セッション4
怒りに打ち勝つ
「怒ったときに口から出てくる辛らつで卑劣な言葉が残す傷は,一体どれほど深い苦痛を人に与えるのでしょうか。」
ゴードン・B・ヒンクレー大管長
セッションの目的
このセッションでは,参加者が以下を達成できるように助けます。
-
怒りが引き起こす問題と,それによって自分が失うものを理解する。
-
怒りに影響を及ぼす情緒的および生物学的な要因を理解する。
-
怒りに打ち勝つ方法を理解する。
怒りに関連する問題
ゴードン・B・ヒンクレー大管長は,「短気は愛情を損ない,愛をけちらす悪癖です」1と教えています。
怒りを表すことに満足感や高揚感を覚える人々がいます。ほかの人をおびえさせることで,自分には力がある,また自分は優れていると感じるのです。しかし,怒る人は自分自身を傷つけます。怒っている人の近くにいたいと思う人はほとんどいません。
聖文には,怒りに対する警告が述べられています。ダビデはイスラエルの民に,「怒りをやめ,憤りを捨てよ」と教えました(詩篇37:8)。箴言には,「怒りをおそくする者は勇士にまさり,自分の心を治める者は城を攻め取る者にまさる」と教えられています(箴言16:32)。また伝道の書の著者は,「気をせきたてて怒るな。怒りは愚かな者の胸に宿るからである」と書き記しています(伝道7:9)。
救い主は地上で教え導かれたとき,終わりの時には「多くの人が……憎み合うであろう。……また不法がはびこるので,多くの人の愛が冷えるであろう」と預言されました(マタイ24:10,12)。ニーファイ人には次のように教えられました。
「争いの心を持つ者は……,争いの父である悪魔につく者である。悪魔は互いに怒って争うように人々の心をあおり立てる。
見よ,互いに怒るように人々の心をあおり立てるのは,わたしの教義ではない。このようなことをやめるようにというのが,わたしの教義である。」(3ニーファイ11:29-30)
ニーファイは,わたしたちの時代にサタンが「人の子らの心の中で荒れ狂い,人の子らをそそのかして善いことに対して怒らせる」と預言しています(2ニーファイ28:20)。夫の妻に対する,妻の夫に対する,そして親の子供に対する虐待的な行いに,この預言の部分的な成就を見ることができます。
友人や家族,そのほかの人々に対して怒りを爆発させることの真の代償は,しばしば人々が考えている以上のものです。七十人のリン・G・ロビンズ長老は次のように教えています。怒りは「心の中で犯す罪であって,やがて憎しみの気持ちや行動へと発展していきます。また,それは高速道路でほかの運転者に怒りを向ける起爆装置であり,スポーツ競技場での激高した姿であり,家庭内暴力となって現れています。」2
ヒンクレー大管長は教会員に対して,特に神権者に対して,怒りを抑えられない人は霊的な力を失うと警告し,怒りを抑えるように繰り返し勧告しています。「自分自身の家庭の中で独裁者となっているような男性は,神権にふさわしくありません。自分の選んだ
怒ることでその場の目的は達せられるかもしれませんが,たとえそれでどんな利益が得られたとしても,長期的にはそれに比較にならないほどの深刻な結果をもたらします。その代償には以下のようなものがあります。
-
御 霊 の喪失 -
自尊心,人々からの敬意,友情,協力の喪失
-
自信の喪失
-
罪悪感
-
孤独
-
ぎくしゃくした人間関係
-
自分自身とほかの人々への身体的,情緒的,霊的損傷
-
親の教えることを信じなくなる子供たち
-
法的措置,および個人的自由の喪失
-
離婚
-
失業
怒りはまた,
怒りの種類と原因と表現
怒ることで人をおびえさせて自分の言いなりにし,優越感を抱き,問題や責任に対処するのを避ける人々がいます。また,自分の思いどおりにいかなかったときなどに高慢や利己心から,また挑発的な事柄に遭遇したときに柔和さや忍耐が欠けていることから怒りが生じることもあります。もどかしさを覚えたり,傷ついたり,落胆したりしたときに怒る人々もいます。
挑発されたと感じると,ほとんど何も考えずに怒る人がいます。このような怒りは瞬時に生じるため,抑えるのが容易でない場合が多くあります。一方,脅威や不公平,不当な扱いを受け続けたり,繰り返し挑発されたりして,怒りが徐々に高まっていく場合もあります。脅威には身体的なものもあれば,情緒的なものもあります。例えば,身体的な危害を受けることや,恥をかくこと,自尊心の崩壊や,他者への失望に対する恐れかもしれません。どの場合であっても,怒ることは一つの選びです。
