信仰に忠実に生きる
わたしたち一人一人は,わたしたちの先祖を教会の加入へと導いた信仰と犠牲の物語を知れば,それだけ大いに祝福されるのです。
わたしは教会歴史が大好きです。恐らく多くの皆さんがそうであるように,福音を受け入れ,信仰に忠実に生きた先祖たちの並外れた献身の様子を知るとき,わたし自身の信仰も強められます。
1か月前のこと,アリゾナ州ギルバート神殿地域から集まった1万2,000人のすばらしい若者たちが新しい神殿の完成を祝って,霊感あふれる劇を上演し,義にかなって生きようとする決意を示してくれました。この祝典のテーマは「信仰に忠実に生きる」というものでした。
あの忠実なアリゾナの若者たちと同じように,末日聖徒は一人一人が「信仰に忠実に生きる」と決意する必要があります。
賛美歌の歌詞には「われら受けし信仰持ち」(「シオンの若者,真理を守り」『賛美歌』163番)とあります。
わたしたちはそれに「祖父母から受けし信仰持ち」と加えることもできるでしょう。
わたしは,あの熱意あふれるアリゾナの若者たち一人一人が,自分自身の教会歴史を知っているだろうか,と考えてみました。自分自身の家族がどのようにして教会員になったか,その歴史を知っているだろうかと考えたのです。末日聖徒が皆,その先祖の改宗の物語を知っていたとしたら,それは実にすばらしいことになります。
皆さんが開拓者の子孫であるかどうかにかかわらず,モルモンの開拓者の信仰と犠牲の遺産は,皆さんの受け継ぎでもあります。それは末日聖徒イエス・キリスト教会の気高い遺産だからです。
教会の歴史の中でも,最も心躍る物語の一つは,主の使徒であったウィルフォード・ウッドラフが,1840年に英国全土でイエス・キリストの回復された福音を教えたときに起きたものです。教会が設立されてちょうど10年後のことでした。
ウィルフォード・ウッドラフや他の使徒たちは,御業をイギリスのリバプール地区とプレストン地区に絞り込み,かなりの成功を収めていました。ウッドラフ長老は,後に教会の大管長になった人物ですが,このきわめて重要な御業を進めるに当たって,絶えず神に導きを求めて祈っていました。その祈りの結果,他の場所へ赴いて福音を教えるようにという霊感を受けたのです。
モンソン大管長は,わたしたちが何かをするようにという霊感を天から受けたら,直ちにそれを実行し,決して引き延ばしてはならないと教えています。ウィルフォード・ウッドラフは,正にそのようにしました。御霊から「南へ行く」よう明確な導きを受けたウッドラフ長老は,ほとんど時を置かずに出発し,イギリスのヘレフォードシャーという名の町に向かいました。イギリス南西部の農業地帯にある町です。この町で長老は,ジョン・ベンボーという名の富裕な農場主と出会います。そこで彼は,「喜ばしい心と感謝とをもって」歓待されたのです(マタイアス・F・カウリー編,Wilford Woodruff, Wilford Woodruff: History of His Life and Labors as Recorded in His Daily Journals 1909年,117)。
実は,そこで同胞教会と自称するグループに属する600人以上の人々が「光と真理を求めて祈って」いました(『歴代大管長の教え―ウィルフォード・ウッドラフ』,91)。主は彼らの祈りの答えとしてウィルフォード・ウッドラフをそこへ送られたのです。
ウッドラフ長老の教えはたちまち実を結び,多くの人々がバプテスマを受けました。ブリガム・ヤングとウィラード・リチャーズもヘレフォードシャーで合流し,3人の使徒がそこで目覚ましい成功を収めたのです。
ほんの数か月のうちに,彼らは教会員となった541人のために33の支部を組織しました。彼らのめざましい働きはさらに続き,最終的には,同胞教会の信者のほぼ全員がバプテスマを受けて,末日聖徒イエス・キリスト教会に加入したのです。
