第10課
フェローシップ:神権にかかわる責任
目的
神権者がフェローシップを行って,教会員を強めるようになる。
導入
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教義と聖約18:10を読む。
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神の前で一人一人はどれほど大切だろうか。
わたしたちは皆天の御父にとって非常に大切な存在である。だれであろうと,どこに住もうと,人種や言語が異なろうと,神の業と栄光は人に不死不滅と永遠の命とをもたらすことである(モーセ1:39参照)。この業を推し進めるために,主は地上に神権を回復され,わたしたちに貢任を与えられた。すなわち,主がわたしたちを愛されたように互いに愛し合うという責任である。
聖典は,自分自身のように他の人々を思いやるようにと教えている(教義と聖約38:24)。兄弟姉妹たちが天の御父に忠実な人々のために備えられた祝福を受けられるように援助するのは,わたしたちの責任であり特権である。
「わたしたちがこの世にいるのは,お互いに成長を助け,お互いが愛を示し,良き業を行うよう励ますためであって,裁くためにいるのではない。活発でない人や道を誤った人を励ますのはわたしたちの責任である。わたしたちには,『教会の中に罪悪がないように,互いにかたくなになることのないように,偽り,陰口,悪口のないように取り計らう』義務がある(教義と聖約20:54)。」(デルバート・L・ステイプレー「永遠の栄えに至る道」『大会報告1973-75』52)
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ルカ22:32を読む。
ハロルド・B・リー大管長は次のように述べている。「現在わたしたちの周囲には,霊的な自殺の危機にあって……苦悩の叫びを上げている人たちが大勢いる。わたしたちが遅れずにその苦悩の叫びに気づきさえすればわたしたち自身が彼らを救う手立てとなり得るのである。」(「神権の強さ」『大会報告1970-72』329)
教会におけるフェローシップ
フェローシップとは,福音の完全な祝福を享受するために,励まし合い助け合うことである。すなわち,好意を示し経験を分かち合い,愛と奉仕の業を広げ援助の手を差し伸べ,親切な行いをすることである。親しい友人もしくは隣人となって,彼らの心に自分は大切で必要とされる存在であるという思いを抱かせることである。
ほかの人々のために時間,才能,財産などを使うことにより,わたしたちの兄弟愛は深くなる。この兄弟愛についてパウロは次のように述べている。新しい教会員はもはや異邦人ではなく「聖徒たちと同じ国籍の者……なのである。」(エペソ2:19)
わたしたちは良き友人や隣人となって,すべての人に努めて愛を示すべきであるが,新しい会員やあまり活発でない会員に援助と友情の手を差し伸べるのは,神権にかかわる基本的な責任である。教会では神権者がこの責任を果たせるように様々な援助手段を用いている。例えば,ホームティーチングなどのプログラムを行って,兄弟姉妹に対する奉仕を奨励する。集会を開いて,互いに交わる機会を提供する。わたしたちの愛と関心を的確に伝える方法について指導する。
わたしたちは教会外の人々や教会になじめない人々に常に関心を寄せなければならないが,父親,母親,息子あるいは娘が教会員でない家族にも目を向けるべきである。このような家族にはわたしたちの援助が必要である。彼らをフェローシップして愛と理解とを示すことにより,家族全員が教会員ではない家族を福音において一つに結ぶ手助けができる。
フェローシップを必要とする人々を黒板に列挙して,これまでの概念を要約する。
フェローシップの方法
周囲の環境や人間関係に影響されやすい人にフェローシップするには,どうすればよいだろうか。ある家族は,フェローシップしたときの経験を次のように語っている。
「わたしたちの隣に座った見知らぬ人は,何となく窮屈そうでした。まっすぐ前を見たままで,かすかに息をつく気配がするだけでした。いつもなら友達になるきっかけを作ってくれる我が家の幼い子供たちに,ほほえむこともしませんでした。集会が終わると,夫はそのいかめしい男性を家庭に招待し,デザートを一緒に食べるように勧めました。すると,彼の寂しげな顔に初めてほほえみが浮かびました。『わたしは先週バプテスマを受けたばかりなのですが,こちらのワードに転入することになりました。』それ以来,彼は一週間に幾度も我が家を訪れて,熱心に〔福音に関する知識を蓄え,〕聖典や個人的な問題について話し合いました。わたしたちの兄弟が成長していく姿を見るのは大きな喜びでした。彼はもはや見知らぬ異邦人ではなかったのです。」(スーザン・スペンサー・ズモレック,“The Strangers within Our Gates,” Ensign,1976年3月号,49)
