1 「さて，わが子こヒラマンよ，わたしはあなたに，これまでわたしに託たくされてきた記き録ろくを受うけ取とるように告つげる。

2 また，わたしが行おこなってきたように，この民たみの記き録ろくをニーファイの版はんに書かき続つづけ，またわたしが行おこなってきたように，これまでわたしが保ほ存ぞんしてきたこれらのものをすべて神しん聖せいに保たもつようあなたに告つげる。これらのものは，ある賢けん明めいな目もく的てきのために保ほ存ぞんされているからである。

3 また，この真しん鍮ちゅうの版はんも保ほ存ぞんしなさい。この真しん鍮ちゅうの版はんには様さま々ざまな記き録ろくが刻きざまれており，聖せい文ぶんも記しるされていて，まことに世よの初はじめからのわたしたちの先せん祖ぞの系けい図ずも載のっている。

4 見みよ，わたしたちの先せん祖ぞが預よ言げんしたように，この版はんはあらゆる国こく民みん，部ぶ族ぞく，国こく語ごの民たみ，民みん族ぞくに明あきらかに示しめされて，彼かれらがこれに書かき記しるされている奥おく義ぎを知しるようになるときまで，これは代よ々よ保ほ存ぞんされ，伝つたえられ，また主しゅの御み手てによって保ほ存ぞんされ，残のこされることになっている。

5 さて見みよ，この版はんは，保ほ存ぞんされるならばその輝かがやきを保たもつに違ちがいない。確たしかに，この版はんはその輝かがやきを保たもつであろう。また，聖せい文ぶんの載のっている版はんはすべてそうである。

6 記き録ろくを保ほ存ぞんするのはわたしが愚おろかだからであると，あなたは思おもうかもしれない。しかし見みよ，わたしはあなたに言いう。小ちいさな，簡かん単たんなことによって大おおいなることが成なし遂とげられるのである。そして，小ちいさな手しゅ段だんが度たび々たび知ち者しゃを辱はずかしめる。

7 主しゅなる神かみは偉い大だいな永えい遠えんの目もく的てきを達たっするために，様さま々ざまな手しゅ段だんによって事ことを行おこなわれる。また，ごく小ちいさな手しゅ段だんによって，主しゅは知ち者しゃを辱はずかしめ，また多おおくの人ひとを救すくわれる。

8 これまでこれらの記き録ろくが残のこされてきたのは，神かみの知ち恵えによるものであった。見みよ，これらの記き録ろくはこの民たみに多おおくのことを思おもい出ださせ，また多おおくの人ひとに彼かれらの行おこないが誤あやまっていることを納なっ得とくさせ，神かみについて知しらせて彼かれらが救すくわれるようにしてきたからである。

9 まことに，わたしはあなたに言いう。もしこれらの記き録ろくに載のっている，すなわちこれらの版はんに載のっているこれらのものがなければ，アンモンと彼かれの同どう僚りょうたちは何なん千ぜん人にんものレーマン人じんに，彼かれらの先せん祖ぞの言いい伝つたえが正ただしくないことを納なっ得とくさせることはできなかったであろう。これらの記き録ろくと彼かれらの言こと葉ばは，レーマン人じんを悔くい改あらために導みちびいた。すなわち，これらの記き録ろくと彼かれらの言こと葉ばは，レーマン人じんに主しゅなる神かみについて知しらせ，彼かれらの贖あがない主ぬしイエス・キリストのことを喜よろこぶように彼かれらを導みちびいた。

10 また，だれもこれらの記き録ろくが，将しょう来らい何なん千ぜん人にんものレーマン人じんと，また今いま，罪つみと悪あく事じの中なかで心こころをかたくなにしている，わたしたちの強ごう情じょうな同胞はらからである何なん千ぜん人にんものニーファイ人じんに，彼かれらの贖あがない主ぬしについて知しらせる手しゅ段だんにならないとは言いい切きれない。

11 これらの奥おく義ぎは，まだ全ぜん部ぶはわたしに知しらされていないので，わたしはそれを語かたることを控ひかえなければならない。

12 ただこれらの記き録ろくは，神かみが御ご存ぞんじの，ある賢けん明めいな目もく的てきのために残のこされるとだけ言いえば，それで十じゅう分ぶんであろう。神かみは御ご自じ分ぶんが造つくられたすべてのものに知ち恵えをもって助じょ言げんを与あたえられる。そして，主しゅの道みちはまっすぐで，その道みちは一つの永えい遠えんの環わである。

