テッサのためのいのり
このお話を書いた人は,アメリカ合衆国コロラド州に住んでいます。
「わたしにチームに入ってほしい人なんていないわ」とテッサは言いました。
「主の方にはたれが立つや」(『賛美歌』165番)
テッサはうつむいて自分のくつを見ました。体育の時間です。子供たちがキックボールのチームにだれを入れるかを選んでいます。テッサは,自分が選ばれるのは最後だと知っていました。いつもそうなのです。
やがて,残っているのはテッサだけになりました。「またあの子と一緒ってことだな。」チームのキャプテンが友達にささやきます。二人はニヤニヤと笑いました。
テッサは聞こえないふりをしました。
試合が始まって数分後,相手チームの女の子がボールをけりました。ボールはまっすぐテッサのほうに向かってきます!
わたしにもやれるってところを見せてやる!テッサはそう思いました。ボールを取ろうと前に飛び出します。けれど,ボールはテッサのうでに当たって地面にバウンドしました。
「何一つまともにできないの?」とキャプテンが言いました。
テッサはくるりとふり返ってキャプテンに向き合いました。「分かったわよ!もうわたしと一緒にいなくていいから!」テッサは足をふみ鳴らして歩いていくと,ボールを強くけりました。
テッサの親友のションドラが,後ろから追いかけてきます。「ねぇ,大丈夫だよ」とションドラは言いました。「だれだってボールを落とすことあるし。」
「そう?だったら,何でだれもわたしをチームに入れたがらないの?」とテッサは言いました。
「たぶん,テッサがそんなふうにおこるからじゃないかな」とションドラは言います。ションドラはほかの子たちが待っている方へもどっていきました。
テッサは校庭のすみにあるベンチにこしかけました。目になみだがじわりとうかびます。また学校から親のところに電話が行くのはいやでした。前にも電話が来たことがあったのです。校長先生は,テッサがほかの子たちとうまくいっていないと言いました。
テッサは,なぜ自分がそんな行動をとってしまうのかが分かりませんでした。テッサは問題を起こしたくなんかなかったのです。ただ,時々とても頭にきたり,悲しくなったりして,それをおさえるのが大変なときがあるのです。
テッサはため息をつきました。「みんなとうまくやるなんてぜったいにできない」とテッサはひとりごとを言いました。
学校が終わると,テッサは急いで外に出ました。ママがむかえに来てくれています。ママは,テッサが今日あったことを話すのを聞いていました。
「だれもわたしをチームに選んでくれないんだ」とテッサは言いました。「わたしの味方は一人もいないみたい。」
「かわいそうに,テッサ」とママが言いました。「人はやさしくないこともあるのよ。でも,天のお父様はいつでもあなたの味方よ。あなたの家族もね。」ママはテッサをギュッとだきしめました。「さあ,帰ろうか。びっくりさせることがあるの。」
家に着くと,おばあちゃんがいました!テッサはおばあちゃんが来てくれるのが大好きでした。
「毎日どんなことがあるの,全部聞かせてちょうだい」とおばあちゃんは言いました。「学校はどう?」
テッサはうつむきました。「あんまり楽しくない。」
「ママから,つらいことがあったって聞いたわよ」とおばあちゃんが言います。「ママとパパが,あなたのためにいのっているのは知っている?」
「うん。」
「おじいちゃんとおばあちゃんも,あなたのためにいのっているって知っているわね。」
テッサはうなずきます。
「実はね,もっとたくさんの人たちが,あなたのためにいのっているのよ!」
「どういうこと?」テッサは聞きました。
「あなたの名前を,神殿のいのりの名簿に入れておいたの」とおばあちゃんが言いました。「そうすれば,たくさんの人たちがあなたのためにいのってくれるのよ。あなたのことを知らない人たちもね。」
「それはつまり,その人たちは,わたしと同じチームにいるみたいなこと?」とテッサは言いました。
「たしかに,そういう見方もできるわね」とおばあちゃんが言います。「天のお父様は,いつもあなたをおうえんしておられるわ!そして今では,あなたのためにいのっている人たちもね。」
「ありがとう,おばあちゃん!」テッサはおばあちゃんをギュッとだきしめました。
次に学校で気持ちがざわついたとき,テッサは目をとじて,深く息をすいました。自分のためにいのってくれている人たちのことを思い出します。すると,少し気持ちが楽になりました。それからテッサは頭を下げて,自分もいのりました。
天のお父様,ありがとうございますと,テッサはいのりました。わたしのことをおうえんしてくださってありがとうございます。