第17課
個人と家族の目標
目的
個人と家族の目標を設定し,達成する。
導入
スペンサー・W・キンボール大管長が14歳のとき,ある教会指導者が彼の所属するステークの大会を訪れた。その指導者は人々に向かって,聖典を読むように勧告した。そのときの経験をキンボール大管長は次のように語っている。
「わたしはそれまで一度も『聖書』を読んだことがなかったのを認めた。その夜その説教を聞いた後,1ブロック離れた家に戻り,狭い屋根裏部屋への階段を上り,小さな机の上にある小さな灯油ランプに火をつけた。それから,創世記の初めの章を数章読んだ。1年後,わたしはその大きなすばらしい本のすべての章を読み終えて,『聖書』を閉じた。……
14歳の少年には理解しにくい箇所が数々あることを知った。また,特に興味のないページもかなりあった。しかし,……読み終えたとき,わたしは一つの目標を定めてそれを達成できたという,言い知れぬ満足を味わったのであった。」(「豊かで満ち足りた人生を計画する」『大会報告1973-75』202)
目標とは,わたしたちが達成したいと願う物事である。前世において天の御父の子供として生活していたわたしたちは,この世での生活が天の御父のようになるために成長する機会であることを学んだ。これは人生における最大の目標である。この大きな目標に到達するには,小さな目標を定めて達成していく必要がある。そのような目標を定めれば,豊かで満ち足りた人生を送る助けにもなるであろう。
個人と家族の目標を定める
目標設定の第一段階は,自分の生活様式について考え,改善する事柄を決めることである。次に,生活を改善する上で必要な個人と家族の目標を選ぶ。たとえば,霊性を高めたいと願う人は,自分の霊性をよく吟味して,適切な目標を定めるのである。その際,以下の事柄について自分自身に問い掛けてみるとよい。
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わたしは必要な祈りを欠かさず行っているだろうか。
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わたしは祈りの答えを受けるにふさわしいだろうか。
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わたしは預言者の言葉に耳を傾け,それに従っているだろうか。
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わたしは定期的に聖文を読んでいるだろうか。
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わたしは神権にかかわる責任を果たしているだろうか。
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わたしは正直に什分の一と献金を納めているだろうか。
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わたしは常に清くふさわしい思いを抱いているだろうか。
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わたしの家族は毎週家庭の夕べを開いているだろうか。
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わたしの家族は神殿で結び固められているだろうか。
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わたしの家族はほかの人が福音を受け入れるように働きかけているだろうか。
以上のことをすべて行うには,時間と努力が必要である。したがって,最初に手がける目標を一つか二つ選ぶことである。そして,一つの分野が改善されてから,別の分野に集中する。完成は,目標として定めただけで実現するものではなく,全生涯を通じて一歩一歩努力することによりもたらされるものである。
わたしたちは,教育や職業をはじめとするほかの分野でも,自分の願う進歩について考えなければならない。生活のあらゆる面を考慮して,どのように改善するか決めるのである。そして,それに役立つ目標を定める。目標はすべてやりがいがあり,達成可能なものでなければならない。
以下の分野の中から幾つか選んで,適切な目標を挙げてもらう。祈り,聖文の勉強,家庭の夕べ,神殿結婚,家族歴史,ホームティーチング,伝道活動,什分の一,清い思い,教育,職業。
個人の目標を設定するには,自分の願望と能力を考慮し,祈りを通して主からの霊感を求める必要がある。また,親や教会の指導者,信頼の置ける友人に助言を求めてもよい。そして,何を,どのような方法で,いつまでに行うのか決める。
N・エルドン・タナー副管長は,孫と一緒に目標を設定したときの経験について語っている。
「孫がわたしのところに来て言った。『おじいさん,ぼく,1年前に執事に召されてからずっと100パーセントなんだ。……
わたしは,それは偉いね,と褒めてこう言った。『ジョン,もし伝道に出る年齢になるまで100パーセントを続けたら,伝道に出る資金を出してあげよう。』孫はにこっと笑顔を見せて,『きっと続けるよ』と言った。
わたしは恐らく続かないだろうと思っていたが,孫は100パーセントを通す決心をしていた。わたしは彼が約束を果たすために自分の心を抑えたことが2回あったことを覚えている。1度は,おじが子供と一緒に旅行に出かけようと,彼を誘ったときのことであった。ジョンは言った。『日曜日に,ぼくが集会に出席できる場所がある?』しかし『ない』と言われたので,彼はこう言った。『じゃあ,ぼくは行けないよ。だってぼくは100パーセント出席するつもりなんだもの。』それで海や島への楽しい旅行を犠牲にしたのであった。
