「第8章:アブラハムの聖約」『歴代大管長の教え—ラッセル・M・ネルソン』
「第8章」『教え—ラッセル・M・ネルソン』
第8章
アブラハムの聖約
旧約のエホバであられるイエス・キリストは,アブラハムに驚くべき約束をされました。……これらの神聖な約束を,皆さんも受けているのです。
ラッセル・M・ネルソンの生涯から
ラッセル・M・ネルソン大管長の曾祖父母の8人は全員,回復された福音の祝福を受けるために多くの犠牲を払ったイエス・キリストの忠実な弟子でした。しかし,子孫の中には,その模範に従わなかった者もいました。「その結果,わたしは,福音を中心とした家庭では育ちませんでした」とネルソン大管長は言っています。
「わたしは両親をこよなく愛していました。二人はわたしにとってかけがえのない人で,非常に大切な教訓を与えてくれました。二人がわたしたちきょうだいのために築いてくれた幸せな家庭生活については,いくら感謝しても足りません。しかし,幼いながらも,わたしは何かが欠けていると知っていました。」
そのときにはそれが何か分かっていませんでしたが,幼いラッセルは,アブラハムの聖約の祝福を切に望んでいたのです。自分に欠けているものを探し求めるうちに,福音について学ぶことが大好きになりました。
そして,16歳のときに「福音の真理に心を引かれるようになり,きょうだいたちとともにバプテスマを受けました。」彼自身もバプテスマでくぐった門について,彼は後にこのように説明しています。「主がいにしえの時代にアブラハム,イサク,ヤコブ,そして彼らの子孫に与えられたすべての約束を受ける共同の相続人となることに通じる門です。」それでもなお,ラッセルはさらに大きな祝福が欲しくてたまりませんでした。
「わたしは成長し,天の御父の計画の壮大さが分かり始めると,よく次のような独り言を言いました。『もうクリスマスプレゼントは要らない。ただ両親に結び固められたい。』その切なる願いは,両親が80歳を超えるまでかないませんでしたが,でも実現しました。その日感じた喜びを十分に表現することはできません。両親が互いに結び固められ,わたしが二人に結び固められた喜びを,わたしは毎日感じています。」
そのころまでには,両親に何が欠けていたのかをよく理解していました。両親と自分のきょうだいが神殿で「アブラハム,イサク,ヤコブの忠実な子孫のために取っておかれているすべての祝福を知らされた」のを見て感激しました。ネルソン大管長は後に両親についてこう語っています。「長年にわたり,両親がわたしたち皆のためにしてくれた数多くの偉大なことの中で,これは最も偉大なことでした。なぜなら,わたしたちの家族という単位が永遠に続くようになり,固く結ばれたからです。」
ラッセル・M・ネルソンの教え
アブラハムの聖約とは何だろうか。それはわたしたち一人一人とどのような関係があるのだろうか
アブラハムの聖約とは何なのでしょうか。そして,それはわたしたち一人一人にどのような関係があるのでしょうか。
およそ4,000年前,旧約のエホバであられるイエス・キリストは,アブラハムに驚くべきことを約束されました。
それはまず,世の救い主がアブラハムの子孫から生まれるというものでした。当時アブラハムとサラには子孫がおらず,年老いていて子供をもうける年齢はすでに過ぎていましたから,これは信じがたい約束でした。しかし,神は奇跡の神であられます。息子イサクの誕生は奇跡でした。……
第2に,アブラハムは子孫が永遠に増え続けることを約束されました。〔創世15:5参照〕……
主が第3に約束されたのは,アブラハムの子孫が神の神権を持ち,昇栄に必要な儀式を神権によって執り行うということでした。アブラハムの子孫は神の力,すなわちこの世界やほかの世界が創造されたときに行使されたのとまったく同じ力を受けることができるのです。これは,苦しんでいる人を癒し,引き上げるときに主が使われる力です。……
アブラハムに与えられた第4の約束は,地のすべての国民がアブラハムの血統によって祝福されるというものでした。……
愛する兄弟姉妹の皆さん,最初にアブラハムに与えられ,後に息子のイサクと孫のヤコブ(後に「イスラエル」に改名)に再び保証されたこれらの約束は,アブラハムの聖約として知られており,神のすべての子供たちが受けることのできるものです。そうです,これらの神聖な約束を,皆さんも受けているのです。
歴史を振り返ると,この約束があるにもかかわらず,聖書の時代のイスラエルの家に属する多くの人が主の教えを拒み,預言者を迫害したことが分かります。主は怒られ,そのような反抗的な者たちに対して,「わたしはあなたがたを国々の間に散らす」〔レビ26:33〕という誓いをされました。
神はイスラエルの民を世界中に散らされたのです。しかし主は,散らされたイスラエルをいつの日か主の群れに集め戻されると約束したうえでそうされました。そして,その約束された時は今なのです。
