2016
「一人の聖見者を立てよう」
2016年11月


「一人の聖見者を立てよう」

ジョセフは預言者でした。ですから,わたしたちには天への窓が与えられているだけでなく,永遠への道が開かれているのです。

モロナイは初めてジョセフ・スミスを訪れたとき,ジョセフの「名が良くも悪くもすべての国民,部族,国語の民の中で覚えられる」と警告しました。1わたしたちはこの預言の成就を目にしています。善と悪の戦いの中で,預言者ジョセフ・スミスを通してなされた福音の回復は,彼に従う信者を鼓舞すると同時に,シオンの大義とジョセフ個人に対して激しく戦った敵対者をあおり立てました。こうした戦いは今に始まったことではありません。それは,年若いジョセフが聖なる森に足を踏み入れた直後に始まり,インターネット上で知名度が上がった今日でも続いています。

主はジョセフ・スミス個人にはっきりとおっしゃいました。

「地の果ての人々があなたの名を尋ね,愚かな者はあなたをあざ笑い,地獄はあなたに激怒するであろう。

一方,心の清い者と,知恵のある者と,高潔な者と,徳高い者は,絶えずあなたの手から助言と権能と祝福を求めるであろう。」2

今日わたしは,回復の預言者であるジョセフ・スミス・ジュニアの神聖な使命をよりよく理解しようとしているすべての人々に証します。

主は常に預言者を通して業を進めてこられたのですから,預言者,聖見者,啓示者としてのジョセフの使命を証することに臆する必要はありません。3ジョセフ・スミスを通して回復された真理のおかげで,わたしたちは,天の御父と救い主イエス・キリストについてはるかに多くのことを知っているのです。わたしたちは,御二方の神聖な属性,御二方の関係,そしてわたしたちとの関係について知っています。また,わたしたちが御二方のもとに帰ることを可能にする偉大な贖いの計画について知っています。

ジョセフについてブリガム・ヤング大管長は次のように明言しました。「地の基が置かれるはるか以前に開かれた永遠の会議において,〔ジョセフ・スミス〕は,この世界の最後の神権時代に神の言葉を人々にもたらし,神の御子の神権のすべての鍵と力を受ける人となるよう定められました。主は彼のうえに……目を注がれました。……〔彼〕はこの最後の神権時代を管理するよう永遠に予任されていたのです。」4

この偉大な業に取り組む備えとして,ジョセフ・スミスは,人生にはつきものの多くの責任や試練を経験していた,愛に満ちた家庭に生まれました。成長するにつれ,ジョセフの,神に対する気持ちは「深く,またしばしば痛烈」5なものでしたが,当時の説教者が教える宗教上の矛盾する考えに混乱していました。幸いにも,若いジョセフは疑問を持ったからといって,それが自らの信仰の妨げになることはありませんでした。彼は聖書に答えを求め,この勧めを見つけました。「あなたがたのうち,知恵に不足している者があれば,その人は,とがめもせずに惜しみなくすべての人に与える神に,願い求めるがよい。そうすれば,与えられるであろう。」6

ジョセフはこう振り返っています。「この聖句が,このとき,かつて人の心に力を与えたいかなる聖句にも勝って,わたしの心に力強く迫ってきたのであった。それはわたしの心の隅々に大きな力で入り込んで来るように思われた。……わたしはこの言葉を再三再四思い巡らした。」7

純粋な信仰をもって,ジョセフはこの霊的な気持ちに従って行動しました。人目につかない場所を見つけてひざまずき,「心の願いを神に告げ始め〔まし〕た。」8そこで起こったことを伝えるジョセフの描写には大きな力があります。

「わたしは自分の真上に,太陽の輝きにも勝って輝いている光の柱を見た。そして,その光の柱は次第に降りて来て,光はついにわたしに降り注いだ。

そして,その光がわたしの上にとどまったとき,わたしは筆紙に尽くし難い輝きと栄光を持つ二人の御方がわたしの上の空中に立っておられるのを見た。すると,そのうちの御一方がわたしに語りかけ,わたしの名を呼び,別の御方を指して,『これはわたしの愛する子である。彼に聞きなさい』と言われた。」9

ジョセフ・スミスは永遠の父なる神と,世の救い主であり贖い主であられるイエス・キリストにまみえたのです。これがジョセフ・スミスの最初の示現でした。それから数年後,ジョセフは神の賜物と力によりモルモン書を翻訳しました。ほかにも多くの天の使いが彼のもとを訪れ,何世紀も失われていた真理と権能を回復しました。ジョセフ・スミスに対する神からのこうしたメッセージは天の窓を開き,わたしたちの目に永遠の栄光が開かれました。ジョセフの生涯は,知恵に不足している者があるならば,信仰をもって神に願い求めることができ,答えを得られるという証です。答えは天の使いから得られることもありますが,多くの場合,聖霊の力によってもたらされます。聖霊は思いと心に霊感を与えることを通してわたしたちに語りかけられます。10聖霊を通してわたしたちは,「すべてのことの真理を知る」のです。11

預言者ジョセフ・スミスに対する証が芽生えるのは,多くの場合,わたしたちがモルモン書を読むときです。わたしが初めてモルモン書を最初から最後まで読み通したのは,若いころ早朝セミナリーの生徒だったときでした。少年らしい活発な想像力を働かせて,自分がまるでジョセフ・スミスになり,初めてモルモン書にある真理を見つけるかのように読んでみようと決心しました。このやり方はわたしの人生に大きな影響をもたらし,わたしは今でもモルモン書をこの方法で読んでいます。こうすることで,預言者ジョセフに対して,またこの貴重な本に含まれる回復された真理に対して,感謝の気持ちが非常に深まることが何度もあります。