脅威や危険の認識は,しばしばゆがんでいたり,誇張されていたり,思い違いであったりします。非常に多くの場合,怒りは人の意図を誤って判断した結果として生じます。「夫はわたしを傷つけようとしている」「妻はわたしが望むものを得られないようにしている」「夫はわたしの気持ちなど気にしていない」「妻はわたしを利用している」などです。
脅威を感じてだれかに怒りを抱くと,身体的に行動を起こす準備がなされます。血圧が上がり,筋肉が緊張し,呼吸が増加し,認識した脅威や不当な扱いを取り除くことに思いが集中します。こうして身体的に準備が整うと,認識した脅威に反応する言葉や行いとなって一気に爆発することがあります。あるいは,時間とともに蓄積された不満が,あるとき,ささいなことや通常なら気にも留めないようなことが引き金になり,怒りとなって爆発することもあります。
怒りはよく,3種類の不健全な方法によって表されます。すなわち,攻撃,内在化,または受動的攻撃です。
攻撃。以下の形で怒りが表されます。
-
身体的暴力(たたく,かむ,ける,なぐる,髪を引っ張る,つねる,平手で打つ,物を壊す)。
-
情緒的虐待や言葉による虐待(どなる,悪口を言う,ののしる,脅す,責める,あざける,口論する,挑発する,威圧する,操る,さげすむ)。
-
性的虐待(
強 姦 ,近親相姦,みだらな行為,性的嫌がらせ)。
内在化。怒りが自分自身に向けられ,自己中傷,うつ,または自分自身に害を及ぼす行為(飲酒,薬物使用,自殺未遂,自傷)をもたらします。
受動的攻撃。怒りが間接的な行為(遅延,無責任,頑固,皮肉,不正直,短気,不満,批判,引き延ばし)によって表されます。
ゆがんだ認識とそれに伴う身体的な変化を意識することは,怒りを抑える重要な
理解を深めることで,危険であるという認識が弱まり,怒りの生じる可能性が低くなります。ストレスが高まる前に,脅威や不当な行為に対する有意義な対応の仕方,すなわち,問題を大きくするのではなく解決するような対応を考えることができます。
また,ストレスを感じている人は,緊張が和らいで自分をコントロールできるようになるまで,さらにストレスを招く状況を避けるようにすることもできます。そうすれば,怒りを抱かずに状況の解決に取り組むことができるでしょう。
怒らずに生活する
七十人のウェイン・S・ピーターソン長老は,救い主の模範から教会員がどのように怒りなどの感情を抑える導きを得られるかを説明しています。
「キリストはあらゆる場面で感情に流されない完全な模範を示されました。カヤパやピラトの前に立たれたイエスは,苦しめる者たちにこぶしで打たれ,たたかれ,平手打ちされ,あざけられました(マタイ26章;ルカ23章参照)。非常に皮肉なことに,彼らは自分たちの創造主をあざけり,創造主は彼らに対する愛情から,苦痛に身を任せられたのです。
この不当な虐待に直面しながらも,イエスは平静を保たれ,思いやりのない行為をしようとはなさいませんでした。十字架上での言葉に尽くせないあの
イエスはわたしたちに同じことを期待しておられます。御自分に従う人々にこう言われました。『
以下の原則により,これまでに多くの人々が怒りの問題を克服してきました。
怒りのサイクルを自覚する
怒りによる暴力的な行為は周期的に起こる傾向があり,そのサイクルはたいてい幾度も繰り返されます。心理学者たちはこの怒りのサイクルの各段階に様々な名称を付けていますが,根本的な要素は同じです。怒りへの対処法の専門家であるマレー・カレンとロバート・フリーマン-ロンゴは,そのサイクルを以下のように要約しています。5 怒りを抑える最良の方法は,生理的な高まりが起こる前に,サイクルの早い段階で対処を試みることです。
正常なふりをする段階。生活は平穏に営まれますが,怒りが隠れていて,生活の仕方や考え方に影響を及ぼします。様々な出来事や状況が,すぐに習慣的でゆがんだ思考パターンを引き起こします。そしてそのようなゆがんだ思いを合理化し正当化します。
