2000–2009
信仰と神権の誓詞と聖約
2008年4月


2:3

信仰と神権の誓詞と聖約

神との聖約を守りながら,信仰をもって前進し,神が誓詞をもって交わされた約束の祝福を受けてください。

皆さんが神権の誓詞と聖約の祝福にふさわしく生活していく自信を強めるよう手助けすることが,今晩のわたしの目的です。この誓詞と聖約から大いなる祝福を受けるには,自信を絶えず増し加えていかなければならないのです。

主はその祝福を明らかにしておられます。わたしたちが誓詞と聖約に伴う可能性へのふさわしさを十分に身に付けると,神のあらゆる賜たま物ものの中で最も大いなる賜物,永遠の命を受けます。これがメルキゼデク神権の目的です。神権を受けるときに交わす聖約を守り,神殿の儀式において聖約を更新することにより,わたしたちはエロヒム,すなわち天の御父からその栄光のすべてを受け,御父が生きておられるごとくに生きるようになる,と誓詞によって約束されています。そして,永遠に増し加えられる約束とともに家族が永遠に結ばれるという祝福を受けます。

この祝福を受けられないと,悲惨な結果を招くことになります。主はそのことも明らかにしておられます。若い男性がメルキゼデク神権を受ける時期に近づくと,指導者が読んで聞かせる言葉があります。皆さんも最初に聞いたときの気持ちを覚えていることでしょう。預言者ジョセフ・スミスを通して与えられた救い主イエス・キリストの言葉です。

「主は言う。この神権を受けるすべての者は,わたしを受け入れるのである。

わたしの僕たちを受け入れる者は,わたしを受け入れるからである。

また,わたしを受け入れる者は,わたしの父を受け入れる。

そして,わたしの父を受け入れる者は,わたしの父の王国を受けるのである。それゆえ,わたしの父が持っておられるすべてが,彼に与えられるであろう。

これは神権に伴う誓詞と聖約によってである。

それゆえ,神権を受ける者は皆,わたしの父のこの誓詞と聖約を受け入れるのである。わたしの父がこれを破られることはあり得ず,またこれが取り消されることもあり得ない。

しかし,だれでもこの聖約を受け入れた後にこれを破り,これから完全に離れてしまう者は,この世でも来きたるべき世でも,罪の赦しを受けることはない。

また,この神権に来ない者は皆,災いである。あなたがたはこの神権をすでに受けており,わたしは今日ここにいるあなたがたに,天からわたし自身の声によって今これを確認する。また,まことに,わたしは天の衆群とわたしの天使たちに,あなたがたに対する務めを与えた。

わたしは,今あなたがたに一つの戒めを与える。自分自身について気をつけ,永遠の命の言葉を熱心に心に留めるようにしなさい。」1

わたしが若いころに最初に聞いたときと皆さんも同じだとすれば,メルキゼデク神権を受けることは身のすくむようなチャレンジに思えます。しかし,誓詞と聖約を守らなかったり,この神権を受けようとしなかったりした場合に下される罰にひるむのでなく,自信を持つべき理由が少なくとも二つあります。誓詞と聖約を受け入れてから非常に難しいことに気づくにしろ,努力しないにしろ,下される罰は同じです。このため,聖なる神権を受け,心を尽くしてその聖約を守るよう努めることが間違いなく最善の方法なのです。努力しなければ,永遠の命を受ける機会を失うことになります。努力して,さらに神の助けを受けて成し遂げれば,永遠の命を受けるのです。

誓詞と聖約にふさわしくなるために全力を尽くす,と今決意しなければならない理由,また,成し遂げられるという自信を持たなければならない理由がもう一つあります。皆さんが信仰を働かせるなら,成功できるように助け,力を与える,と神が約束しておられることです。

信仰をもって努力するときに受ける祝福を幾つか挙げてみましょう。

第1に,皆さんに誓詞と聖約が提示されたという事実は,神が皆さんの力と能力を知ったうえで皆さんを選んでくださったことの証拠です。神は霊界で皆さんとともにいたときから皆さんを御存じです。皆さんの長所を予知しておられる神は,イエス・キリストのまことの教会を見いだし神権を授かることを皆さんにお許しになりました。神の信頼を受けているという証拠があるのですから,皆さんは自信を持つことができます。

第2に,聖約を守ろうと努力する皆さんに,救い主は自ら助けると約束しておられます。皆さんが神権を尊んで歩むことを条件に,主はこう言われました。「わたしもそこにいるであろう。わたしはあなたがたに先立って行こう。わたしはあなたがたの右におり,また左にいる。わたしの御み霊たまはあなたがたの心の中にある。また,わたしの天使たちはあなたがたの周囲にいて,あなたがたを支えるであろう。」2

