1 「さて,まことに,わたしたちの次の目標は,マンタイの町を手に入れることでしたが,まことに,わたしたちの小さな軍隊ではどうしてもレーマン人をその町から誘い出せませんでした。まことに,彼らはわたしたちがこれまでに行ったことを覚えていたため,彼らをとりでからおびき出せませんでした。
2 また,彼らがわたしたちの軍隊よりもはるかに大勢であったので,わたしたちはあえて出て行って,とりでにこもっている彼らを攻撃しませんでした。
3 また,わたしたちは,これまでに取り返した土地を守り通すために兵を使うことが必要になり,ゼラヘムラの地からもっと多くの援兵と新たな食糧が届くのを待たなければなりませんでした。
4 そこでわたしは,国の総督のもとに使者を送って,わたしたちの民の状況について知らせました。そしてわたしたちは,ゼラヘムラの地から食糧と援兵が来るのを待ちました。
5 しかしまことに,レーマン人も日々多くの援兵と多くの食糧を得ていたので,これは,わたしたちにとってあまり得にはなりませんでした。当時のわたしたちの状況は以上のとおりでした。
6 またレーマン人は,策を巡らしてわたしたちを滅ぼそうとして,時々出撃して来ました。しかし,彼らには待避所ととりでがあったので,わたしたちは彼らと戦うことができませんでした。
7 そしてわたしたちは,難しい状況の下で何か月も待ち,とうとう食糧の欠乏で飢え死にしそうになりました。
8 さて,わたしたちを援助するために来た二千人の兵から成る軍隊に守られて,食糧が届きました。しかし,わたしたちが自分自身と国とを敵の手に落ちないように守り,おびただしい数の敵と戦うために受け取った援助は,ただこれだけでした。
9 このような苦しい事態に至った原因,すなわち,なぜ彼らがわたしたちにもっと多くの援兵を送ってくれなかったのか,その理由はわたしたちには分かりません。そのため,わたしたちは心を痛め,また何らかの手段で神の裁きがわたしたちの国に下って,わたしたちが打ち倒され,完全に滅ぼされてしまうのではないかという恐れでいっぱいになりました。
10 そこでわたしたちは,心を神に注ぎ出して祈り,わたしたちを強めてくださるように,また敵の手から救ってくださるように,さらにわたしたちの民を支えるために,わたしたちの町と土地と所有物を取り返す力をわたしたちに与えてくださるようにとお願いしました。
11 そして,主なるわたしたちの神は,わたしたちを救うという保証を与えてくださいました。わたしたちの霊に平安を告げ,わたしたちに大いなる信仰を授け,また主によって解放されるという望みをわたしたちに抱かせてくださったのです。
12 そこでわたしたちは,少数ながら援兵を得たことに勇気を奮い起こし,敵を打ち破って,わたしたちの土地と所有物と妻子と自由の大義を守ろうと固く決意しました。
13 このようにしてわたしたちは,マンタイの町にいるレーマン人と戦うために全勢力を注いで出て行き,その町に近い荒れ野のそばに天幕を張りました。
14 その翌日,レーマン人はわたしたちが町に近い荒れ野のそばの境の地にいるのを見ると,わたしたちの軍隊の兵数と兵力を知るために,わたしたちの周りに何人もの密偵を送ってきました。
15 そして密偵の調べで,わたしたちが兵数のうえで強力でないのが分かると,彼らは,出撃して戦ってわたしたちを殺さなければ自分たちへの支援が断たれるに違いないと恐れ,また自分たちの大軍で容易にわたしたちを滅ぼせると思い,わたしたちを攻撃する用意を始めました。
16 彼らが攻撃の用意をしているのを知り,まことに,わたしはギドを少数の兵とともに荒れ野の中に隠れさせ,またテオムナーと少数の兵も荒れ野の中に隠れさせました。
17 ギドと彼の兵は右側に,ほかの者たちは左側にいました。彼らがこのように隠れてしまうと,まことに,わたしは最初に天幕を張ったその同じ場所にわたしの軍隊の残りの兵とともにとどまり,レーマン人が攻めて来るのを待ちました。
18 そこでレーマン人は,わたしたちに向かって大軍で攻めて来ました。そして,彼らが攻めて来て,わたしたちに剣でまさに襲いかかろうとしたとき,わたしは率いていた兵を荒れ野に退却させました。
19 そこでレーマン人は,何としてでも追いついてわたしたちを殺したいと思ったので,猛烈な速さでわたしたちの後を追い,荒れ野に入って来ました。わたしたちはギドとテオムナーの真ん中を通り抜けたため,彼らはレーマン人に気づかれませんでした。
