神 権
神権は神の力と権能です。神権を通して,神はその業と栄光,すなわち「人の不死不滅と永遠の命をもたらすこと」(モーセ1:39)を達成されます。イエス・キリストは,教会のふさわしい男性会員が神権を持つことを許可されました。神権に聖任された会員には,福音を宣べ伝える,神権の儀式を執行する,召された場合に地上の神の王国で教え導くなど,主の業を行う権能が授けられます。
「教会には二つの神権,すなわち,メルキゼデク神権と……アロン神権がある。」(教義と聖約107:1)天の使いが預言者ジョセフ・スミスを通して,地上に神権の権能を回復しました。
メルキゼデク神権
メルキゼデク神権は大神権です。その名は,アブラハムの時代に実在した偉大な大祭司にちなんで付けられました(教義と聖約107:2-5参照)。この神権を持つ兄弟は,教会を指導し,福音を宣べ伝える業を導く力と権能を有しています。また,召された場合に伝道部や地方部,支部,定員会を管理することができます。
メルキゼデク神権の職に聖任される人は,最初にメルキゼデク神権を授けられます。それから,その神権の一つの職に聖任されます。メルキゼデク神権の職には,長老,大祭司,祝福師,七十人,使徒があります。伝道部または地方部の神権指導者は,メルキゼデク神権を持つ兄弟によって伝道部または地方部の長老定員会を組織します。各々の長老定員会は,一人の会長によって管理されます。会長は定員会の会員に彼らの義務について教え,定員会内に兄弟愛が広がるように努めます。支部においてメルキゼデク神権を持つ兄弟はすべて,長老定員会の会員です。
長老と長老定員会会長会
長老は教え,説き明かし,バプテスマを施し,教会員を見守ります。また,アロン神権の職の権能と責任を持つことに加えて,聖霊の賜物を授け,病人を癒し,もろもろの儀式を執行することができます(『家族ガイドブック』の「神権の儀式と祝福」の項を参照)。長老は神権指導者から委任を受けた場合,権限を持つ大祭司が不在のときに教会の集会を管理することができます(教義と聖約20:42-45;107:11参照)。
支部にメルキゼデク神権を持つふさわしい男性がいる場合,伝道部長会または地方部長会は,
長老定員会会長は,地方部長または伝道部長の指示の下に働き,自分の責任について地方部長または伝道部長に報告をします。また,支部長の指示の下に,支部の神権役員会および評議会の一員としても働きます。定員会会長は支部の定員会会員を管理し,自ら模範を示します。さらに教会が支部のすべての会員と活発な接触を保てるように,支部長と協力してホームティーチングを組織し,実行します。
定員会会長は定員会会員に,福音とメルキゼデク神権の義務について教えます(教義と聖約107:89参照)。また喜びと謙遜な心を持って,特に夫や父親としての責任において,奉仕するように勧めます。さらに神権の儀式を執行する方法を教え,会員にとって助けとなり定員会の兄弟愛をはぐくめるような奉仕プロジェクトや活動を計画します。定員会会長は,定員会会員の霊的および物質的な福利に対して責任があるのです。
長老定員会会長は,メルキゼデク神権者と(19歳以上の)成人アロン神権者に,ホームティーチャーとしての割り当てを与えます。また,支部長の承認の下に,アロン神権の教師と祭司の職にある青少年に,ホームティーチャーとしての割り当てを与えます。ホームティーチャーは,個人面接で二人ずつの同僚として召されます。長老定員会会長は,夫婦の助けが特に必要な訪問先には,支部長の承認の下に,メルキゼデク神権者の伴侶に夫と同行する割り当てを与えることができます。
定員会会長は,ホームティーチングの目的を定員会会員に教え(6-7ページ参照),それを達成するように彼らを霊的に鼓舞します。定員会会長会の一員は,訪問の報告を受け,会員の必要について知るために,ホームティーチャーと定期的に面接します。
長老定員会会長はホームティーチングを管理し,ホームティーチングの訪問について,また訪問を通して明らかになった会員の必要や問題について,支部長に情報を伝えます。
定員会会長は定員会会員に,教会の集会と活動に参加し,奉仕を行うように励まします。また,神権の聖任をまだ受けていない人や18歳以上のアロン神権者を助けて,メルキゼデク神権と神殿の儀式を受ける備えをさせます。ホームティーチャーがこれらの働きを助けますが,会長はしばしば,定員会の会員を自ら教え導くことが必要になります。
大祭司,祝福師,七十人,使徒
大祭司,祝福師,七十人,使徒の職については,『福音の原則』第14章を参照してください。
ホームティーチング
ホームティーチャーは神権を持つ兄弟で,神権指導者が支部の会員を見守って強めるのを助けるために召されます。メルキゼデク神権者とアロン神権者は,執事を除き,ホームティーチャーとして仕えることができます。
