「第65課―教義と聖約50章,第1部:欺きを避ける」『教義と聖約 セミナリー教師用手引き』 (2025年)
「教義と聖約50章,第1部」『教義と聖約 セミナリー教師用手引き』
オハイオ州カートランドの初期の改宗者の中に,霊的な賜物を経験したいと切望するあまり,幾つかの異常な現れについて,実際には違うのに,それが聖霊からのものであると思い込んでしまう人がいました。主は,何が主からのもので,何がそうではないかを見分けるのに役立つガイドを与えてくださいました。この課の目的は,真理を認識し欺きを避けるために,主がどのように助けてくださるのかを生徒が理解できるようにすることです。
以下のストーリーを紹介するとよいでしょう:ストーリーを紹介しながら,スカンクの写真を見せてもよいかもしれません。
十二使徒定員会のゲーリー・E・スティーブンソン長老は,次のように述べています:
15:14
「グローバー大叔父さん……は,町から遠く離れた田舎の家に住んでいました。グローバー叔父さんはかなり高齢になっていました。彼が亡くなる前に息子たちに会ってもらいたいと思ったわたしたちは,ある午後,叔父の質素な家に車で向かいました。皆で座り,息子たちを叔父に紹介しました。話し始めて間もなく,5,6歳ぐらいだった二人の息子は,外に出て遊びたくなりました。
グローバー大叔父さんは二人の頼みを聞いて,自分の顔を二人の顔に近づけました。彼は二人に,しゃがれた声でこう言いました。『気をつけて。スカンクがたくさんいるから。』これを聞いた妻のリサとわたしは,息子たちがスカンクに分泌液を吹きかけられるのではないかと心配になりました。間もなく息子たちは外に遊びに行き,わたしたちは話を続けました。
その後,車で家に帰る道すがら,わたしは『スカンクを見た?』と尋ねました。息子の一人がこう答えました。『ううん,スカンクは見なかったけど,背中が白の縞模様の黒い猫は見たよ!』」(ゲーリー・E・スティーブンソン「わたしを欺くな 」『リアホナ』 2019年11月号,93)
子供たちがスカンクに気づかなかったのはなぜだと思いますか。
何かの本質を見きわめられないと,どのような危険があるでしょうか。
この話は,サタンがわたしたちにサタンに関して信じさせようとしていることと,どのように関連しているでしょうか。
二人一組で,欺き という言葉の定義を書いてもらいます。書く時間を十分に取った後,何人かの生徒に自分の答えをクラスで発表してもらいます。もし役立つ場合は,『聖句ガイド』にある,「聖典では,人に真実でないものを信じさせるという意味で用いられる」(『聖句ガイド』「欺き 」の項scriptures.ChurchofJesusChrist.org )という定義を紹介するとよいでしょう。
以下の質問に対する生徒の答えを,ホワイトボードに書きましょう。
今日,サタンはどのような方法で10代の若者を欺こうとするでしょうか。
サタンの欺きが時々それほどうまくいくのはなぜだと思いますか。
欺きに気づき,それを避けられるよう,聖霊からの霊感を求めるよう生徒に勧めます。
1831年2月初旬にジョセフ・スミスがオハイオ州カートランドに到着したとき,彼は「幾つかの奇妙な考えや偽りの霊が会員たちの間にひそかに入り込んでいた」ことに気づきました(in History, 1838–1856 [Manuscript History of the Church], vol.A-1,93,josephsmithpapers.org)josephsmithpapers.org
ジョン・ホイットマーはこの時期について次のように記録しています。
「示現を見たのに内容を話すことができないと言う者がいるかと思えば,ラバンの剣を持っていると思い込んでそれを〔馬上の兵士のように〕振りかざすような格好をする者もいました。また,〔先住民〕のように頭の皮をはぐような動作をする者や,蛇のような速さで……床を這い回る……者もいました。このように,悪魔は善良で正直な弟子たちの目をくらましました。」(John Whitmer, History, 1831–circa 1847, 26,josephsmithpapers.org )
