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第18課:自制心をはぐくみ,教える


第18課

自制心をはぐくみ,教える

目的

自ら自制心をはぐくむ方法と,子供たちの自制心を強める方法を学ぶ。

導入

アラビア馬をえり分けて訓練するには,次のような方法を用いる。アラビア馬は重要な仕事に使用されるので,主人に対する絶対的な服従が必要である。そこで,訓練の初期に,主人の命令にすぐにこたえることを教える。その後で,抑圧された状態でどのような行動を示すかテストする。長い間水を飲ませずに囲いの中に入れておき,水は門のすぐ外に置いておく。それから囲いの門を開けると,馬は一斉に水に向かって走り出す。馬が水のすぐそばまで行ったら,主人は笛を吹いて馬に命令する。のどが渇いているので,笛にまったく反応しない馬もいる。しかし,すぐに振り向いて主人のところに来る馬もいる。これらの従順な馬は,自制心を身に付けたので最も重要な仕事に就かせる。そのほかの馬は,あまり重要でない仕事に使うのである。(スターリング・W・シル,Leadership1958年,1:62—63)

わたしたちの欲望や激情は,これらの勇ましくて力強いアラビア馬に似ている。もし勝手気ままに走らせて乗りならすことをしなければ,わたしたちは自制心を失って,霊的な問題に陥るであろう。この点を理解しておられる主は,わたしたちに必要な助けを与えてこられた。アラビア馬が主人の笛により行動を促されたように,わたしたちは主であるイエス・キリストから送られる,みもとに来るようにという合図により励まされるのである。

わたしたちには選択の自由が与えられているので,どのような選択もできる。そして,その選択が自分の将来を決めるのである。義を選択すれば,神の王国で仕えるにふさわしいことを自ら証明できる。しかし,正しい選択をするには,先ほどの馬のように,訓練が必要である。この訓練により,欲望や激情を制する方法を身につけ,誘惑に遭ったときもわたしたちの主の声に聞き従うことを学ぶのである。

自制心は永遠の進歩に不可欠である

自制心はわたしたちの欲求や行動,習慣を制する内面的な力である。また,天の御父のもとに帰って共に住むために欠くことのできない力である。自制心をはぐくむには常に努力が必要とされる。しかし,これを身に付けると,正しいときに正しい選択ができるようになる。

神権者にとって自制心は特に大切である。自分自身を制することができるまでは,人に効果的な助言を与えたり,仕えたりすることはできない。しかし,一度自制心を身に付ければ,自分の子供や他の人が訓練を積めるように援助できる。

わたしたちはバプテスマを受けたときに生まれ変わり,永遠の命に至る道をキリストに従って歩み始めた。しかし,キリストに従うためには,俗念を捨て,自分の弱点や不完全な部分を克服しなければならない。救い主は,次のように教えておられる。「だれでもわたしについてきたいと思うなら,自分を捨て,自分の十字架を負うて,わたしに従ってきなさい。」(マタイ16:24)また次のようにも教えられた。「狭い門からはいれ。滅びにいたる門は大きく,その道は広い。そして,そこからはいって行く者が多い。命にいたる門は狭く,その道は細い。そして,それを見いだす者が少ない。」(マタイ7:13-14

狭い門から入るには,自制心と克己心が要求される。これは,誘惑に打ち勝つことを意味している。主は自分を捨てる人々に特別な報いを約束しておられる。すなわち,真理を知りそれに従って生活する人々は,誤った選択や罪のもたらす結果から逃れることができる,という約束である。

自制心は自由をもたらす

天の御父が戒めをお与えになるのは,わたしたちを愛し,わたしたちが悲しみから守られるように願っておられるからである。また,わたしたちが自制心を身に付けられるように助けて,祝福を与えたいと願っておられる。

福音の原則に従うと,わたしたちはどのような祝福と自由を得るだろうか。以下の原則を参照し,自制心による従順がもたらす自由について話し合う。

什分の一の律法

什分の一の律法に従うと,利己心を克服できるようになる。

知恵の言葉

この戒めに従って生活すると,タバコ,酒,麻薬などのもたらす悪影響から逃れられる。

純潔の律法

主が定められた範囲で,肉体的および精神的欲求を制することができるようなる。これは,悲しみや後悔の念からわたしたちを解放する。

自制心が養われると,朝早く起きる,毎日聖文を勉強する,割り当てをすぐ果たすなど,建設的な習慣を身に付けることができる。このような習慣は,わたしたちを混乱から解放する。

自制心を身に付けるには

この聖句によれば,自制心を身に付けるには何が必要だろうか。(罪と悪事を憎む,悔い改める,キリストを信ずる,謙遜けんそんになる,あらゆる誘惑に立ち向かう,善い行いに決して疲れない,知恵を得る,神の戒めを守る,すべての行いについて主と相談する。)

