依存症
付録


「付録」『支援ガイド:立ち直ろうとする人の配偶者と家族への助け』

「付録」『支援ガイド:立ち直ろうとする人の配偶者と家族への助け』

付録

立ち直りを支援する

参加者と家族のための支援の源

ほかの人々から愛と助けを受けることは,破壊的な習慣を克服するのに不可欠です。人とのつながりは,あなたに必要な養いを提供するだけでなく,あなたが神の子として愛される資格があることを思い出させてくれます。あなたが霊の兄弟姉妹に支援を求めるならば,彼らはあなたと交わることでキリストのような特質を養う機会を得ることができます。そうするときに,彼らは聖文に記されている「弱い者を助け,垂れている手を上げ,弱くなったひざを強めなさい」という救い主の訓戒に従うのです(教義と聖約81:5)。

立ち直りの12のステップを活用して,ほかの人に支援を求めると同時に,次に挙げる支援の源から助けを得ることができます:

  1. 天の御父,イエス・キリスト,そして聖霊 天の御父,イエス・キリスト,そして聖霊は,最も偉大な支援の源です。イエス・キリストとその贖いを通して,立ち直り,癒しを受けることができます。モルモン書の中で預言者アルマは次のように述べています。キリストは,「肉において御自分の心が憐れみで満たされるように,また御自分の民を彼らの弱さに応じてどのように救うかを肉において知ることができるように,彼らの弱さを御自分に受けられる。」(アルマ7:12)謙遜な心で天の御父と御子イエス・キリストのもとへ行くとき,あなたは助けられ,養われていることを実感するでしょう。救い主の助けを見逃さないようにすることが重要です。救い主はこう教えられました。 「わたしは道であり,真理であり,命である。」(ヨハネ14:6)聖霊は,前進し続けることができるように,慰めと平和,霊的な強さを与えてくれます。

  2. 家族 家族は支援の源です。家族は,愛を示し受容することで,また自分の生活に同じ12のステップと福音の原則を取り入れることで,支援することができます。すべての人が,『依存症立ち直りプログラム—依存症からの立ち直りと癒しのためのガイド』および『支援ガイド:立ち直ろうとする人の配偶者と家族への助け』の中で教えられている福音の原則を学び,生活に取り入れることで助けを得ることができます。注:参加者は,自分の個人的な棚卸し表を,身近な家族や,その内容を聞いて傷つく可能性のある人に,開示しないことを決めてもよいでしょう。家族全員が感情的に快く接する立場にいるわけではないでしょうが,そうできるならば,その人は祝福を受けるでしょう。

  3. 友達 自分の問題を話す相手か確信を持てなくても,自分の苦しみを打ち明けるならば,友達はあなたを愛し助けてくれる存在です。友達は勇気を持って,あなたが変わる必要があるときにはそれが分かるように助け,立ち直りが進むように後押しすることができます。友達が心を配って苦悩するあなたを支えるとき,あなたは自分に価値があることを思い出すことができます。

  4. 宗務指導者 宗務指導者は,立ち直りの過程で重要な支援を行うことができます。決して,神権の指導力を忘れたり,過小評価したりしないでください。「罪を赦すことがおできになるのは主だけですが,これらの神権指導者〔ビショップ,支部会長,ステーク会長,および伝道部会長〕は悔い改め〔と癒し〕の過程で重要な役割を果たします。」(『真理を守る—福音の参考資料』65-66参照)しかし,支援がステークやワードの神権指導者に限られるわけではありません。献身的な定員会および扶助協会の指導者,ミニスタリングブラザーとシスターも導きと養いを与えることができます。ジョセフ・F・スミス大管長はこのように述べました。「適切な方法で行われるならば,人々を訪問する教師の務めほど神聖で必要な務めはほかにないでしょう。教師は人々とともに祈り,彼らが徳高く誉れを持ち,一つとなり,愛し,シオンの大義を信じ忠実であるように勧告します。」(in Conference Report, Apr. 1915, 140)L・トム・ペリー長老もこのように教えています。「ホームティチャーは,家庭を見守り強める防衛軍の最前線に位置しています。」 (“Home Teaching—a Sacred Calling,” Ensign, Nov. 1978, 70