これらの行動に対する懸念から,ジョセフ・スミスは主に尋ね,教義と聖約50章 を受けました。1-9節 で,主は,偽りの霊について,さらに人々を欺いている会員についても,教会の長老たちに警告されました。
教義と聖約50:1-3 を読み,主が与えられた警告を一つ探してください。
サタンは非常に巧みに欺くけれども,イエス・キリストは10-35節 で,御自分に従う者たちが真理を認識し,欺きを避けられるよう,愛をもって勧告を与えられていることを,生徒が理解できるように助けます。
次の未完成の太字の文を見せるか,ホワイトボードに書くとよいでしょう。生徒を少人数のグループに分け,各グループに以下の聖句ブロックの一つを割り当てるとよいでしょう。その後,生徒には次の活動から学んだことを発表する準備をしてもらいます。
以下の節を読み,次の真理をどのように完成するかを見つけてください:わたしたちが〇〇するとき,主はわたしたちが欺かれないように助けてくださる。
十分に時間を取ってから,ホワイトボードの未完成の文章の下に,見つけた事柄を書き出してもらいましょう。生徒から出る答えとしては,次のようなものが考えられます:真理の御霊から教えを受け,学ぼうとする ,主の光を受けようとする ,霊が神からのものか,そうでないかが分かるように祈る 。以下の質問についてクラスで話し合う前に,質問の答えを学習帳に書いてもらうとよいかもしれません。まず自分の考えを書き留めることで,生徒はより自信を持って,積極的に答えを発表できるようになります。生徒からは,これらの真理についてさらに質問が出るかもしれません。時間を取って,質問の答えを調べてもらいます。あなたが生徒に伝えられることに加えて,ほかの生徒が,貴重な洞察を提供してくれるかもしれません。
生徒が自分の学習に責任を持てるようにするには,「すべてのコメントや質問に答えようとするのを避け,生徒に答えるように勧める 」という訓練を参照してください。これは『教師養成スキル:熱心に学ぶよう勧める』 にあります。
前の質問について話し合うとき,サタンが10代の若者を欺こうとする方法のリストを,生徒に参照してもらうとよいかもしれません。生徒には,自分が選んだ救い主の教えが,ここに挙げられた欺きに対応するとき,どのように役立つかを学習帳に記して注目してもらってもよいでしょう。
主は最後に,主のおかげでわたしたちは恐れる必要はないと,愛にあふれた確信をもって締めくくられました。教義と聖約50:40-44 を読み,救い主について学べることを見つけてください。
この聖句から,救い主について何が印象に残りましたか。
救い主について,そのことが分かると,欺きに満ちている世の中で,どのように役立ちますか。
あなたはこれまで,どうしてイエス・キリストについてのこれらの真理を知ったり,信じたりするようになったのでしょうか。
ラッセル・M・ネルソン大管長は,欺きを避けるために主の助けを招く方法について次のように教えています:
5:49
「人を引きつけるこの世の声と圧力は,数多くあります。しかし,人を欺き,誘惑する声はあまりにも多く,聖約の道からわたしたちを引き離すことがあります。その結果が必然的に招く悲しみを回避するために,わたしは今日,毎日欠かさず生活の中で主のために時間を取って世の誘惑に対抗するよう,皆さんに切にお願いします。
皆さんの得る情報のほとんどがソーシャルメディアやそのほかのメディアからである場合,御霊のささやきを聞く能力は低くなるでしょう。また,日々の祈りや福音学習を通して主を求めていなければ,好奇心をそそるけれども真実ではない考え方の影響を受けやすくなるでしょう。ほかの点では忠実な聖徒でさえ,バビロンの楽団が奏でる一定のリズムのために道を踏み外すかもしれません。