もう1度は,週末に足の骨を折ったときのことであった。彼が最初に医師に聞いたことはこうであった。『日曜日に教会に出席できますか。ぼくは100パーセント出席したいんです。』もちろん,彼は松葉
こうして彼は19歳になった。『おじいさん,ぼくは約束してからずっと100パーセント出席したよ。』わたしは喜んで彼に伝道資金を出した。この達成は彼の生涯に非常に大きな影響を与えている。」(「成功者は克己によって測られる」『大会報告1973-75』352)
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ジョンは目標を達成するために何年間努力しただろうか。(6年間)
目標を達成したときにジョンはどのように感じたと思うか。
家族の目標を設定するには,それぞれの願望や気持ちについて家族で話し合うことである。父親が司会を務め,家族全員が目標設定に参加する。目標を決める際に祈りが助けになるであろう。
J・トーマス・ファイアンズ長老は,ある家族が目標を設定した方法について語っている。
「それは,大会が終わった後に,この会場〔ソルトレーク・シティー〕から約3,000マイルも離れて住んでいる家族の人でも実行できる方法である。大会での説教が掲載されている『聖徒の道』が家に届いたら,すぐに家族でそのメッセージを読むこと。年長の子供には特定の説教について報告をさせることである。
ただ読むだけではない。家庭の夕べにおいて,この大会のメッセージに基づいて家族としての,また個人としての目標を立てるのである。目標は実状に則したものにする。例えば『毎日祖母のことを祈る,賛美歌を暗記する,家族の準備状況を点検する,主の望むことをわたしたちの方法ではなく主の方法によって行う,教会員でない人を教会に連れて行く』などを目標とする。また家族で目標について話し合い,祈って,度々検討する。このように進めてくると,次のように語る父親がいてももはや不思議ではないのである。『わたしたちの家族は総大会を,主がわたしたちに何をすべきかを教えてくださる機会だと思っています。それはわたしたちや子供たちにとって言葉以上の深い意味を持っているのです。』」(「総大会を人生の転機とするために」『聖徒の道』1975年6月号,281-282)
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この家族は目標を設定するために何を行っただろうか。
目標は永遠の進歩を促す
永遠の目標について少しの間考えてもらう。そして,各自の目標を幾つか発表してもらい,黒板に書き出す。
わたしたちはだれでも共通の目標を持っている。例えば,救い主はニーファイ人にこのように言われた。「わたしや天におられるあなたがたの父が完全であるように,あなたがたも完全になることを,わたしは望んでいる。」(3ニーファイ12:48)家族とともに完全となって永遠の命を受けることは,わたしたちが到達し得る最大の目標である。ジョセフ・フィールディング・スミス大管長は次のように述べている。
「救いはあるとき突然に得られるものではない。わたしたちは天の御父が完全であられるように完全になるよう命じられている。……
一度に完全になるのではなく……完全の域に達し,神に似た者になるには墓を超えてさらに前進しなければならない。
しかしわたしたちが基盤を築くのはこの現世である。イエス・キリストの簡潔な真理を教えられて,この完全に向かって準備するのは,この試しの生涯である現世である。わたしたちは昨日よりも今日,今日よりも明日と良くなっていく義務がある。」(『救いの教義』2:17)
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視覚資料17-a「家族の聖文勉強は多くの報いをもたらす」,17-b「祈りは家族をさらに親密にする」,17-c「家庭の夕べは霊性を築く」を見せる。
完成という目標は,1日にして到達できるものではない。したがって,わたしたちは完成に向かって一歩一歩前進するために,ほかの目標を定めて達成していく必要がある。例えば,毎日聖文を勉強するとか,家族の祈りを行うという目標を立てるのである。これらの目標は,わたしたちが天の御父に近づき,完成に向かって努力するうえで助けとなる。
このほかどのような目標が,永遠の命を得る助けになるだろうか。(神殿結婚は一つの大切な目標である。これなくして,天の御父のようになることはできない。)
次の物語は,永遠の命に向かって進歩するうえで目標がいかに助けになるかを示している。
ジェリーは24歳のときに初めて宣教師に出会い,強い印象を受けた。彼は教師としての訓練を受けてきたが,教育に関する仕事に就いていなかった。人生に何の目的も見いだせないまま,独身生活を続けていた。毎朝,目覚める度に彼は思った。「なぜ,今日という日があるんだろう。」
ある日,教会に改宗していた旧友に招かれ,宣教師と会って話をした。そして,長老たちから,『モルモン書』を読んでそれについて祈るようにチャレンジされた。イエス・キリストの福音に接したジェリーは,人生には目的があると感じた。祈りを通して,彼はすぐに『モルモン書』が真実であることを知り,救い主に従いたいと思った。彼はバプテスマを受けたいと思い,今までの生活を改めて,福音に従って生活し始めた。
やがてバプテスマを受け,監督から与えられた召しを受け入れ,神権の義務を忠実に果たしていった。彼は人を助ける仕事に就きたいと思い,新しい職を捜して子供たちの先生になった。また,改宗して間もない美しい女性と巡り会って結婚した。二人は神殿に行く目標を立て,やがて永遠にわたって結び固められた。それ以来,彼らは主の計画に従って生活し,この上ない幸福を得たのである。
目標を達成する
