2017年ディボーショナル
あなたはジョセフである


あなたはジョセフである

キム・B・クラーク長老との夕べ

ヤングアダルト対象のワールドワイド・ディボーショナル・2017年5月7日・ソルトレーク・タバナクル

兄弟姉妹の皆さん,今晩ともに集えて感謝します。皆さんを心から愛しています。ヤングアダルトの皆さんといると,愛と喜びを感じます。

今晩は皆さんとともに,発見と信仰,霊感の物語を経験できるよう願っています。ジョセフ・スミスがヤングアダルトだった,回復の初期の時代に戻ってみましょう。わたしと同じ経験を皆さんにもしていただきたいと思います。わたしはこれまで,指導者やその組織について研究し,教えてきました。数々のすばらしい指導者と出会い,人の手で創られた全世界のすばらしい組織を知る機会にあずかってきました。しかし,回復初期のジョセフの経験を振り返ると,わたしたちが属している主のまことの生ける教会は,地上で最もすばらしい組織だと確信せずにはいられません。

ジョセフが不安と困難に直面していた時代に戻ってみましょう。自分が何者であり,主がどのような御方であり,どのように働きかけられるかをジョセフが知るようなった時期です。

やがてジョセフが偉大な回復の預言者となる時が訪れます。リッチモンドの監獄の武装した守衛を叱責しておののかせ,教会を設立し,大きな奇跡を起こし,驚くべき洞察により福音を宣べ伝え,町や神殿を建設し,イスラエルの集合と幕の両側における救いの業の礎を築く時です。しかし,その前の時代について,ジョセフがまだなるべき人物になる前に戻りたいと思います。皆さんと同様に,そのような時代がジョセフにもあったのです。ジョセフがヤングアダルトだった時代から,主イエス・キリストと主の教義,預言者ジョセフ・スミスに関する重要な教訓を学ぶことができます。主の御霊とともに耳を傾けるときに,主への愛と,主と天の御父を信じる信仰は増し,回復と預言者ジョセフ・スミスについての証が強まるでしょう。

物語

金版の話から始めたいと思います。1827年9月,当時21歳だったジョセフは天使モロナイから金版と,ニーファイ人が解訳器,またはウリムとトンミム1と呼んでいた,銀のつるにはめられた二つの石を受け取りました。その秋,ジョセフと妻のエマは,ニューヨーク州パルマイラでの迫害を逃れて,エマの故郷であるペンシルベニア州ハーモニーに移りました。2

ジョセフはそこで,金版の文字を写して研究しました。友人のマーティン・ハリスに,金版を翻訳できる人を見つけるよう頼みましたが,見つかりませんでした。3

1828年2月までに,ジョセフは,解訳器の助けを得ながら自身で記録を翻訳しなければならないことを悟りました。4やがて,ジョセフは「神の賜物と力」により記録を翻訳できるようになりました。5

当時,第一子をみごもっていたエマが筆記者となりました。二人は1828年4月まで取り組み,それ以降はマーティン・ハリスが筆記者を務めました。

6月までにジョセフは記録の最初の部分の翻訳を終えました。その中には,リーハイの書も含まれていました。マーティン・ハリスは原稿をニューヨークにいる妻と家族に見せたいと主張しました。ジョセフは主の許可を2度求めましたが,答えは「ノー」でした。マーティンが引き下がらなかったため,もう一度主に尋ねると,妻と数人にしか見せないという条件つきで許されました。マーティンは大喜びで,原稿を持ってパルマイラに向かいました。

一方,ジョセフは不安でした。そのころ,ジョセフはモロナイの訪れを受け,マーティンが原稿を持って行く許可を何度も求めたことを叱責され,解訳器と金版をモロナイに返さなければなりませんでした。6

その心配に加えて,エマが産んだ息子が産後すぐに亡くなりました。エマ自身も死の淵にあり,ジョセフは2週間付きっ切りで看病しました。エマは少し快復すると,マーティンと原稿の状況を確認してくるようジョセフに言いました。

