父親,永遠の召し
時の初めから家庭における父親の大切さについて警告を発してきた預言者たちの声に耳を傾けましょう。
今日の世界を注意深く見ていると,サタンが人々をとりこにするため絶えず動いているのがますます明白になっています。サタンの第一の攻撃目標は社会の基本単位である家族です。
ここ数十年,サタンは最も基本的で重要な組織である家族を軽視しその品位を下げるために,激しい戦いを仕掛けてきました。成果はますます明白になっています。ほぼ毎日,嫌な出来事が起き,報じられ,耳に入ります。多くの家族が崩壊しているのです。家族の崩壊が原因で,社会は恐ろしい影響を受けています。犯罪の増加,不道徳,貧困,薬物乱用,問題は増える一方です。
わたしには,サタンの攻撃は特に夫と父親に向けられているように見えます。例えば今日のメディアは,夫や父親の神聖な役割をあざけり,卑しめるために,執拗しつような攻撃を続けています。
聖文に見られる例
メディアが描く夫や父親像に反対するには,聖文を使うことが有効でしょう。すばらしい模範に満ちているからです。御父と救い主。新約聖書には,救い主と御父の関係の一端が描かれています。中でも主が裏切られる直前の園での出来事は,非常に鮮明に描かれています。「〔イエスは〕ひざまずいて,祈って言われた,
『父よ,みこころならば,どうぞ,この杯さかずきをわたしから取りのけてください。しかし,わたしの思いではなく,みこころが成るようにしてください。』
そのとき,御使いが天からあらわれてイエスを力づけた。」1
モーセとエテロ。出エジプト記には,イスラエルの子らを治めるモーセを見ていた,モーセの義父エテロの模範が記されています。
「モーセのしゅうとは,彼がすべて民にしていることを見て,言った,『あなたが民にしているこのことはなんですか。あなたひとりが座し,民はみな朝から晩まで,あなたのまわりに立っているのはなぜですか。』
モーセはしゅうとに言った,『民が神に伺おうとして,わたしの所に来るからです。』
モーセのしゅうとは彼に言った,『あなたのしていることは良くない。
あなたも,あなたと一緒にいるこの民も,必ず疲れ果てるであろう。このことはあなたに重過ぎるから,ひとりですることができない。』」2
そこでエテロはモーセに,神を畏おそれる有能な人を召し,長としてイスラエルの民を裁かせるように言いました。
「平素は彼らに民をさばかせ,大事件はすべてあなたの所に持ってこさせ,小事件はすべて彼らにさばかせなさい。こうしてあなたを身軽にし,あなたと共に彼らに,荷を負わせなさい。」3
アルマ。モルモン書には,アルマの息子アルマの話が記されています。息子アルマは反抗的で,あらゆる罪悪を行う者の一人でした。父アルマは息子が真理を知ることができるようにと深い信仰をもって祈りました。この祈りは特別な方法でこたえられました。
「さて,彼が神の教会を滅ぼそうとして歩き回っていたときに……主の天使が彼らに現れた。その天使は,まるで雲に包まれて来たかのように降くだって来て,さながら雷のような声で語〔った〕。
彼らはそのためにひどく驚き,地に倒れた。しかし,彼らには天使の語った言葉が分からなかった。
それでも天使は,また大声で言った。『アルマよ,起き上がって立ちなさい。あなたはなぜ神の教会を迫害するのか。主はかつて,「これはわたしの教会である。わたしがこれを設ける。わたしの民の背きのほかに,これを覆すものはない」と言われた。』
天使はまた言った。『見よ,主は,御自分の民の祈りと,御自分の僕であり,またあなたの父であるアルマの祈りを聞かれた。あなたの父が,あなたが真理の知識に導かれるように,深い信仰をもってあなたのことを祈ってきたからである。したがって,わたしは神の力と権能が存在することをあなたに認めさせるために来た。神の僕たちの祈りが,彼らの信仰に応じてかなえられるためである。』」4
息子アルマはこの経験の後,別人のようになっていました。
軽視される父親の役割
