第24課
健康管理
目的
健康を管理し,病気を予防する方法を学ぶ。
導入
肉体の健康は大切な要素である,健康であれば人生における様々な目標を達成しやすくなる。このため,わたしたちは自分自身や愛する人々の健康を維持するにはどうすればよいのか,知る必要がある。常に完全な健康状態を保つことはできないが,主は健康管理にできるだけ努めるよう期待しておられる。
次の話は,多くの家族に見られる健康上の問題に関するものである。
マルタ・モリナは,生まれてわずか8ヵ月のときに重い病気にかかった。このいたいけな幼児は,病気のため体重がわずかの間に著しく減り,唇は乾き,目は輝きを失い,大泉門(頭にあるひし形の柔らかい部分)が落ち込んでいた。どうしてよいか分からない家族は,古くからその地方に伝わる風習に従って病気を治そうとした。しかし,その風習は医学的な根拠が全くなかった。(Teaching Personal and Family Preparedness, lesson22, “Disease Prevention and Good Health”)
マルタ・モリナの病気は,世界中でよく見られ家族にもその原因が分からない病気である。そして,病気の予防法も,治療法も分からなかった。しかし,これは異例のことではない。まったく効果のないばかりか,有害でさえある風習や慣例が,しばしば病気の予防や治療を名目に行われている。その中には,健康上重要な問題を引き起こすものもある。
病気の原因
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病気の原因は何か。
昔の人々は,何が病気を引き起こすのか知らなかった。ある人は,犠牲を正しくささげなかったためだと言い,またある人は,敵の
今日では,ほとんどの病気は病原菌により起こることが知られている。病原菌は,わたしたちの周囲に存在する微細な生物であり,肉眼では見ることができない。病原菌は空気中に飛散して運ばれたり,人から人に直接,または動物や昆虫を媒介として感染したりする。このため,あらゆる方法を用いてネズミや害虫などを駆除しなければならない。
さらに,すべての動物および人の
病原菌が人の体内に入ると,様々な病気を引き起こす。したがって,病気を根絶するには,その原因となる病原菌を撲滅しなければならない。
病原菌の拡散を防ぐ
病原菌を減少または絶滅させるには,以下のような方法がある。
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家の内外,特に病原菌が発生しそうな場所を定期的に掃除する。
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食物には適当な覆いをかけて昆虫や病原菌に触れないようにする。腐敗しやすい食物は,可能なら冷蔵庫に入れて保存する。
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食物は十分に洗って,できるだけ病原菌を取り除く。
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食事の前や用便の後には手を洗う。
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食後は必ず歯を磨いて,虫歯をはじめとする歯の病気を予防する。
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くしゃみやせきが出るときはマスクをして,病原菌の飛散を防ぐ。
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靴やサンダルを履いて,地面からの感染を防ぐ。
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適切な食事と休息を取る。栄養のある食事と十分な休息を取れば,病気にかかりにくい体になり,病気からの回復も早い。健康な身体は病原菌に冒されにくいのである。
健康を守る
健康管理の習慣を身に付けるだけでなく,予防接種によって自分自身を病気から守るようにと医者は指摘している。例えば小児まひはかつて多くの犠牲者や身体障害者を出していたが,近年になって,この恐ろしい伝染病を免疫により予防する方法が発見された。この免疫は,一般的には腕にワクチンを注射することにより得られる。病気によっては,1度の注射で済むものもあるが,一定期間を置いて何度か注射する場合もある。
世界中のほとんどの地域では,保健所や病院で予防接種を行っている。たとえば,はしか,おたふくかぜ,風疹,ジフテリア,百日ぜき,腸チフス,天然痘,小児まひ,インフルエンザ,破傷風などの病気が挙げられる。
予防接種に加えて,水剤,錠剤,固形剤など様々な家庭薬が病気の予防や治療に用いられる。薬は資格ある医師や看護婦の指示に従って慎重に使用しなければならない。医者がほかの人に処方した薬を服用してはならない。
病気を予防するもう一つの効果的な方法は,できれば年に1度,病院などで健康診断を受けることである。病気の初期症状があれば,定期的な健康診断で発見できる。伝道に召されるには健康診断を受けなければならないので,定期的な健康診断は伝道に出る備えにもなる。
病気にかかったときにどうするか
重い病気にかかったら,診療所や病院の医師から最善の治療を受ける。わたしたちは病気のときに医師の助けを求めるだけでなく,普段健康なときから健康管理の指導を受けるべきである。
不幸なことに,病院に行くのは主に対する信仰が欠けているからだと信じている人がいる。主は確かに,病気のときに信仰と神権の力を用いるように望んでおられるが,同時に医学的な知識や治療法を活用するように期待しておられる。
スペンサー・W・キンボール大管長は,大管長になる前に健康上の大きな問題を抱えていた。可能なかぎり最高の健康状態を得たいと思った大管長は,医師に相談した。するとその医師は,難しい心臓の切開手術をしなければならないと言った。大管長は偉大な信仰を持って医師を信頼し,その手術を受けた。
その後大管長に聖任され任命された日に,ラッセル・ネルソン博士から大管長の健康状態に関する手紙が届いた。ネルソン博士は,キンボール大管長が自身の健康状態について心配していると思ったのである。博士は手紙の中で,最近行った精密検査によれば大管長は完全な健康を回復している,と告げた。
「あなたを担当した外科医からお伝えしたいことは,あなたの肉体が