ジョセフがパルマイラに到着した日,マーティン・ハリスはジョセフが恐れていた知らせを持って来ました。原稿を紛失したのです。ジョセフの母はそのときの様子についてこのように言っています。

「ジョセフが,……椅子から飛び上がるようにして立ち上がり,こう叫びました。『マーティン,原稿をなくしたのですか。』

マーティンは答えました。『そうなんだ。なくなってしまった。どこにあるのか見当がつかない。』

ジョセフは両手を握りしめながら言いました。『……すべてが失われてしまった,失われてしまった。どうしたらよいのだろう。わたしは罪を犯した。よいのだろう。主から最初に受けた答えで満足しておくべきだった。……』ジョセフはうめくように泣きながら,部屋を行ったり来たりしました。

『……いと高き御方の天使からどのような叱責を受けても,わたしはそれに甘んじなければならない。』

わたしは何と声をかけてよいか分かりませんでした。家族はみんなジョセフと同じ気持ちで,泣きむせび,深い悲しみが家を覆っていました。……ジョセフはずっと泣きながら,行ったり来たりしていました。とうとう日暮れになり,説得されてわずかな食事を口にしました。

翌朝,ジョセフは家路に就きました。別れを告げるわたしたちの心は重く閉ざされていました。わたしたちが心待ちにしていたもの……が,瞬時にして,そして永遠になくなってしまったからです。」7

ハーモニーまでの4日間の旅はジョセフにとってつらいものだったでしょう。エマを心配し,最初の子供を失った悲しみが癒えないうちに,原稿を失い,金版も解訳器も取り上げられてしまったのです。長い旅でした。

ジョセフは主に頼ろうと決意しました。8ハーモニーに帰った後の出来事をこのように説明しています。

「到着して間もなく,わたしはへりくだり,熱烈な祈りを主にささげ,……もしできることなら,主が憐れんでくださり,わたしが行った主の御心に反するすべての行いを赦してくださるよう嘆願しました。……9

少し道を歩いていたときです。……以前のあの天の使者が現れて,再びわたしにウリムとトンミム〔改訳器〕を渡してくれました。……わたしはウリムとトンミムによって主に尋ねて,次の啓示を受けました。」10

ジョセフが受けた啓示は教義と聖約第3章に記録されています。辛辣な叱責と,さらなる悔い改めへの招き,そして約束が記されています。まずは叱責です。

「また見よ,あなたは何としばしば神の戒めと律法に背き,人々の説き伏せに乗ってきたことか。

見よ,あなたは人を神よりも恐れてはならなかった。たとえ人々が神の勧告を無視し,神の言葉を軽んじても,

それでも,あなたは忠実でなければならなかった。そうすれば,神はその腕を伸べて,敵対する者の放つすべての火の矢からあなたを助けたであろう。また,苦難のときには,いつもあなたとともにいたであろう。」11

ジョセフが,マーティン・ハリスに原稿を渡す許可を何度も主に求めたのは,人の説き伏せと人への恐れからでした。ジョセフは悔い改め始めましたが,主は不十分だと教えられました。

「見よ,あなたはジョセフである。あなたは主の業を行うために選ばれた。しかし,背きのゆえに,あなたは用心しなければ落ちるであろう。

しかし,神は憐れみ深いということを覚えておきなさい。それゆえ,あなたが行ったことで,わたしがあなたに与えた戒めに反する行いを悔い改めなさい。そうすれば,あなたはまだ選ばれた者であって、再び業に召される。」12

モロナイはジョセフに解訳器と金版を返すよう求めましたが,「心底へりくだり,悔いるならば,それらを再び得るであろう……」と約束しました。13ジョセフは引き続き悔い改め,程なく金版と解訳器をモロナイから再び受け取りました。14

1829年,冬に翻訳があまり進まないことを心配したジョセフは,筆記者を送ってくださるよう主に求めました。154月,主は,奇跡的な改宗を経たオリバー・カウドリをジョセフの筆記者として送ってくださいました。16

