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第7課:個人と家族の備え


第7課

個人と家族の備え

目的

個人と家族の備えについて理解し,実践するための計画を立てる。

導入

1971年2月9日の早朝,カリフォルニア州サンフェルナンド盆地一帯に地震が起こった。イナ・イーストン姉妹は,家族に起こったことについて次のように記している。

「2月9日火曜日の早朝,地震が起こりました。その直後から2月12日の金曜日の夕方まで,我が家では17人から22人のお世話をしなければなりませんでした。一昼夜の停電,皆さんがいらっしゃる間は暖房や調理のためのガスもストップし,また水も十分にありませんでした。

……わたしたちの家はこぢんまりした家です。その限られたスペースにこんなに多く人を収容するのはほんとうに大変でした。このような状態でも,わたしたちは上手な家庭の管理ができました。わたしの家に来てくださったすばらしい人々,そして教会の食糧と水の貯蔵計画に感謝しています。……近くの商店はほとんどが壊れ,道路はひび割れていました。ですから買い物に出かけることはできません。わたしたちは,食糧と水を貯蔵しておいてほんとうによかったと思います。……

わたしたちはいろいろなことを学びました。何を貯蔵すればよいかも分かりました。石けん,冷たい水にも溶ける洗剤,古いタオル,……トイレットペーパーやペーパータオル,歯ブラシと歯みがき粉。……家族全員の着替え1回分はどうでしょうか。救急箱も必要です。わたしたちは足に傷を作り,体のあちこちにけがをしました。ほとんどは大けがではありませんでしたが,包帯を巻かず,手当てをしなかったため,ひどくなってしまいました。子供たちは空腹と不安で泣いていました。赤ちゃんは特にむずかりました。幼児食,哺乳ほにゅう瓶,毛布,ミルク,紙おむつなども大切です。……忘れがちなのが解熱剤や糖尿病などの薬です。これらがないと,大きな悲劇をも招きかねません。

携帯用ガスコンロはとても便利です。この燃料の貯蔵は安全でしかも簡単です。携帯用のガス燈は停電のときにとても役立ちます。……

申し上げたいことはいろいろありますが,わたしたちが心に留めておかなければならない大切なことは,主がわたしたちに,いつか必要となる日に備えて,食糧や水,衣類,お金を蓄えるように言っておられることです。わたしたちは実際に必要でした。また,指導者の勧告に従った結果,家を出なければならない友達やワードの兄弟姉妹とも助け合うことができました。」(『扶助協会テキスト1978-79』80-81)

主の計画

教会員に自立と安全とをもたらす主の計画は決して難しいことではなく,個人の必要と家族の必要を満たすために最善を尽くすことである。例えば雇用条件を改善する,倹約する,少なくとも1年分の生活物資を家庭に貯蔵する,将来の必要を予期してそのために計画する,自尊心を高める,などが挙げられる。

主の計画の基盤は,労働の原則にある。主はすべての人が自分の必要を可能なかぎり自分で満たすように期待しておられる。つまり,教会のおもな目的は,教会員が自立できるように助けることにある。したがって,備えというものは家庭における個人と家族から始まるのである。

  • 一人の生徒に,『福音の原則』の中の「家族の責任」を読んで発表させる。

  • 愛する人々の必要を満たす責任は,まずだれにあるだろうか。

「家族の備えについて語るとき,わたしたちは予見され,予期される必要,しかも賢明な準備をすることによって満たすことのできる必要について述べなければならない。そうすればたとえほんとうに緊急事態が発生したとしても,十分な計画によってそれを緩和することができるのである。」(H・バーク・ピーターソン,“The Family in Welfare Services,” Walfare Services Meeting,1975年4月,5)

もしわたしたちが自分の必要を満たすことができなければ,まず親族に援助を求めなければならない。例えば,体の障害や自分で対処できない問題を抱えた教会員で,家族で与え得る以上の助けが必要な人もいる。この場合親族がこの家族を助けるべきである。しかし,親族からの援助が十分でなければ,教会に対して援助を求めることができる。

十分な備えをしておけば自分の家族を養うだけでなく,困っているほかの人々を助けることもできる。これが主の計画である。すなわち,霊的な成長は,無私の心でほかの人々のために自分の持てる時間や才能,あるいは自分自身をささげることにより得られるのである。