自制心の獲得は,人の一生を通して行われる。それには,自分自身を知るとともに,わたしたちが従うべき福音の原則について知らなければならない。すなわち,それらの原則に従って生活するために目標を定め,それを達成しようとするときに力と助けを与えてくださる主に頼るのである。

  • 黒板に以下の3項目を書くか,準備した表を掲示する。

    1. 自分自身を知る。

    2. 義にかなった目標を定める。

    3. 祈りと聖文の研究により主に頼る。

自分自身を知る

福音についてさらに深く学び,経験を積んでいくと,自分の長所と短所が分かるようになる。そして,悪い習慣や感情を克服して,良いものに変えたいという望みが強くなる。このような望みが,自分自身を改善する力になるのである。

デビッド・O・マッケイ大管長は,人の内面に巣くう悪には,嫉妬しっと,憎しみ,ねたみ,敵意などがある,と述べている。そして,次のように続けている。「そのような悪は,すべて抑制し,克服しなければならない。必要なのは自制心である。怒りを抑え,嫉妬を抑え,ねたみを抑えなさい。これらすべてのものは,人の霊に有害である。」(Gospel Ideals1954年,356)

これらの感情を抑えることは,容易ではない。自ら変わるためには多くの時間が必要である。しかし,努力するならば,内面の悪を克服する忍耐力と勇気とを養うことができる。

義にかなった目標を定める

自制心を養う効果的な方法は,目標を定めて,それを達成するために全力を尽くすことである。目標を固く心に留めて,自信を持ち,目標に向かって努力するならば,望むとおりの自制心が得られるであろう。この過程で忍耐力が要求されることは言うまでもない。しかし主は,義にかなった生活をして最後まで堪え忍ぶ者は,昇栄すなわち永遠の命という目標に到達できると述べておられる(教義と聖約14:7参照)。

  • 現在あなたが目指している目標は何だろうか。

祈りと聖文の研究により主に頼る

誘惑に打ち勝って永遠の目標に到達するには,イエス・キリストを信じる信仰が必要である。毎日の祈りと聖文の研究は,この信仰を育はぐくみ,問題を克服する力を養う助けになる。さらに聖文の中には,主のしもべの生活が詳しく記されており,わたしたちが従うべき模範を示している。これらの模範を読むことにより,わたしたちは古代の人々が自制心を養ったように,自分も同じことができるという確信を持つのである。

  • 聖文の勉強や祈りを通して問題を克服した経験について話してもらう。

子供の自制心を養う

  • 視覚資料18-a「賢明な両親は子供に自制心を持つように教える」を見せる。

家庭は子供たちが自制心について学ぶ場所である。わたしたちは子供に正しい模範を示さなければならない。もしわたしたちが欲望や激情を抑えることができなければ,子供に自制心を期待するのは無理である。子供に自制心について教えるには,正しく段階を踏んで教えなければならない。間違った教え方をしたり,厳しく抑えつけたりすれば,子供は自分自身を制する方法を学ぶことができない。次に挙げる4原則は,子供を正しくしつける際に役立つであろう。

  • 4原則を黒板に書くか,準備した表を掲示する。

    1. 規則を作る。

    2. 子供に福音の原則を適用するように教える。

    3. 子供に責任を与える。

    4. 愛をもってしつける。

規則を作る

デビッド・O・マッケイ大管長は,子供は幼年期に従順について学ぶと述べている。幼いころから両親が従順について教えなければ,大きくなってそれを身に付けるのが難しくなるだろう。マッケイ大管長は,子供には自由に成長する機会を与えるべきであるが,もし規則を破るようなことがあれば,優しく,しかし断固とした態度で,それを正すべきであると,特に強調している(Stepping Stones to an Abundant Life, comp. Llewelyn R. McKay,1971年,38)。

子供に福音の原則を適用するように教える

N・エルドン・タナー副管長は次のように述べている。「両親は子供が幼いころから数々の輝かしい真理について教えなければならない。すなわち,彼らは神の子供であり,イエス・キリストの福音に従う道を選ぶことは,この世で成功と幸福を得,来るべき世で永遠の命を享受する唯一の方法であるという真理である。また,サタンは実在し,意のままにすべての手下を使い,人を誘惑して悪事を行わせ,過ちの道へと導いてとりこにし,正しい道を歩めば得られるはずの至上の幸福と昇栄から人々を遠ざけてしまうことを教えるのである。」

タナー副管長は続けて次のように述べている。「善悪を見分ける方法を,子供に独りで学ばせてはならない。子供に責任を負うだけの備えができているか,適切な判断を下し,選択すべき物事の価値を検討し,その結果を〔体験する〕だけの能力が身に付いているか,それを見極めるのは両親である。子供たちを教える一方で,正しい行動がとれるように訓練し見守るのは,両親の責任である。子供が泥で汚れていたら,自分でふろに入るかどうか決められる年齢に達するまで待ってはならない。病気にかかったときに,薬を飲むかどうか自分で決められるようになるまで待ってはならない。学校に行くことも,あるいは教会に出席することも同様である。」(Seek Ye First The Kingdom of God87)