オリバーの到着とともに,翻訳は目覚ましい速さで進み始めました。

モルモン書の翻訳はジョセフにとって奇跡と祝福に満ちていました。

しかしジョセフは,リーハイ書はどうすればよいのかと悩みました。リーハイ書がなければ,リーハイ一家の話や約束の地までの旅,ニーファイ人とレーマン人の起源についての説明がありません。

1829年5月,主はジョセフに計画を明らかにされました。何世紀も前から,リーハイ書の代わりに,ニーファイの小版が用意されていたのです。小版にはリーハイ書の要約と,ニーファイをはじめとする預言者の預言と教えが含まれていました。モルモン書のニーファイ第一書からモルモンの言葉に当たるその記録は,主の霊感により何百年間も保存され,主の指示の下でモルモンにより記録に加えられたのです。17

ジョセフとオリバーはリーハイ書を再翻訳しませんでした。主はジョセフに,悪人が元の原稿を変え,主の業を妨害しようと待ち伏せている,と警告されました。ジョセフはニーファイの小版を翻訳し,それをモルモン書の冒頭に載せました。

モルモン書の翻訳は,さらに驚くべき経験をもたらしました。神権が回復され,ジョセフとオリバーがバプテスマを受け,聖霊の賜物を受けました。1811人の証人が金版を目にし,それが実在することを証しました。

モルモン書は,証人の証とともに1830年に出版されました。証人の一人であったマーティン・ハリスは,印刷代のために農場を抵当に入れました。

今日は教会の歴史保管庫にある二つの宝物をお見せします。一つは,モルモン書の元の原稿です。このページにはニーファイ第一書3章7節の英語の翻訳が含まれています。

「わたしは行って,主が命じられたことを行います。主が命じられることには,それを成し遂げられるように主によって道が備えられており,それでなくては,主は何の命令も人の子らに下されないことを承知しているからです。」

もう一つは,モルモン書の初版です。

ジョセフが受けた啓示はパルマイラで印刷され,このモルモン書に収められています。ヤングアダルト時代のジョセフやエマ,マーティン・ハリス,オリバー・カウドリ,モロナイ,モルモン書についてお話ししたことは真実です。

この物語は皆さんにとってどのような意味があるか

皆さんの経験をこの物語に照らして見てください。主は,ヤングアダルトのジョセフと同じように皆さんを備え,教えられます。ジョセフの経験から重要な教訓を学べます。3つの教訓に焦点を当てたいと思います。イエス・キリストを信じる信仰と信頼,悔い改め,そしてモルモン書の霊的な力です。

教訓その1:イエス・キリストを信じる信仰と信頼

「教訓その1:イエス・キリストを信じる信仰と信頼」から始めましょう。

主に3度目のお願いをするようマーティンから求められたときのジョセフの状況を考えてみてください。主はすでに2度断っておられました。3度目の要請を受け,ジョセフは窮地に立たされました。(これは信仰の試しでした。信仰が試されたのです。

考えてみてください!ジョセフにはイエス・キリストと天の御父を信じる信仰があり,驚くべき霊的な経験を何度もしました。御父と御子にまみえ,御二方と語り,モロナイをはじめとする預言者と言葉を交わし,解訳器と聖見者の石を使ってリーハイ書を奇跡的な方法で翻訳したばかりでした。19

一方,ジョセフはまだ22歳で,恐れを抱いていました。妻は最初の子供をみごもっており,富も学もなく,一家を養うための手段もありませんでした。周りには懐疑主義者と迫害者ばかりで友人はわずかでした。頼れる相談相手も,委員会も,資金や助言を提供してくれる銀行もありませんでした。記録を出版すべきだと分かってはいましたが,マーティン・ハリスに見限られたら出版費用をどのように調達できるか知りませんでした。

