2000–2009
神の知識の鍵
2004年10月


神の知識の鍵

メルキゼデク神権の誓詞と聖約を守る人によってつかさどられる神の知識の鍵は,わたしたちが勝利者になるのを可能にしてくれるでしょう。

神の神権を持つ兄弟の皆さん,今晩再びわたしは座って皆さんに話します。お気づきのように,わたしは一時的な腰痛を患っています。腰痛を経験したことのある人なら,それがどのようなものか理解できるでしょう。まだ経験のない方は——じきに経験するでしょう。わたしの体調に関するそれ以外の説明は真実ではありません。

今晩わたしは,皆さんが御霊の力によってわたしの話を理解できるように心から祈りつつ,へりくだって話します。わたしたち神権者が学ぶべきことで,神の知識の鍵よりも大切なことは思い浮かびません。今晩わたしは,その鍵について話しましょう。

大神権は福音をつかさどり,「王国の奥義の鍵,すなわち神の知識の鍵」1 を有しています。神の知識の鍵とは何でしょうか。だれがそれを得られるのでしょうか。神権がなければ,神の完全な知識はあり得ません。預言者ジョセフ・スミスはこう言いました。「メルキゼデク神権……を通して,すべての知識と教義,救いの計画,あらゆる重要な事項が天から示されます。」2 ジョセフ・F・スミス大管長は次のように述べています。「ジョセフ・スミスが神の預言者であり,イエスが救い主であられることを心から断言できる人は,計り知れないほど貴重な宝を持っている。このことを知るとき,神を知り,あらゆる知識の鍵を手にするのである。」3

父祖アブラハムは,自分の経験を詳しく話したときに,この偉大な鍵の価値を認めていました。「……わたしは先祖の祝福と,わたしが聖任されるべきそれらの祝福をつかさどる権利とを得ようと努めた。わたしは自分自身が義に従う者であったので,また,多くの知識を持つ者となり,義に従うさらに大いなる者となることを望み,もっと多くの知識を持ち,……また数々の指示を受け,神の戒めを守ることを望んだので,先祖に属する権利を持つ正当な相続人,大祭司となった。」4

義にかなった者であって,もっと多くの知識を持ち「義に従うさらに大いなる者」となることを望む人であればだれでも,神権の権能の下で,神の偉大な知識を得ることができます。教義と聖約に記されているように,主はそれを行うための一つの明確な方法を告げておられます。「あなたは求めれば,啓示の上に啓示を,知識の上に知識を受けて,……喜びをもたらし永遠の命をもたらすものを知ることができるようになるであろう。」5

次のように尋ねる人がいるかもしれません。「どうすれば『義に従うさらに大いなる者』になれるのですか。」義人とは,福音の聖約を交わして守る人です。この神聖な契約6 は通常,個人と主との間に交わされます。時には伴侶のように,人が加わることもあります。バプテスマや神権の授与,神殿の祝福,結婚,親になることなど,最も神聖な約束と決意にかかわるものです。父祖アブラハムの祝福の多くは,すべての民に聖霊が注がれるときにもたらされます。7 聖霊を受けているふさわしい男女は,実際に「新たな創造物」8 となることができるのです。

この天の祝福を余すところなく受け,神の完全な知識に至るには,神権の誓詞と聖約9 に入って,それを守らなければなりません。マリオン・G・ロムニー副管長は,洞察に満ちた指摘をしています。

「人が永遠の命に向かって最大の進歩を遂げる唯一の道は——そのためにこの世は計画されたのですが——メルキゼデク神権を受けて,尊んで大いなるものとすることです。……神権における召しを尊んで大いなるものとするために要求される事柄をはっきりと心に留めておくことが,非常に大切になります。……少なくとも次の3つのことを行う必要があります。

1.福音の知識を得る。

2.福音の標準に従って生活する。

3.献身的に奉仕する。」10

神権者は各々,二つの聖約を交わします。第1の聖約は,忠実であってアロン神権とメルキゼデク神権を得ることです。11 アロン神権は,メルキゼデク神権のより大きな義務を受け,神権の誓詞と聖約の祝福を受けるために神権者を訓練し,備えます。アロン神権とメルキゼデク神権の両方を受けることは,主が忠実な息子たちのために備えられた完全な祝福を受けるのに不可欠です。この神聖な権能を持つ主の僕として交わす第2の聖約は,神への完全な信仰を抱き,忠実であって自分の召しを尊んで大いなるものとすることです。12

神権の誓詞と聖約の一部として,主は忠実な息子たちに約束をなさいました。「父がこれを破られることはあり得〔ない〕」13 約束です。第1に,神権者は「御霊により聖められてその体が更新され」ます。14 ヒンクレー大管長は,この偉大な模範であると思います。非常に驚くべき方法で体と心と霊が更新されてきました。第2に,彼らは「モーセの息子たち,またアロンの息子たちとなり,アブラハムの子孫となり」ます。15 第3に,「神の選民」となります。16 主の僕として,今日の地上においてこの聖なる業を推し進めるのです。第4に,「この神権を受けるすべての者」は,〔主を〕受け入れます。17第5に,主の僕を受け入れる者は,主を受け入れます。18 第6に,救い主を受け入れる者は,父なる神を受け入れます。19第7に,彼らはまた,父の王国を受けます。20 第8に,「父が持っておられるすべてが……与えられ」ます。21「父が持っておられるすべて」を受ける者は,あらゆるものを受けるのです。

