非常に魅力的な毒
アリソン・L・ランドール(アメリカ合衆国,ユタ州)
新聞を取ろうとして玄関を出ると,嫌なものが目に入りました。ヒアリが夜のうちに芝生と歩道の隙間から入り込んできて,赤茶色の山のような巣を作っていたのです。
夫とわたしはアメリカ合衆国テキサス州に長く住んでいたわけではありませんが,このアリに「ヒアリ」という俗称が付いたのは,火のような色をしているからではなく,刺されるとやけどのような痛みがあるからだということを,わたしは苦い経験から知っていました。わたしはガレージに直行し,そこに置いてある殺虫剤を手に取ると,ラベルの指示を読みました。
「〔この殺虫剤は〕ヒアリにとって非常に魅力的です。ヒアリはこれを自分の巣に運んで行って女王アリに食べさせ,巣のアリは全滅します。」ラベルには,殺虫剤の粒をアリの巣の上と周辺にばらまくようにと書いてありました。後はアリに任せればよいのです。
半信半疑でした。ヒアリはとても賢く,一晩で高い山を作ることができます。餌に見せかけた毒にだまされるとは思えませんでしたが,とりあえず薬剤をばらまきました。
少したつと,アリの山が活気づいてきました。わたしはしゃがみ,離れた所から成り行きを見ていました。アリたちは,天からマナが降って来たかのように浮かれていました。白い薬剤の粒を小さなはさみでつかんで掲げ,押し合いへし合いしながら,先を争ってこの毒を巣に運んで行きます。
わたしは驚愕しながら見ていました。喜んで毒を家に運んでいるのです。「非常に魅力的」という言葉は言い過ぎではなかったようです。殺虫剤の製造元は,アリには良くないもの,命に関わるものを非常に魅力的に見えるように作ることができたのでしょう。
悪が善に見える例として,これほど衝撃的なものは見たことがありませんでした。サタンも同じことをするのだ,とわたしは考えさせられました。救いだったのは,サタンは良いものに見せかけた毒を家庭の周囲にまくことはできても,人が許さない限り,それを家の中に入れることはできないということです。では,どうしたらサタンの毒を家から締め出すことができるでしょうか。
好きな聖句の一つが心に浮かびました。「見よ,善悪をわきまえることができるように,すべての人にキリストの御霊が与えられているからである。」御霊があれば,ある事柄が神から出ているかサタンから出ているかを「完全に理解してわきまえることができる」と,モルモンは説明しています(モロナイ7:16)。
滅びる運命にあるアリを見た経験を通して,感謝の気持ちで満たされました。夫もわたしも,家に入れるべきものとそうでないものとを判断してわきまえることができるからです。わたしたちのすべきことは,キリストの御霊に従うようにと子供たちに教えて,毒に遭遇したときに彼らも,それが悪いものだと判断できるようにすることです。
そこにしゃがんで,小さな虫たちが殺虫剤を最後の一粒まで巣に運び入れるのを観察しながら,わたしは決意しました。家に毒を持ち込まないために,あらゆる努力を払おうと。