ジョセフはそれまでの数々の霊的な経験にもかかわらず,「人を神よりも恐れ」20,3度目の要請をすることにしました。そのことが主の不興を買い,原稿を紛失するきっかけとなったのです。それでも,主はジョセフに憐れみをかけられました。主は,ジョセフがすでに持っていた信仰を引き出すことにより悔い改めを促し,原稿の紛失を克服するための手段を用意されたのです。

皆さんの状況はジョセフのものと似ています。皆さんは,ヤングアダルトで,結婚や家族,教育,仕事,この世や主の王国での居場所を見いだすことなどに不安を抱えています。ほかにも課題や問題があるかもしれません。

ジョセフと同じように,皆さんには霊的なリソースと経験があります。祈りや聖文,奉仕を通して主の御霊を感じたことがあるでしょう。悔い改めや聖餐,聖なる神殿を通して主イエス・キリストの愛と恵みと力を経験したことがあります。

試練に直面したときに,恐れに翻弄されたり人の説き伏せに頼ったりしないでください。そうではなく,ジョセフが主から促されて行ったことをしてください。そうするならば,生活に霊的な力がもたらされることを約束します。

まず,すでに持っている霊的な経験やリソースを使ってイエス・キリストを信じる信仰と信頼を増し加えてください。これまでに受けた霊的な祝福を頼りに,救い主を信じる信仰をもって前進する強さを得てください。主は最大の祝福です。主の愛は絶えることがありません。必要なときに主は必ず皆さんのそばにいてくださいます。主は試練のときに必ずともにいてくださいます。

次に,信仰の目で待ち望み,生活における主の御手を認めてください。主がジョセフの筆記者としてオリバー・カウドリを備えられた方法や,紛失した116ページの代わりにニーファイの小版を備えられた方法を思い出してください。21主は,ジョセフだけでなく皆さんの生活の中でも働かれます。皆さんには永遠の属性と目的,神聖な行く末があります。主は今も皆さんのために働いておられます。皆さんに先立って行き,戸を開け,助け手を備え,道を開いてくださるのです。

教訓その2:悔い改め

では,教訓その2,悔い改めについてお話しします。

原稿を紛失したことが分かったときに戻ってみましょう。ジョセフは主に対して罪を犯し,主の戒めを破ったことを理解していました。罪悪感と悲しみにうちひしがれましたが,主に心を向け,赦しの奇跡と贖いの喜びを見いだしたのです。

主はジョセフに一切の弁解を許さず,きわめて高い標準を求められました。偉大な預言者として扱い,そうなることを望んでおられました。ジョセフは神よりも人を恐れました。神ではなく自分の理解に頼りました。ジョセフにとって,悔い改めは,単に「間違ったことをしました。原稿をなくしてすみません」と言う以上のことでした。罪のもとになった自分の姿勢や恐れ,性質を克服しなければならなかったのです。また,生涯を通じて成長し,学び,変わる必要がありました。

ジョセフは,主の憐れみと愛と力によってのみ可能な心の変化を経験する必要がありました。そしてそのとおりになりました。主はジョセフの高貴な性質を御存じでした。「あなたはジョセフである。……悔い改めなさい。そうすれば,あなたはまだ選ばれた者であ〔る〕」22という主の言葉には,主の愛と憐れみ,変わってほしいという願いが込められています。

また主は,ジョセフが何者であるかを教えています。貧しい無学の農家の少年として育ちましたが,それはほんとうの姿ではありませんでした。預言者,えり抜きの聖見者であり,主の完全な福音を地上に回復する助け手なのです。

主はジョセフに悔い改めを求められたとき,イエス・キリストの贖罪の力を通して,本来の自分にふさわしくなるために必要な変化を遂げるよう招かれたのです。救い主はすでにジョセフが実際に経験した,辛く心の痛む苦しみをすべて経験されていました。イエス・キリストはジョセフに赦しと贖いを身に受ける方法を備えてくださいました。何日も,何週間も,何か月もの間,ジョセフは主の赦しと贖罪の力を請い,それを受けました。

