2022
世に打ち勝ちなさい。そうすれば,休みが与えられるであろう
2022年11月号


18:44

世に打ち勝ちなさい。そうすれば,休みが与えられるであろう

神と交わした聖約を通して世に打ち勝つことによって,この世の厳しさや不確かさ,苦痛から逃れて休みを見いだしましょう。

愛する兄弟姉妹の皆さん,この輝かしい安息日の朝に,皆さんとお会いできることに感謝しています。いつも皆さんのことを思っています。困っている人を見るとすぐに行動する皆さんの姿に感嘆し,皆さんが繰り返し示してくださる信仰と証に驚嘆し,皆さんの心の痛みや落胆,悩みに涙しています。皆さんを愛しています。天の御父とその愛する御子イエス・キリストは,確かに皆さんを愛しておられます。御二方は,皆さんがどんな状況にあってどんな善いことをしていて,何を必要としているか,どんな助けを求めて祈っているかをよく知っておられます。わたしは,皆さんが御二方の愛を感じられるようにと,何度も何度も祈っています。

日々,悲惨なニュースが飛び交う中で,御二方の愛を味わうことはきわめて重要です。パジャマを着たまま丸くなって,この騒動がおさまったら起こすようにとだれかに頼むことができたらどんなにいいかと思った日もあるかもしれません。

しかし,愛する兄弟姉妹の皆さん,これから実に多くのすばらしいことが起こります。近いうちにわたしたちは,これまで世界が見たこともないような,救い主の最も偉大な力の現れを目にすることでしょう。今から,主が「力と大いなる栄光とをもって」1戻られるときまでの間に,主は忠実な人々に数え切れないほどの特権と祝福と奇跡を授けてくださいます。

とはいえ,わたしたちが今,世界史上最も複雑な時代に生きていることは確かです。多くの人が,複雑な問題や試練に押しつぶされそうになり,疲れ果ててしまっています。それでも,最近聞いたある話について考えると,どうしたら皆さんやわたしに休みが与えられるのかが見えてくるかもしれません。

先日行われたワシントンD.C.神殿のオープンハウスで,オープンハウス委員会の一人が,著名なジャーナリスト数人を神殿に案内した際に,示唆に富んだやりとりを目にしたそうです。どういうわけか,このメディア向けのツアーに,幼い子供のいる家族も同行することになりました。一人の記者は,神殿参入者が神殿内を移動していく「旅」についてしきりに質問をしていました。この神殿内の進路が人生の旅における試練を象徴しているのかどうか,知りたかったのです。

同行した家族の幼い男の子が,その会話を聞いていました。このツアーの一行がエンダウメントの部屋に入ったとき,この男の子は人々がひざまずいて神と聖約を交わす聖壇を指さして,こう言いました。「ああ,これはいいね。神殿内の旅路で休める場所があるよ。」

この男の子が,自分の感じたことにどれほど深い意味があるのか分かっていたとは思えません。神殿で神と聖約を交わすことと,救い主の次のすばらしい約束が直接結びついていることは恐らく知らなかったことでしょう。

「すべて重荷を負うて苦労している者は,わたしのもとにきなさい。あなたがたを休ませてあげよう。

……わたしのくびきを負うて,わたしに学びなさい。そうすれば,あなたがたの魂に休みが与えられるであろう。

わたしのくびきは負いやすく,わたしの荷は軽いからである。」2

愛する兄弟姉妹の皆さん,わたしは,会員としてあまりに多くを求められると感じて教会を去っていく人々のことを悲しく思ってます。この人々は,聖約を交わして守ることで実は人生がより容易になることをまだ知らないのです。バプテスマフォントや神殿で聖約を交わしてそれを守る人は皆,イエス・キリストの力にさらにあずかることができるようになります。このすばらしい真理について考えてみてください。

神と交わした聖約を守ることで得られる報いとは天の力であり,それは,試練や誘惑,心の痛みにもっとよく耐えられるようにわたしたちを強めてくれます。この力は,わたしたちの旅路を楽にしてくれます。イエス・キリストのより高い律法に従って生活する人は,より高い主の力にあずかることができます。このため,聖約を守る人には,神との聖約の関係を通して,特別な休みを得る権利が与えられるのです。