  5. 立ち直り集会 立ち直り集会はグループの中で支援を提供します。参加者には,LDSファミリーサービスの宣教師やボランティア,立ち直りを経験したことのある進行係,立ち直りの原則を実践している人々が含まれています。この集会で,参加者は,ほかの人々がどのように立ち直りの原則を実践しているかを聞くことができます。個人の立ち直りの経験を分かち合うことは,あなたが立ち直りを目指し,立ち直ることができるという希望を持つのに役立ちます。

  6. 専門のカウンセラー 自己破壊的な選択をする問題がある人々にとって,カウンセラーはしばしば洞察と見通しを与えてくれる源になります。教会員が専門家の支援を求める場合は,福音の原則を支持する人を選ぶ必要があります。

  7. 支援者 支援者とは,あなたが平安を得ようと奮闘しているときに,ともに歩ける人々です。特に,立ち直りの12のステップを経験している支援者は,現実否認やその他の問題を克服してきたので,大きな助けとなります。その経験のおかげで,支援者は通常,依存者の陥りやすい不正直を見抜き,彼らが直面するその他の問題を理解することができるのです。支援者は,立ち直ろうとしている人々が「自分たちの生活を客観的に見られるように,そして自分たちの責任を誇張も,過小評価もしないように助け」ます。(『依存症立ち直りプログラム—依存症からの立ち直りと癒しのためのガイド』 29)支援者自身が依存的な行為を克服する取り組みをしてきた人であれば,支援する側も受ける側も,自分の立ち直りを進歩させるという祝福を受けます。支援を与えることも受けることも,依存症立ち直りプログラムに参加することの利点であり,再発防止の助けになります。

支援する人々の重要性

依存的な行為から立ち直るためには,支援が不可欠であり,信頼できる支援者がいることは,その支援の重要な部分となります。ゴードン・B・ヒンクレー大管長(1910-2008年)は,人生のどのような場面でも,だれか頼れる人がいることの大切さをよく強調しました。ヒンクレー大管長は,教会の中に「常に頼ることができ,皆さんを支えてくれる教会の友人,皆さんの疑問に答え,問題を理解してくれる教会の友人」を持つように勧告しました(「完全な希望の輝き―新会員の皆さんへ」『リアホナ』2006年10月号,4)。依存的な行為から立ち直ろうとする人には,特にそのような友人が必要です。また,ヒンクレー大管長はこのような勧告を付け加えています。「皆さんに言いたいことは,教会員の中に友達を見つけることです。同じ仲間となって,互いに強め合いましょう。そうすれば,誘惑の時が来ても,必要なときにあなたを祝福し強めてくれる,頼れる人がだれかいるはずです。それがこの教会がある目的なのです。自分が弱くなったときに,自分の足で高く,真っすぐに,真実で,凜として立てるように,互いに助け合うことができるのです。」 (address given at the regional conference for Eugene, Oregon, Sept. 15, 1996; in “Excerpts from Recent Addresses of President Gordon B. Hinckley,” Ensign, July 1997, 73)トーマス・S・モンソン大管長(1927-2018年)も同じ教えを説いています。「わたしたちは互いに強め合い,気づかれていない人に気づく能力があります。わたしたちに見る目と,聞く耳と,人の気持ちを理解する心があれば,自分が担当する人々に手を差し伸べて,助けることができます。」(「主に仕える召し」『リアホナ』2001年1月号,58)

立ち直る生活をするには,絶対的な正直さが求められます。現実否認や孤立の兆候があれば,それは誤った選択の特徴です。他者からの支援や見通しが得られない場合,このような状況に陥りやすくなります。そうなると,立ち直りの進歩が安定して持続できないため,成し遂げるのが難しくなってしまいます。できるだけ早期に,適切で効果的な支援者の助けをリストアップすることが重要です。「へりくだり,正直に,神と周囲の人に助けを求めることによって,あなたも〔救い主の助けにより〕依存症を克服することができます。」(『依存症立ち直りプログラム—依存症からの立ち直りと癒しのためのガイド』 vi)