13 おお，覚おぼえておきなさい。わが子こヒラマンよ，神かみの戒いましめがどれほど厳きびしいか覚おぼえておきなさい。神かみは，『あなたがたはわたしの戒いましめを守まもるかぎり地ちに栄さかえる』と言いわれた。しかし，神かみの戒いましめを守まもらなければ，神かみの御み前まえから絶たたれるであろう。

14 わが子こよ，神かみがこれらのものをあなたに託たくされたということを覚おぼえておきなさい。これらのものは神しん聖せいであり，神かみはこれまでこれらのものを神しん聖せいに保たもってこられた。そしてこれからも，御ご自じ分ぶんの力ちからを後のちの時じ代だいの人ひと々びとに示しめせるように，御ご自じ分ぶんの内うちにある賢けん明めいな目もく的てきのためにこれらのものを保ほ存ぞんし，守まもられるであろう。

15 さて見みよ，わたしは預よ言げんの霊れいによってあなたに告つげる。もしあなたが神かみの戒いましめに背そむくならば，見みよ，これらの神しん聖せいなものは神かみの力ちからによってあなたから取とり去さられる。そして，あなたはサタンに引ひき渡わたされ，サタンはあなたを風かぜに吹ふかれるもみ殻がらのようにふるいにかけるであろう。

16 しかし，あなたが神かみの戒いましめを守まもり，主しゅから命めいじられるとおりにこれらの神しん聖せいなものを扱あつかうならば（すなわち，あなたはこれらのものをどのように扱あつかわなければならないかについて，一いっ切さいのことを主しゅに請こい求もとめなければならない），見みよ，この世よのどのような力ちからも，地じ獄ごくのどのような力ちからも，決けっしてあなたからこれらのものを取とり去さることはできない。神かみは御ご自じ分ぶんの御み言こと葉ばをすべて成じょう就じゅする十じゅう分ぶんな力ちからを持もっておられる御お方かただからである。

17 神かみは，あなたに立たてるすべての約やく束そくを果はたされる。神かみはこれまでもわたしたちの先せん祖ぞと交かわした約やく束そくを果はたしてこられたからである。

18 神かみは，御ご自じ分ぶんの力ちからを後のちの時じ代だいの人ひと々びとに示しめせるように，御ご自じ分ぶんの内うちにある賢けん明めいな目もく的てきのためにこれらのものを守まもろうと，わたしたちの先せん祖ぞに約やく束そくされた。

19 さて見みよ，神かみはすでに一つの目もく的てきを達たっせられた。何なん千ぜん人にんものレーマン人じんが再ふたたび真しん理りを知しるようになったのである。そして，神かみはこれらの記き録ろくによって御ご自じ分ぶんの力ちからを示しめされた。神かみはまた後のちの時じ代だいの人ひと々びとにも，これらの記き録ろくによって御ご自じ分ぶんの力ちからを示しめされるであろう。そのために，これらのものは残のこされる。

20 そこで，わが子こヒラマンよ，わたしはあなたに告つげる。あなたは勤きん勉べんにわたしのすべての言こと葉ばに従したがいなさい。また，神かみの戒いましめを記しるされているとおりに熱ねっ心しんに守まもりなさい。

21 また，あの二十四枚まいの版はんについて話はなそう。あなたはあの版はんを保ほ存ぞんし，様さま々ざまな秘ひ密みつの行おこないと闇やみの業わざ，隠かくれた業わざ，すなわち滅ほろぼされてしまったあの民たみの秘ひ密みつの業わざが，この民たみに明あきらかにされるようにしなさい。すなわち，彼かれらのあらゆる殺さつ人じん，強ごう盗とう，略りゃく奪だつ，またあらゆる悪あく事じと忌いまわしい行おこないがこの民たみに明あきらかにされるようにしなさい。また，あなたはこの解かい訳やく器きも保ほ存ぞんしなさい。

22 見みよ，主しゅは，御ご自じ分ぶんの民たみが暗くら闇やみの中なかで業わざを行おこない始はじめたこと，すなわち暗あん殺さつと忌いまわしい行おこないをするようになったことを御ご覧らんになった。そこで主しゅは，もし悔くい改あらためなければ，彼かれらは地ちの面おもてから滅ほろぼし去さられると言いわれた。

23 また，主しゅは言いわれた。『わたしは暗くら闇やみの中なかで輝かがやいて光ひかりを放はなつ一つの石いしを，わたしの僕しもべガゼレムのために用よう意いしよう。それによってわたしは，わたしに仕つかえる民たみのために彼かれらの同胞はらからの業わざ，すなわち同胞はらからの秘ひ密みつの業わざ，闇やみの業わざ，悪あく事じと忌いまわしい行おこないを明あきらかにしよう。』