わたしの高祖母ハンナ・マライア・イーグルズ・ハリスもウィルフォード・ウッドラフの話を最初に聞いた仲間の一人でした。彼女は夫のロバート・ハリス・ジュニアに,自分は神の御言葉を聞いたので,バプテスマを受けるつもりだと告げたのです。ロバートは妻の話を聞いて,面白くありませんでした。次にモルモンの宣教師が来るときには自分も一緒に行くと告げたのです。宣教師の誤りを正すつもりでした。
聴衆の最前列付近に座り,だまされまいと固く決意をして,できれば訪ねて来る説教者の鼻をあかしてやろうと意気込んでいたロバートでしたが,妻と同様,御霊によって直ちに心が動かされ,回復のメッセージが真実だと分かったのです。こうして,二人はバプテスマを受けました。
彼らの信仰と献身の物語はまた同様の数千の人々の物語でもあります。彼らは福音のメッセージを聞いたとき,それが真実だと分かったのです。
主は次のように言われました。「わたしの羊はわたしの声に聞き従う。わたしは彼らを知っており,彼らはわたしについて来る」(ヨハネ10:27 )。
羊飼いの声を聞いた彼らは,福音に従って生活し,主の預言者の指示に従うという完全な決意をしました。「シオンに集合する」ようにという召しに応えた彼らは,イギリスの彼らの家を後にして,大西洋を渡り,他の聖徒とともにノーブーに集合しました。
彼らは心から福音を受け入れていたのです。新しい地で自分の家を建てるために奮闘しながら,彼らはノーブー神殿の建設を助けるために,自分たちの労働力を什分の一としてささげました。10日ごとに神殿の建設のために働いたのです。
彼らは愛する預言者ジョセフ・スミスとその兄ハイラムの死去の知らせを聞き,心が砕かれる思いでした。それでも,彼らは進みます。信仰に忠実に生き続けたのです。
聖徒たちが迫害を受けて,ノーブーから追放されるころ,ロバートとマライアは実に恵まれて神殿で自分たちのエンダウメントを受ける祝福にあずかりました。ミシシッピ川を渡り,西部へ向かう直前のことでした。二人はこれからどんな将来が待っているのか,確信が持てませんでしたが,信仰と証だけは確固としていました。
二人は6人の子供を抱えて,泥道の中を西に向かってアイオワ州を横切って行きました。彼らはミズーリ川のほとりに粗末な小屋を建てますが,そこは後にウィンター・クォーターズとなった場所です。
この恐れを知らぬ開拓者たちは,自分たちがさらに西へ歩を進めるに当たって,どのように,またいつ進めるべきか,使徒の指示を待っていました。しかし,皆の計画は十二使徒定員会のブリガム・ヤング会長の,男性は合衆国陸軍の志願兵として兵役に就くようにという呼びかけによって一変しました。これが後のモルモン大隊です。
ロバート・ハリス・ジュニアもブリガム・ヤングの呼びかけに応えた500人以上のモルモン開拓者の一人でした。彼は,それが身重の妻と6人の幼い子供たちを残して行くことになることを承知しつつ,徴兵に応じたのです。
なぜ彼やその他の人々はそのようなことをしたのでしょうか。
その答えは,わたしの高祖父自身の言葉の中に見いだすことができます。彼は,大隊がサンタフェに向かっていたときに妻に宛てて書いた手紙の中で,そのことを明かしています。「わたしの信仰はこれまでになく強まっています。(ブリガム・ヤングがわたしたちに向かって語った言葉について考えるとき)それはまるで大いなる神がわたしに向けて語ったと同じことなのだと信じています。」
要するに,高祖父は自分が神の預言者に耳を傾けているのだということを知っていたということです。他の人たちも同じでした。だからこそ,彼らはそのような行動を取りました。神の預言者によって導かれていることを知っていたからです。
同じ手紙の中で,彼は,妻や子供たちを深く愛していることを告げ,妻や子供たちが祝福を受けられるよう,絶えず祈っていると書きました。