支援者を選ぶ

教会のプログラムでは,もう一方の12ステップ立ち直りプログラムのように,特別な支援者が割り当てられるわけではありません。だれにいつ支援を求めるかを決めるのは個人に任せられています。最初は,家族や友人に助けを求めるのは困難かもしれません。まず,立ち直り集会から支援を求められそうな頼れる人を見つける方が簡単かもしれません。一般的に,支援者が多ければ多いほど,立ち直りはうまくいきます。自分の中で支援者を特定しても,その人に助けを求めるのは気が引ける怖いことかもしれません。しかし,やってみれば,感じる愛と受容の大きさに驚くかもしれません。ほかの人とのつながりが多ければ多いほど,愛を受ける機会が増えて,あなたは愛される価値があることを理解するようになるでしょう。

支援者を選ぶことについて,『依存症立ち直りプログラム—依存症からの立ち直りと癒しのガイド』は次のように注意を促しています。「不適切な指示を出したり,誤った情報を提供したり,秘密を漏らしたりする恐れがある人に内密情報を話すべきではありません。〔支援者は〕言葉の面でも,行いの面でも十分に信頼するに足る人でなければなりません。」(30)最も効果的な支援者は,教会に全面的に活発で,このような依存行為を克服するために12ステップの原則を一つ一つ実際に行ってきた人々です。サポートを得られるよう努める中で大事なことは,依存を克服するために自分の弱点を検証し,告白し,様々なリソース,特に救い主イエス・キリストとその贖いの力を通して克服してきた人を見つけることです。これら一連の行いは,安定した長続きする立ち直りを目指すというその人の決意を表しています。「人が罪を悔い改めたかどうかは,これによって分かる。すなわち,見よ,彼はそれを告白し,そしてそれを捨てる。」(教義と聖約58:43)

自分の弱さを克服してきた支援者なら,ほかの人が歩んでいる情動の小道に共感することができます。それ以上に,このプログラムを行ってきた人や,終了した人は,「生活を変えるための霊的な手がかりを求めて模索している……依存症者……に伝えるべきメッセージを持っています。〔彼らは〕ほかの人々に奉仕することを通して,このメッセージを最も効果的に伝えることができます。」(『依存症立ち直りプログラム—依存症からの立ち直りと癒しのガイド』71)すでに立ち直った人々は,苦闘している人の経験を理解することができ,行動の模範を示し,参加者が立ち直りのツールを使えるように助けることができます。

同性(あなたの親族でないならば)の支援する人々を選んでください。立ち直りを始めるときに,身体的にも,感情的にも,霊的にも不安定な状態になることがあります。支援者と不適切な関係にならないように注意してください。

効果的な支援者になるには

  1. 個人の立ち直りに積極的にかかわる 支援者としての提案は,あなたが福音の原則を研究し,理解し,実践する度合いに応じて効果的になります。日々,生まれながらの人を捨てて,贖罪の力を受けて聖徒となるならば(モーサヤ3:19参照),あなたの模範は,導きと強さを求めてくる人々にとって,力強いものとなるでしょう。救い主とその贖いの力を求めるあなたの姿は,プログラムの参加者と分かち合うどんな助言よりも,重要になるかもしれません。

  2. 謙遜になる 『依存症立ち直りプログラム—依存症からの立ち直りと癒しのガイド』は,こう説明しています。「うぬぼれやどんな優越感も入り込む余地はないはずです。神の恵みによって,あなた〔自身〕がどのような状況から,どのようにして救い出されたかを決して忘れないでください。」(71-72)またこのようにも教えています。「人々に奉仕するときに,福音の原則と身につけた習慣に心を注ぐなら,謙遜であり続けることができるでしょう。」(71

