1 さて,彼らがその地に教会を設立した後,ラモーナイ王はアンモンを自分の父に会わせたいと思い,自分とともにニーファイの地へ行くように彼に求めた。
2 すると,主の声がアンモンに聞こえて,「あなたはニーファイの地へ上って行ってはならない。見よ,王があなたの命をねらうであろう。見よ,あなたの兄弟アロンと,ミュロカイ,アンマが牢に入っているので,ミドーナイの地へ行きなさい」と言われた。
3 さて,アンモンはこの御言葉を聞くと,ラモーナイに言った。「見よ,わたしの兄弟と同僚たちがミドーナイの牢に入れられているので,わたしは行って彼らを救い出します。」
4 すると,ラモーナイはアンモンに言った。「わたしはあなたが主の力で何事でもできることを知っています。しかし見よ,わたしも一緒にミドーナイの地へ行きましょう。ミドーナイの地の王はその名をアンテオムノといい,わたしの友です。ですから,わたしもミドーナイの地へ行って,その地の王をなだめましょう。そうすれば,彼はあなたの兄弟たちを牢から出してくれるでしょう。」また,ラモーナイは彼に,「あなたの兄弟たちが牢に入っているとあなたに告げたのはだれですか」と尋ねた。
5 そこでアンモンは彼に,「わたしに告げたのはほかでもない,神です。神がわたしに,『あなたの兄弟たちがミドーナイの地で牢に入っているので,行って救い出しなさい』と言われたのです」と答えた。
6 ラモーナイはこの言葉を聞くと,僕たちに自分の馬と馬車を用意させた。
7 そして,彼はアンモンに言った。「さあ,わたしもあなたとともにミドーナイの地へ行き,あなたの兄弟たちを牢から出すように王に頼みましょう。」
8 さて,アンモンとラモーナイがその地へ向かって旅をしていたところ,彼らは途中で,ラモーナイの父である全地を治める王に出会った。
9 すると見よ,ラモーナイの父はラモーナイに,「わたしが息子たちと民のために宴会を催したあの特別な日に,なぜおまえはその宴会に来なかったのか」と尋ね,
10 また,「おまえは偽り者の子孫の一人であるこのニーファイ人と連れ立って,どこへ行こうとしているのか」と言った。
11 そこでラモーナイは,父を怒らせるのを恐れて,自分がどこへ行こうとしているかを語った。
12 彼はまた,父が用意した宴会に出るために父のもとへ行かずに自分の国にいた理由をすべて父に告げた。
13 さて,ラモーナイがこれらのことをすべて語ったところ,見よ,意外なことに,彼の父は彼に怒りを示し,「ラモーナイ,おまえはそのニーファイ人たちを救い出そうとしているが,その者たちは偽り者の子孫だ。見よ,その偽り者は我らの先祖から物を奪った。そして,今その子孫も我らの中にやって来て,悪知恵と偽りによって我らを欺き,また我らから持ち物を奪おうとしている」と言った。
14 そしてラモーナイの父は,剣でアンモンを殺すようにラモーナイに命じた。また,ミドーナイの地へ行かず,自分とともにイシマエルの地へ帰るように命じた。
15 しかし,ラモーナイは父に言った。「わたしはアンモンを殺すつもりはありませんし,イシマエルの地へも帰りません。ミドーナイの地へ行って,アンモンの兄弟たちを解き放します。わたしは彼らが正しい人々であり,まことの神の聖なる預言者であることを知っているからです。」
16 彼の父はこれらの言葉を聞くと,彼に怒りを発し,剣を抜いて彼を地に打ち倒そうとした。
17 そのとき,アンモンが進み出て,ラモーナイの父に言った。「まことに,あなたは自分の息子を殺してはなりません。まことに,彼はすでに罪を悔い改めているので,もし殺されたとしても,あなたが倒れるよりはよいでしょう。しかし,あなた自身は,今怒ったまま倒れるならば救われません。
18 あなたは思いとどまった方がよいでしょう。もしあなたが自分の息子を殺せば,彼には罪がないので,彼の血は地から主なる神に向かって,あなたに報復するように叫ぶでしょう。そして,恐らくあなたは命を失うでしょう。」
19 アンモンがラモーナイの父にこれらの言葉を語り終えると,彼はそれに答えて,「わたしは,息子を殺せば罪のない者の血を流すことになるのを知っている。おまえこそわたしの息子を滅ぼそうとした者だ」と言った。
20 そして,彼は腕を伸ばして,アンモンを殺そうとした。しかし,アンモンは彼が打ちかかってくるのを防ぐとともに,彼の腕を打ってその腕を利かなくした。
21 そこで王は,アンモンに自分を殺す力があるのを知って,命を助けてほしいとアンモンに懇願し始めた。
22 しかし,アンモンは剣を振り上げ,「まことに,わたしの兄弟たちを牢から出すのを認めないかぎり,わたしはあなたを討つ」と言った。
23 すると王は,命を失うのを恐れて,「わたしの命を助けてくれれば,おまえの求めるものは何でも与えよう。王国の半分でも与える」と言った。
24 そこでアンモンは,自分の望みどおりにその年老いた王に影響を与えることができたのを知って,こう言った。「わたしの兄弟たちを牢から出すことと,ラモーナイに彼の王位を保たせることと,ラモーナイに対して怒りを示さず,何事でも彼の望むままに彼の考えていることを行わせることを認めるならば,わたしはあなたの命を助けよう。そうでなければ,あなたを地に打ち倒す。」
25 さて,アンモンがこれらの言葉を語り終えると,王は自分の命が助かることを喜んだ。
26 また彼は,アンモンが自分を殺す気がなく,また息子ラモーナイを深く愛していることを知って,非常に驚いて言った。「おまえが求めたのはただ,おまえの兄弟たちを釈放することと,わたしの息子ラモーナイに彼の王位を保たせること,それだけであるから,まことにわたしは,これから先とこしえに息子に王位を保たせ,今後二度と息子に指図をするまい。
27 わたしはまた,おまえの兄弟たちを牢から出すことと,おまえとおまえの兄弟たちがわたしの国でわたしのもとに来ることを認めよう。わたしはぜひおまえに会いたいからである。」王はアンモンが語った言葉と,息子ラモーナイが語った言葉に非常に驚き,それを知りたいと思ったのである。
28 さて,アンモンとラモーナイは,ミドーナイの地へ旅を続けた。そして,ラモーナイはその地の王の好意を得,アンモンの兄弟たちは牢から連れ出された。
29 アンモンは,彼らに会うと非常に心を痛めた。見よ,彼らが裸であったうえに,丈夫な縄で縛られていたため,体の皮膚がすりむけていたからである。また,彼らは飢えと渇きとあらゆる苦難を受けて苦しんでいた。それでも,彼らはすべての苦しみに耐えていたのである。
30 このように,彼らはアンモンが出会った人々よりももっとかたくなで,もっと強情な人々の手に落ちる巡り合わせにあったのである。人々は彼らの言葉を聴こうとせず,彼らを追い出し,打ちたたき,家から家へ,こちらからあちらへと彼らを追い払い,とうとう彼らはミドーナイの地へやって来た。そこで彼らは捕らえられ,牢に入れられて丈夫な縄で縛られ,幾日もの間牢に閉じ込められていて,ラモーナイとアンモンによって救い出されたのであった。