主は皆さんにもきわめて高い標準を定め,一切の弁解を許されません。皆さんを,勇敢で憐れみ深い弟子として扱い,そうなることを望んでおられるのです。しかし,主はジョセフ同様,皆さんも愛しておられます。だれもが時に不完全さを示すため,悔い改めの祝福を必要としています。

ジョセフの経験から分かるように,悔い改めは,過ちを犯したことを主とビショップに告げるだけではありません。罪を犯すとは,主に背くことです。悔い改めとは,主に立ち返ることです。悔い改めには,自分の状況に応じて,心と思いと生活を変えることが伴います。

さらに,悔い改めは皆さんを継続して祝福してくれます。悔い改めは,わたしたちがより善い行いをし,より善い人となるための手段です。神の息子,娘にふさわしい者,イエス・キリストの真の弟子にふさわしい者となるための方法です。

兄弟姉妹,この約束は真実です。主イエス・キリストに心を向け,罪を悔い改めて主の戒めを守ってください。主は無限の憐れみをお持ちです。23ジョセフはこう教えています。「天の御父は,わたしたちが考えるよりもずっと寛大な物の見方をなさり,御父の憐れみと祝福には限りがない。」24イエス・キリストは皆さんの罪と苦痛,悲しみのために自ら苦しみを受けられました。それは,喜んで皆さんを赦し,癒し,変え,強め,祝福するためです。主はわたしたちの救い主であり贖い主であられます。イエスは確かに救い主,贖い主であられます。

教訓その3:モルモン書の霊的な力

次に,「教訓その3:モルモン書の霊的な力」についてお話しします。

罪を赦されたジョセフは,金版と解訳器を再び受け取り喜びました。25原稿をなくすという経験により,主の業におけるモルモン書の重要性が心に焼き付けられました。モルモン書の預言者たちが伝えようとしているのは,イエス・キリストと主の教義についての証です。この書物には霊的な力があります。

ジョセフの翻訳の経験にその力を見て取ることができます。翻訳は機械的に行われたのではありません。それは霊的な経験であり,主と聖霊の働きについてジョセフに教えました。ジョセフにとってモルモン書の翻訳は終始,啓示を受ける経験だったのです。モルモン書はジョセフにイエス・キリストの教義を教えました。主はジョセフに,それに従って生きるように,つまりイエス・キリストを信じる信仰により行動し,悔い改め,バプテスマを受け,聖霊を受けるよう招かれました。26

主はこの経験を通して,霊的な力をさらにジョセフに授けられました。例えば,ジョセフはバプテスマを受けてから,「聖霊に満たされ」,聖文の「正確な意味と意図」を「はっきりと理解できるようになってきた」と語っています。27

主はモルモン書をもたらすことを通してジョセフを高め,主に近づけられました。モルモン書をもたらすことにより,聖霊の力を通してジョセフを教え,強められたのです。

モルモン書は,ジョセフと同様,皆さんにとっても啓示を受ける経験となります。

モルモン書の預言者たちは現代を見て,指導者の言葉わたしたちに向けて書きました。この時代やわたしたちの必要と目的を満たすために語りかけているのです。心を開いてモルモン書を読み,祈るならば,聖霊は28「これが真実であることを……あなたがたに明らかにしてくださ〔います〕。」29主イエス・キリストが皆さんの救い主,贖い主であられ,ジョセフ・スミスが回復の預言者であることを知るでしょう。

教会員かどうかにかかわらず,また,教会員としての年数にかかわらず,皆さんにお勧めします。ジョセフと同じように,モルモン書を読み,それについて祈り,イエス・キリストを信じる信仰をもって悔い改め,バプテスマを受け,聖霊を受けてください。そしてさらに神殿の結び固めの儀式を含め,あらゆる救いの儀式と聖約を受け,守ってください。

自分の多くの経験から,モルモン書に力があることを知っています。その中から,わたしがヤングアダルトのときの話をしたいと思います。ドイツで伝道を始めて2か月たったときのことでした。難しい2か月間でした。伝道がうまくいかず,わたしは落胆していました。ある朝,ひざまずいて祈り,悩みを天の御父に打ち明けました。「天のお父様,助けてください。」祈ると,声が聞こえました。まるですぐ隣に,だれかが立っているかのように,はっきりとした声が聞こえたのです。「神を信じなさい。」