ホームティーチャーは定期的に会員を訪問して,彼らに愛を示し,福音を教え,キリストのもとに来るように彼らを招きます。また父親に祈ることと,家族を正しく養うことを勧めます。会員が病気や家族の死,孤独,失業,その他で特別な助けが必要なとき,ホームティーチャーは援助の手を差し伸べます(教義と聖約20:51,53,59参照)。
ホームティーチャーは,主と,支部長や定員会会長を代表して担当家族を訪問します。そして担当家族の関心事や必要を理解し,彼らに心からの関心を示します。御霊の導きに従って,ホームティーチャーは福音を教え,訪問先の家族や個人の信仰を養い強めるように努めます。可能なかぎり,ホームティーチャーは一人の同僚を持つべきです。
ホームティーチャーは次のことを行います。
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担当する各々の会員と活発に接触する。
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父親(家庭に父親がいない場合は母親または独身会員)を家長として尊重し,不死不滅と永遠の命に向かう旅路において家族を導けるように助ける。
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リアホナ』の「大管長会メッセージ」にある生ける預言者の言葉や聖文からのメッセージを分かち合うことにより,イエス・キリストを信じる信仰を持てるように会員を助ける。
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訪問先の家族と祈り,彼らを祝福する。
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集会,定員会や支部の活動,特別な行事について知らせ,家族が参加できるように助ける。
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家族の成長について長老定員会会長(支部に長老定員会がない場合は支部長)に報告する。
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家族が救いに必要な福音の儀式をすべて受け,それらに関連する聖約を守れるように助けと励ましを与える。
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伝道,家族歴史,神殿の活動を行うように会員を励ます。
儀式と祝福
神権の儀式は,主によって明らかにされた神聖な行為であり,神権の権能によって執行されます。神権の祝福は,癒しや慰め,励ましを与えるために行われます。バプテスマや聖餐の祝福,パスは,神権の儀式の一例です。儀式の中にはアロン神権を持つ兄弟が執行できるものもありますが,ほとんどの儀式はメルキゼデク神権者によって執り行われます(本書と『家族ガイドブック』の「アロン神権」の項を参照)。支部長と長老定員会会長は,儀式をどのように執行するか兄弟たちに教える責任があります。これらの指導者は,父親が家族のために儀式を行う備えをし,ふさわしさを保てるように助けます。儀式や祝福を行う兄弟は,福音の原則に従って生活することにより,また聖なる御霊に導かれるように努力することにより,自分自身を備えます。そして,威厳をもってそれぞれの儀式や祝福を行います。各々の儀式は次のように執行します。
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イエス・キリストの御名によって。
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神権の権能によって。
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定められた言葉や聖別された油のように,必要な手順に従って。
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必要な場合,正しい神権の鍵を有する神権指導者から承認を得て。神権指導者の承認が必要な儀式には,子供の命名と祝福,バプテスマと確認,神権の授与と神権の職への聖任,聖餐の祝福とパス,墓の奉献があります。
特定の儀式と祝福に関する指示については,『家族ガイドブック』を参照してください。
アロン神権
アロン神権は「大神権,すなわちメルキゼデク神権に付属するもの」(教義と聖約107:14)です。その名は,モーセの兄アロンにちなんで付けられました。なぜなら,アロン神権はアロンとその子孫に授けられたからです。アロン神権を持つ兄弟は,特定の神権の儀式を執行する権能を有しています。祭司はバプテスマを施し,聖餐を祝福し,祭司,教師,執事を聖任することができます。祭司と教師は,聖餐の準備をすることができます。また祭司,教師,執事は,聖餐のパスを行うことができます(教義と聖約107:13-14,20参照)。
