1 さて,王の軍隊は主の民を捜し回ったが,徒労に終わり,引き返した。
2 さて見よ,王の軍勢は人数が減って小規模になり,残った民の中に分裂が生じ始めた。
3 そして,少数派が王を脅す言葉を吐き始め,残りの民の中にひどい争いが起こった。
4 さて,少数派の中にギデオンという名の者がいた。彼は屈強な男で,王を敵としていたので,自分の剣を抜き,王を殺すと怒りの誓いを立てた。
5 そして彼は王と戦った。王は彼に打ち負かされそうになったところで逃げ出し,走って神殿の近くにある塔に登ってしまった。
6 そこでギデオンは王の後を追いかけ,王を殺すためにその塔に登ろうとした。このとき,王がシェムロンの地の方を眺めると,見よ,レーマン人の軍隊がすでに国の境を越えていた。
7 そこで王は心に苦しみを覚え,叫んで言った。「ギデオンよ,命を助けてくれ。レーマン人が攻めて来ており,我らを滅ぼそうとしている。まことに,民を滅ぼそうとしている。」
8 実のところ,王は民のことよりも自分の命のことを心配していたのである。にもかかわらず,ギデオンは王の命を助けた。
9 そこで王は,レーマン人から逃れるように民に命じて,自分がその先頭に立って逃げた。民も女や子供たちを連れて荒れ野へ逃げ込んだ。
10 そこでレーマン人は彼らを追いかけ,追いついて彼らを殺し始めた。
11 そこで王は男たちに,皆,妻子を捨ててレーマン人から逃れるように命じた。
12 しかし,妻子を捨てるくらいなら,一緒にとどまって死ぬ方がよいと考える者が多かった。ほかの者たちは妻子を捨てて逃げ去った。
13 そして妻子とともにとどまった者たちは,美しい娘たちを前に立たせ,自分たちを殺さないようにレーマン人に懇願させた。
14 そこでレーマン人は,彼らの娘たちの美しさに魅せられ,哀れみの心を示した。
15 レーマン人は彼らの命を助け,彼らを捕虜にしてニーファイの地へ連れ戻した。そして,ノア王をレーマン人の手に引き渡すこと,また彼らが所有するものの半分,金や銀やすべての貴重な品々の半分を渡すことを条件として,彼らがその地を所有することを許した。このようにして,彼らは毎年,レーマン人の王に貢ぎ物を納めることになったのである。
16 さて,捕らえられた者たちの中に王の息子が一人おり,その名をリムハイといった。
17 さて,リムハイは,父が殺されることのないようにと願っていた。それでもリムハイ自身は正しい人であったので,父の犯した罪悪を知らないわけではなかった。
18 さて,ギデオンは,ひそかに人々を荒れ野に遣わして,王と,また王と一緒にいる者たちを捜させた。すると彼らは荒れ野で,王とその祭司たちを除くすべての人に会った。
19 彼らはニーファイの地へ帰って,もし妻子や一緒にとどまった者たちが殺されていたら,その敵を討って,一緒に死のうと心に誓っていた。
20 ところが,王が彼らに帰らないように命じたので,彼らは怒って王を焼き殺してしまった。
21 また彼らは,祭司たちも捕らえて殺そうとしたが,祭司たちは逃げてしまった。
22 そして,彼らがちょうどニーファイの地へ帰ろうとしていたところで,ギデオンに遣わされた人々に出会ったのである。ギデオンに遣わされた人々は彼らに,自分たちの妻子に起こったすべてのことを告げ,またレーマン人に自分たちの所有するすべてのものの半分を貢ぎ物として納めることによって,その地を所有できると,レーマン人から認められたことを話した。
23 また彼らも,ギデオンに遣わされた人々に,自分たちが王を殺したことと,王の祭司たちが荒れ野の奥へ逃げ込んでしまったことを告げた。
24 そして彼らは,あいさつを終えると,自分たちの妻子が殺されなかったことを喜びながら,ニーファイの地へ帰った。それから彼らは,自分たちが王に行ったことをギデオンに告げた。
25 さて,レーマン人の王は,自分の民がニーファイ人を殺すことはないとニーファイ人に誓った。
26 そしてまた,ノア王の子であり,民から王位を与えられたリムハイも,レーマン人の王に,自分の民は所有するすべてのものの半分を貢ぎ物として彼に納めると誓った。
27 そして,リムハイは王国を確立し,民の中に平和を確立する業に着手した。
28 またレーマン人の王は,その国の周囲に見張りの兵を配置し,リムハイの民を国内にとどまらせ,荒れ野に出て行くことのないようにした。そして王は,ニーファイ人から受け取る貢ぎ物の一部で見張りの兵を養った。
29 さて,リムハイ王は,二年間引き続き王国の平和を保ち,レーマン人は彼らを苦しめ悩ますことも,彼らを滅ぼそうとすることもなかった。