わたしはベッドに腰掛け,モルモン書のモーサヤ書第4章9節と10節を開き,ベニヤミン王の言葉を読みました。

「神を信じなさい。神がましますことと,神が天と地の万物を創造されたことを信じなさい。神はすべての知恵を備え,また天と地の両方で一切の権威を持っておられることを信じなさい。……

​さらにあなたがたは,罪を悔い改めてその罪を捨て,神の御前にへりくだらなければならないことを信じなさい。そして,神があなたがたを赦してくださるように真心から求めなさい。これらのことをすべて信じるならば,必ずそれを実行しなさい。」30

この言葉を読んだときに,まるでベニヤミン王が自分に語りかけているように感じました。わたしは生活の中で聖霊の現れを感じている。聖霊の力を心に感じました。祈りの答えだと分かりました。わたしは主を信頼し,悔い改め,働かなければならなかったのです。それ以来,モルモン書は霊的な力の源となっています。

愛する兄弟姉妹の皆さん,モルモン書は皆さんをイエス・キリストとその教義に導いてくれます。モンソン大管長が勧告したように,毎日モルモン書を読み,研究し,祈り,思いと心に蓄えてください。救い主は,聖霊の力により,常に皆さんの心に平安を告げ,皆さんを高め,強め,主にいっそう近づけてくださるでしょう。

ジョセフのヤングアダルト時代のこの3つの教訓は,イエス・キリストと主の教義の力について証しています。イエスはキリストであり,生ける神の御子であられることを証します。贖い主がおられます。イエスは生きておられます。

ぜひジョセフの生涯から学んでください。ジョセフはヤングアダルト時代に苦労しましたが,主を信頼したため,主はジョセフを回復の偉大な預言者としてくださいました。これは神の聖なる業です。ジョセフは神の神聖な業を行ったのです。教会も真実です。回復は真実です。覚えておいてください。イエスはキリストであられ,ジョセフは主の預言者です。ジョセフ・スミスからモンソン大管長に至るまで,神権の鍵と権能と力の鎖は途切れることなく継承されています。モンソン大管長は現代の主の預言者です。全て真実です。

愛する世界中の兄弟姉妹の皆さん,主イエス・キリストを信頼してください。主はジョセフの名前だけでなく皆さんの名前も御存じです。皆さんを愛し,皆さんのために働いてくださいます。主の憐れみと恵み,愛を通して高められ,あらゆる試練を克服し,なるべき人物になることができます。勇敢で忠実な末日聖徒 ,真実の生ける教会における指導者と,永遠の家族,そしてイエス・キリストの真の弟子となり,主の光と愛に満たされ,主の再臨に備えることができるのです。イエス・キリストの御名により,アーメン。

  1. モロナイは4年間ジョセフに勧告と教え,導きを与えた。ジョセフは1823年以来,毎年9月の同じ日にクモラの丘を訪れた。毎年,金版を受け取れるという大きな希望を抱いてやって来たが,その度に,まだ備えができていないとモロナイに告げられた。1827年9月には備えができた。解訳器については,アルマ37:21-24を参照。ジョセフは,古代にウリムとトンミムと呼ばれていたものは二つの石から構成されていた,と言っている。ジョセフ・スミス—歴史1:35およびリチャード・E・ターリー・ジュニア,ロビン・S・ジェンセン,マーク・アシャースト・マックギー共著,“Joseph the Seer”Ensign(2015年10月号), 49-55参照。