  3. ほかの人々の選択の自由を尊重する 支援者として,「どのような形であれ助言を与えたり,〔ほかの人々に〕何か手はずを整えたりはしないでください。ただあなたの人生に祝福をもたらしたこのプログラムや霊的な原則について情報を与えるだけでよいのです。」(『依存症立ち直りプログラム—依存症からの立ち直りと癒しのガイド』71)助けとなる原則と実践方法を人々に知らせて,後はただ彼らが自分で決断するのに任せればよいのです。そうすることで,神聖な選択の自由を行使する彼らにあなたの敬意を表すのです。

  4. プログラム以外の個人的な義務も尊重する 支援者になることに同意することは,人々があなたの時間やリソースを無制限に利用できることを意味するわけではありません。家族や教会,仕事に対する義務,自分の時間を持つなどの個人の目標を大切にすることで,健康的に境界線を定める大切さを,模範を通して示すことができます。

  5. 無私の奉仕を行う 無私の奉仕には,見返りを期待せずに与えることが求められます。仕える人々から賞賛や感心,忠誠心,その他の感情的な報いを求めないようにするべきです。「特定の結果を期待せずに,惜しみなく与えるよう心がけてください。」(『依存症立ち直りプログラム—依存症からの立ち直りと癒しのガイド』71

  6. 忍耐強くある 人には,それぞれ固有の立ち直りの経路があります。あなたが支援する人は,まだ前進する準備ができていないかもしれません。不健康な行動を繰り返すだけで,立ち直りの原則の実践がなかなか進まないかもしれません。「このような原則を研究し,実践する備えができるまで,わたしたちの多くが,『どん底まで落ちる』経験をしなければならなかったことを」忘れないでください。」(『依存症立ち直りプログラム—依存症からの立ち直りと癒しのガイド』71

  7. 穏やかに,しかしきっぱりと勧める 効果的な支援は,「説得により,寛容により,温厚と柔和により,また偽りのない愛により,優しさと純粋な知識に」よって行われます。「これらは,偽善もなく,偽りもなしに,心を大いに広げるもの」です(教義と聖約121:41-42)。

  8. 自分自身よりも神を先に置く 支援を提供するときは常に神に頼ることを忘れないでください。また,あなたが支援する人々にもそうするように勧めてください。「ほかのだれかのために何かをしたり,希望と立ち直りのメッセージを伝えたりするとき,相手があなたに過剰に頼ることがないようにしてください。あなたの責任は,ほかの人々が天の御父と救い主に頼り,導きと力を求めるよう励ますことです。」(『依存症立ち直りプログラム—依存症からの立ち直りと癒しのガイド』71)あなたの役割は,支援する人々を助けるために自分が経験した信仰と希望を分かち合うことです。そして,12のステップを行う過程で彼らが神の恵みを受けて,愛されている,支援されていると感じるように助けることです。

  9. よく祈る 支援をするときは毎回,天の御父に助けを求め,参加者の現在の必要に最も合った原則は12のステップのどの原則なのかを判断します。「祈りの気持ちで奉仕する方法について考え,いつも聖霊の導きを求めてください。心から望むなら,自分が学んだ霊的な原則を分かち合う多くの機会が与えられるでしょう。」(『依存症立ち直りプログラム—依存症からの立ち直りと癒しのガイド』71

  10. 真実を証する 自分の弱さを克服するために,福音がどのように助けとなったかについて,感じたことを伝えてください。「あなたが彼らの気持ちを理解できることを知らせるために,あなたの経験について幾らか話してください。」(『依存症立ち直りプログラム—依存症からの立ち直りと癒しのガイド』71)救い主とその癒しの力についてあなたの証を述べてもよいでしょう。「そのメッセージとは,神は,これまで常にそうであったように,今も奇跡の神であられるということです〔モロナイ7:29参照〕。あなたの人生がそのことを証明しています。あなたはイエス・キリストの贖いを通して新しい人として生まれ変わろうとしているからです。……主の憐れみと恵みについて自分の証を分かち合うことは,あなたにできる最も大切な奉仕の一つです。」(『依存症立ち直りプログラム—依存症からの立ち直りと癒しのガイド』71

  11. 秘密を守る あなたには,人々のプライバシーを守る責任があります。匿名性と内密性は依存症立ち直プログラムの中核となる原則であり,それが信頼を築きます。