〔わたしたちも,〕昔の人々のように,神権と永遠の福音を受けました。アブラハム,イサク,ヤコブはわたしたちの先祖で,わたしたちはイスラエルの子孫です。福音と神権の祝福と永遠の生命を受ける権利があります。地の国々は,わたしたちの働きにより,またわたしたちの子孫の働きによって祝福されます。文字どおりのアブラハムの子孫と,養子縁組によってその家族に加えられた人々は,約束された祝福を受けます。ただし,主を受け入れて,その戒めに従う必要があります。
バプテスマで聖約の道に入り,神殿でさらに完全に聖約の道に入る
天上の会議で定められた計画には,わたしたち皆が神の前から絶たれるという厳しい現実を迎えることが含まれていました。しかし神は,堕落がもたらす結果を克服される救い主を与えると約束されました。アダムがバプテスマを受けた後,神はアダムに次のように言われました。
「あなたは,永遠から永遠にわたって,日の初めもなく年の終わりもない者の位に従う者である。
見よ,あなたはわたしにあって一つであり,神の子である。このようにして,すべての者はわたしの子となることができるのである。」(モーセ6:67-68)
アダムとエバはバプテスマの儀式を受け入れ,神と一つになる過程を歩み始めました。聖約の道に入ったのです。
皆さんやわたしも,その道に入るとき,新しい生き方を得ます。それによって神と築く関係を通して,わたしたちは神から祝福を授かり,変えていただくことができます。聖約の道は,わたしたちを神のもとへと導きます。わたしたちが生活の中で神に勝利を得ていただくなら,その聖約はわたしたちを徐々に神に近づけてくれます。すべての聖約は,つなぐことを目的としています。そして,永遠のつながりを持つ関係を作り出します。
アダムとエバ,ノアとその妻,アブラハムとサラ,リーハイとサライア,またそのほかイエス・キリストの献身的な弟子たちのすべてが,世界が創造されて以来,同じ聖約を神と交わしてきました。彼らは,主の回復された教会の会員である現代のわたしたちがバプテスマと神殿で聖約を交わし受けるのと同じ儀式を受けてきました。
救い主は,御自分に従ってバプテスマの水に入るように,またやがて神殿で神とさらなる聖約を交わすように,そしてさらに救いに不可欠な儀式を受けて忠実であるようにと,すべての人に呼びかけておられます。家族とともに昇栄し,永遠に神とともに暮らしたいのであれば,これらのすべてが必要です。
神殿で交わされる結婚の聖約は,アブラハムの聖約と直接結びついているのです。神殿で,夫婦はアブラハム,イサク,ヤコブの忠実な子孫のために取っておかれているすべての祝福を知らされます。
アダムと同じように,皆さんもわたしもバプテスマの時に自ら聖約の道に入りました。そしてその後,神殿においてさらに完全にその道に入ります。アブラハムの聖約の祝福は,聖なる神殿で授けられます。
バプテスマのとき,わたしたちは主に仕え,主の戒めを守ると聖約します〔教義と聖約20:37参照〕。聖餐を受けるとき,バプテスマの聖約を新たにし,イエス・キリストの御名を喜んで受けることを表明します。このようにしてわたしたちはキリストの息子娘として養子縁組されており,兄弟姉妹であることを知っています。主はわたしたちの新しい命の父であられます。究極的に,神殿において,かつてアブラハム,イサク,ヤコブに約束されたように,永遠の家族という祝福を受ける共同の相続人となります〔ガラテヤ 3:29;教義と聖約 86:8-11参照〕。このように,日の栄えの結婚は昇栄の聖約です。
イエス・キリストはアブラハムの聖約の中心であられる
御父が御自分の子供たちに与えた約束を果たされることは,救い主の贖いの犠牲によって可能となりました。イエス・キリストこそが「道であり,真理であり,命である」ため,「だれでも〔主〕によらないでは,〔御〕父のみもとに行くことはでき〔ません〕。」(ヨハネ14:6)アブラハムの聖約の成就は,救い主であられる主イエス・キリストの贖罪のおかげで可能となります。イエス・キリストはアブラハムの聖約の中心であられます。……
神聖な聖約を交わし,聖約を守る人は,「神のあらゆる賜物の中で最も大いなるもの」(教義と聖約14:7)である永遠の命と昇栄を約束されます。イエス・キリストはそれらの聖約の保証人であられます(ヘブル7:22;8:6参照)。聖約を守る人であって,神を愛し,生活の中でほかのすべての事柄において神に勝利を得ていただこうとする人は,生活の中で神を最も力強い影響力とします。
福音を完全に受け入れる人は皆,神の聖約の子となる