  • 天の御父がわたしたち個人や家族に対して,できるかぎり自給自足するように願っておられるのはなぜだろうか。わたしたちは自分の必要を満たすためにほかの人々から援助を受けるべきだろうか。困っている人々を助けることにより,どのような霊的成長が得られるだろうか。

家族の備え

  • 視覚資料7-a「個人と家族の備え」を掲示する(黒板に書き写してもよい)。

主は預言者を通じて,以下の6分野において現在と将来のために備えるよう指示しておられる。

  1. 食糧の生産と貯蔵,そのほか必要物資の確保

  2. 正しい食生活と運動

  3. 互いに和合し,神と調和した幸福な生活

  4. 読み書きと学習の能力

  5. 技術の向上と雇用条件の改善

  6. 賢明な財政管理

食糧の生産と貯蔵,そのほか必要物資の確保

国によっては食糧貯蔵が禁じられている場合がある。しかし,法律的に問題がなく可能な地域では,各個人または家族が最低1年分の必要を満たすに十分な食糧を貯蔵すべきである。これは食糧の生産と貯蔵を行うことを意味している(第16課の家庭菜園に関するレッスンを参照する)。また,それらの食糧を腐らせないように定期的に利用して入れ替える必要がある。(すなわち,貯蔵食品を回転させる。)衣服の作り方を学ぶことや,可能であれば,燃料や医薬品を蓄えることも大切である。生産と貯蔵を行えば,緊急時に自分自身や家族だけでなく,周囲の人々をも助けることができる(『神権の義務と祝福A』第22課「家庭における生産と貯蔵」参照)。

  • 家庭における生産と貯蔵を進めるために何ができるだろうか。

正しい食生活と運動

緊急事態に十分対処できるように健康で強じんな体力を養うには,栄養豊かな食物を取らなければならない。このために主から与えられているのが,知恵の言葉(教義と聖約89章参照)である。この聖句には,健康を維持するための勧告と,健康の律法に従って生活する人々に約束される祝福とが記されている。病気を避けるには,家の内外を清潔にし,地元で定められている予防接種を受けることである。定期的に運動をし,身体を清潔に保ち,そのほか健康維持に必要な習慣を身に付けることも大切である。

  • 家族の健康状態を向上させるために何ができるだろうか。

互いに和合し,神と調和した幸福な生活

問題や不幸に打ち負かされることなく対処できれば,家族が社会的および情緒的な面でより備えられるようになる。ボイド・K・パッカー長老は次のように述べている。

「人生は試しの期間である。不安も失意も落胆も失敗も,ある程度は正常である。

ほんとうに苦しい日があっても,それがしばらく続いても,しっかり立ってそれを直視するように,教会員に教えていただきたい。そうすれば事は解決するであろう。

苦闘の人生には大きな目的がある。」(「主の方法によって情緒面の問題を解決する」『聖徒の道』1980年10月号,146)

家族に問題が生じた場合,互いに愛し,助け,理解し,励まし合うことが大切である。互いに助け合うことによってのみ,問題を克服する精神的な強さが養われる。次に挙げるのは,このような強さを培った家族の話である。

その家族には両親と3人の息子,それに2人の娘がいた。いちばん下の娘は生まれつき脳に障害があり,正常に発達成長できないまま,17歳で死んだ。

「愛にあふれた母親の休むことない世話と,優しい父親の忍耐と温かい心遣い,また気高い3人の兄たちの理解と姉の思いやりによって,その娘は家族の中で特別な存在になった。……父親はこのように語っている。『末娘を世話することにより我家にもたらされた愛と忍耐と謙遜けんそんな心は,金銭では決して得ることのできないものでした。』これこそ,まさに悲劇を……祝福の機会に転じた人々である。」(マービン・J・アシュトン,“Family Home Storage,” in 1977 Devotional Speeches of the Year69)

この話からも分かるように,親切で祈りと愛に満たされた家族のきずなは,家族一人一人の生活に大きな祝福をもたらす。そのようなきずなをすべての家族が求めるべきである。マービン・J・アシュトン長老は次のように述べている。「わたしたちが受ける最大の〔援助〕は,しばしば家庭という囲いの中から差し伸べられる。時には最も必要とする助け手が,自分に最も近い人である場合がある。……神は,家族が互いに助け合うように定められた。……わたしたちは家族の手を取り,家庭の愛が実在し永続することを示すべきである。」(Conference Report,1973年10月,131;“He Took Him by the Hand,” Ensign1974年1月号,104)

