれらは金きんや銀ぎんや鉄てつや真しん鍮ちゅう，そのほかあらゆる金きん属ぞくを造つくった。彼かれらはあらがねを地ちの中なかから掘ほり出だしたので，金きんや銀ぎんや鉄てつや銅どうのあらがねを得えるために大おおきな土つちの山やまが幾いくつもできた。そして彼かれらはあらゆる見み事ごとな細さい工くを造つくった。

24 彼かれらは絹けん布ぷとより糸いとで織おった亜あ麻ま布ぬのを得えていた。また，裸はだかを覆おおうためにあらゆる織おり物ものを作つくった。

25 また，彼かれらは地ちを耕たがやすあらゆる道どう具ぐを造つくり，すく道どう具ぐ，種たねをまく道どう具ぐ，刈かり取とる道どう具ぐ，脱だっ穀こくする道どう具ぐを造つくった。

26 また，彼かれらは家か畜ちくに付つけて働はたらかせるためのあらゆる道どう具ぐを造つくった。

27 彼かれらはあらゆる武ぶ器きを造つくった。また彼かれらは非ひ常じょうに入にゅう念ねんな造つくりのあらゆる細さい工くを造つくった。

28 彼かれらほど祝しゅく福ふくされた民たみ，また彼かれらほど主しゅの手てによって繁はん栄えいを得えた民たみはなかった。彼かれらはあらゆる地ちに勝まさったえり抜ぬきの地ちに住すんでいた。主しゅがそのように言いわれたからである。

29 さて，リブは長なが年ねん生いきて，息むす子こたちと娘むすめたちをもうけ，またヒアルサムをもうけた。

30 そして，ヒアルサムが父ちちに代かわって統とう治ちした。しかし，ヒアルサムは二十四年ねん間かん統とう治ちして，見みよ，王おう位いを奪うばわれた。そして，彼かれは囚とらわれの身みで何なん年ねんもの長ながい間あいだ，まことに，余よ生せいを仕つかえて暮くらしたのであった。

31 また，彼かれはヘテをもうけ，ヘテも囚とらわれの身みで生しょう涯がいを送おくった。そしてヘテはアロンをもうけ，アロンも囚とらわれの身みで生しょう涯がいを送おくった。そして彼かれはアムニガダをもうけ，アムニガダも囚とらわれの身みで生しょう涯がいを送おくった。そして彼かれはコリアンタムをもうけ，コリアンタムも囚とらわれの身みで生しょう涯がいを送おくった。そして彼かれはコムをもうけた。

32 さて，コムは王おう国こくの半はん分ぶんを引ひき寄よせ，四十二年ねん間かん王おう国こくの半はん分ぶんを統とう治ちした。それから彼かれはアムギド王おうと戦たたかうために出でて行いき，両りょう者しゃは長なが年ねんの間あいだ戦たたかった。その間あいだにコムはアムギドに対たいする支し配はい権けんを得えて，王おう国こくの残のこりも治おさめる権けん力りょくを手てに入いれた。

33 ところが，コムの時じ代だいに国くにに強ごう盗とうが出で始はじめた。そして強ごう盗とうたちは昔むかしのはかりごとを取とり入いれ，昔むかしの人ひと々びとに倣ならって誓ちかいを立たて，またもや王おう国こくを滅ほろぼそうとした。

34 そこでコムは大おおいに彼かれらと戦たたかったが，彼かれらに勝かてなかった。