  2. エマの父親であるアイザック・ヘイルは,エマとジョセフがペンシルベニア州ハーモニーに戻ったときのために,農場と家,納屋などを彼らに与えた。マイケル・ハバード・マッケイ,ゲリット・J・ダークマット共著,The Joseph Smith Papers, Documents, Volume 1: July 1828–June 1831From Darkness unto Light: Joseph Smith’s Translation and Publication of the Book of Mormon(2015年)32-33参照。友人であり裕福な地元の農夫であったマーティン・ハリスは,ジョセフとエマの借金の完済とペンシルベニア州への旅の資金として,50ドルを与えた。The Joseph Smith Papers, Histories, Volume 1, Joseph Smith Histories, 1832–1844,カレン・リン・デビッドソン編〔2012年〕,15

  3. 文字の転写とマーティン・ハリスの旅に関する議論については,リチャード・E・ベネット,“Martin Harris’s 1828 Visit to Luther Bradish, Charles Anthon and Samuel Mitchill”参照。デニス・L・ラーギー他編, The Coming Forth of the Book of Mormon: A Marvelous Work and a Wonder(2015年), 103-115で引用

  4. 幾つかの記録は,マーティン・ハリスが文字の写しを少なくとも3人の人間に見せたことを示している。「翻訳の助け手となる人物を見つけられるのではと思い出かけて行ったが,見つからないまま帰路に就いた。それからジョセフは改めて翻訳に従事した。」(The Joseph Smith Papers, Histories, Volume 1, Joseph Smith Histories, 1832–1844,241)初期の歴史でジョセフ・スミスはこのように記録している。マーティン・ハリスが「主が彼に,文字の写しを持ってニューヨークへ行くよう示された,と言った。わたしたちは幾つかの文字の写しを準備し,彼を東部の町へと送り出した。そこで彼は学者に『どうぞ,これを読んでください』と言うと,学者は『できません』と言い,版を持って来るなら読みましょうと言った。しかし主は版を持ち出すことを禁じておられた。〔マーティン・ハリス〕はわたしのもとに戻って来て,わたしが翻訳するようにと版を渡した。わたしは『自分は教育を受けていないのでできません』と言った。しかし主は,版を読めるように眼鏡を用意してくださっていたので,わたしはそれらの文字の翻訳を始めた。」(The Joseph Smith Papers, Histories, Volume 1, Joseph Smith Histories, 1832–1844,15参照)

  5. ジョセフ・スミス,1830年版のモルモン書の序文。モルモン書の翻訳の概説については,「福音のテーマ」の小論文(https://www.lds.org/topics/book-of-mormon-translation?lang=jpn)を参照。

  6. Manuscript History of the Church, vol. A-1, 10参照josephsmithpapers.org

  7. ルーシー・マック・スミス, Biographical Sketches of Joseph Smith the Prophet and His Progenitors for Many Generations (1853年), 121-122

  8. この悪い知らせが届いたときに家族とともにいたことは,ジョセフにとって祝福だった。ペンシルベニア州ハーモニーに出発する前に,ジョセフの母はこう勧告した。「主は,ごくわずかな期間,辱めと悔い改めを経験させた後,赦してくださるでしょう。」(Smith,Biographical Sketches,121

  9. スミス,Biographical Sketches,125

  10. Joseph Smith, in Manuscript History of the Church, vol. A-1, p. 10, josephsmithpapers.org.

  11. 教義と聖約3:6-8

  12. 教義と聖約3:9-10

  13. スミス,Biographical Sketches,125参照

  14. 金版が返された時期については相反する説明がある。ジョセフの自伝には数日以内であったと記されているが,ルーシー・マック・スミスの自伝には9月だったと記されている。(Manuscript History of the Church, vol. A-1, p. 11, josephsmithpapers.orgおよびルーシー・マック・スミス, Biographical Sketches, 126参照)

  15. その秋と冬,ジョセフはエマを筆記者として翻訳をしたが,二人はほとんどの時間,農場で働き家族の世話をしなければならなかった。(Biographical Sketches,,131参照)

  16. オリバーは学校の教師をしているときに,マンチェスターのスミス一家のもとに下宿していた。金版とモルモン書の話を聞いて,「ある晩,床に就くと,それらのことが真実かどうか主に尋ねた。すると,主はそれが真実であることを明らかにしてくださった。」(Joseph Smith, in Manuscript History of the Church, vol. A-1,15,josephsmithpapers.org)知識を得たオリバーは,ジョセフの筆記者となりたいという強い望みを抱いた。