例えば,罪の赦しのためのバプテスマについての箇所を翻訳していたときのジョセフの気持ちを想像してみてください。どの既存の教会にも加わってはならないと言われていたジョセフは,当然,この救いの儀式とは何だろうと考えました。疑問を持ったことでジョセフは再び祈りました。その祈りはバプテスマのヨハネの訪れにつながり,ヨハネはアロン神権と,バプテスマを施す権能を回復しました。12

あるいは,イエス・キリストが西半球の人々を訪れられたことを初めて知ったとき,ジョセフはどう感じたのでしょうか。イエスがその人々を教え,彼らのために祈り,病人を癒し,子供たちを祝福し,神権の権能を授け,彼らに聖餐を施されたことをどう思ったのでしょう。13そのときジョセフは理解していなかったかもしれませんが,キリストの古代の教会の儀式と組織について学んだことは,後に,地上に同じ教会を回復するうえで主の助け手となるための準備だったのです。

モルモン書の翻訳中,ジョセフと妻のエマは,幼い息子の死を悲しみました。当時の説教者たちが口をそろえて教えていたのは,バプテスマを受けずに死んだ子供は永遠の罪の定めを受けるということでした。これを心に留め,預言者モルモンの次の言葉を翻訳していたジョセフの気持ちを想像してください。「幼い子供たちは悔い改めもバプテスマも必要ない。……幼い子供たちは,世の初めからキリストによって生きている〔からである〕。」14

モルモン書の中で若いジョセフが最も驚いた箇所は,ニーファイ第二書の第3章だったかもしれません。この章には,末日に主によって立てられ,父親の名前にちなんでジョセフと名付けられる「えり抜きの聖見者」についての古代の預言が含まれています。この未来の預言者は,「大いに尊ばれ」,彼の同胞のために一つの「大いに価値のある」業をすることとなるのです。彼は「モーセのように偉大」な者となり,「〔神〕の言葉を伝える力」を与えられます。15この預言がまさに自分自身のことだと知ったとき,ジョセフ・スミスがどう感じたか考えてみてください。彼は歴史を翻訳していただけではなかったのです。彼が翻訳していたのは末日に関する示現,つまり,イエス・キリストの福音の奇跡的な回復の示現でした。しかも,ジョセフ自身がその成就を助けることになるのです。

それから200年近くたった現在,この預言がどう実現したかは容易に知ることができます。わたしたちは,ジョセフが主の預言者として果たした多くの偉業について知っています。しかし,忘れないでください。ジョセフがこの預言を翻訳していたとき,彼は預言者たちの預言をほとんど成就してはいませんでした。彼はまだ,20代前半の青年でした。教会はまだ組織されておらず,ワードも支部もなく,宣教師もおらず,神殿もありませんでした。ジョセフ・スミスについて聞いたことのある人はほとんどなく,聞いたことのある人の中には,彼に対して積極的に敵対した人たちがいました。では,ジョセフへの敵対があったにもかかわらず,主がその僕ジョセフによってなされた偉大な業を見てみましょう。この預言の成就は,ジョセフ・スミスの預言者としての召しを雄弁に証明してはいないでしょうか。

ジョセフ・スミスに対する自分の証に疑問を持っている人や,ジョセフの生涯と働きについて誤った,人を惑わす,あるいは根拠のない情報のために悩んでいる人に申し上げます。回復の預言者であるジョセフ・スミスの驚くべき使命によってもたらされた多くの祝福,すなわち,「実」について考えてください。

ジョセフは預言者でした。ですから,啓示と預言者はもう過去のものではありません。示現,癒し,天使の働きといった「奇跡の日」は終わっていないのです。16

ジョセフは預言者でした。ですから,だれでも,バプテスマ,聖霊の賜物,聖餐を含む,聖なる神権の力と祝福を得ることができます。

ジョセフは預言者でした。ですから,わたしたちは,わたしたちを神と結び,神の民とし,わたしたちに「神性の力」を現し,いつの日か「神,すなわち父の御顔を見て,なお生きている」ことを可能とする神殿の祝福と儀式を受けることができます。17

ジョセフは預言者でした。ですから,わたしたちは,結婚と家族が,わたしたちの幸福のために備えられた神の計画に不可欠であると知っています。わたしたちは,神殿の儀式と聖約を通して,大切な家族の関係が永遠に存続できると知っています。

ジョセフは預言者でした。ですから,わたしたちには天への窓が与えられているだけでなく,永遠への道が開かれているのです。わたしたちは,「唯一の,まことの神……と,〔神が〕つかわされたイエス・キリスト」を知ることができます。18永遠の命を自分のものとすることができます。

ジョセフは預言者でした。ですから何よりも,イエス・キリストが神の御子であり,世の救い主であられるという証と証言が多く与えられています。わたしたちには,イエス・キリストの特別な証人の途切れることない鎖があります。その中に,今日の預言者,トーマス・S・モンソン大管長,大管長会顧問,そして,十二使徒定員会の会員がいます。彼らの証に,わたしもへりくだり,確固とした証を付け加えます。イエス・キリストは生きておられ,御自分の教会を導いておられます。ジョセフ・スミスは過去,現在にわたり回復の預言者です。神の神権と権能は再び地上に存在しています。わたしたちが恐れることなく,主のこのすばらしい預言者,聖見者,啓示者への証と感謝の気持ちを表明できるよう祈っています。イエス・キリストの聖なる御名により,アーメン。