24 わが子こよ，この解かい訳やく器きは神かみの御み言こと葉ばが成じょう就じゅするように備そなえられたものである。神かみはこれについて次つぎのように言いわれた。

25 『わたしは彼かれらのあらゆる秘ひ密みつの業わざと忌いまわしい行おこないを暗くら闇やみから明あかるみに出だそう。また，彼かれらが悔くい改あらためなければ，彼かれらを地ちの面おもてから滅ほろぼし去さろう。そしてわたしは，彼かれらのあらゆる秘ひ密みつと忌いまわしい行おこないを，今こん後ごこの地ちを所しょ有ゆうするすべての国こく民みんに明あきらかに示しめそう。』

26 さて，わが子こよ，わたしたちが知しっているように，彼かれらは悔くい改あらためなかったので滅ほろぼされてしまった。そして，これまで神かみの御み言こと葉ばは成じょう就じゅし，彼かれらの秘ひ密みつの忌いまわしい行おこないは暗くら闇やみから出だされて，わたしたちに知しらされてきた。

27 わが子こよ，あなたに告つげる。彼かれらのあらゆる誓ちかいの言こと葉ばと誓せい約やくと，彼かれらの秘ひ密みつの忌いまわしい行おこないについての取とり決きめを忘わすれないようにしなさい。また，彼かれらのすべての合あい図ずと不ふ思し議ぎなことをこの民たみに隠かくして，この民たみがそれらのものを知しることなく，彼かれらも暗くら闇やみに陥おちいって滅ほろぼされることのないようにしなさい。

28 見みよ，この地ちの全ぜん体たいに，一つののろいがあるからである。そののろいとは，闇やみの業わざを行おこなう者ものたちの悪あくが完かん全ぜんに熟じゅくすとき，神かみの力ちからによってそれらの者ものたちが皆みな滅ほろぼされるというものである。わたしはこの民たみが滅ほろぼされることのないように願ねがっている。

29 だからあなたは，彼かれらの誓ちかいの言こと葉ばと誓せい約やくから成なる秘ひ密みつのはかりごとを，この民たみに隠かくしなさい。彼かれらの悪あく事じと殺さつ人じんと忌いまわしい行おこないだけをこの民たみに知しらせて，そのような悪あく事じと忌いまわしい行おこないと殺さつ人じんを忌いみ嫌きらうように彼かれらに教おしえなさい。また，これらの人ひと々びとが彼かれらの悪あく事じと忌いまわしい行おこないと殺さつ人じんのために滅ほろぼされたことも，彼かれらに教おしえなさい。

30 見みよ，彼かれらは自じ分ぶんたちの中なかにやって来きて，その罪ざい悪あくについて告つげ知しらせた主しゅの預よ言げん者しゃをすべて殺ころした。そのため，彼かれらに殺ころされた人ひと々びとの血ちが，主しゅなる神かみに向むかって，自じ分ぶんたちを殺ころした者ものたちに報ほう復ふくするように叫さけんだ。その結けっ果か，神かみの裁さばきが，これらの闇やみの業わざを行おこない，秘ひ密みつ結けっ社しゃを作つくった者ものたちに下くだったのである。

31 また，それらの闇やみの業わざを行おこない，秘ひ密みつ結けっ社しゃを作つくった者ものたちに対たいして，この地ちはとこしえにいつまでものろわれる。彼かれらは，悪あく事じが完かん全ぜんに熟じゅくす前まえに悔くい改あらためなければ滅ほろびるであろう。

32 わが子こよ，わたしがあなたに語かたってきた言こと葉ばを覚おぼえておきなさい。あの秘ひ密みつのはかりごとをこの民たみに明あきらかにすることなく，罪つみと悪あく事じを永えい遠えんに憎にくむことを教おしえなさい。

33 悔くい改あらためと主しゅイエス・キリストを信しんじる信しん仰こうについてこの民たみに宣のべ伝つたえなさい。謙けん遜そんになるように，また柔にゅう和わで心こころのへりくだった者ものになるように教おしえなさい。主しゅイエス・キリストを信しんじる信しん仰こうをもって，悪あく魔まのあらゆる誘ゆう惑わくに立たち向むかうように教おしえなさい。

34 善よい行おこないをするのに決けっして疲つかれず，柔にゅう和わで心こころのへりくだった者ものになるようにこの民たみに教おしえなさい。このような者ものは，その霊れいに安あん息そくを得えるであろう。

35 おお，覚おぼえておきなさい，わが子こよ。若わかいうちに知ち恵えを得えなさい。まことに，神かみの戒いましめを守まもることを若わかいうちに習しゅう慣かんとしなさい。