救い主はゲツセマネとカルバリで苦しみに身を委ねられる前に,使徒たちに次のように断言されました。「あなたがたは,この世ではなやみがある。しかし,勇気を出しなさい。わたしはすでに世に勝っている。」3そして後にイエスは,わたしたち一人一人も同様にするよう,「わたしはあなたがたが世に打ち勝つように望んでいる」と勧めておられます。4

愛する兄弟姉妹の皆さん,わたしが今日お伝えしたいのは,イエス・キリストがこの堕落した世に打ち勝ち,一人一人を贖ってくださったので,皆さんもこの罪に満ちた,利己的な,人を疲弊させることの多いこの世に打ち勝つことができるということです。

救い主が無限の贖罪を通してわたしたち一人一人を弱さや過ち,罪から贖ってくださり,さらに,皆さんが味わってきたあらゆる苦痛や不安,重荷を経験された5のですから,心から悔い改め,主の助けを求めるならば,皆さんはこの現在の不穏な世に打ち勝つことができます。

皆さんはまた,傲慢や高慢,怒り,不道徳,憎しみ,貪欲,嫉妬,恐れといった,霊的にも情緒的にも人を疲弊させる世の疫病にも打ち勝つことができます。真理の歪曲や妨害が渦巻く中でも,たとえ最も厄介な問題の中にあっても,皆さんには真の休み,すなわち安らぎと平安が与えられるのです。

この重要な真理から,次のような3つの根本的な疑問が生まれます。

第1に,世に打ち勝つとはどういうことでしょうか。

第2に,どうすればそれができるのでしょうか。

第3に,世に打ち勝つと,人生にどのような祝福があるのでしょうか。

世に打ち勝つとはどういうことでしょうか。それは,神にかかわる事柄よりもこの世の事柄を気にかけるという誘惑に,打ち勝つことです。人の哲学よりもキリストの教義を信頼することであり,真理を喜び,偽りを非難し,「キリストに従う……謙遜な者」6になることです。また,御霊を退けるようなものから遠ざかるよう選ぶことであり,自分が好んで行っていることでさえも,それが罪であれば喜んで「捨てる」ということです。7

また,世に打ち勝つということは,この世で完全になることでもなければ,問題が魔法のように消えて無くなることでもありません。そうはならないからです。また,世に打ち勝つとは,間違いを犯さないということでもありません。そうではなく,世に打ち勝つとは,罪を拒む力が強くなるということです。イエス・キリストを信じる信仰が強くなるにつれ,皆さんの心は謙遜になっていくことでしょう。8世に打ち勝つとは,ほかのだれよりも,何よりも,神と神の愛する御子を愛するようになることなのです。

では,どうすれば世に打ち勝つことができるのでしょうか。ベニヤミン王はその方法について教え,「生まれながらの人は神の敵であり,……聖なる御霊の勧めに従い,主なるキリストの贖罪により,生まれながらの人を捨てて聖徒とな〔ら〕……ないかぎり」,いつまでも神の敵のままになると述べています。9皆さんは,御霊の促しを求め,その促しに従うたびに,また「生まれながらの人」ならしないであろう善い行いをするたびに,世に打ち勝っているのです。

世に打ち勝つというのは,一朝一夕で成し得ることではありません。キリストの教義に繰り返し従いながら,生涯にわたって行っていくことなのです。わたしたちは,日々悔い改め,力を授けてくれる聖約を守ることで,イエス・キリストを信じる信仰を育みます。また,聖約の道を歩み続け,祝福として,霊的な強さや個人の啓示,深まる信仰,天使の働きを受けます。キリストの教義に従って生活すると,最も力強い好循環が始まり,生活に霊的推進力が生まれるのです。10

人は,イエス・キリストのより高い律法に従って生活しようと努力していると,心と性質そのものが変わり始めます。救い主は,さらなる慈愛や謙遜さ,寛大さ,優しさ,自制心,平安,休みを祝福として与えることによって,わたしたちをこの堕落した世に引きずり込もうとする力から引き上げてくださいます。