ネルソン博士は,さらに次のように記している。「1972年4月12日に行なわれたあの危険な手術に際して,……わたしは自分自身の人間としての欠点とあなたの使徒としての召しについて考え,激しい不安に襲われました。これまでで最も危険で複雑な手術を目の前にしていたのです。しかし,手術は細部に至るまで技術的に
キンボール大管長は主を信じ,医者を信頼した結果,主の預言者としての責任を遂行できるようになった。
わたしたちも病気のときに適切な治療を受け,症状をよく知っておけば最良の健康状態を楽しむことができる。また,早い時期に適切な治療を受ければ,多くの場合,好結果がもたらされるものである。
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どのような症状が起きたら医者の診察を受けるべきだろうか。
次の各症状について話し合う。
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原因不明の出血や異常な分泌物がある
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傷が回復しない
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せきが止まらない,呼吸が困難である
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発熱が続く,高熱が出る
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悪寒がする
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排便排尿が困難になる
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皮膚に黒ずんだ
斑点 や湿疹 が出る -
原因不明の体重の減少
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激痛が続く
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嘔土 または下痢が続く -
失神,発作を起こす
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視覚困難,視覚のぶれ,そのほかの異常がある
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重度のやけどまたは体の広範囲に及ぶやけどを負う
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痛み,はれがある
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意識を喪失する
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そのほか身体や機能に異常な変化が見られる
(『個人と家族の健康の備えに関する教え』第26課 “Immunizations”「免疫」,第27課 “Preventing Serious Disease”「深刻な病気を防ぐ」参照)
以上のような症状が起こったら,すぐに医師と連絡を取るべきである。適切な治療を受けずに放っておく場合も多いが,そのような行為は,重度の障害や病気の長期化,あるいは死にさえもつながることがある。
わたしたちは,霊の宮である肉体の健康に気を配らなければならない。肉体が弱ったり,病気に冒されたり,十分な機能を果たさなかったりすれば,活動的な生活を送るうえで大きな妨げになるであろう。
まとめ
わたしたちは自分自身とほかの人々に救いをもたらすためにこの地上にいる。この目的を達成するには,健全な肉体と精神が必要である。両親は自ら健康を維持するだけでなく,知恵と正しい判断力を用いて子供たちを育て,健康を保つための原則と病気の治療法とを教える必要がある。
わたしたちは健康を維持するために,様々な医療施設を利用できる。したがって,ほとんどの病気は予防または治療することが可能である。主は,伝染病の予防や治療のためにこれらの施設を利用するように望んでおられる。また,治療のためにできる限りのことを行うように期待しておられる。それには,現代医学の治療法を用いることと,信仰,祈り,神権の力を行使することが含まれている。これらのことをすべて行ったうえで,主の
ブリガム・ヤング大管長は次のように教えている。「それゆえ,現世での生活を最大限に活用するために,あらゆる健康の律法を守り,労働,勉強,休息,レクリエーションのバランスを適度に保って,より良い生活に備えようではないか。また,これらの原則を子供たちに教えようではないか。」(Discourses of Brigham Young, sel. John A. Widtsoe,1954年,186)
チャレンジ
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可能なら家族全員が予防接種を受けるようにする。子供たちに健康を保つ方法を教え,実行する。
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生活環境を点検する。病原菌が繁殖するような場所があれば,必要な処置を施して清潔にする。
参照聖句
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教義と聖約89章(健康に関する主の律法-知恵の言葉)
教師の準備
レッスンの前に以下のことを行う。
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地元の医療関係者と連絡を取り,医療に関する情報を集める。
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利用できる医療施設
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予防接種とそれを受ける方法
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母子の健康診断
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自己の最大の可能性を発揮するには,最善の手段を用いて健康を維持する必要があることを,父親や青少年たちが理解できるようにする。
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家庭の周囲を清潔に保つ必要性が理解できるように教える。