怒りが増大する段階。ゆがんだ思いに意識を向けるにつれて,身体的または情緒的な脅威を感じ,怒りをもって反応するようになります。「妻は人に指図してばかりだ」とか「何もかもわたしがやっている」など,聞き慣れたテーマが心の中で繰り返されます。怒りを抱き始めていることを示す,身体的な合図が見られます(緊張,硬直,圧迫感,心臓の激しい鼓動,速い呼吸,胃のむかつき,体のほてりや顔の紅潮)。怒りを行動で表すことについて思い巡らし,その方法を考え,怒りを増大させる常習性のある行為(薬物やアルコール依存,過食,過労)に陥ることもあります。
行動で表す段階。どなりつけたり,品位を傷つけたり,身体的あるいは性的な暴行を加えたりすることによって,ほかの人に対して怒りを爆発させます。または,自己を中傷したり,自殺を図ったり,アルコールや薬物を乱用することで,怒りを内面に向けることもあります。
否定的な感情にさいなまれる段階。罪悪感を抱き,恥ずかしく思います。自分を守るようになり,自分が善良な人物であることを証明するために一般的に良いことを行い,それによって怒りを覆い隠そうとします。短気を抑えようと決意しますが,決意が崩れると,再び「正常なふりをする」段階に戻ります。
怒りの記録をつける
怒りを覚えた状況と,その怒りにどのように反応したかを分析することによって,怒りにより効果的に対処する方法を身に付けることができます。自分の怒りについて理解を深める一つの方法は,怒りの記録をつけることです。怒りを抱いたら,きっかけとなった出来事や人物,日付,そして怒りの程度を「軽い」から「激しい」までの10段階で書き留めます。また,怒りを増大させた思いや,怒りにどのように対処したか(怒りを抑えられたか,抑えられなかったか),役に立ったと思われること,次回改善できることを記録します。怒りの記録をつけると,怒りのサイクルに対する意識が高まります。そうすれば,このセッションで学ぶ原則を用いて,怒りを早い段階で絶つことができます。6
怒りをかき立てる思いを取り除く
心の健康の専門家たちは,人生のどのような出来事も人々に悪い影響を及ぼすことはないと繰り返し強調しています。むしろ,それらの出来事に対する人々の考え方が,悪い影響を生むのです。人生のチャレンジについて,ゆがんだ,破壊的な考え方をするために,多くの人が不必要に苦しんでいます。例えば,ある人が助けたいという思いで批判的なことを言うとします。すると聞き手は不幸にも次のように誤解するのです。「この人はわたしを愚か者だと思っている。わたしに恥をかかせ,面目を失わせようとしている。このままでは済まさない。」思いは感情を生み,感情は行動に影響を及ぼします。正しくない考えのために,大いに悩み,苦しんでしまうのです。
精神科医のデビッド・バーンズは,著書『幸せな気持ちになる手引き』(TheFeelingGoodHandbook)の中で,人々に広く見られる正しくない考え方として,以下を挙げています。7
-
まったく良いか,まったく悪いか,二つに一つという考え。(「彼はまともな人だと思っていたけれど,
今 日 ,正体を現したわ。」) -
性急に決めつける。(「彼女は自分のことしか考えていない。わたしの気持ちなど関係ないのだ。」)
-
良い経験は軽視し,悪い経験にこだわる。(「彼の責め方を見たでしょう。これまで苦楽を共にしてきたのに。わたしのことなんてどうでもいいんだわ。」)
これらの共通点は,ゆがんだ考えが情緒的な悩みや怒りをもたらしていることです。怒りを抑えるには,怒りをかき立てる事柄に対して別の解釈を探すとよいでしょう。怒りの原因となっている出来事を中立な立場にある人の観点から見ることによって,考えがゆがんでいないか疑ってみるのです。もしカメラがあったなら,怒りを引き起こした出来事はどのように記録されていたでしょうか。その記録は怒っている人の辛らつな解釈を立証してくれるでしょうか。たいていの場合,そうではありません。
考えがゆがんでいないか疑うもう一つの方法は,相手の見地に立って状況を眺めてみることです。例えば,前に割り込んできた車の運転手は,約束に遅れているのかもしれません。思いやりと慈愛は,怒りを抑える効果があります。次の二つの質問について考えるのもよいでしょう。
-
「わたしの否定的な思いが正しいことを示す証拠は何だろうか。」
-
「この思いが正しくないことを示す証拠は何だろうか。」
この二つを自問するとき,たいていの場合,否定的な解釈を裏づける証拠はほとんど見つからず,そのような解釈が正しくないことを示す証拠がかなり見つかります。このような方法で自分の考えを評価し,正すなら,わたしたちはもっと冷静に,人を受け入れられるようになります。