子供に責任を与える

L・トム・ペリー長老は次のように述べている。「わたしたちは子供を正しく教え,〔子供の〕日常生活の中で主に対する信仰と信頼感を徐々にはぐくんでいかなければならない。また,適切な訓練を施し,子供が霊的に成熟し始めたら,子供の内面で次第に増大していく力を発揮する機会を与えるべきである。わたしたちの信仰と信頼を,そしてわたしたちの持っている責任を,子供たちに与える必要がある。」(Conference Report, São Paulo Area Conference,1975年,12)

子供に自制について教える方法はたくさんある。F・エンツィオ・ブッシェ長老は,次のような方法をとった。

「わたしたちは子供の自尊心をはぐくむために,……子供が自分で判断を下すまで放っておくことが多い。経験からも分かるように,子供の誤りを見つけて指摘する人よりも……子供が自分で誤りを発見できるように助ける人の方が,教師として優れている。自分の誤りに気づいた子供は,すでに改善への一歩を踏み出しているからである。

わたしの息子がある罪を犯したときのことである。わたしたち両親は,息子自身でその罰を決めるように言った。息子は考えて,1か月の間テレビを見ないという罰を下した。わたしたちは少し厳しすぎると思った。しかし,祖母の家を訪れた息子は,両親には分からないからテレビを見るようにと勧められたとき,その勧めは間違っているとはっきり言い切ったそうである。それを聞いて,わたしたちはどんなにうれしかったことだろうか。両親にとって,子供が困難な局面を自分の力で打開していくのを見ることほど,大きな喜びがあるだろうか。」(“Provoke Not Your Children,” Ensign1976年3月号,42)

  • ブッシェ長老は,子供が自制心を養えるように何をしただろうか。(自分の誤りを発見することにより自尊心を持てるように助け,白己鍛練ができるように励ました。)

愛をもってしつける

わたしたちは幸福な家庭を築いて,子供たちが平安と安全と愛を感じられるようにする必要がある。もし,子供たちが福音に従った家庭生活の中に幸福を見いだせなければ,福音外のものにそれを求めるであろう。したがって,言うことを聞かない子供をしかった後は,よりいっそうの愛を示すことが大切である。

  • 教義と聖約121:43-44を読む。しかった子供にいっそうの愛を示すのはなぜだろうか。(わたしたちに敵意がないことを子供に伝えるため。敵意を持っていると思い込めば,家にはいたくなくなるだろう。)

  • 以下の例について話し合う。問題を解決するには自制心が必要であることを強調する。生徒の個人的な経験を代わりに用いてもよい。

    1. 鈴木夫婦には10代の子供が3人いるが,子供同士の口論やけんかが絶えない。子供たちが自制心を養って,けんかをやめるように導くには,どうしたらよいだろうか。

    2. 江本夫婦は毎日家族の祈りを行いたいと思っている。ところが,仕事の都合や学校のスケジュール,そのほか各自の予定が妨げになっている。みんなは家族の祈りに集まることが大切であると感じている。家族が自制心を養って家族の祈りを行うために,江本夫婦はどのような助けができるだろうか。

    3. 上田夫婦は,監督から新しい神殿の建築資金を献金するように頼まれたが,彼らの収入では全額を納めることは無理に思えたので断った。しかし,上田夫婦はレクリエーションに使うお金や,新しい洋服など必需品ではないが欲しいものを買うためのお金はいつも十分に持っていた。この夫婦が自制心を養って,神殿のために献金するにはどうすればよいだろうか。

  • 自制心を身に付けた人は,家族に対してどのような働きかけをするだろうか。

まとめ

わたしたちは,シル長老の話に出てくるアラビア馬のように,自制心を養わなければならない。そうすれば,自分も含めて家族全員がこの世のチャレンジに備えることができる。実りある人生を送って天の御父のもとに帰るには,正しい選択をする能力と,欲求や感情を制する力とを養わなければならない。

  • 家族が意識して自制心を養うならば,人生におけるほとんどの問題は克服できる。このことについて証を述べる。『賛美歌』152番「選べ,正義を」を歌う。

チャレンジ

  1. 自分の生活または家庭の中から問題を一つ選び出す。その問題を克服するためにレッスンで学んだ各段階を実践する。

  2. 聖文から自己訓練と忍耐の模範を示した人物について読み,その模範に従う。

  3. 毎日家族の祈りを行う。

参照聖句

教師の準備

レッスンの前に以下のことを行う。

  1. 『福音の原則』第4章「選択の自由」を研究する。

  2. レッスンで使う表を作成するか,黒板に書き出すために準備する。

  3. レッスンのまとめで,「選べ,正義を」(『賛美歌』152番;視覚資料18-b)を歌う準備をする。

  4. レッスンの中で話や聖句を読むよう生徒に依頼する。

子供に教える父

18-a 賢明な両親は子供に自制心を持つように教える