1 さて，わたしモロナイは記き録ろくを続つづける。さて見みよ，エーキシと彼かれの仲なか間またちは，彼かれらの秘ひ密みつ結けっ社しゃで，見みよ，オメルの王おう国こくを倒たおした。

2 それでも主しゅは，オメルとオメルを殺ころそうとしなかった彼かれの息むす子こたちと娘むすめたちに憐あわれみをかけられた。

3 そして主しゅは，その地ちを去さるように夢ゆめの中なかでオメルに警けい告こくされた。そこでオメルは，家か族ぞくを連つれてその地ちを去さり，幾いく日にちもの間あいだ旅たびをして，シムの丘おかのそばを通とおり，ニーファイ人じんが滅ほろぼされた地ち方ほうの近ちかくを通とおり，そこから東ひがしの方ほうに向むかって，海かい岸がんに近ちかいアブロムと呼よばれる地ち方ほうに着ついた。そして彼かれはそこに天てん幕まくを張はり，またヤレドと彼かれの家か族ぞくを除のぞく，オメルの息むす子こたちと娘むすめたち，およびオメルの家いえのすべての者ものが皆みな，そこに天てん幕まくを張はった。

4 さて，ヤレドは，悪あくの手てによって油あぶらを注そそがれて，民たみを治おさめる王おうになり，娘むすめをエーキシに妻つまとして与あたえた。

5 さて，エーキシは義ぎ父ふの命いのちを取とろうとして，昔むかしの人ひと々びとの誓ちかいの言こと葉ばで誓ちかっていた仲なか間まに頼たのんだ。そして彼かれらはエーキシの義ぎ父ふの首くびをはねた。それは，彼かれが王おう座ざに着ついて，民たみの訴うったえを聞きいていた最さい中ちゅうのことであった。

6 この邪じゃ悪あくな秘ひ密みつ結けっ社しゃは，その広ひろがりが非ひ常じょうに大おおきく，すでにすべての民たみの心こころを腐ふ敗はいさせていた。そのために，ヤレドは王おう座ざに着ついていて殺ころされ，エーキシが彼かれに代かわって統とう治ちしたのであった。

7 さて，エーキシは息むす子こをねたむようになり，息むす子こを牢ろうに閉とじ込こめてほとんど食しょく物もつを与あたえず，とうとう飢うえ死じにさせてしまった。

8 すると，死しんだ息むす子この兄きょう弟だい（その名なをニムラという）が，自じ分ぶんの兄きょう弟だいに対たいして行おこなった父ちちの仕し打うちのことで父ちちを怒いかった。

9 そしてニムラは，少しょう数すうの人ひと々びとを集あつめてその地ちから逃にげ出だし，オメルのもとに行いってともに住すんだ。

10 さて，エーキシはほかにも息むす子こたちをもうけた。しかし，その息むす子こたちは，父ちちから求もとめられるままにあらゆる悪あく事じを行おこなうと父ちちに誓ちかっていたにもかかわらず，民たみの信しん用ようを得えた。

11 エーキシが権けん力りょくを得えたいと望のぞんでいたように，エーキシの民たみも利り得とくを得えることを望のぞんでいたので，エーキシの息むす子こたちは彼かれらに金きん銭せんを与あたえて，民たみの大たい半はんを引ひき寄よせて自じ分ぶんたちに従したがわせたのである。

12 そこで，エーキシの息むす子こたちとエーキシの間あいだで戦せん争そうが始はじまり，その戦せん争そうは何なん年ねん間かんも続つづいた。そして，王おう国こくの民たみはほとんど皆みな滅ほろびてしまった。まことに，三十人にんの者ものと，オメルの家か族ぞくと一いっ緒しょに逃にげた者ものたちを除のぞく全ぜん員いんが死しんでしまった。

13 そこで，オメルは再ふたたび自じ分ぶんの受うけ継つぎの地ちへ戻もどった。

14 さて，オメルは年としを取とってきたが，それでも老ろう年ねんに及およんでイーマーをもうけた。そして，オメルはイーマーに油あぶらを注そそぎ，彼かれを自じ分ぶんに代かわって統とう治ちする王おうとした。

15 オメルは，油あぶらを注そそいでイーマーを王おうとした後のち，二年ねん間かん，国くにの平へい和わな有あり様さまを見みてから死しんだ。彼かれの一いっ生しょうは非ひ常じょうに長ながかったが，悲かなしみに満みちたものであった。その後のち，イーマーが父ちちに代かわって統とう治ちし，父ちちの足そく跡せきを歩あゆんだ。

16 主しゅは再ふたたび地ちからのろいを取とり去さられ，イーマーの家いえはイーマーの統とう治ちの間あいだに非ひ常じょうに栄さかえた。そして，六十二年ねんの間あいだに彼かれらは大おおきな力ちからをつけ，非ひ常じょうに豊ゆたかになった。

17 彼かれらはあらゆる果くだ物ものや穀こく物もつ，絹けん布ぷや織おり目めの細こまかい亜あ麻ま布ぬの，また金きんや銀ぎんや貴き重ちょうな品しな々じなを持もつようになり，

18 またあらゆる家か畜ちく，雄お牛うし，雌め牛うし，羊ひつじ，豚ぶた，やぎ，そのほか人ひとの食しょく用ようとなる多おおくの動どう物ぶつも持もつようになった。

19 彼かれらは馬うまとろばも持もち，また象ぞうとクレーロムとクモムもいた。これらはすべて人ひとのために役やく立だったが，特とくに象ぞうとクレーロムとクモムは役やくに立たった。