フェローシップはこのような方法ばかりでなく,ホームティーチングの中でも行われる。ホームティーチャーの助けを受けて息子とともに活動に参加するようになったある姉妹は,次のように述べている。
「離婚を経験してひどく傷ついたわたしは,新たな生活を始めたいと思いました。そこで,幼い息子を連れて,大学を卒業するために南部に引っ越しました。南部の気候は温暖だと思ったので,セーターや毛布はすべて置いて行きました。ところが,冬になると避暑地の小さな別荘は透き間風が入ってとても寒かったのです。わたしは火をたくことも,毛布を借りに行くことも,怖くてできませんでした。知っている人はだれもいないのです。わたしは離婚したので教会の方々とはうまくいかないと感じていましたし,〔困っていること〕をだれにも知られたくありませんでした。そこにホームティーチャーが訪問してくださいました。どんなにうれしかったことでしょう。わたしたちを心から歓迎してくださり,それ以来,電話もなく留守がちな我が家を定期的に訪れ,しばしば家族の活動にも招いてくださいました。そして,わたしは何の気遣いもなく彼らから毛布を借りられるようになりました。」(スーザン・スペンサー・ズモレックによる引用,The “Strangers within Our Gates,” Ensign,1976年3月号,47—48)
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この話の中で使われたフェローシップの方法を黒板に書く。
真心から人々と親交を深めようとする人は,日曜日の集会だけでなく週日のあらゆる機会と活動を通してフェローシップを行う。例えば,地域社会や教会の催し物,社交活動,あるいは家庭に人々を招待してその機会を作るのである。フェローシップはまことの聖徒を見分けるしるしでもある。イエスは次のように述べておられる。「あなたがたは,わたしが旅人であったときに宿を貸してくれた。」(マタイ25:34-36参照)
次の話は,まことのフェローシップを行う方法を示している。
生活に喜びを見いだせずに孤独な毎日を送っていた青年がいた。教会への出席も途絶えがちで,教会の責任を果たすことが難しい状態だった。そうしたある日,彼は二人の兄弟から家庭の夕べに招待された。二人とも妻に先立たれた人だった。
やがて,月曜日の夕べは彼にとって一週間のうちで最も大切な時間となった。毎週レッスンに加わり,福音についていろいろなことを話し合った。彼はこれまで以上に熱心に祈るようになった。彼の
二人の兄弟は彼を受け入れ,最善を尽くしてフェローシップした。教会ではいつも彼のそばに座り,よく夕食に招待した。また,一緒に買物に行き,家の修理を手伝った。
それから間もなく,彼はほかの人々に手を差し伸べ,教会の務めを果たすようになった。ある日,彼が自分の生活における喜びをあれこれ考えていたとき,ある兄弟から,「何が君をそうさせたのですか」と尋ねられた。
彼は次のように答えた。「二人の友人が示してくれた愛です。それがいちばん大きかったと思います。わたしは彼らの愛を信じて安心感を覚えるようになりました。そして,彼らのおかげで自分では思ってもみなかったことができるようになりました。」(『扶助協会テキスト1978-79』128ページより翻案)
二人の兄弟が孤独な青年にフェローシップするために用いた方法を,黒板に書き加える。
アーネスト・エバーハード・ジュニア兄弟は,フェローシップについて次のような話をしている。
「スーザン・マンソンは活発な姉妹であり,教会員ではない夫が教会に関心を持ってくれる日を忍耐強く待っていた。夫のジャックはいつもこのように言った。『君や子供たちが行くのはいいけれど,ぼくは興味がないんだ。』
彼はある程度本心を述べたのであるが,恥ずかしさも感じていた。……〔ついに〕スーザンは,ワード伝道主任のコールドウェル兄弟に相談して,何かよい方法がないか尋ねた。すると,伝道調整集会でこの問題を採り上げることを約束してくれた。
集会では……近所の人が集まってパーティーを開くのがいちばん良い方法だろうという結論に達した。そこで近所に住む3家族に依頼して,マンソン家族と求道者のノーブル家族のために屋外パーティーを開いてもらった。……そして,3家族全員がそのパーティーに出席して,フェローシップを行った。