  • 家庭内で互いに助け合う気持ちを育て,精神的に支え合うことが大切なのはなぜだろうか。人を助け,理解し,愛することが,平安と幸福に欠くことができないのはなぜだろうか。

読み書きの能力

『教義と聖約』の中で主は次のように述べておられる。「神の栄光は英知である。言い換えれば,光と真理である」と言われた。そして「子供たちを光と真理の中で育てるように」と命じられた(教義と聖約93:36,40)。子供たちをこのように導くには,読み書きと基本的な計算能力が必要である。そこでわたしたちは定期的に聖文を研究し,同時に良書を読み,これらの能力を家族に修得させるためにあらゆる手段を利用する。すなわち,自分を含めて妻子が,公共機関などを利用して教育を受けられるようにするのである。

家族会員が読み書きを修得する必要があるのはなぜだろうか。なぜ教育は重要なのだろうか。

技術の向上と雇用条件の改善

わたしたちは可能なかぎり,家族を養うだけの収入があって自分の満足がゆく仕事に就くべきである。また,教会の教えと調和し,教会員としての義務を果たす妨げにならない職業を選ぶ必要がある。若人は職業を選択するに当たって,助言に耳を傾けるべきである。現在職業に就いている人は,家族の必要を十分満たすよう自分の職業についてよく勉強する必要がある。

ある哲学者はこう言った。「魚を与えれば,その人は一食を得,魚のとり方を教えれば,その人は生涯食を得る。」個人と家族の備えに関するこの基本原則は,次の家族に当てはめて考えることができる。

ジョンは失業中で,家には小さな子供が二人いた。以前に仕事を見つけてわずかな期間働いたが,自分の性に会わないことを理由に転職先も決まらないまま辞めてしまった。現在ジョンは家賃の支払いを迫られており,妻は健康上の理由で働きに出ることもできない状態である。

この家族は問題を解決するために何をすればよいだろうか。妻はどのような援助ができるだろうか。子供たちはどうだろうか。父親が現在の仕事に不満がある場合,別の職に就くためにどのような備えができるだろうか。

マービン・J・アシュトン長老は次のように勧めている。「継続して教育を受けていただきたい。また,正式な教育をできるだけ多く修めていただきたい。職業訓練校に通うこともこの中に含まれている。これは投資する価値のあることである。さらに教育を受けて備えるために夜間学校や通信教育を利用するのもよい。こうして特殊な技能を身に付ければ,就職の機会が早く巡ってくるであろう。……失業した人は,たとえ一時的でも職があればそれに就くべきで,『自分にあった職』が与えられるまで待つべきではない。」(“One for the Money,” Ensign1975年7月号,73)

  • 若人は職に就くために備える必要があるのはなぜだろうか。

賢明な財政管理

財政的に備えるには,収入の範囲内で生活する方法を習得しなければならない。それには,予算を組んで運用することである。実用的な予算には財政上の目標,什分の一とささげ物,借金を避けるための積み立てなどが組み込まれている。さらに,浪費をせずに出費を最小限に抑えたときの食費や生活費を計算し,可能であれば緊急時に備えて貯蓄することも必要である。

ミズーリ州カンザス・シティーに住むケイ・クリステンセン夫妻は,家庭の財政管理について次のように助言している。「ただ一つよくないことは,『これはわたしのお金だから,わたしの好きなように使いたい』という考えです。夫であれ,妻であれ,どちらが得た収入であっても,お金はすべて二人の共有でなければなりません。『これはわたしのお金だから』と言って自由に使う権利は,夫にも妻にもないのです。」(オーソン・スコット・カードによる引用「家庭経済」『聖徒の道』1979年5月号,18)

  • 賢明な財政管理が家庭に平和をもたらすのはなぜだろうか。個人と家族の備えの6分野において,それぞれどのような備えができるだろうか。

教会の備え

個人と家族の必要を満たすことに加えて,主はわたしたちが助け合うように命じられた。

教義と聖約52:40を読む。

助け合うために,全教会員の労力と援助手段が「教会の備え」と呼ばれるプログラムに結集されている。教会全体の労力と生産が必要になった場合は,神権指導者が指示してそれらを利用する。次に挙げるのは,災害に襲われた人々を救助するために教会からの援助が必要とされた例である。

