「こわれた水筒」『フレンド』2023年8月,38-39
こわれた水筒
ケイディーはのどがカラカラでした。ソフィアにはどんな助けができるでしょうか?
このお話は,シエラレオネでの出来事です。
ソフィアは先生が黒板で算数の問題について説明するのを,しっかりと聞いていました。
「さあ,4×9は何ですか?」と先生がたずねます。
ソフィアは手を上げました。「36です!」と答えました。
先生はにっこりとほほえみました。「そのとおりよ,ソフィア!」
授業が終わり,家に帰る時間になりました。ソフィアは友達と一緒に歩きました。みんな水筒を取り出して,最後の水を飲んでいます。今日は暑いです!
でもソフィアは,友達のケイディーを見て,何かおかしいと思いました。水を飲んでいなかったのです。ケイディーは,何も言わずに歩いていました。
「ケイディー,あなたの水筒はどこ?」ソフィアはたずねました。いつでも,学校が終わるころには,だれもがのどがかわいていました。
「昨日こわしてしまって,新しいのは手に入らないの」とケイディーは言いました。「だから,もう学校に水を持って行けないの。」
ソフィアは自分の水筒を見ました。分けてあげられたらいいのに!しかし,水はもう全部飲んでしまっていました。
ソフィアは一日中,ケイディーとこわれた水筒のことを考えていました。彼女たちが住んでいる所では,きれいな水を手に入れるのは簡単ではありませんでした。ほとんどの子が,一年中使う水筒を1本しかもらえません。大きな容器に入ったきれいな水が家にあって,それを水筒に満タンに入れていたのです。それ以外の水を飲めば,病気になるかもしれません。ケイディーは水筒がないかぎり,家から水を持って行って学校で飲むことはできないのです。
翌朝,ソフィアはケイディーを助ける方法を考えました。ソフィアの家族は,水が入ったプラスチックのボトルをいくつか持っていました。ソフィアはリュックに自分の金属製の水筒のほかに,そのボトルも一本入れました。リュックが少し重くなりましたが,気になりません。
学校に着くと,ケイディーを見つけました。
「ケイディー,新しい水筒は手に入った?」ソフィアはたずねました。
ケイディーは下を見ながら首を横にふりました。
「大丈夫よ」とソフィアは言いました。「あなたの分を持ってきたわ!」
ソフィアはケイディーに水のボトルをわたしました。ケイディーはにっこりしました。
「ありがとう,ソフィア!」ケイディーはソフィアを強くだきしめました。
授業中,ケイディーは水を,ボトルからほかの子たちと同じように飲みました。ソフィアは,友達がのどがかわくことがなくなったのを見て,うれしくなりました。
その週,ソフィアは毎日,ケイディーのために,1本余分に水のボトルを持って行きました。ある朝,ソフィアのお母さんがリュックを持ち上げました。
「うーん」とお母さんが言いました。「いつもよりも重いわね。」お母さんは,リュックを開けて水のボトルを取り出しました。
「ソフィア,学校にこのボトルも持っていくつもりだったの?」お母さんがたずねました。
ソフィアはうなずきました。「ケイディーの水筒がこわれて,新しいのを手に入れられないんだって。だから,学校で全然水がなかったの。」
「どのくらいの間,あなたはその子にこの予備の水を持って行っていたの?」お母さんがたずねました。
「今週だけよ」とソフィアは言いました。「ケイディーがのどがかわいたらかわいそうだな,と思って。」
お母さんはにっこりとわらいました。「あなたは,友達思いで,とてもやさしいのね。イエス様ならそうされるわよね。あなたがイエス様のようになるのはうれしいわ。」お母さんはソフィアをだきしめました。「でも,ほかにも助ける方法があると思うのよ。」
お母さんはソフィアに金属製の水筒をわたしました。「お友達がくりかえし使えるように,これを代わりにわたしてちょうだい。そうすれば毎日プラスチックのボトルを持って行く必要はないわ。」
「ほんとうに?」とソフィアが聞きました。
お母さんはうなずきました。「そうよ。ただし,大切にするように言ってね。」
ソフィアは,その水筒を学校に持って行きました。まずはケイディーに水筒をわたします。
「わあ」とケイディーは言いました。「ありがとう,ソフィア!」ケイディーはソフィアをだきしめました。
ソフィアは胸が熱くなるのを感じました。イエス様ならそうするように,自分は友達を助けたのだということを知りました。