その手紙の後半部分で,彼は次のような力強い言葉を書いています。「あなたやわたしが主の神殿の中で耳にし(経験し)たことを,わたしたちは決して忘れてはなりません。」
「わたしたちは神の預言者によって導かれているのだ」という先の証とともに,この二つの神聖な勧告はわたしにとって聖句のようになっています。
大隊とともに出発してから1年半後,ロバート・ハリスは愛するマライアと無事再会を果たしました。二人は生涯を通じて,回復された福音に忠実に,忠誠を尽くしました。二人には15人の子供がおり,そのうちの13人が成人しました。カナダ,アルバータ州レイモンドにいたわたしの祖母のフェイン・ワーカーはその136人の孫の一人です。
ワーカーおばあさんは,自分の祖父がモルモン大隊で従軍したことを誇りに思っていました。ですから,孫たちには一人残らずそのことを知ってほしいと願っていたのです。わたしももうおじいさんになっています。祖母にとって,それがなぜ大切だったのか,理解できるようになりました。祖母は,子供たちの心を父に向けさせたかったのです。孫たちに,義にかなった遺産について知ってほしかったのです。それが,必ず彼らの生涯に祝福をもたらすことを知っていたからに他なりません。
自分たちが義にかなった先祖たちと結びついているという実感があればあるほど,わたしたちは思慮深く,義にかなった選択ができるようになります。
全くそのとおりなのです。わたしたち一人一人は,わたしたちの先祖を教会の加入へと導いた信仰と犠牲の物語を知れば,それだけ大いに祝福されるのです。
ウィルフォード・ウッドラフが教え,福音の回復について証をした最初の段階から,ロバートとマライアはこの福音が真実であることを知っていました。
また,どのような試練や困難に襲われようとも,信仰を固く持ち続ける限り,祝福を受けるということを知っていました。二人は現在の預言者の言葉を聞いていると思われても不思議ではありません。現在の預言者はこう言っています。「神殿の祝福を受けるためにいかなる犠牲……もいといません」(トーマス・S・モンソン「聖なる神殿―世界に輝くかがり火」『リアホナ』2011年5月号,91)。
英国の2ポンド硬貨の側面には「巨人の肩の上に立って」と刻印されています。わたしが偉大な開拓者の先祖のことを思うとき,わたしたちは皆巨人の肩の上に立っているのだと感じています。
この訓告はロバート・ハリスの手紙から取られたものですが,わたしは無数の先祖たちが同じメッセージを自分たちの子供や孫たちに送っているはずだと確信しています。まず最初に,わたしたちは神殿で味わった経験を忘れてはなりません。そして,神殿のゆえにわたしたち一人一人にもたらされる約束と祝福を忘れてはならないのです。2番目に,わたしたちは神の預言者によって導かれていることを忘れてはなりません。
わたしは証します。わたしたちは確かに神の預言者によって導かれています。主は,末日に預言者ジョセフ・スミスを通して主の教会を回復されました。そして,わたしたちはジョセフ・スミスからブリガム・ヤング,その後を引き継いだ大管長,そしてわたしたちの現在の預言者トーマス・S・モンソンへと途切れることなく続く神の預言者によって導かれているのです。わたしはモンソン大管長をよく知っており,敬い,愛しています。わたしは彼が現在,この地上における主の預言者であると証します。
子供たちや孫たちとともに,わたしたちが義にかなった自分たちの先祖の受け継ぎを大切にするように心から願っています。彼らは忠実なモルモンの開拓者として,あらゆるものを喜んで犠牲の祭壇にささげ,神のために立ち上がり,信仰を守ってきたのです。わたしたち一人一人が,先祖が大切にしてきた信仰に忠実に生きるように祈ります。イエス・キリストの聖く神聖な御名により,アーメン。