散らされたイスラエルを集めようとする福音の網は非常に大きなものです。イエス・キリストの福音を完全に受け入れる人たち,一人一人が入る余地があります。生まれながらか養子縁組かにかかわらず,改宗者は神の聖約の子となります。そして,神が忠実なイスラエルの子供たちに約束されてきたすべてを受け継ぐ者となります。
わたしたちは神の子なので,神のようになる可能性を持っています。すべての人は神の目に等しい存在です。この真理が意味していることは非常に深遠です。兄弟姉妹の皆さん,これからわたしが話すことに注意深く耳を傾けてください。神は特定の人種を偏り見られません。このことに関する神の教義は明白です。主は,「黒人も白人も,束縛された者も自由な者も,男も女も」〔2ニーファイ26:33〕すべての人を御自分のもとに来るよう招いておられます。
神のあなたに対する評価は肌の色によって決められていないことを断言します。神に好まれるか好まれないかは,肌の色ではなく,神と神の戒めに対するあなたの献身にかかっています。
わたしたちが神の人であるのは,神と聖約を交わしているからです。わたしたちはアブラハムの子孫です。わたしたちは聖約の子孫,つまり,アブラハムの聖約の子孫なのです。アブラハムの直系の子孫ではない人は,悔い改めとバプテスマによって福音を受け入れるならば,養子縁組によってアブラハムの子孫になります〔ガラテヤ3:26-29;アブラハム2:10参照〕。したがって,アブラハムの約束はすべて,そのような人への約束でもあるのです。彼らもまた,主の選ばれた子供となります。簡単に言うと,進んで神と聖約を交わしてそれを守る人は皆,神の聖約の民なのです。
聖約の子孫であるわたしたちは,自分が何者であり,神から何を望まれているかを知っている
わたしたちの中には,アブラハムの文字どおりの子孫もいますし,また,集められ,養子縁組によってアブラハムの氏族に入る人もいます。神は偏り見ることをなさいません。わたしたちが主を求め,主の戒めに従うならば,ともにこの約束された祝福を受けます。しかし,そうしなければ,聖約の祝福を失います。主の教会には,わたしたちを助けるために祝福師の祝福があり,その祝福を通して各人の将来の展望が分かるだけでなく,過去とのつながりも分かり,アブラハム,イサク,ヤコブにまで至る,その人の血統が宣言されます。……
自分が聖約の子孫であることを悟るとき,自分が何者であり,神から何を期待されているかを知ります。神の律法が心に刻まれます。主は神であられ,わたしたちは主の民なのです。献身的な聖約の子孫は,試練の最中にあっても忠実であり続けます。その教義がわたしたちの心深くに植え付けられるとき,死のとげさえも耐えやすくなり,霊的な体力が増強されます。
皆さんは,この末日に成就することになるアブラハムの聖約のすべての祝福を受けることができます。かつてほかの国々に与えられた祝福と責任(ガラテヤ3:7-9,14,27,29参照)は,今やわたしたちに与えられています(教義と聖約110:12参照)。祝福師の祝福は,わたしたちから偉大な族長であるアブラハム,イサク,ヤコブに至る系譜を明らかにします。わたしたちはアブラハムの子孫であり,この子孫を通して地のすべての国民は祝福を受けることになります。その事実は,わたしたちが大切にするべき優先事項であり,それによって天の祝福がもたらされるのです。
主はアブラハムの聖約を新たにしてくださり,わたしたちはそれにあずかることができる
この永遠の聖約は,完全な福音の大いなる回復の一環として回復されました。考えてみてください。……
旧約聖書を締めくくる文には,エリヤが「父の心をその子供たちに向けさせ,子供たちの心をその父に向けさせる」(マラキ4:6)というマラキの約束が記されています。古代イスラエルにおいて,父についてこのように言及されるとき,そこには父祖アブラハム,イサク,ヤコブが含まれていたはずです。この約束は,モロナイが預言者ジョセフ・スミスに対して引用した,この節を異なる表現を用いて述べたものを読むと理解しやすくなります。「彼〔エリヤ〕は先祖に与えられた約束を子孫の心に植え,子孫の心はその先祖に向かうであろう。」(ジョセフ・スミス—歴史1:39)この先祖には確かにアブラハム,イサク,ヤコブが含まれています。(教義と聖約27:9-10参照)……
メルキゼデク神権が回復されたおかげで,聖約を守る女性と男性は福音の「すべての霊的な祝福」を受けることができます(教義と聖約107:18;強調付加)。
1836年にカートランド神殿が奉献された1週間後,主の指示の下で,エリヤが現れました。その目的は何だったでしょうか。「子孫の心を先祖に向けさせ〔る〕」(教義と聖約110:15)ことでした。エライアスも現れました。その目的は何だったでしょうか。ジョセフ・スミスとオリバー・カウドリに,「わたしたちと子孫によってわたしたちの後の時代のすべての者が祝福を受けるであろうと述べて,アブラハムの福音の神権時代」(教義と聖約110:12)をゆだねることでした。このようにして,主はジョセフ・スミスとオリバー・カウドリに,神権の権能と,アブラハムの聖約の比類ない祝福を人々に届ける権利を授けられました。