36 また，あなたの必ひつ要ようとするあらゆる助たすけを神かみに叫さけび求もとめなさい。まことに，あなたの行おこなうことはすべて，主しゅのために行おこなうようにしなさい。どこへ行いくにも主しゅにあって行いくようにしなさい。まことに，あなたの思おもいをすべて主しゅに向むけるようにしなさい。まことに，あなたの心こころの愛あい情じょうをとこしえに主しゅに向むけるようにしなさい。

37 あなたのすべての行おこないについて主しゅと相そう談だんしなさい。そうすれば，主しゅはあなたのためになる指し示じを与あたえてくださる。まことに，夜よる寝ねるときは，眠ねむっている間あいだも主しゅが見み守まもってくださるように，主しゅに身みを託たくして寝ねなさい。そして，朝あさ起おきるときに，神かみへの感かん謝しゃで心こころを満みたしなさい。これらのことを行おこなうならば，終おわりの日ひに高たかく上あげられるであろう。

38 さて，わが子こよ，わたしは先せん祖ぞが球たま，すなわち指し示じ器きと呼よんだものについて少しょう々しょう話はなしておかなければならない。先せん祖ぞはこれをリアホナと呼よんだ。それは，羅ら針しん盤ばんという意い味みである。主しゅが用よう意いしてくださったのである。

39 見みよ，これほど入にゅう念ねんに細さい工くのできる人ひとはあり得えない。見みよ，それは，先せん祖ぞに荒あれ野のの中なかで旅たびをする進しん路ろを教おしえるために用よう意いされたものであった。

40 そしてこれは，神かみを信しんじる先せん祖ぞの信しん仰こうに応おうじて働はたらいた。したがって，先せん祖ぞが信しん仰こうを持もち，神かみがその指し針しんによって自じ分ぶんたちの行いくべき方ほう向こうを示しめしてくださると信しんじたときには，見みよ，そのようになった。そこで彼かれらは，この奇き跡せきと，また日ひ々び神かみの力ちからによって行おこなわれたほかの多おおくの奇き跡せきを経けい験けんしたのである。

41 しかし，それらの奇き跡せきは小ちいさな手しゅ段だんによって行おこなわれたため，それは彼かれらに数かず々かずの驚おどろくべき業わざを示しめした。ところが，彼かれらが怠なまけて，信しん仰こうを働はたらかせることと熱ねつ意いを示しめすことを忘わすれると，それらの驚おどろくべき業わざは止とまってしまい，彼かれらの旅たびは進すすまなかった。

42 そのために彼かれらは，荒あれ野のに長なが居いすることになってしまった。すなわち，彼かれらはまっすぐな道みちを進すすまず，自じ分ぶんたちの背そむきのために飢うえと渇かわきに苦くるしんだのである。

43 さて，わが子こよ，このようなことには必かならず影かげがあることを理り解かいしてもらいたい。先せん祖ぞはこの羅ら針しん盤ばんを心こころに留とめることを怠おこたったので（これらは物ぶっ質しつ的てきなことであり），旅たびは順じゅん調ちょうではなかった。霊れい的てきなことについても同どう様ようである。

44 見みよ，キリストの御み言こと葉ばは，永えい遠えんの喜よろこびに至いたるまっすぐな道みちを指さし示しめすものであるが，その御み言こと葉ばを心こころに留とめることが容よう易いであるのは，約やく束そくの地ちに至いたるまっすぐな道みちを示しめすこの羅ら針しん盤ばんに注ちゅう意いを払はらうのが，先せん祖ぞにとって容よう易いであったのと同おなじである。

45 さて，わたしは尋たずねるが，このことの中なかに予よ型けいはないだろうか。この指し示じ器きがその示しめす道みちをたどる先せん祖ぞを約やく束そくの地ちに導みちびいたように，確たしかにキリストの御み言こと葉ばは，わたしたちがキリストの御み言こと葉ばの示しめす道みちをたどるならば，この悲かなしみの谷たにを越こえてはるかに良よい約やく束そくの地ちへわたしたちを導みちびき入いれてくれるのである。

46 おお，わが子こよ，方ほう法ほうが容よう易いだからということで怠なまけないようにしよう。わたしたちの先せん祖ぞがそうであったからである。それは先せん祖ぞのために備そなえられたもので，彼かれらがそれを見みていたら生いき延のびることができたであろう。わたしたちについても同どう様ようである。方ほう法ほうはすでに備そなえられており，わたしたちが見みようとすれば，とこしえに生いきることができるであろう。

47 さて，わが子こよ，あなたはこれらの神しん聖せいなものを大たい切せつにしなさい。神かみに頼たよって生いきるようにしなさい。この民たみのところへ出でて行いき，御み言こと葉ばを告つげ知しらせなさい。まじめでありなさい。さらば，わが子こよ。」