まれに否定的な解釈が正しいものである場合がありますが,そのようなときにも,怒るよりももっと良い対応の仕方を見つける必要があります。問題を解決しようとする試みがうまくいかないときでも,「あなたがたの敵を愛し,あなたがたをのろう者を祝福し,あなたがたを憎むものに善をなし,あなたがたを不当に扱い迫害する者のために祈りなさい」という救い主の勧告に従うことができます(欽定訳マタイ5:44から和訳)。
迷惑な状況を,解決の必要な問題として考えるようにしてください。自分を脅かす出来事,断固として応じる必要のある出来事と考えないでください。カリフォルニア大学アービン校のレイモンド・ノバコは,怒りをかき立てる思いを取り除いてくれる理性的な言葉を用いることを勧めています。8次のようなものがあります。「怒っても何も得るものはない。もし怒ったら,後悔することになる。」必要なときに利用できるように,夫婦は怒っていないときにこれらの言葉を心の中で繰り返し練習しておくとよいでしょう。
怒りをかき立てる状況から離れる
怒りが増し,体内で化学物質が増加するにつれて,論理的に考える能力や行動をコントロールする能力が低下します。怒りの程度を測定する温度計を想像するとよいでしょう。もし80度で抑えが利かなくなるなら,そこまで高温になる前にその状況から離れてください。状況から離れる必要のあるときには,「腹が立ってきました。冷静になる時間が必要です」と相手に告げるとよいでしょう。
スポーツの試合で用いられる「アウトアウト」(一時中断)の合図など,話し合いを止める合図を事前に決めておくと役立ちます。両者は合図が出されたらそれを尊重することに合意しておかなければなりません。話し合いの続きは後でできるという期待を両者が持てれば,タイムアウトは功を奏するでしょう。タイムアウトとともに,30分後,2時間後,または翌日など,話し合いを再開するときを提案するとよいでしょう。
冷静になれる活動を見つける
怒りを覚え始めたときに冷静になるのに役立つ活動には様々なものがあります。気持ちを落ち着かせる活動として,
怒りを抑えるために,十二使徒定員会のボイド・K・パッカー会長の勧告に従うとよいでしょう。パッカー会長は,望ましくない思いの代わりに神聖な音楽を思い浮かべるように勧めています。「音楽が始まり,歌詞が心の中に浮かび上がると悪い思いはこそこそと去っていきます。心の舞台はすっかり明るい雰囲気になるでしょう。心を高める清い音楽により,卑しい思いは姿を消すのです。徳は自ら進んで汚れと交わろうとせず,一方で,悪は光があることに耐えることができないからです。」9
根底にある感情を分かち合う
怒りは,気持ちが傷ついたときや,恐れや恥ずかしさを感じたとき,あるいは拒まれたと感じたときに,それらの感情に代わって表されることがよくあります。自分の弱さを見せるのを恐れて,これらの感情を話すのをためらう人々がいます。しかし,根底にある感情を話すと,対立をより容易に解決できるようになります。相手も防衛的になる代わりに,問題解決に協力してくれるようになります。
心の傷や恐れなど,怒りの根底にある感情は,繊細で,その人の価値観や幸福感と密接に関連していることがよくあります。それらの感情を表すよりも怒った方が安全だと考える人が大勢います。しかし,ほかの人の行為によって自分が受けている影響を正直に話すと,人々の対応が良くなり,対立が解決されやすくなることがよくあります。次の例のように,多くの場合,怒りは収まって関係が強まります。
恵美と行広
恵美は,家を留守にして集会に出席するときにはいつも行広の怒りにおびえていました。「結婚生活を強める」のクラスを受講した後,行広は自分の怒りに関連した,根底にある感情を話すようになりました。「君がだれかほかの人と関係を深めて,ぼくから去って行くのではないかと心配なんだ。ぼくの母が父にしたように。」行広はそう打ち明けました。そこで恵美は,行広に完全な忠誠を約束しました。行広は安心し,それ以降,恵美の活動を支援するようになりました。