最初は行くのを嫌がっていたジャックも,打ち解けた自然な雰囲気に驚いて喜んでパーティーに加わった。そして日が暮れるころには,次回のパーティーとして2週間後ににピクニックに行こうという提案を熱烈に支持していた。パーティーでは教会へ出席することに関する話はまったくしなかった。しかし,ジャックの家を塗り変える件が話題に上ると,アレン・ウェストオーバー兄弟はその場で計画を話し合い,土曜日には自分のはしごを持ってジャックの家を訪れた。そして夕方まで働いて仕事を終えると帰って行った。スティーブ・コールドウェル兄弟やグレン・リバーズ兄弟も何度か手伝いに来てくれた。
翌月になって長老定員会があるプロジェクトを計画すると,ジャックは何とか手助けがしたいと思った。……夏になると,教会員と過ごす時間がますます多くなり,いろいろな事柄について楽しく語り合った。例えば,魚釣りの話や政治,子供の養育,庭造り,夫婦間の問題の解決,多忙な仕事の処理などがよく話題になった。ジャックは聴くだけでなく,自分の考えを積極的に話した。ほかの家族を交えて開かれた社交の夕べでは,家庭の夕べと霊的なレッスンも行われた。スーザンにとって大きな喜びは,ある晩ジャックが宣教師のレッスンを受けて……教会に入る気持ちになったと話してくれたことであった。」
エバーハード兄弟は,さらに次のように付け加えている。「真心の伴わないフェローシップほど空虚なものはない。まず,親しくなろうという気持ちを抱くことである。」よい聴き手になって,相手の好みや家族の活動,仕事などについて知ることも大切である。フェローシップを受ける人々は,わたしたちが彼らに関心を寄せていることを知る必要がある。(アーネスト・エーベルハルト,“That Part-Member Family,” Ensign,1978年7月号,38—39)
この話では黒板のリストのほかにどのようなフェローシップの方法が使われただろうか。答えを黒板に書き加える。視覚資科10-a「フェローシップ活動」について話し合う。生徒の提案があれば,そのほかの方法を書き加える。
まとめ
フェローシップは,神権にかかわる重要な責任である。新しい改宗者やほかの教会員が,求められ,必要とされていると感じられるように助け,彼らが教会に積極的になれるように励ますことである。人を助けて活発にするという責任を受け入れるならば,わたしたちは喜びと満足とを味わうであろう。主は,この喜びが永遠に続くことを約束しておられる。
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教義と聖約18:15-16を読む。
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割り当てておいた生徒に,自分が受けたフェローシップについて証してもらう。
チャレンジ
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新しい改宗者を一人決めて,フェローシップする。
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ホームティーチングの担当家族に対してより良いフェローシップを行う。
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活発でない会員を一人選んで,教会に戻れるようにフェローシップする。
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すべての教会員,特に教会になじめない会員と親しくなる。
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家族全員が教会員ではない家族があれば,その人を含めた教会の活動を行う。
教師の準備
レッスンの前に以下のことを行う。
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一人の生徒にフェローシップについて証を述べる割り当てを与える。最近の改宗者や教会に再び活発になった会員,あるいは人を助けて活発にした経験をもつ会員の中から選ぶとよい。
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視覚資料10-a「フェローシップ活動」の表を準備する。
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レッスンの中で話や聖句を読むよう生徒に依頼する。