20 このように，主しゅはほかのあらゆる地ちに勝まさったえり抜ぬきのこの地ちに祝しゅく福ふくを注そそがれた。そして主しゅは，この地ちを所しょ有ゆうする者ものはだれであろうと，主しゅのためにここに住すまなければならず，さもなければ，民たみの罪ざい悪あくが熟じゅくしたときに民たみは滅ほろぼされると命めいじられた。なぜならば主しゅは，「わたしはそのような者ものにわたしの限かぎりない怒いかりを注そそぐ」と言いわれるからである。

21 イーマーは生しょう涯がい義ぎをもって裁さばきを行おこない，また多おおくの息むす子こたちと娘むすめたちをもうけた。また，彼かれはコリアンタムをもうけ，彼かれに油あぶらを注そそいで自じ分ぶんに代かわって統とう治ちさせた。

22 彼かれは自じ分ぶんに代かわって統とう治ちするようにコリアンタムに油あぶらを注そそいだ後のち，四年ねん間かん生いき長ながらえ，国くにの平へい和わな有あり様さまを見みた。また，彼かれは義ぎの御おん子こにさえまみえ，主しゅの日ひを喜よろこんで誇ほこりに思おもい，そして安やすらかに死しんだ。

23 さて，コリアンタムは父ちちの足そく跡せきに従したがって歩あゆんだ。そして，多おおくの大おおきな町まちを築きずき，生しょう涯がい民たみに良よいものを与あたえた。しかし，高こう齢れいになるまで彼かれには子こ供どもがいなかった。

24 そして，彼かれの妻つまが百二歳さいで死しんだので，コリアンタムは老ろう年ねんに及およんで若わかいおとめをめとり，息むす子こたちと娘むすめたちをもうけた。彼かれは百四十二歳さいまで生いき長ながらえた。

25 そして，彼かれはコムをもうけ，コムが彼かれに代かわって統とう治ちした。コムは四十九年ねん間かん統とう治ちした。また，彼かれはヘテをもうけ，ほかにも息むす子こたちと娘むすめたちをもうけた。

26 民たみはすでに再ふたたび地ちの全ぜん面めんに広ひろがっており，地ちの面おもてでひどい大おおきな悪あく事じが行おこなわれ始はじめた。そして，ヘテは自じ分ぶんの父ちちを殺ころそうとして，昔むかしの秘ひ密みつのはかりごとをまた受うけ入いれるようになった。

27 そして，彼かれは自じ分ぶんの剣つるぎで父ちちを殺ころして王おう位いから退しりぞけ，自じ分ぶんが代かわって統とう治ちした。

28 すると，またこの地ちに預よ言げん者しゃたちがやって来きて，民たみに悔くい改あらためを叫さけび，民たみは主しゅの道みちを備そなえなければならない，さもなければ地ちの面おもてにのろいが下くだる，すなわち，悔くい改あらためなければひどい飢き饉きんがあって滅ほろぼされる，と告つげた。

29 しかし民たみは預よ言げん者しゃたちの言こと葉ばを信しんじることなく，彼かれらを追おい出だした。また，民たみはある預よ言げん者しゃたちを穴あなの中なかに投なげ込こみ，そのまま放ほう置ちしておいて死しなせた。そして，民たみはこれらのことをすべて，ヘテ王おうの命めい令れいによって行おこなったのであった。

30 さて，地ちにひどい飢き饉きんが起おこり，その飢き饉きんのためにその地ちに住すむ者ものたちが次つぎから次つぎへと死しんでいった。地ちの面おもてに雨あめが少すこしも降ふらなかったからである。

31 また，地ちの面おもてに毒どく蛇じゃも現あらわれ，多おおくの人ひとがその毒どくで死しんだ。そして，彼かれらの家か畜ちくの群むれは毒どく蛇じゃに追おわれて，ニーファイ人じんがゼラヘムラと呼よんだ南なん方ぽうの地ちへ向むかって逃にげ始はじめた。

32 そして，途と中ちゅうでその多おおくが死しんだ。それでも，ある群むれは南なん方ぽうの地ちへ逃にげ込こんだ。

33 そこで主しゅは蛇へびにそれ以い上じょう家か畜ちくの群むれを追おうのをやめさせ，人ひと々びとが通とおり抜ぬけられないようにその道みちをふさがせて，通とおり抜ぬけようとする者ものが毒どく蛇じゃのために倒たおれるようにされた。

34 そして，民たみは家か畜ちくの逃にげた道みちをたどり，途と中ちゅうで倒たおれた家か畜ちくの死し体たいをむさぼり食くい，一つも残のこさずに食くい尽つくした。そして民たみは今いまや自じ分ぶんたちの滅ほろびるのが避さけられないことを知しると，罪ざい悪あくを悔くい改あらためて主しゅに叫さけび求もとめ始はじめた。

35 そして，彼かれらが主しゅの前まえに十じゅう分ぶんにへりくだったので，主しゅは地ちの面おもてに雨あめを降ふらせられた。そこで民たみは再ふたたび力ちからを取とり戻もどし，また北きたの地ち方ほうと周まわりのあらゆる地ち方ほうで，実みがとれ始はじめた。このようにして，主しゅは民たみを飢き饉きんから守まもることによって彼かれらに御ご自じ分ぶんの力ちからを示しめされた。