アロン神権者の若い男性の皆さんは,大いなる権威と責任を与えられています。監督の指示の下に,アロン神権者は,少なくとも二つの,贖罪に直接かかわる儀式を行います。その一つは聖餐です。すなわち,わたしたちの罪のために流された救い主の血と,贖いとして与えられた主の体を記念するものです。22もう一つはバプテスマです。祭司は罪の赦しのためのバプテスマを執行する権能を持っています。アロン神権は実在する力です。ある若い男性が,この力を行使したときの経験について次のように書いています。

「わたしはメルキゼデク神権者がほとんどいないワードに出席していました。でも,霊的な面で少しも劣っていませんでした。むしろ会員の多くは,これまでで最も力強く神権の力が現れるのを目にしていました。

その力の中心は祭司でした。彼らは生まれて初めて,祭司のすべての義務を果たし,ワードの会員の必要に応じて助けを与えていました。また,ほんとうの意味でホームティーチングを行うために,すなわち社交目的で訪問する長老に黙ってついて行くのではなく,兄弟姉妹に祝福を与えるために訪問していたのです。

この中の4人の祭司は,以前はまったく異なる生活をしていました。……彼らはセミナリーの教師をすべて2,3か月で解任に追い込みました。またスカウト活動では,美しい自然を台なしにしました。しかし,必要とされたとき,信頼されて重要な使命が与えられたとき,神権の奉仕の業において最も輝きを放つ存在になったのです。

その秘密は,監督がアロン神権者たちに,天使の現れを受けるような人物に成長してほしいと要求したことでした。彼らはその期待にこたえて,助けを必要とする人に援助の手を差し伸べ,励ましを必要とする人を力づけました。こうしてワードの会員たちが力づけられただけでなく,祭司定員会の会員自身も成長したのです。ワード全体に一致の精神が宿り,会員一人一人が,心と思いを一つにする民が受ける祝福を味わい始めました。不可解なことは何一つありません。アロン神権を正しく行使しただけなのです。」23

ゴードン・B・ヒンクレー大管長が最近,アロン神権者の皆さんに話したように,皆さんはふさわしく生活するならば「仕える天使の守り」によって祝福されることが可能であり,また,神権にふさわしく生活するという大きな責任も受けています。24

アブラハムの子孫になるとは,どういう意味でしょうか。聖文では,文字どおりの子孫であることよりも深い意味があります。偉大な族長アブラハムと聖約を交わされた主は,すべての国民がアブラハムを通して祝福を受けると告げられました。25 すべての男女がアブラハムの祝福を求めることができます。福音を受け入れてバプテスマを受け,神殿結婚をして聖約を忠実に守り,地上のすべての国に福音を宣べ伝える業を支える人々は,アブラハムの子孫になって,約束された祝福を受け継ぐのです。

「すべての国民にこの務めと神権を携えて行く」26 ための権能を得るには,メルキゼデク神権とその祝福を受けなければなりません。そして,忠実さを通して,完全な永遠の命を受け継ぐ者になるのです。なぜなら,パウロが「もしキリストのものであるなら,あなたがたはアブラハムの子孫であり,約束による相続人なのである」27 と述べたとおりだからです。アブラハムの子孫として,わたしたちには幾つかの義務があります。「アブラハムのわざ」28 を行うことによって,キリストのみもとに来るように命じられています。この「わざ」には次のことが含まれます。神に従順であること,神権や神殿の儀式と聖約を受けて守ること,福音を宣べ伝えること,家族を築き,子供たちを教えること,最後まで忠実であること,などです。

主がアブラハムに与えた約束の中で子孫を表すのに“seed”という言葉を使われたのは興味深いことです〔訳注——英語の“seed”は「子孫」と「種」の両方の意味を持つ〕。“seed”には“posterity”〔訳注——英語で「子孫」を表す一般的な単語〕よりも深い意味があります。なぜならアブラハムの聖約の祝福が,種が増えるような勢いで「すべての国民に」29 もたらされることを意味するからです。主はアブラハムに,子孫が「海辺の砂」や「星のように数限りなく続く」と約束されました。30

義にかなうアブラハムの子孫は,イエス・キリストの永遠の家族に養子縁組される特権に浴します。これには,神殿で永遠の聖約を受け,もしふさわしければ,キリストの永遠の家族の一員となり昇栄するという権利が含まれています。31 その特権にはまた,「救いの祝福すなわち永遠の命の祝福」32 も含まれています。

族長の位はアブラハムからイサクへ,そしてヤコブへと引き継がれています。神権の系譜を通して,わたしたちの時代にまで続いています。世代を通じて,祝福と約束が父親から忠実な息子へと伝えられてきたのです。現代における同様の例として,七十人のジョン・B・ディクソン長老の経験を採り上げましょう。彼は次のように思い出を語っています。