20 さて,レーマン人が通り過ぎると,すなわちその軍隊が通り過ぎると,ギドとテオムナーは隠れていた場所から立ち上がり,レーマン人の密偵たちが町に帰れないように彼らの帰路を断ちました。
21 そして,ギドとテオムナーと兵たちは密偵たちの帰路を断ってから町に走って行き,その町を守るために残っていた見張りの兵たちに襲いかかって,彼らを殺し,町を占領しました。
22 これは,レーマン人が少数の見張りの兵を残して全軍を荒れ野に誘い出されてしまったために起こったことでした。
23 そしてギドとテオムナーは,レーマン人のとりでを手に入れました。一方,わたしたちはしばらく荒れ野の中を逃げた後,ゼラヘムラの地の方向に進路を取りました。
24 するとレーマン人は,ゼラヘムラの地に向かって進んでいるのに気づき,自分たちを滅亡に誘い込むために練られた計略があるのではないかと非常に恐れました。そこで彼らは再び荒れ野に戻り,やって来た同じ道を引き返しました。
25 そしてまことに夜になり,彼らは天幕を張りました。レーマン人の連隊長たちは,ニーファイ人も行軍で疲れ切っていると思ったからです。また彼らは,すでにニーファイ人の全軍を追い払ってしまったと思い,マンタイの町のことは少しも考えませんでした。
26 さて,夜になると,わたしは兵を眠らせずに,別の道からマンタイの地へ向かわせました。
27 そして,わたしたちは夜の間行軍したため,まことに,翌日にはレーマン人よりはるかに先になり,彼らよりも早くマンタイの町に着きました。
28 そして,この策によってわたしたちは血を流すことなくマンタイの町を占領しました。
29 そして,レーマン人の軍隊は町の近くに到着し,わたしたちが彼らと戦いを交える用意をしているのを見て非常に驚き,またひどい恐怖を覚えて,荒れ野の中へ逃げて行きました。
30 そして,レーマン人の軍隊は,この地方の全域から逃げ出しました。しかしまことに,彼らはこの地から多くの婦人たちと子供たちを連れ去ってしまいました。
31 かつてレーマン人に奪われた町は,現在すべてわたしたちの所有下にあります。そして,わたしたちの父親たちと婦人たちと子供たちは,捕虜になってレーマン人に連れ去られた人々を除いて,全員各自の家へ帰っているところです。
32 しかしまことに,わたしたちの軍隊は,そのように多くの町とそのようにたくさんの領土を守り通すには小さすぎます。
33 それでもまことに,わたしたちは,それらの土地でわたしたちに勝利を得させ,かつて所有していたそれらの町と土地を取り返させてくださった神に頼っています。
34 わたしたちには,政府がもっと多くの援兵を送ってくれない理由が分かりません。わたしたちのもとに来た兵たちも,どうしてわたしたちにもっと援兵が送られなかったのか,その訳を知りません。
35 まことに,あなたの方が首尾よくいっておらず,そちらの地方に軍隊を退却させなければならなかったのかもしれません。もしそうであれば,わたしたちはつぶやきたくありません。
36 また,もしそうでなければ,まことに,政府の中に何らかの対立があり,彼らはわたしたちを援助する兵をこれ以上送ってこないのではないかと,わたしたちは懸念しています。なぜならば,すでに派遣されてきた兵よりももっと多くの兵がいることを,わたしたちは知っているからです。
37 しかしまことに,それはどうでもよいことです。わたしたちの軍隊が弱くても,神がわたしたちを救い,敵の手から救い出してくださることを信じています。
38 まことに,今は第二十九年の末で,わたしたちは自分たちの土地を所有しており,レーマン人はニーファイの地へ逃げました。
39 わたしが前に大いにほめたたえたアンモンの民の息子たちは,今わたしと一緒にマンタイの町にいます。主は彼らを力づけ,剣で倒されないように守ってくださったので,一人も殺されませんでした。
40 しかしまことに,彼らは多くの傷を負いました。それでも彼らは,神が自分たちを自由な者にしてくださったその自由にしっかりと立っています。そして彼らは,日々主なる神をよく覚え,まことに,主の掟と裁決と戒めをいつも守るように努めており,将来起こることについての預言を深く信じています。
41 愛する兄弟,モロナイ殿。わたしたちを贖い,自由にしてくださった主なるわたしたちの神が,いつもあなたを御前にとどめてくださいますように。また,主がこの民に恵みを授けてくださり,かつてレーマン人がわたしたちから奪った生活に必要なすべてのものを,あなたがたが首尾よく取り返すことができますように。まことに,これでわたしの手紙を結びます。わたしはアルマの子,ヒラマンです。」