アロン神権を授けられる人は,その神権の一つの職に聖任されます。アロン神権の職には,祭司,教師,執事があります。支部のアロン神権を管理する支部長は,御霊の導きに従って,また必要な神権者の人数に応じて,同じ職を持つ兄弟で構成される執事定員会(12-13歳),教師定員会(14-15歳),祭司定員会(16-18歳)を組織します。
アロン神権の会長会の鍵を有する支部長は,支部におけるアロン神権の会長です。支部長は祭司定員会の会長であり,二人のふさわしい祭司を祭司定員会の会長補佐として働くように召すことができます。また,ふさわしい教師とふさわしい執事をそれぞれ教師定員会会長,執事定員会会長に召すことができます。支部長または割り当てを受けた副支部長は,教師および執事定員会の会長会を組織するために,それぞれ二人の副会長を召すことができます。定員会に十分な数の若い男性がいる場合,支部長会の一員は,各定員会の一人の若い男性を定員会書記として召すことができます。支部長は祭司定員会補佐,教師定員会会長,執事定員会会長を任命します。そして支部長会の一員が定員会の副会長と書記を任命します。
神権会の開会行事の後,アロン神権者は支部長の指示の下に,メルキゼデク神権者と分かれて集会を持ちます。
支部長はアロン神権定員会を組織する場合,御霊の導きに従って,メルキゼデク神権者またはアロン神権の祭司の職にある兄弟を若い男性会長として働くように召して,任命します。若い男性会長は,支部長会やアロン神権定員会の会長会と協力して,定員会の各会員がイエス・キリストを信じる信仰を強め,回復された福音の原則に対する理解を深め,それらに従って生活する決意ができるように助けを与えます。
アロン神権の目標は,この神権に聖任された一人一人の兄弟が以下のことを行えるように助けることです。
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イエス・キリストの福音に改心し,その教えに従って生活する。
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神権の召しを忠実に果たし,各々の神権の職につける責任を遂行する。
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有意義な奉仕を行う。
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メルキゼデク神権と神殿の儀式を受けるために備え,ふさわしく生活する。
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栄えある専任宣教師として仕えるために備える。
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できるかぎり高い教育を受け,ふさわしい夫や父親になるために備える。
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女性や少女,子供を尊重する。
支部長はアロン神権定員会会長会と協力して,上記の目標達成に役立つ定員会の集会や奉仕プロジェクト,活動を計画します。活動は,若い男性が同じ信条と標準を分かち合う人々と友達になり,奉仕を行い,技術をはぐくむことができる健全な環境を提供します。
アロン神権会長会と若い女性クラス会長会は,アロン神権および若い女性の成人指導者と協力して,支部長の管理の下に,アロン神権者と若い女性の合同活動を計画することができます。この合同活動は「ミューチャル」と呼ばれます。
執 事
バプテスマと確認の儀式を受けたふさわしい若い男性は,12歳以上であれば,執事に聖任することができます。執事は通常,聖餐のパス,教会の建物や庭の手入れ,助けを必要とする人の世話などの割り当てを受けます。また,断食献金を集めるというような特別な割り当ても果たします。
執事定員会は12人までの執事で構成されます(教義と聖約107:85参照)。
教 師
ふさわしい若い男性は,14歳以上であれば,教師に聖任することができます。教師は執事のすべての権能と責任に加えて,聖餐の準備を行い,ホームティーチャーとして奉仕します。
教師定員会は,24人までの教師で構成されます(教義と聖約107:86参照)。
祭 司
ふさわしい兄弟は,16歳以上であれば祭司に聖任することができます。成人男性の改宗者は通常,長老に聖任されるのに十分な経験を積むまで,祭司に聖任されます。
祭司は執事と教師のすべての権能と責任に加えて,バプテスマを施し,聖餐を執行し,メルキゼデク神権者が不在のときに集会を管理することができます(教義と聖約20:46-51)。
祭司定員会は,48人までの祭司で構成されます(教義と聖約107:87-88参照)。