家族を崩壊させるため,サタンは巧妙なわなを仕掛け,父親の役割を軽んじさせています。若者の暴力や青少年の犯罪が増加していること,貧困や経済不安の深刻化,授業についていけない児童数の増加は,家庭で父親の影響力が足りないことを明確に示しています。5 家族は父親の支えが必要なのです。
基本的な家族は社会の最も安定した確かな基盤であり,若人が将来様々な責任を果たすのに備えるために必要不可欠な場所であることを,わたしたちは過去何世紀もの経験から十分承知しています。男女間の結婚によって築かれる家族以外の家族形態は正しく機能していませんし,今後も決して機能しないことを理解しているはずです。このことは大管長会と十二使徒定員会が発表した「家族――世界への宣言」の中ではっきりと指摘されています。
「わたしたち,末日聖徒イエス・キリスト教会の大管長会と十二使徒評議会は,男女の間の結婚は神によって定められたものであり,家族は神の子供たちの永遠の行く末に対する創造主の計画の中心を成すものであることを,厳粛に宣言します。
すべての人は,男性も女性も,神の形に創造されています。人は皆,天の両親から愛されている霊の息子,娘です。したがって,人は皆,神の属性と神聖な行く末とを受け継いでいます。そして性別は,人の前世,現世および永遠の状態と目的にとって必須ひっすの特性なのです。… …
神がアダムとエバに授けられた最初の戒めは,彼らが夫婦として親になる能力を持つことに関連したものでした。わたしたちは宣言します。すなわち,増えよ,地に満ちよ,という神の子供たちに対する神の戒めは今なお有効です。またわたしたちは宣言します。生殖の神聖な力は,法律に基づいて結婚した夫婦である男女の間においてのみ用いるべきです。
神の計画により,父親は愛と義をもって自分の家族を管理しなければなりません。また,生活必需品を提供し,家族を守るという責任を負っています。また母親には,子供を養い育てるという主要な責任があります。これらの神聖な責任において,父親と母親は対等のパートナーとして互いに助け合うという義務を負っています。… …
わたしたちは警告します。貞節の律法を犯す人々,伴侶や子供を虐待する人々,家族の責任を果たさない人々は,いつの日か,神の御前に立って報告することになります。またわたしたちは警告します。家庭の崩壊は,個人や地域社会,国家に,古今の預言者たちが預言した災いをもたらすことでしょう。」6
父親の役割
天の御父の子供たちの将来について,重大な警告が発せられています。ですから父親と母親は永遠の家族を築くという主の指示に従っているかどうか,自分の心を探らなければなりません。特に父親について,主は何を期待しておられるでしょうか。
家族を築くとき,父親は次のような役割を担うことになります。
1.父親は家族の頭です。「父親は指導者です。それも最も大切な指導者です。過去においてもそうでしたし,将来もそうです。父親であるあなたは,永遠の伴侶から援助と助言と励ましを受けて家庭を管理します。ふさわしさや資格とは関係なく,神がそう定められたからそうするのです。」7
父親は指導者として,家族を礼拝に参加させなければなりません。
「食卓で祈るときや家庭の夕べのときに,あなたは家庭を管理します。そして主の御霊の導きを受け,子供たちに正しい原則が教えられるようにします。父親は家庭生活全般にわたって指導します。あなたは父親の祝福を与えます。決まりを作り,しつけるときに,積極的な役割を果たします。指導者として,一致した幸せな家庭という祝福を得るために計画し,犠牲を払わなければなりません。そのためには,生活を家庭中心にする以外にありません。」8
次はジョセフ・F・スミス大管長の勧告です。「兄弟の皆さん,家庭の中に宗教的な献身,愛,神への畏れがあまりにも少なく,逆に,敬虔の念に欠け,この世的な思いや利己心を抱き,無関心になることが多すぎます。さもなければ,このような問題がそれほど多く世に見られることもないでしょう。したがって改革が必要なのは家庭です。今日,そして明日,家庭を変えるように努めてください。」9