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2ニーファイ32:9を読ませる。
ニーファイは,何かをしようとする前に祈らなければならないと述べている。目標設定で最も重要な部分は,目標の達成を約束するところにある。つまり,天の御父に祈りをささげて助けを願い求め,目標を達成するために全力を尽くすことを約束するのである。
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目標を常に思い起こすには,どうすればよいだろうか。
目標を心に留めるよい方法は,それを日記に書くことである。また,カードや紙に書いて,日ごろ目につきやすい場所に貼ってもよい。また,定期的に家族で目標について話し合ったり,個人の目標を達成できるように特別な援助を与えたりすることもできる。家族の目標を達成するには,協力が必要である。家庭の夕べは,家族が一致協力できる理想的な時間である。
どんなに義にかなった目標や願望があっても,それを実現するために何の努力も払わなければ,まったく無意味である。主はこのように言われた。「すべての勝利と栄光は,あなたがたの熱心さと,忠実さと,信仰の祈りを通してあなたがたにもたらされるのである。」(教義と聖約103:36)勤勉に働き,戒めを守り,祈るならばわたしたちは義にかなった目標を達成できる。毎日が,目標達成へと一歩一歩近づく機会になるのである。
しばしば,目標に到達するために犠牲が要求されることがある。スペンサー・W・キンボール大管長は,目標を達成したときの経験について次のように述べている。
「わたしは伝道を終えて帰って来てから大学に入りたいと思ったが,家族はわたしを学校に送るほど余裕がなかった。そこでわたしは学費を稼ぐためにロサンゼルスの南太平洋鉄道の積み荷の仕事に就いた。わたしは手押し二輪車に積み荷を載せ倉庫と貨物列車の間を往復しながら1日14時間も働いた。1,000ポンドの荷物をその手押し車に載せて運ぶこともしばしばであった。1日の終わりにわたしが疲れた理由がお分かりいただけると思う。
わたしは仕事場から2,3マイル離れた所に妹と一緒に住んでいた。電車賃は10セントだったが,わたしは1日20セントを節約するために毎日往復の道を歩いたのである。わたしは何としてでも大学に行きたいと思った。そして往復の道を歩くことによって,わたしの目標はどんどん実現していった。こうしてわたしはアリゾナ州の家に帰りアリゾナ大学へ入るだけの十分なお金をためたのである。」(「決心—なぜ今することが大切なのか」『聖徒の道』1971年4月号,263)
まとめ
O・レスリー・ストーン長老は次のように述べている。
「絶えず自分の進歩を評価すること。わたしたちは義にかなった生活をして自分の創造された目的を達成するために,常に過去を反省し,現在の自分の状態を考え,将来の目標を定めるようにする必要がある。これなくしては,目標達成はほとんど望めない。」(「結婚生活を実りあるものとする」『聖徒の道』1978年10月号,91)
目標を設定し,それを達成するための計画を立てて実行し,進歩を評価し,さらに新たな目標を設定する。この過程を繰り返すことにより,わたしたちは完成へと近づいていくのである。天の御父はわたしたちが目標を定めることを喜ばれ,目標達成に必要な援助を与えてくださるであろう。
教師の準備
レッスンの前に以下のことを行う。
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祈りをもって個人の目標を選定する。以下の分野の中から一つの目標を選んでもよい。
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祈り
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聖文の勉強
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家庭の夕べ
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神殿結婚
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系図
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伝道活動
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什分の一
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清い思い
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ホームティーチング
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選んだ目標を日記に書き込むか,紙に書いて目につく場所に貼る。その目標を達成することを決意し,祈りにより助けを願い求め,全力を尽くすことを天の御父と約束する。
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実生活の中で家族が願っている事柄について,家族全員で話し合う。上記の分野の中から一つ選んで目標を定め,家族がそれを達成できるように援助する。
教師の準備
レッスンの前に以下のことを行う。
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黒板とチョークを準備する。
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レッスンの中で話や聖句を読むよう生徒に依頼する。