「わたしは伝道に出る時期になったとき,主に仕えるのがうれしくてたまりませんでした。ところが出かける直前になって,骨の癌にかかっていることが分かりました。伝道に出るまで命がもつかどうかさえ分かりませんでした。わたしは,主がわたしに伝道に出ることを望んでおられるなら道を備えてくださる,と信じていました。父は祝福を授けてくれました。その中で,わたしはメキシコで伝道し,生涯教会で奉仕し,家族を持つと言われました。右腕はひじの上で切断しなければなりませんでしたが,命は助かりました。そして与えられた約束はすべて成就しました。

腕を失うのは大変な苦しみだと思う人がいるかもしれませんが,わたしの人生では最も大きな祝福の一つになりました。問題があっても立ち向かっていくことが,とても大切であることを学びました。」

ディクソン長老は右利きでしたが,何でも左手でしなければならなくなりました。ネクタイを結べるようになるのにも苦労しました。こう話しています。「ある日曜日の朝,自分の部屋でネクタイを手にしたとき,どうやって結べばいいんだろう,と悩みました。クリップで留めるだけのネクタイにしようかと考えました。また,母に助けを求めようかと思いました。しかし,ネクタイを結んでもらうためだけに,母を伝道に連れて行くことはできません。自分で結べるようになるしかないと決心しました。そしてついに,歯を使うことで問題を解決しました。今でも,何千回と結んできたその方法で結んでいます。」33

この先の不確実な時代において,わたしたちは神の聖徒の人間性に求められるものをすべて詳しく知っているわけではありません。日々の義にかなった生活はますます難しくなるでしょう。それに加えて,神権者は家族を守り養ううえで,特別な試練に遭遇するに違いありません。ある世界的な指導者が最近指摘したように「だれもが同じ危険にさらされるでしょう。今日,殺人を脅迫の手段としている凶悪組織や国籍のない過激派集団は,文明国が大切にする原則や人命の尊厳を軽蔑することしか知らないのです。」34

すべての人が試練に直面すると予想されます。しかし,偉大な永遠の約束は,義に踏みとどまる人々に及びます。主は次のように約束しておられます。「あらゆる点で引き続き忠実である者は,心が疲れることも暗くなることもなく,体や手足や関節が疲れることもない。……また,これらの者は飢えることも,渇くこともない。」35 わたしは主の教会とその会員の将来について楽観的ですが,わたしたちは義に踏みとどまり「あらゆる点で忠実で」なければなりません。36 メルキゼデク神権の誓詞と聖約を守る人によってつかさどられる神の知識の鍵は,わたしたちが神の息子になるのを可能にしてくれるでしょう。そのように行えるよう,へりくだり,イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。

  1. 教義と聖約84:19

  2. Teachings of the Prophet Joseph Smith,ジョセフ・フィールディング・スミス選(1976年),166-167

  3. ブライアン・H・スタイ編,Collected Discourses Delivered by President Wilford Woodruff, His Two Counselors,the Twelve Apostles, and Others,全5巻(1987-1992年),第2巻,355-356

  4. アブラハム1:2

  5. 教義と聖約42:61

  6. カーロス・E・エイシー「神権の誓詞と誓約」『聖徒の道』1 9 8 6 年1 月号,45-47参照

  7. 3ニーファイ20:25-29参照

  8. Teachings of the Prophet Joseph Smith,149-150参照

  9. 教義と聖約84:33-42参照

  10. “The Oath and Covenant Which Belongeth to the Priesthood,”Improvement Era, 1962年6月号,416

  11. 教義と聖約84:33参照

  12. 教義と聖約84:33参照

  13. 教義と聖約84:40

  14. 教義と聖約84:33

  15. 教義と聖約84:34

  16. 教義と聖約84:34

  17. 教義と聖約84:35

  18. 教義と聖約84:36参照

  19. 教義と聖約84:37参照

  20. 教義と聖約84:38参照

  21. 教義と聖約84:38参照

  22. マタイ26:26-28参照;ジョセフ・スミス訳マタイ26:22-24

  23. ビクター・L・ブラウン「アロン神権を展望して」『聖徒の道』1976年11月号,98-99で引用

  24. ジェーソン・スウェンセン,“Priesthood Restored Directly from Heaven,”Church News,2004年5月22日付,3で引用

  25. 創世18:18;ガラテヤ3:8;3ニーファイ20:25,29参照

  26. アブラハム2:9

  27. ガラテヤ3:29

  28. ヨハネ8:39。ヨハネ8:32-50も参照

  29. アブラハム2:9

  30. 教義と聖約132:30

  31. ガラテヤ3:29参照

  32. アブラハム2:11

  33. 「小さなお友だちへ」『せいとのみち』1996年6月号,6-7

  34. Colin Powell,“Of Memory and Our Democracy,”USA Weekend,2004年5月2日付,インターネット,http://www.usaweekend.com

  35. 教義と聖約84:80

  36. 教義と聖約84:80

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