ニーファイ第一書の第15章を開いてみてください。これはイスラエルの集合について書かれている章です。可能であればこの章を全部読んでいただきたいのですが,ここでは18節だけを採り上げます。
「それで父〔リーハイ〕は,末日に成就する聖約について触れながら,わたしたちの子孫のことだけでなく,イスラエルの家に属するすべての者についても語ったのです。その聖約とは,主がわたしたちの先祖アブラハムに立てられたもので,主は,『あなたの子孫により,地のすべての部族は祝福を受けるであろう』と言われました。」
この啓示が与えられた年とこの聖句に線を引き,暗記し,理解を深めてください。いつ与えられた啓示ですか?紀元前592-600年です。ですから,イエスがベツレヘムにお生まれになる600年前,つまり救い主がお生まれになる600年前に,預言者たちはこの聖約が末日に成就することを知っていたのです。
さて,わたしたちは〔今日〕ここにいます。このことについて書き記した預言者たちは皆,今日のことを預言しました。皆さんもわたしもその業に携わることができるのです。わたしたちは,ほかの人が皆そうであったように,傍観者ではありません。携わることができるのです。毎日,朝が待ちきれないほど胸が高鳴ります!
招きと約束
これらの神聖な約束を,あなたも受けている
愛する兄弟姉妹の皆さん,最初にアブラハムに与えられ,後に息子のイサクと孫のヤコブ(後に「イスラエル」に改名)に再び保証されたこれらの約束は,アブラハムの聖約として知られており,神のすべての子供たちが受けることのできるものです。そうです,これらの神聖な約束を,皆さんも受けているのです。
必要不可欠な儀式と聖約を受け,忠実でいる
アダムとエバ,ノアとその妻,アブラハムとサラ,リーハイとサライア,またそのほかイエス・キリストの献身的な弟子たちのすべてが,世界が創造されて以来,同じ聖約を神と交わしてきました。彼らは,主の回復された教会の会員である現代のわたしたちがバプテスマと神殿で聖約を交わし受けるのと同じ儀式を受けてきました。
救い主は,御自分に従ってバプテスマの水に入るように,またやがて神殿で神とさらなる聖約を交わすように,そしてさらに救いに不可欠な儀式を受けて忠実であるようにと,すべての人に呼びかけておられます。家族とともに昇栄し,永遠に神とともに暮らしたいのであれば,これらのすべてが必要です。
神殿で交わされる結婚の聖約は,アブラハムの聖約と直接結びついているのです。神殿で,夫婦はアブラハム,イサク,ヤコブの忠実な子孫のために取っておかれているすべての祝福を知らされます。
アダムと同じように,皆さんもわたしもバプテスマの時に自ら聖約の道に入りました。そしてその後,神殿においてさらに完全にその道に入ります。
バプテスマのとき,わたしたちは主に仕え,主の戒めを守ると聖約します〔教義と聖約20:37参照〕。聖餐を受けるとき,バプテスマの聖約を新たにし,イエス・キリストの御名を喜んで受けることを表明します。このようにしてわたしたちはキリストの息子娘として養子縁組されており,兄弟姉妹であることを知っています。主はわたしたちの新しい命の父であられます。究極的に,神殿において,かつてアブラハム,イサク,ヤコブに約束されたように,永遠の家族という祝福を受ける共同の相続人となります〔ガラテヤ 3:29;教義と聖約 86:8-11参照〕。このように,日の栄えの結婚は昇栄の聖約です。
あなたはアブラハムの聖約の祝福をすべて受けることができる
皆さんは,この末日に成就することになるアブラハムの聖約のすべての祝福を受けることができます。かつてほかの国々に与えられた祝福と責任(ガラテヤ3:7-9,14,27,29参照)は,今やわたしたちに与えられています(教義と聖約110:12参照)。祝福師の祝福は,わたしたちから偉大な族長であるアブラハム,イサク,ヤコブに至る系譜を明らかにします。わたしたちはアブラハムの子孫であり,この子孫を通して地のすべての国民は祝福を受けることになります。その事実は,わたしたちが大切にするべき優先事項であり,それによって天の祝福がもたらされるのです。
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関連する説教
「永遠の聖約」(『リアホナ』2022年10月号。ネルソン大管長が2022年3月に行った説教の原稿)
“Thanks for the Covenant” (Brigham Young University devotional, November 22, 1988)