1 さて,わたしモルモンは,自分がこれまでに見聞きしたことを記録して,これをモルモン書と呼ぶ。
2 アマロンは数々の記録を主に託して隠したころ,わたしのところにやって来た。(当時わたしは十歳くらいで,わたしの民の教育方法に従ってかなり教育を受け始めていた。)そして,アマロンはわたしに言った。「わたしはあなたがまじめな子供で,観察が鋭いことを知っている。
3 だから,あなたが二十四歳くらいになったら,この民についてあなたが見てきたことを思い出してもらいたい。そして,その年齢になったら,アンタムの地の,シムと呼ばれる丘へ行きなさい。そこにわたしは,この民のことが刻まれているすべての神聖な記録を,主に託して隠してある。
4 見よ,あなたはニーファイの版を取り出し,残りの版は今それがある場所にそのままにしておきなさい。そして,この民についてあなたが見てきたことをすべてニーファイの版に刻みなさい。」
5 わたしモルモンはニーファイの子孫であり(わたしの父の名もモルモンであった),わたしはアマロンから命じられたことを思い出した。
6 さて,わたしは十一歳のとき,父に連れられて南方の地,ゼラヘムラへ行った。
7 地の全面が建物でいっぱいであり,人々はまるで海の砂のように大勢であった。
8 さてこの年に,ニーファイ人とヤコブ人,ヨセフ人,ゾーラム人から成るニーファイ人の間に戦争が始まった。この戦争は,ニーファイ人に対して,レーマン人とレムエル人とイシマエル人が戦ったものであった。
9 ところで,レーマン人とレムエル人,それにイシマエル人はレーマン人と呼ばれていたので,この戦いはニーファイ人とレーマン人との間で行われたものであった。
10 さて,その戦争は,シドンの水のそばにあるゼラヘムラの境で始まった。
11 そしてニーファイ人は,三万人を越える大勢の兵を集めていた。この年に彼らは何度も戦い,ニーファイ人はレーマン人を打ち負かして,多くの者を殺した。
12 そこでレーマン人は彼らの企てを捨て,地は平和になった。そして,およそ四年間平和が続き,まったく流血がなかった。
13 しかし,悪事が全地の面に広がったので,主は御自分の愛する弟子たちをよそに連れ去ってしまわれた。そして,民の罪悪のために,奇跡と癒しの業はやんだ。
14 また,民の悪事と不信仰のために,主から何の賜物も与えられず,聖霊はだれにも降られなかった。
15 わたしは十五歳で,多少まじめな心の持ち主であったので,主の訪れを受け,イエスの慈しみを味わって知った。
16 そこで,わたしはこの民に教えを説こうとしたが,わたしの口は閉じられ,彼らに教えを説くことを禁じられた。見よ,彼らが神に故意に背いたからである。また,愛された弟子たちは,民の罪悪のためにその地からよそに連れ去られてしまった。
17 しかし,わたしは民の中に残った。それでも,彼らの心がかたくなであったので,彼らに教えを説くことは禁じられた。そして,彼らがかたくなであったので,地は彼らのためにのろわれた。
18 また,レーマン人の中にいたガデアントンの強盗たちが,この地を荒らし回ったので,この地に住む者たちは,自分たちの宝を地中に隠すようになった。ところが,主がすでに地をのろっておられたので,彼らの宝はなくなりやすくなってしまい,彼らはそれらの宝を保つことも,再び所有することもできなくなった。
19 そして,魔術と魔法と呪術が行われ,悪しき者の力が地の全面に働いて,まことにアビナダイの言葉とレーマン人のサムエルの言葉がすべて事実となったのであった。