兄弟の皆さん,家族の指導者として役割を果たすとき,妻が同僚であることを忘れないでください。ゴードン・B・ヒンクレー大管長はこう教えました。「この教会では,男性は,奥さんの前に立って歩くのでもなく,後ろを歩くのでもなく,並んで歩いています。」10 神は時の初めから,男女は結婚によって結び合い,一体となるよう人類に命じてこられました。11 したがって,家族には会長も副会長もいません。夫婦は家族のために永遠に協力するのです。夫婦は家族を導くときに,言葉にも行いにも一致していなければなりません。歩調を合わせて歩むのです。夫婦は一致協力して家族の事柄を計画し,準備し,進んでいきます。
2.父親は教師です。
ジョセフ・F・スミス大管長の勧めは今日も応用できます。「子供たちを専門家に任せるようなことをせずに,あなた自身の説得と模範により,あなたの家庭で教えてください。あなたが真理の専門家になってください。」12
「子供を教えることの大切さに気づいたあなたは,謙遜にならざるを得ません。訓戒と模範によらなければ教えられないことをすぐに実感するからです。効果的に教えるにはこれ以外に方法はありません。聖霊を常に伴侶とすることを目標に生活し,学び,祈らなければなりません。あなたの模範と指導にイエス・キリストの福音の光が反映するように,生活を清め,整える必要があります。
日々の生活設計を立てるうえで,主の御霊の導きどおりに計画しなければなりません。ほかの事柄で忙しくなる前に,自分と家族の幸福を熱心に求める必要があります。生ける預言者はこう教えています。『いかなる成功も,家庭の失敗を償うことはできない。』」(デビッド・O・マッケイ,Conference Report,1964年4月,5。J・E・マッカロック,Home: The Savior of Civilization〔1924年〕42から引用)13
3.父親は物質的必要を満たす人です。エズラ・タフト・ベンソン大管長はこう明言しました。「主は,妻が家庭にあって母親としての責任を全うできるよう,男性に家族を扶養する義務を与えられたのです。……夫の求めに応じたり,強いられたりして外で働いている母親がいることも知っています。余分な収入がないと買えないような品物を,夫の方が欲しがっているのです。兄弟たち,もしもそのようなことをしていると,家族を悲しませるばかりか,自分自身の霊的成長も止めてしまうことになります。」14
父親の皆さんは,家族を管理するよう神に命じられています。これは厳粛な指示であり,あなたにとって最も大切な責任です。なぜなら永遠の責任だからです。家族を正しい優先順位に置いてください。家族は死後もあなたの生活の一部として続きます。わたしは次の言葉が真実であることを証します。
「男性,特にメルキゼデク神権者は,家族の中で最も重要な位置を占めます。そしてそのことは,男性が神から家長と定められたときに授かった位と権威とともに,正しく認識され,維持されていかなければならないのです。」
「家族という組織に関して,特にこの組織が大神権者によって管理されるとき,父親の権威より高い権威はありません。……族長制度はその起源が神にあり,この世から永遠にわたって存続するものです。ここに,男女,子供が神の民の家族における族長の位と権威を理解しなければならない特別な理由があるのです。この権威は神の御心に添って,神の子らが最高の昇栄に至るために条件を整え,備えとなるように用いなければならないのです。家庭を管理する権威は常に父親に与えられます。家庭と家族に関するあらゆることについて,これ以上の権威はほかにありません。」15
出典を述べずに幾つかの言葉を引用しましたが,意図的にそうしたのです。5月号の『エンサイン』(Ensign)と『リアホナ』では注を付して明らかに示されます。大会号を読むときに引用文を調べてください。この機関誌がすべての家庭に置かれるようお勧めします。この大会の精神は機関誌の誌面に一年中生き続けているのです。
時の初めから家庭における父親の大切さについて警告を発してきた預言者たちの声に耳を傾けましょう。シオンの父親たちに主が与えられた義務と責任をいっそう忠実に果たす決意ができるよう,へりくだり祈ります。イエス・キリストの御名により,アーメン。