1 さて,ニーファイ人に向かって進んだレーマン人は,ニーファイ人を攻めて,彼らを滅ぼそうと何度も戦闘を繰り返した後,彼らを滅ぼそうとしても無駄であることを知って,ニーファイの地へ引き揚げた。
2 そして,アマレカイ人は仲間を失ったことで非常に怒っていたので,ニーファイ人に報復する機会が得られなくなったのを知ると,民を扇動して,同胞であるアンタイ・ニーファイ・リーハイの民に対して怒りを抱かせた。そこで彼らは,再びアンタイ・ニーファイ・リーハイの民を殺し始めた。
3 ところがこの民は,またもや武器を取ることを拒み,相手の思いのままに殺されるに任せた。
4 アンモンと彼の同僚たちは,自分たちが非常に深く愛するとともに,また自分たちを非常に深く愛してくれた民の中でこのような殺害が行われているのを見て,すなわち,アンモンと彼の同僚たちは,永遠の滅びからその民を救うために神より遣わされた天使であるかのような扱いを受けていたので,このようなひどい殺害が行われているのを見て哀れみの情に動かされ,王に言った。
5 「この主の民を集めて,わたしたちの同胞であるニーファイ人のいるゼラヘムラの地へ下って行き,滅ぼされることのないように敵の手から逃れましょう。」
6 しかし,王は彼らに,「見よ,我らはこれまで,ニーファイ人に対して殺人と罪を度々犯してきたので,ニーファイ人は我らを殺すであろう」と答えた。
7 そこでアンモンは,「わたしは行って,主に尋ねましょう。もし主がわたしたちの同胞のところへ行くように言われたら,あなたがたは行かれますか」と尋ねた。
8 すると,王は彼に言った。「そうしよう。主がもし行くように言われるなら,我らは同胞のところへ行こう。そして,これまで彼らに対して度々犯してきた殺人と罪の償いを終えるまで,彼らの奴隷になろう。」
9 しかし,アンモンは王に言った。「わたしたちの同胞の中に奴隷がいることは,わたしの父が制定した法律に反することです。ですから,行って,同胞の憐れみにすがりましょう。」
10 しかし,王は彼に,「主に尋ねてほしい。もし主が行くように言われるなら,我らは行く。そうでなければ,我らはこの地で滅びよう」と言った。
11 そこで,アンモンが行って主に尋ねると,主はアンモンにこう言われた。
12 「この民が滅びないように,この地を立ち去らせなさい。サタンがアマレカイ人の心をしっかりと捕らえているからである。アマレカイ人はレーマン人を扇動して,その同胞に対して怒りを抱かせ,殺させようとしている。それゆえ,あなたがたはこの地を立ち去りなさい。この時代のこの民は幸いである。わたしがこの民を守るからである。」
13 そこで,アンモンは王のもとに行き,主が言われた御言葉をすべて王に告げた。
14 すると彼らは,自分たちの民,すなわち主の民を全員集め,また彼らの家畜の群れもすべて集めて,その地を去り,ニーファイの地とゼラヘムラの地を隔てる荒れ野に入って行った。そして彼らは,ゼラヘムラの地の境の近くにやって来た。
15 そして,アンモンは彼らに言った。「では,わたしと同僚たちはゼラヘムラの地へ行きます。あなたがたは,わたしたちが戻って来るまでここで待っていてください。あなたがたがその地に入ることをわたしたちの国の者が許すかどうか,彼らの気持ちを探って来ます。」
16 そして,アンモンがその地に向かっていたときに,彼と同僚たちは,前に述べた場所でアルマに出会ったのである。そして見よ,これは喜ばしい出会いであった。
17 アンモンの喜びはたとえようもなく,胸にあふれるほどであった。まことに,彼は力が尽きてしまうほどに神の喜びにのまれてしまった。そして,彼はまたもや地に倒れた。
18 これは非常な喜びではなかっただろうか。見よ,これは心から悔いて謙遜に幸福を求める者でなければ得られない喜びである。
19 同僚たちに出会ったときのアルマの喜びはまことに大きく,また,アロンとオムナー,ヒムナイの喜びも大きかった。しかし見よ,彼らの喜びはその身の力をしのぐほどではなかった。
20 さて,アルマは同僚たちをゼラヘムラの地へ案内して帰り,自分の家に連れて行った。それから彼らは,大さばきつかさのもとに行き,自分たちの同胞であるレーマン人の中にいた間にニーファイの地で自分たちに起こったことを,すべて彼に話した。
21 そこで大さばきつかさは全地に布告を出し,同胞であるアンタイ・ニーファイ・リーハイの民を国に入れることについて民の声を求めた。
22 そして,民の声は次のとおりであった。「見よ,我々は,東の方の海のそばにあり,バウンティフルの地の南方にあって,バウンティフルの地と境を接しているジェルションの地を譲ろう。このジェルションの地を受け継ぎの地として同胞に譲ろう。
23 見よ,我々は,ジェルションの地とニーファイの地の間に軍隊を配備して,ジェルションの地の同胞を守る。彼らが同胞に対して武器を取ることにより罪を犯すことになるのを恐れるからである。彼らがこのことをひどく恐れるのは,彼らがかつて多くの殺人と恐ろしい悪事を行ってきたことについて,つらい悔い改めをしたからである。
24 さて見よ,我々は同胞のためにこのようにして,彼らがジェルションの地を受け継ぐことができるようにしよう。また,彼らが物資の一部を提供して,我々の軍隊を維持できるように援助するという条件の下に,我々は軍隊をもって彼らをその敵から守ろう。」
25 さて,アンモンはこれを聞くと,アンタイ・ニーファイ・リーハイの民が天幕を張っている荒れ野へアルマと一緒に引き返し,これらのことをすべて彼らに知らせた。そしてアルマもまた,自分がアンモンやアロン,そのほかの同僚たちとともに改心したときのことを彼らに話した。
26 さて,アンタイ・ニーファイ・リーハイの民は非常に喜び,ジェルションの地へ下って行って,そこを所有した。また彼らは,ニーファイ人からアンモンの民と呼ばれたので,その後いつまでもその名によって区別された。
27 また彼らは,ニーファイの民の中にあり,神の教会に属する民の中に数えられた。さらに彼らは,神と人々に貢献する熱心さでも秀でていた。彼らはすべてのことについてまったく正直でまっすぐであり,また最後まで確固としてキリストを信じた。
28 そして彼らは,同胞の血を流すことを最も忌まわしいことであると考えていた。そこで彼らは,同胞に対して武器を取るように説かれても決してそれに応じなかった。また彼らは,キリストと復活についての望みと思いがあったので,死を少しも恐ろしいと思わなかった。彼らにとっては,死はすでにそれに打ち勝つキリストの勝利にのまれてしまったのである。
29 したがって彼らは,剣や三日月刀を取って同胞を討つよりも,むしろ同胞が加える最も無残で痛ましい死を受ける方を望んだ。
30 このように,彼らは熱心な愛すべき民であり,主から厚い恵みを受けた民であった。