『聖徒たち—末日におけるイエス・キリスト教会の物語』

スティーブン・E・スノー長老

中央幹部七十人，教会歴史家兼記録者

1861年，ブリガム・ヤング大管長（1801－1877年）は教会歴史家たちに，手法を変えるよう要請しました。「物語調で書くように」と助言し，「書く内容は10分の1程度にしてよい」と述べたのです。¹

次のページからの話は，その助言に従って書かれています。『聖徒たち—末日におけるイエス・キリスト教会の物語』という新しい4巻のシリーズを紹介でき，うれしく思います。第1章は今月号に掲載，第2章以降もこれから数か月にわたって本機関誌に掲載される予定です。第1巻は年内に読めるようになり，第2巻以降もそれに続きます。

『聖徒たち』は，「教会の記録と歴史を絶えず書き残す」ようにという主の命令（教義と聖約47：3）にこたえて作成されました。従来の教会歴史と異なり親しみやすい文体で書かれた歴史物語ですから，青少年も成人も気軽に読めることでしょう。

といっても，『聖徒たち』は歴史小説ではありません。過去に実在した人々の記録に基づいた実話なのです。どんな細部や会話の一言にも，歴史記録の裏付けがあります。各章の最後に付いている「注」では，そうした歴史記録やそのほかの資料〔英語のみ〕が参照できるようになっています。実際の記録を読みたい人や，関連するテーマについて理解を深めたい人，ほかの物語を楽しみたい人に向けて，物語の最後にはリンクが張られており，オンライン（history.lds.org〔英語のみ〕）からも資料を読むことができます。

深みのある回復のタペストリー

この物語は聖文ではありませんが，聖文と同じように，神聖な真理と，不完全な人々がイエス・キリストの贖罪を通して聖徒になろうと努力する物語が収められています（モーサヤ3：19参照）。4巻にわたり，聖徒を完全な者とするという務めを果たそうと励む主の教会の物語を伝えているのです（エペソ4：11－13参照）。

教会は複数の巻にわたる歴史書を過去に2度出版したことがありますが，『聖徒たち』は，それとはまったく異なる形式，文体，また読者を対象として書かれています。最初の歴史書は1830年代，ジョセフ・スミスによって作成が開始され，1842年から出版されました。²2つ目のものは，1930年に教会歴史家補佐のB・H・ロバーツにより出版されています。³回復された福音がその後全世界に広まっていることと，「教会のため……，……後の世代のためになる」歴史を絶えず書き残すよう主が命じておられることとを考え合わせると（教義と聖約69：8），さらに多くの末日聖徒を物語に登場させてもよい時期が来ているのではないでしょうか。

『聖徒たち』には，教会の初期から現在に至るまでに生きた，平凡な男女の物語が多く登場します。また，教会歴史上よく知られている人々や出来事に関する，新たなエピソードや洞察も盛り込まれています。読者はどの話を読んでも，自分より前の時代を生き，今日の教会を築き上げてきた聖徒たちに共感し，感謝の気持ちを抱くようになることでしょう。皆さんと同じように，彼らは困難や成功を経験しながら，シオンを確立するために犠牲を払ったのです。織り合わされた彼らの物語と皆さんの物語は，深みのある回復のタペストリーを生み出すことでしょう。

聖なる過去の物語

モルモン書の記録者たちは，大版と小版の両方を保管していました。大版には政治や戦いの歴史が記録され，小版は「神聖な説教や重要な啓示，あるいは預言」を含む「いちばん貴い」「神にかかわる事柄」を書き記すために使われました（1ニーファイ6：3；モルモン書ヤコブ1：2，4）。小版は「キリストのため，またわたしたちの民のために」記録されたのです（モルモン書ヤコブ1：4）。『聖徒たち』は，「小版」の歴史，すなわち，神聖な過去の出来事を中心とする記録を刻むことを目的としています。そのため，収録できる話の中から，末日聖徒の生活において主がどのような働きをされたかを如実に示す物語のみを収めました。

『聖徒たち』は，過去に生き，主の助けによって成長した不完全な人々の物語ですが，それだけでなく，今を生きる，不完全ながらも常に主を覚えていたいと思っている人々に向けられた物語でもあります。この物語は，救い主が御自分の民に対していかに慈悲深くあり，弱い民を強められたか，全世界の聖徒たちがいかに団結して神の業を進めたかを，皆さんに思い起こさせてくれることでしょう。