1 「さて,わたしは王のアモロンから手紙を受け取りましたが,それは,もしわたしたちが捕らえた捕虜を引き渡すならば,アンテパラの町をわたしたちに譲り渡そうというものでした。
2 しかし,わたしは王に手紙を送り,わたしたちの軍隊には自力でアンテパラの町を取り返す力があると確信しているので,捕虜と町を交換するのは賢明ではないと思う,したがって,捕虜同士を交換するときにのみ捕虜を引き渡すつもりである,と告げました。
3 するとアモロンは,捕虜の交換はしたくなかったので,わたしの手紙での申し出を拒絶しました。そこでわたしたちは,アンテパラの町を攻める準備を整えました。
4 ところが,アンテパラの民はその町を去り,彼らが支配していたほかの町へ逃げて行き,それらの町の防備を固めました。このようにして,アンテパラの町はわたしたちの手に落ちました。
5 このようにして,さばきつかさの統治第二十八年が終わりました。
6 さて,第二十九年の初めに,わたしたちはゼラヘムラの地と周辺の地から,食糧と六千人の援兵を受け,またほかにアンモン人の息子たち六十人が彼らの同胞,すなわち二千人から成るわたしの小さな軍隊に加わりました。そしてまことに,わたしたちは強くなり,また食糧もたくさん補給されました。
7 そこでわたしたちは,クメナイの町を守るために配置されている軍隊と一戦交えたいと思いました。
8 さて,まことに,わたしたちがやがて自分たちの望みを遂げたことをあなたに明らかにしたいと思います。まことにわたしたちは,クメナイの町の者が食糧を受け取ることになっていた少し前から,わたしたちの強い軍隊をもって,いや,わたしたちの強い軍隊の一部をもって,夜その町を包囲しました。
9 そしてわたしたちは,幾晩もその町の周囲で野営しました。しかしわたしたちは,夜に紛れてレーマン人に襲われ,殺されることのないように,剣を身に着けたまま眠り,また見張りの兵を置きました。それでも彼らは,何度も襲撃を試みて,その度に彼らの血が流されたのでした。
10 そのうちにやっと彼らの食糧が到着し,レーマン人は夜に紛れて町に入ろうとしました。ところが,わたしたちはレーマン人ではなくニーファイ人であったので,彼らを捕らえ,彼らの食糧を奪いました。
11 しかしレーマン人は,このようにして補給を断たれたにもかかわらず,なおもその町を守り通そうと決意していました。そこでわたしたちは,それらの食糧を運んでユダヤに送り,また捕虜はゼラヘムラの地に送る必要がありました。
12 そして,それほど多くの日数がたたないうちに,レーマン人は救援を得られる望みをすっかり失い,その町をわたしたちの手に明け渡しました。このようにして,わたしたちはクメナイの町を手に入れる計画を達成しました。
13 しかし,捕虜の数が甚だ多かったので,わたしたちの兵の数が非常に多かったにもかかわらず,わたしたちは彼らを見張るのに全軍を用いるか,そうでなければ彼らを処刑するかしなければなりませんでした。
14 というのは,まことに彼らは大勢で逃げ出し,石やこん棒や,そのほか手に入るものを何でも手に取って戦おうとしたからです。そのために,彼らが降伏して捕虜になった後,わたしたちは彼らの中の二千人以上を殺しました。
15 そのようなわけで,わたしたちは彼らの命を取るか,そうでなければ剣を手にしたまま彼らをゼラヘムラの地へ護送して行くことが必要になりました。そのうえ,わたしたちが以前にレーマン人から奪った食糧があったにもかかわらず,食糧はわたしたちの軍隊にも十分ではありませんでした。
16 そのような危うい状況の下で,この捕虜たちについて判断を下すことは非常に重大な問題となりました。にもかかわらず,彼らをゼラヘムラの地へ送ることにしました。そして,兵の一部を選んで捕虜を見張る任務を彼らに与え,ゼラヘムラの地へ下って行かせました。
17 ところがその翌日,彼らは戻って来ました。それでも,まことに,わたしたちは彼らに捕虜のことを尋ねませんでした。まことに,わたしたちはそのときレーマン人に攻められており,彼らはちょうどよいときに戻って来て,わたしたちがレーマン人の手に落ちるのを救ってくれたからです。というのは,まことに,レーマン人を支援するために,アモロンが新たな食糧と大勢の兵を送ってきたからでした。