さて,これは休みというより,霊的な重労働だと皆さんは考えているかもしれません。しかし,ここに大いなる真理があります。世の人は,権力や財産,人気や肉体的な快楽が幸福をもたらすと主張しますが,それは違います。そこに幸福はありません。そこから生まれるのは,「神の戒めを守る者の祝福された幸福な状態」11などではなく,虚しさだけです。

ほんとうは,決して見いだせない場所に幸福を求めることのほうが,はるかに重労働なのです。しかし,イエス・キリストとともにくびきを負い,世に打ち勝つうえで必要な霊的な努力をするならば,主は,主のみが持っておられる力で,この世に引きずり込む力から皆さんを引き上げてくださいます。

では,世に打ち勝つなら,わたしたちの人生にどのような祝福があるでしょうか。答えは明らかです。神と聖約を結んだ関係になると,わたしたちは神と結びつき,人生のすべてがより容易になります。誤解しないでください。わたしは,聖約を交わせば楽な人生になるとは言っていません。むしろ,妨害に遭うでしょう。サタンは皆さんがイエス・キリストの力を見いだすことを望んではいないからです。しかし,救い主とともにくびきを負うということは,の力と贖いの力にあずかることができるようになるということなのです。

エズラ・タフト・ベンソン大管長

エズラ・タフト・ベンソン大管長の次の深遠な教えをあらためて明言します。「自分の人生を神に委ねる男女は,人の力でできることよりもたくさんのことを神が人生に与えてくださることを知るでしょう。神はそのような人々の喜びを深め,視野を広げ,知性を活気づけ,……霊を高め,祝福を増し加え,多くの機会を与え,慰めを与え,友人を元気づけ,平安を与えてくださいます。」12

天の助けを求める人には,この世に打ち勝つ助けとして,このような比類のない特権が与えられます。そこで,今年の5月にヤングアダルトに求めたのと同じことを,すべての教会員にもお願いしたいと思います。そのとき彼らに強く勧めたように,今回は皆さんに対し,イエス・キリストと主の福音に対する自分の証に責任を持うようにと切にお願いします。そのために努力してください。証を育ててください。真理という養いを与えてください。不信仰な男女の誤った哲学で証を汚さないでください。イエス・キリストに対する証を絶えず強めることを最優先して,自分の人生に奇跡が起こるのを待っていてください。13

今朝皆さんにお願いしたいのは,神と交わした聖約を通して世に打ち勝つことによって,この世の厳しさや不確かさ,苦痛から逃れて休みを見いだすようになってほしいということです。どうか,自分が真剣に世に打ち勝とうとしていることを,祈りと行いを通して神にお伝えしてください。思いを照らして必要な助けを送ってくださるようにと,神に願ってください。毎日,祈っているときに浮かんだ考えを書き留めて,それをしっかりとやり遂げてください。神殿で過ごす時間をもっと増やし,どうすればこの堕落した世に打ち勝つ方法を神殿から学べるようになるのか理解できるよう努めてください。14

以前からお伝えしているように,イスラエルの集合は,今日地上で行われている最も重要な業です。この集合の業における重要な要素の一つは,人を育てることです。主が再び来られるときに主を受け入れることのできる備えのできたふさわしい人,すなわち,この堕落した世よりもイエス・キリストをすでに選んでいる人,選択の自由を使ってイエス・キリストのより高く,より神聖な律法に従って生きることを喜んで選ぶ人を育ててください。

愛する兄弟姉妹の皆さん,どうか,そのような義にかなった民となってください。ほかのどのような決意よりも,自分の交わした聖約を大切にし,尊んでください。生活の中で神に勝利を得ていただけるようにするならば,平安と自信と喜びが増し,そしてこの休みが与えられることを,約束します。

わたしに授けられた聖なる使徒職の力により,この世に打ち勝とうとしている皆さんに祝福を授けます。イエス・キリストを信じる信仰がさらに強くなり,主の力に頼る方法がさらによく身につくように祝福します。真理と偽りを見分けることができるように祝福します。この世の事柄よりも神にかかわる事柄にもっと関心を寄せられるように祝福します。周りの人に何が必要かを察して愛する人を力づけることができるように,祝福します。イエス・キリストがこの世に打ち勝たれたので,皆さんもこの世に勝つことができます。このことを,イエス・キリストの聖なる御名によって証します。アーメン。