根底にある感情を話すときには,的確な判断力を用いる必要があります。例えば,相手は情緒的または身体的な虐待を加えることを楽しみとしている人かもしれません。痛みを伝えても,さらなる虐待を促すだけかもしれません。それでもなお,怒りで報復するよりも良い対処法があります。「敵を愛し〔なさい〕」という救い主の勧告についてはすでに述べました(マタイ5:44)。時として,向き合うのを避けるのが最善であることもあります。
霊的に変わるように努める
キリストのもとに来るというプロセスには霊的な変化が伴います。そして,そのような変化は,穏やかで愛にあふれた行動をもたらします。十二使徒定員会のマービン・J・アシュトン長老が説明しているように,真の改心を遂げるとき,わたしたちは「人に接するときには忍耐と親切,寛容さが増し,人の役に立ちたいという気持ちになるのです。」10
モルモン書には,改心して弟子となることによってもたらされる心の「大きな変化」,すなわち「絶えず善を行う」性質について述べられています(モーサヤ5:2)。パウロは,御霊の実は「愛,喜び,平和,寛容,慈愛,善意,忠実,柔和,自制」であると述べています(ガラテヤ5:22-23)。エズラ・タフト・ベンソン大管長は,そのような変化は救い主に従うことによってもたらされると約束しています。「救い主に従うということは,生き方を変えることを意味します。……人の心は変えることができるのでしょうか。そのとおり,変えられるのです。教会の偉大な伝道の業の中で,それは毎日のように起きており,キリストが行われる現代の奇跡の中で,最も頻繁に起きている奇跡です。あなたの生活の中でそのような奇跡の起きたことがまだないとすれば,あなた自身がそのような奇跡を経験する必要があります。」11
七十人のL・ホイットニー・クレートン長老は,自分の基本的な性質を変えようと努めている人には断食が助けになると教えています。「真の断食が強い信仰をはぐくむということも忘れてはなりません。これは『
再発を防ぐ
再発防止とは,思いと行動を変えることによって,また本人が見つけたその他の防止方法を用いて怒りのサイクルを段階的に絶つことです。防止方法とは,怒りを増大させないための手段です。再発防止と防止方法の実施には,家族や友人,職場の同僚,ビショップ,またはコース教師の助けが必要な場合もあります。再発防止が最もうまくいくのは,怒りのサイクルにおける最初の二つの段階,すなわち正常なふりをする段階と怒りが増大する段階においてです。人は危険因子(怒りを引き起こす出来事や感情)を認識して,サイクルを絶ち,再発を防ぐような応じ方を身に付けることができます。以下は,どのようにして再発を防ぐかの例です。
正常なふりをする段階
怒りの問題を認識したときには,健全な方法で対処します。怒りを引き起こすものに気づいたら,危険性の高い状況を避ける,興奮を静める,タイムアウトを取る,といった方法を用いて対処したり,逃れたりします。怒りの原因となる対立や問題の解決に積極的に取り組みます。13
怒りが増大する段階と怒りを防ぐ方法の利用
理性的な言葉を用いて,怒りの程度や激しさに歯止めをかけます。否定的な思いを正し,代わりに理性的な言葉(「これは対処できる」または「ほかの解決策を見つけられる」など)を思い浮かべます。怒りの奥に隠れている痛みを伴った感情を認め,そのような感情が正常なものであることを認めます。常習性のある行為(常習性のある行為をしている場面を夢想したり,怒りの感情を爆発させる方法を考えたりすることを含む)をやめます。問題について話し合うか,状況が変わらなければ,その問題について書きます。身体的な活動によってエネルギーを発散し,好きなことをすることによって自信をつけます。霊的に再び生まれるように努めます。14
神の平安
使徒パウロは,「人知ではとうてい測り知ることのできない神の平安」について書いています(ピリピ4:7)。怒りにもがき苦しみ,その克服に成功した人は,安らぎを感じ,この感情から解き放たれることがどれほどの解放感をもたらすかを知っています。ある人は次のように述べています。「以前は出会うすべての人を傷つけたいような気分で歩いていました。怒りに人生を支配されていました。しかし福音の原則を応用して,違った考え方をし,人をもっと良い見方で見るようになるにつれて,怒りが消えていきました。今では人と楽しく過ごすことができます。人生を取り戻しました。」
怒りの記録の記入例
必要な情報 |
状況1 |