18 そして,わたしたちが捕虜に付けて送り出した兵たちは,わたしたちがまさにレーマン人に負かされようとしたときに,ちょうど折よく到着して彼らを食い止めてくれたのです。
19 しかしまことに,二千六十人の兵から成るわたしの小さな軍隊は必死に戦い,まことに,彼らはレーマン人の前に確固として立ちはだかり,向かって来るすべての者を殺しました。
20 わたしたちの軍隊のほかの兵たちがレーマン人の前から退却しようとしていたときに,まことにその二千六十人の兵は確固としており,ひるみませんでした。
21 まことに,彼らはすべての号令に従ってそのとおりに行うように努めたのです。そして,実に彼らの信仰に応じて,そのようになりました。そのことでわたしは,彼らが母親たちから教わったと言ってわたしに話してくれた言葉を思い出しました。
22 さてまことに,わたしたちがこの大勝利を収めたのは,実にわたしのこの息子たちと,選ばれて捕虜を護送して行ったその兵たちのおかげです。レーマン人を打ち負かしたのは,これらの兵たちでした。そしてレーマン人は,マンタイの町へ追い返されました。
23 わたしたちはクメナイの町を守り,全員が剣で滅ぼされることは避けられたものの,それでもわたしたちは大きな損害を被っていました。
24 さて,レーマン人が逃げ去った後,わたしはすぐに,負傷した兵を死者の中から連れ出すように命令を下し,彼らの傷の手当てをし,包帯をさせました。
25 さて,わたしの二千六十人の兵のうち,二百人が失血のために意識を失っていました。にもかかわらず,神の慈しみによってだれ一人死なずに済んだことは,わたしたちにとってまったく驚きであり,またわたしたち全軍の喜びでもありました。彼らの中には傷をたくさん負わなかった者は一人もいませんでした。
26 彼らが守られたのは,わたしたち全軍にとって驚きでした。千人の同胞が殺されながら,彼らは命を救われたのです。それは神の奇跡を起こす力によったものと考えざるを得ません。彼らは信じるように教えられたことを深く信じていたので,すなわち,公正な神がましますことと,疑わない者はだれでも神の驚くべき力によって守られるということを深く信じていたので,それが起こったのです。
27 わたしの述べてきたこれらの者たちは,これを信じていました。彼らは若いながらも考えはしっかりしていて,絶えず神に頼っています。
28 さて,このように味方の負傷兵の世話を終え,味方の死者と多くのレーマン人の死者を葬り終えた後,まことに,わたしたちはギドに,彼らがゼラヘムラの地へ連れて行った捕虜たちのことを尋ねました。
29 ギドは,その地に彼らを護送して行くように任命された軍隊の連隊長でした。
30 ギドがわたしに述べた言葉は,次のとおりです。『まことに,わたしたちは捕虜を連れてゼラヘムラの地へ下って行くために出発しました。すると途中で,レーマン人の軍を見張るために遣わされていたわたしたちの軍の密偵たちに出会いました。
31 ところが,彼らはわたしたちに向かって,「見よ,レーマン人の軍がクメナイの町へ向かって進んでいる。見よ,彼らはクメナイの町にいる者を襲い,わたしたちの民を滅ぼすつもりだ」と叫んだのです。
32 そこで捕虜たちは,彼らの叫び声を聞いて勇み立ち,わたしたちに対して暴動を起こしました。
33 さて,彼らが暴動を起こしたので,わたしたちは剣で彼らを討ちました。彼らが一団となってわたしたちの剣を目がけて走り寄って来たため,わたしたちは彼らの大半を殺しました。しかし,残りの者たちはわたしたちを押し分けて逃げて行ってしまいました。
34 まことに,彼らが逃げてしまい,追いつけなかったので,わたしたちはクメナイの町へ向かって急いで進み,まことに,ちょうどよいときに到着して,町を守っていた同胞を助けることができました。
35 まことにわたしたちは,敵の手からまた救い出されました。わたしたちの神の御名がほめたたえられますように。まことに,わたしたちの神はわたしたちを救い出し,まことに,わたしたちのためにこのような大いなることを行ってくださいました。』
36 さて,わたしヒラマンはギドのこの言葉を聞くと,わたしたちを守ってわたしたち全員が滅びることのないようにしてくださっている神の慈しみを思い,非常な喜びに満たされました。またわたしは,これまでに殺された人々の霊がすでに神の安息に入っているものと信じています。」