「サウスダコタ州ラピッド・シティーが大洪水に襲われたとき,その地域に住む末日聖徒は被災者を救援するために直ちに立ち上がった。教会の地元の組織が動いて,衣類や寝具,温かい食物などが供給された。その結果,ソルトレーク・シティーから送る必要があったのは,ベビーフード,おしめ,毛布など,わずかトラック1台分の荷物にすぎなかった。」(ジュニア・ライト・チャイルド,“Welfare Is the Church,” Ensign1973年9月号,71,下線付加)

1972年,中央アメリカのニカラグアの首都マナグアが地震に襲われたとき,「ソルトレーク・シティーから被災地の聖徒に送られたものは,腸チフスの血清だけであった。……そのほかの必需品はすべて地元で賄った。隣国のコスタリカの聖徒たちは救援物質を調達し,政府に働きかけて,このプログラムを運営した。」(同上)

スペンサー・W・キンポール大管長は次のように述べている。

「これまでわたしたちは多くの災害を経験してきた。地震,洪水,暴風などの災害が1日か2日ごとに起こって,多くの人々を苦しめているようにも思える。このような状況にあって,末日聖徒とその指導者が自立というビジョンを持ち始めていることにわたしは感謝している。……

今や,さらに多くの災害が起こる時が近づいている。すなわち,さらに多くの洪水,暴風,……地震……がわたしたちを襲うその時がである。……恐らく終わりが近づくにつれて災害はますます増加の一途をたどるであろう。わたしたちはそのために備えなければならない。」(Conference Report,1974年4月,183—184)

このような災害を切り抜けていくには,個人や家族として備えるだけでなく,一教会員としても備えなければならない。各地域において教会が完全に組織されていれば,わたしたちは協力して非常用の食糧や衣料,生活必需品などを備えることができる。そうすれば,家族が全力を尽くしても自立できない人々にこれらの物資を供給できる。あらゆる方法を駆使して互いに助け合うならば,自身が困窮したときに援助を受けるにふさわしい者となるであろう。

まとめ

主の定められた備えの計画を積極的に実践すると,家族やほかの人々に対する愛が深まり,個人と家族の備えの必要性に対するあかしが強くなる。そしてそのような証を得ると,ほかの人の備えを助けたいという気持ちになるのである。

『教義と聖約』には次のように記されている。「わたしにとってはすべてが霊にかかわるものであり,わたしはいまだかつて,現世の律法をあなたがたに与えたことがない。」(教義と聖約29:34)教会における福祉計画の基盤は,兄弟愛と奉仕と慈愛にある。救い主はこのように言われた。「わたしの兄弟であるこれらの最も小さい者のひとりにしたのは,すなわち,わたしにしたのである。」(マタイ25:40

チャレンジ

  1. 次回の家庭の夕べで,家族の備えの現状を評価する。備えが不十分な分野について改善計画を立てる。

  2. ホームティーチングの担当家族の必要に心を配り,家族の備えを行うように励ます。

参照聖句

1テモテ5:8(家族を養う責任)

1ヨハネ3:17(人を助けることの大切さ)

アルマ34:28(人を助ける責任)

教義と聖約56:16-18(貧しい者と金持ちへの訓戒)

教義と聖約68:30-32(怠惰な者は罰せられる)

教義と聖約78:7,13-14(備えの重要性)

教師の準備

レッスンの前に以下のことを行う。

  1. 『福音の原則』第27章「労働と個人の責任」および第37章「家族の責任」研究する。

  2. 黒板とチョークを準備する。

  3. 一人の生徒に,『福音の原則』から「家族の責任」について発表する割り当てを与える。

  4. 個人と家族の備えの図表(視覚資料7-a)を準備する。

  5. レッスンの中で話や聖句を読むよう生徒に依頼する。

個人と家族の備え

個人と家族の備え

読み書きの能力を伸ばし,学び続ける

技術の向上と雇用条件の改善

賢明な財政,財産の管理

食糧の生産と貯蔵そのほか必要物資の確保

正しい食生活,運動,適度の休息

お互いに和合いし神と調和した祝福な生活

7-a 個人と家族の備え