はじめに
宣教師として,あなたは,イエス・キリストを代表し,天の御父の子供たちを教え導くために召されました。救い主はあなたを愛し,あなたが成功できるように助けてくださいます。主はこう約束しておられます。「わたしはあなたがたに先立って行こう。わたしはあなたがたの右におり,また左にいる。わたしの御霊はあなたがたの心の中にある。また,わたしの天使たちはあなたがたの周囲にいて,あなたがたを支えるであろう。」(教義と聖約84:88)
信仰を行使し,主の業を行おうと決意し,その決意に基づいて行動するとき,あなたは宣教師として必要な技術,賜物,長所をより早く伸ばすことができます。主の助けを感じ,主に仕えるあなたの能力に対する自信が増します。
ただ,主の助けに関する約束はあるものの,歴史上最も偉大な宣教師でさえ,その多くが宣教師として働くときに苦しみもがいたと記録されています。アンモンとその兄弟たちについてこう書かれています。「多くの苦難に遭い,飢えや渇き,疲労,多くの霊的な労苦など,肉体的にも精神的にもひどく苦しんだ。」(アルマ17:5)また,彼らは家へ帰りたいと望んだときもあるようです。「そして,わたしたちが意気消沈して,まさに引き返そうとしたときに,見よ,主はわたしたちを慰め,『あなたがたの同胞であるレーマン人の中に行き,忍耐して苦難に耐えなさい。そうすれば,あなたがたに成功を得させよう』と言われた。」(アルマ26:27)
伝道活動に付き物の落胆とストレスに対処するためのいちばんの秘訣は,主に対して,仕える決心を新たにすることです。ゴードン・B・ヒンクレー大管長は,イギリスで伝道を始めたころの経験についてこう語っています。
「着任したてのころは,体調が良くありませんでした。病気だけでなく,地元の人の反感を買っているという意識もあったせいで,最初の数週間は気持ちが沈んでいました。そこでわたしは父に手紙を書き,父からの送金と自分の時間を無駄にしているように思うと伝えました。父はわたしのステーク会長でもあり,賢明で霊感にあふれた人でした。父から非常に短い返事が来ました。『愛するゴードン,君の手紙を受け取りました。アドバイスは一つだけ。自分を忘れて伝道しなさい。』その日の朝,聖典勉強会で次の主の言葉を同僚と二人で読んだばかりでした。『自分の命を救おうと思う者はそれを失い,わたしのため,また福音のために,自分の命を失う者は,それを救うであろう。(マルコ8:35)
主のこの言葉は,それに続いて受け取った『自分を忘れて伝道しなさい』という父のアドバイスと相まって,心に深く刻み込まれました。同僚とともに住んでいたワダムロード15番地の家の寝室に入り,父の手紙を手に持って,ひざまずいて主に願い求めました。そして,自分を忘れ,自分を捨てて主の業に励むことを聖約したのです。
1933年7月のその日は,わたしにとって決意の日でした。新たな光が人生にさし込み,心には新たな喜びがわき上がりました。イギリス特有の霧が晴れたかのようで,わたしは日の光を見たのでした。わたしは……豊かな,すばらしい伝道の経験をしました。わたしはその経験に生涯感謝し続けることでしょう。」(「世の人々への宣言」『聖徒の道』1987年11月号,6参照)
ヒンクレー大管長は,主に仕える決心を新たにすることで,落胆にうまく対処することができました。大管長は後にこう語っています。「わたしが知っている,心配に効く最良の解毒剤は労働です。絶望に効く最良の薬は奉仕です。疲労に効く最高の治療法は,自分よりもさらに疲れている人を助けるというチャレンジです。」(“Words of the Prophet: Put Your Shoulder to the Wheel,” New Era, 2000年7月号,7)
この小冊子を活用する
伝道活動は喜びとなることもあれば,ストレスとなることもあります。この小冊子はストレスとその影響について理解を深めるのに役立ちますが,一度にすべてを読む必要はありません。1ページに書かれている指示に従えば,どのテーマを選べばよいかの提案に導かれます。これらのアイデアは,同僚やそのほかの宣教師に仕え,彼らを教え導くときにも役立ちます。