状況2 | ||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日付および怒りを引き起こした出来事または人物 |
10月19日 夫との口論 |
10月20日 子供たちの行儀の悪さ。 | ||||||||||||||||||
怒りの程度 |
軽い |
厳しい |
軽い |
厳しい | ||||||||||||||||
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 | |
怒りを増大させた思い |
夫はばかだ。わたしのことなんてどうでもよいと思っている。 |
子供たちは決して耳を傾けない。わたしへの敬意がない。 | ||||||||||||||||||
怒りの根底にあった感情 |
愛されていない,無視されている,感謝されていない。 |
利用されている,無視されている。 | ||||||||||||||||||
怒りにどのように対処したか |
夫にどなりつけた。夫にばかと言った。 |
行儀よくできるまで自分たちの部屋に行くように穏やかに言った。 | ||||||||||||||||||
怒りに対処する際に心の中で考えたこと |
夫は罰を受けるに値する。夫はわたしを傷つけた。わたしは夫に借りを返しているだけだ。 |
子供だから仕方ない。わたしに逆らおうとしているのではない。 | ||||||||||||||||||
怒りを抑えるのに成功したか |
まったくできなかった |
非常によくできた |
まったくできなかった |
非常によくできた | ||||||||||||||||
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 | |
役立ったと思われること |
行ったことは何も役に立たなかった。状況を悪化させた。 |
タイムアウトを取った。散歩に出かけ,その後,子供たちと話をした。 | ||||||||||||||||||
怒りを押さえつけたか,爆発させたか,解消したか |
怒りを爆発させた後,感情を押さえつけた。 |
わたしの不満について徹底的に話し合った。 | ||||||||||||||||||
次回,改善できること |
相手の言動に左右されない。話す前に冷静になる。 |
なし。今回はうまくできた。 |
マレー・カレン,ロバート・E・フリーマン-ロンゴ共著,Men andAnger:UnderstandingandManagingYourAnger(マサチューセッツ州ホルヨーク,NEARIPress, 2004年),33-34を基に編集。ISBN#1-929657-12-9
怒りの記録
必要な情報 |
状況1 |
状況2 | ||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日付および怒りを引き起こした出来事または人物 | ||||||||||||||||||||
怒りの程度 |
軽い |
厳しい |
軽い |
厳しい | ||||||||||||||||
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 | |
怒りを増大させた思い | ||||||||||||||||||||
怒りの根底にあった感情 | ||||||||||||||||||||
怒りにどのように対処したか | ||||||||||||||||||||
怒りに対処する際に心の中で考えたこと | ||||||||||||||||||||
怒りを抑えるのに成功したか |
まったくできなかった |
非常によくできた |
まったくできなかった |
非常によくできた | ||||||||||||||||
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 | |
役立ったと思われること | ||||||||||||||||||||
怒りを押さえつけたか,爆発させたか,解消したか | ||||||||||||||||||||
次回,改善できること |
マレー・カレン,ロバート・E・フリーマン-ロンゴ共著,MenandAnger:UnderstandingandManaging Your Anger(マサチューセッツ州ホルヨーク,NEARI Press, 2004年),33-34を基に編集。ISBN# 1-929657-12-9