  17. 教義と聖約10:38-42参照ニーファイは霊感を受けて小版を作った(1ニーファイ9:3-6参照)。モルモンは,小版を記録に含めるようにという霊感を受けたときのことについてこのように記している。「見よ,わたしはこれらの預言と啓示の載っているこの版を取って,わたしの記録の残りの部分と一緒にしよう。これらの預言と啓示はわたしにとって貴いものであ……ることを知っているからである。わたしは、ある賢明な目的のためにこのようにする。 わたしの内にある主の御霊の働きによって、わたしにそのようなささやきがあるからである。」(モルモンの言葉1:6—7

  18. ジョセフは記録の翻訳を終えると,オリバーとともに森へ行き,第三ニーファイの翻訳で言及されている,罪の赦しのためのバプテスマについて祈るべきだと感じた。(3ニーファイ11:21-2819:9-1327:16-20)祈りはこたえられた。ジョセフとオリバーはバプテスマのヨハネからアロン神権を受け,互いにバプテスマを施した。(ジョセフ・スミス—歴史1:68-73参照)後に二人はペテロ,ヤコブ,ヨハネからメルキゼデク神権を受け,聖霊の賜物を授ける権能を授かった。(教義と聖約27:12-13参照)

  19. The Joseph Smith Papers, Revelations and Translations, Volume 3, Part 1: Printer’s Manuscript of the Book of Mormon, 1 Nephi 1–Alma 35,ed. Royal Skousen and Robin Scott Jensen [2015], xvii–xix; MacKay and Dirkmaat, From Darkness unto Light,67-69

  20. 教義と聖約3:7参照

  21. マーティン・ハリスが原稿をなくしたことを知った当時,ジョセフは,主がモルモンに霊感を与えて,ニーファイの小版を記録に収めさせられたことを知らなかった。また,主がマーティン・ハリスに悔い改めを促し,モルモン書の証人となり,印刷代を支払うよう霊感を与えられるであろうことも知らなかった。ジョセフは一切知らなかったが,主はジョセフに先立って道を備えておられたのである。

  22. 教義と聖約3:9-10

  23. モーサヤ28:4参照

  24. ジョセフ・スミス,Manuscript History of the Church, vol. D-1, addenda, p. 4, josephsmithpapers.org

  25. 翻訳する能力を欠いた数か月に経験した暗闇とは非常に対照的だった。主はジョセフに,「〔解訳器〕によって翻訳する」力を授けたが,ジョセフは「〔その〕賜物も失い,……思いは暗く〔なった〕。」(教義と聖約10:1-2参照)ジョセフの思いは聖霊の力によって照らされていたが,その光を失ったことにより霊的な思いが暗くなるという経験をした。光を失ったことにより,ジョセフは啓示の霊と御霊の導きを心地よく感じた。

  26. この部分は,救い主がバウンティフルの神殿の民を訪れられたときにバプテスマと聖霊を受けた話の翻訳である。ジョセフとオリバーが,バプテスマと聖霊の賜物を授ける権能について啓示を求めるきっかけとなった。(The Joseph Smith Papers, Histories, Volume 1: Joseph Smith Histories, 1832–1844,42;Oliver Cowdery, letter to W. W. Phelps, dated Sept. 7, 1834, in Latter Day Saints’s Messenger and Advocate, Oct. 1834, 15–16)参照

  27. ジョセフ・スミス-歴史1:73-74

  28. 末日聖徒 イエス・キリスト教会のバプテスマを受ける人々は,聖霊の賜物を受ける。これは,聖霊を常に伴侶とする権利である。まだバプテスマを受けていない人々はモルモン書の真実性を証する聖霊の力を受けることはできるが,聖霊が常にとどまることはない。

  29. モロナイ10:4

  30. モーサヤ4:9-10

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