わたしも実行していることですが,自分にこの聖なる神権の務めを果たす力があることを時々再確認する必要があります。この再確認の必要性を予見しておられた主はこう言われました。「だれでも忠実であって,わたしが語ったこれら二つの神権を得て,自分の召しを尊んで大いなるものとする者は,御霊により聖きよめられてその体が更新される。」3

自分自身の生活や人の生活の中でその約束が果たされるのを,わたしはこれまで見てきました。ある友人は伝道部会長を務めていました。任期中毎晩,次の日に働く力があるだろうかと心配しながら,2階の寝室までやっとの思いで階段を上がっていました。ところが翌日の朝を迎えると,力と気力を回復していました。年老いた預言者が主イエス・キリストと回復された福音を証する度に新たに力を得ている様子を皆さんも見てきたと思います。これは信仰をもって神権の務めを果たす人々に与えられている約束なのです。

また皆さんは,証を述べる力が与えられ,証をする過程で清められ,約束された永遠の命にふさわしい者になるとも告げられています。

「わたしはあなたがたの罪を赦して,この戒めを与える……。すなわち,あなたがたは,あなたがたに知らされたこれらのことを世のすべての人に証するために,厳粛に,また祈りの精神をもって,あなたがたの思いを確固としていなさい。

あなたがたは全世界に出て行きなさい。また,あなたがたはどこでも自分の行けない所に証を送り,それがあなたがたから全世界のすべての造られたものに伝わるようにしなさい。」4

この約束とともに,主はこのように言って皆さんをたたえておられます。「……あなたがたは,父がわたしに与えてくださった者である。あなたがたはわたしの友である。」5

もう一つのすばらしい祝福は神権の聖約を守る励みとなるものです。神権者としての奉仕は,永遠の家族で生活する準備となります。奉仕していくうちに,夫や父親であること,息子であり兄弟であることの意味についての考えが変わってきます。皆さんの信仰が増し,メルキゼデク神権を通じて与えられている永遠の命の約束が自分にとって現実味を帯びてくるにつれて,そのような変化が心に生じます。

パーリー・P・プラットは預言者ジョセフ・スミスから永遠の家族の教義を初めて聞いたときに,そのような変化を経験しました。パーリー・P・プラットは,次のように記しています。

「わたしは〔ジョセフ〕から永遠の家族組織の概念の最初の部分を聞き,言葉にできないほどの愛に満たされた中で男女が永遠に結ばれるという教えを受けました。そのような関係をどう尊重すべきか理解できるのは,高い知性を備え,洗練された,心の清い人だけです。その関係は,幸福と呼ぶにふさわしいすべてのものの基盤となるのです。……

最愛の妻とこの世においても永遠の世においても固く結ばれると教えてくれた人,互いを結びつける純粋な思いやりや愛情が神聖な永遠の愛の泉から生まれると教えてくれた人,それはジョセフでした。この愛情はさらに強めることができ,その愛情の中で永遠に進歩成長できると教えてくれたのも,二人が永遠に結ばれるので,子孫が天の星のように,海辺の砂のように数限りなく増えると教えてくれたのも,ジョセフでした。……

昔から心の中には愛情がありましたが,その理由は知りませんでした。今や……高められた……清い心で愛することができるようになりました。神が確かにわたしの御父であられ,イエスがわたしの兄であられると感じています。また,愛する妻が永遠に変わらぬ伴はん侶りょであり,わたしを慰めてくれる思いやり深い天の使いであり,永遠の栄えある冠であると感じるようになりました。」6

信仰をもって神権の奉仕を行うことが心と思いに変化をもたらすことをわたしは目まの当たりにしてきました。今日わたしの話を聞いている若い男性は,自分の神権を尊ぶことにより,この世界に蔓まん延えんしている性的な罪の誘惑から守られることを確信することができます。今晩わたしの話を聞いているアロン神権者は,永遠の神権を通して受ける永遠の命という確かな報いへの信仰を強めていくに従って,神の娘たちの中に真の価値を見いだし,子孫についての約束の中に清さを保たなければならない理由を見いだせるようになるでしょう。

同じように,誓詞と聖約への信仰は,永遠の家族になくてはならない慈愛をはぐくんでくれます。わたしたちは,神権を受けるとき,人に心を向けることを約束します。

わたしは神権者の心に慈愛が満たされていく奇跡を見てきました。皆さんも見てきたと思いますし,教会員でない人たちも目にしてきたことでしょう。わたしがゴードン・B・ヒンクレー大管長の執務室にいたとき,大管長に電話がかかってきたことがありました。大管長は手短かに応答して電話を切ると,話を再開しました。そしてその電話の内容を話してくれました。電話の主は合衆国大統領でした。ワシントンに向かう途中,ユタの上空を飛ぶ大統領専用機の機内からでした。大統領はハリケーンの被災地での神権者の働きに感謝の言葉を述べ,短い間にこれだけ多くの人を集め,一致協力して働けるというのは奇跡のようだと語ったそうです。さらに大統領は,「あなたたち教会の人々は何をなすべきかを御存じです」と言って,称賛の言葉をかけてくれたそうです。

