1 わたしゼニフはニーファイ人の言葉のすべてを教えられており,また先祖の最初の受け継ぎの地であるニーファイの地のことも知っていたので,密偵としてレーマン人の中に遣わされた。それは,レーマン人の軍を偵察し,わたしたちの軍がこれを襲って滅ぼすためであった。しかし,わたしはレーマン人の中に善いものがあるのを見て,彼らが滅ぼされないように願った。
2 そこでわたしは,荒れ野で同胞と論争をした。わたしたちの統率者にレーマン人と条約を結んでもらいたかったからである。ところが,この統率者は冷酷で,血を流すことを好む男であったから,わたしを殺すように命じた。しかしわたしは,多くの流血の末に救い出された。父親同士が戦い,兄弟同士が戦って,とうとうわたしたちの軍の大半が荒れ野で死んでしまった。そこでわたしたち,すなわち命の助かった者は,ゼラヘムラの地に帰り,死んだ者の妻や子供たちにその出来事を話した。
3 それでもわたしは,先祖の地を受け継ぎたいという望みが強すぎたので,行ってその地を所有したいと思う人々を皆集め,その地へ出て行こうと再び荒れ野へ旅立った。しかしわたしたちは,主なるわたしたちの神を思い起こすのが遅かったので,飢饉やひどい苦難に悩まされた。
4 にもかかわらず,わたしたちは多くの日を荒れ野でさまよった末,前に同胞の殺された場所に天幕を張った。そこは,わたしたちの先祖の地に近い所であった。
5 そしてわたしは,一行のうち四人の男たちを伴って再び町へ行き,王のもとを訪れた。それは,王の意向を知り,またわたしの民を連れてその地へ入り,平穏にその地を所有できるかどうかを知るためであった。
6 王のもとに行くと,王はわたしにリーハイ・ニーファイの地とシャイロムの地を所有してもよいと誓約してくれた。
7 王はまた,その地に住んでいる民に立ち退くように命じてくれた。そこでわたしとわたしの民はこの地に入り,ここを所有することになった。
8 そこで,わたしたちは数々の建物を建設し,町の城壁,すなわち,リーハイ・ニーファイの町とシャイロムの町の城壁の補修に着手した。
9 また,わたしたちは地を耕し,あらゆる種,すなわち,とうもろこしや小麦,大麦の種,またニアスや,シウム,それにすべての種類の果物の種をまき始めた。こうしてわたしたちはこの地で増え,栄え始めた。
10 レーマン王がこの地を譲って,わたしたちがここを所有できるようにしてくれたのは,わたしの民を奴隷にしようとする彼の悪知恵と悪巧みによるものであった。
11 さて,わたしたちがこの地に住んで十二年たつと,レーマン王は,わたしの民が何らかの方法でこの地で強くなり,自分たちがわたしの民を打ち負かして奴隷にすることができなくなるのではないかと,心配になってきた。
12 レーマン人は怠惰で偶像を礼拝する民であったから,わたしたちを奴隷にして,わたしたちの手の労働によって腹を満たし,まことに,わたしたちの牧場の家畜の群れを飽きるほど食べたいと思っていた。
13 そこでレーマン王が,民を扇動してわたしの民と戦わせるようにしたので,この地に戦争と争いが起こり始めた。
14 ニーファイの地でのわたしの治世の第十三年に,民がシャイロムの地のはるか南で家畜の群れに水を飲ませ,草をはませ,また地を耕していたとき,レーマン人の大軍が襲いかかって彼らを殺し始め,家畜の群れと畑のとうもろこしを奪い始めた。
15 そして,レーマン人に追いつかれなかった者は皆,ニーファイの町へ逃げ込み,わたしに保護を求めてきた。
16 そこでわたしは,弓と矢,剣,三日月刀,こん棒,石投げ,そのほか考えつくかぎりのあらゆる武器で彼らを武装させた。そして,わたしと民はレーマン人と戦うために出陣した。
17 まことにわたしたちは,主の力を受けて,レーマン人と戦うために出陣した。わたしと民は,先祖が救われたことを思い出し,わたしたちを敵の手から解放してくださるように主に熱烈に叫び求めた。
18 すると神は,わたしたちの嘆願を聞き,祈りにこたえてくださった。そして,まことにわたしたちは神の力を受けて出て行き,レーマン人と戦って一昼夜に三千四十三人を殺した。わたしたちはレーマン人を殺して,とうとうわたしたちの地から彼らを追い払ってしまった。
19 そしてわたしも,自分の手でレーマン人の死体を葬るのを手伝った。しかし見よ,わたしたちにとって非常に悲しく,また痛ましいことであるが,わたしたちの同胞も二百七十九人殺された。