大統領は組織として大がかりに対応したことに感銘を受けたのかもしれません。それも奇跡ですが,何百人,何千人の神権者が神権の誓詞と聖約を信じて行動する信仰を持っていたことの方が大きな奇跡でした。よく組織化されていたことがすばらしい結果をもたらしたのではありません。彼らは神権の誓詞と聖約に対する仰があったからこそ,大いに助けを必要とした人々の世話をするために主イエス・キリストの代理として長い道のりを出かけて行き,長時間にわたってとどまり,苦難を乗り越えられたのです。

彼らは,神権の務めを果たすことによって,この世から永遠にわたる家族のすばらしい夫,父親,息子,兄弟となるために必要とされる,慈愛の精神と力を養っていました。地球規模の家族の兄弟姉妹として手を差し伸べる,このような神権者の奉仕の業は次から次へと行われています。

神との聖約を守りながら,信仰をもって前進し,神が誓詞をもって交わされた約束の祝福を受けることを今夜決意し,毎日その決意を新たにするよう願っています。簡単なことから始められます。定員会で兄弟たちに会ったら,神の家族の兄弟として接するのです。定員会や神権グループの中に助けを必要としている人がいることでしょう。当人はそれを気づかれないようにしているかもしれません。皆さんが見ただけでは,分からないかもしれません。けれども神は御存じであり,その人を助ける神の僕となるよう皆さんに求めておられます。

神権の奉仕活動で出会う度に「おばあさんの具合はいかがですか」と声をかけてくれる一人の神権者がいます。皆さんもこの神権者のようになることができます。わたしの知っているかぎり,彼はわたしの義理の母に会ったことがないはずです。しかし,彼はどこからか,義理の母が病気で,高齢であることを聞いていました。神権者を通して神の御み手てが差し伸べられていることを知り,妻とともにどれほど慰めと安らぎを得ているか言葉に表せません。いつも聖約を心に留めて,垂れている手を上げ,重荷を背負う人々に手を差し伸べるなら,神権者として集まる度に,彼のように人々に良い影響を及ぼすことができるでしょう。そのようにして,永遠の家族の一員となるために必要とされる資質をはぐくむのです。

ほかにもできることがあります。神の御み言こと葉ばを自分のためだけに学ぶのでなく,主イエス・キリストの使者として全世界に出て行くために学ぶのです。福音を教える力が増し加わると,御父の子らを集める僕となることができます。これによってもう一つの祝福がもたらされます。この世か来るべき世で万一自分の家族の中で失われた羊を連れ戻す必要が生じたとき,今思っているよりももっと大きな力を得られる,ということです。

主はアルマ書第13章6節の中でそのすばらしい祝福について述べておられます。「このように,祭司たちは人の子らに神の戒めを教えて,彼らも神の安息に入ることができるようにするため,この聖なる召しによって召され,神の聖なる位の大神権に聖任されたのである。」

皆さんは,次の約束に基づいて,神権の務めを立派に成し遂げられるという確信を持つことができます。

「そして彼らは,聖霊によって聖められ,衣を白くされ,神の御み前まえに清く,染みのない状態になったので,罪を見て忌み嫌うのを禁じることができなかった。このように清められて,主なる神の安息に入った人々は大勢おり,非常に多くの数に上った。

さて,わたしの同はら胞からよ,あなたがたもその安息に入れるように,神の御前にへりくだり,悔い改めにふさわしい実を結んでほしい。」7

父なる神が生きておられることを証します。皆さんは神と聖約を交わしています。神は一つの誓詞すなわち永遠の命の約束を与え,決して破棄されることはありません。神権は神が御子イエス・キリストを通して世界を創造された力であることを証します。神は皆さんが成功を収め,御自身とともに家族として永遠に住むためにみもとに戻って来るよう望んでおられます。この教会がイエス・キリストのまことの教会であることを証します。この教会には神権の鍵があります。神はその神権を授けることによって皆さんを尊んでおられます。神は皆さんの力を御存じであり,その力は大いなる信仰と結びついて,皆さんと家族に永遠の命への希望をもたらすに十分なものです。わたしはこのことを皆さんに約束します。イエス・キリストの御み名なにより,アーメン。