兄弟姉妹の皆さん,どうか主のために時間を取ってください!聖霊が常に 伴侶となるような事柄を行うことにより,自分の霊的な基盤を堅固にして,時の試練に耐えられるようにしてください。」(ラッセル・M・ネルソン「主のために時間を取る 」『リアホナ』 2021年11月号,120)
少し時間を取って,学んだことや,欺かれないために行うよう促しを感じたことを話し合ってもらいましょう。引き続き神の真理を認識して,欺きを避ける方法を見つけるよう勧めます。生徒がこれを行えるよう助けたいという主の望みと能力に対しての,あなたの確信を伝えてもよいでしょう。
十二使徒定員会のゲーリー・E・スティーブンソン長老は.次のように教えています:
「偽りの父であり,大いなる偽り者であるサタンは,物事の真実の姿に疑問を抱かせ,永遠の真理を無視させたり,真理をもっと心地よいものに変えさせたりするのです。『彼は神の聖徒たちに戦いを挑み,彼らを取り囲み』〔教義と聖約76:29 〕,何千年もの間,善が悪であり ,悪が善である ,と神の子供たちが信じるように企て,実行してきました。」(ゲーリー・E・スティーブンソン「わたしを欺くな 」『リアホナ』 2019年11月号,94)
十二使徒定員会のデビッド・A・ベドナー長老は,次のように述べています:
「霊的に危うい考えや行動も,しばしば魅力的で,望ましく,楽しいもののように見える場合があります。ですから,イザヤが警告しているように,現代社会においては,一人一人が善を装う悪に惑わされないよう気をつける必要があるのです。……
サタンは『義の敵であり,また神の御心を行おうと努める人々の敵』〔『聖句ガイド』「悪魔 」の項,scriptures.ChurchofJesusChrist.org 〕です。サタンの唯一の意図と目的は,神の息子,娘たちを毎日,一日中,自分のように惨めにすることです。
御父の幸福の計画が意図しているのは,御父の子供たちに進むべき方向を示し,永続する喜びを味わえるよう助け,復活し昇栄した肉体をもってみもとに無事に戻れるようにすることです。悪魔は神の息子,娘たちを混乱と不幸に陥れ,永遠の進歩を妨げようと働いています。サタンは,自分が最も憎む,御父の計画の要素を攻撃しようと執拗に働いているのです。」(デビッド・A・ベドナー「絶えず祈りに心を配る 」『リアホナ』 2019年11月号,33-34)
十二使徒定員会のゲーリー・E・スティーブンソン長老は.次のように教えています:
「わたしたちの預言者に与えられた戒めに従うことは,偽り者の影響力を避ける鍵であるだけでなく,永続する喜びと幸福を経験する鍵でもあります。この神の公式は随分と簡潔です。義,つまり戒めへの従順は祝福をもたらし,祝福は幸福,つまり喜びを生活にもたらします。」(ゲーリー・E・スティーブンソン「わたしを欺くな 」95)
ラッセル・M・ネルソン大管長は次のように述べています:
「改めて皆さんにお願いします。個人の啓示を受ける霊的な能力を増すために必要なことを何でも 行ってください。
それを行うことは,人生で成長する方法や,危機の際になすべきこと,誘惑やサタンの欺きを識別して避ける方法を知るのに役立つでしょう。」(ラッセル・M・ネルソン「彼に聞きなさい 」『リアホナ』 2020年5月号,90)
ヘンリー・B・アイリング管長は,次のように教えています:
「聖霊を伴侶とすると,良いことにもっと引かれるようになり,誘惑にそれほど魅力を感じなくなります。それだけでも,いつも御霊を受けると決意する十分な理由になるでしょう。
聖霊は悪への抵抗力を増してくださるうえに,真実と誤りを識別する能力も与えてくださいます。最も大切な真理について確証を与えるのは,神の啓示だけです。人間の論理や五官に頼るだけでは不十分です。わたしたちが生きている現代は,聡明な人ですら巧妙なうそと真理を識別するのに苦労する時代なのです。」(ヘンリー・B・アイリング「あなたの伴侶としての聖霊 」『リアホナ』 2015年11月号,104)
新しい聖徒たちがカートランドで教会に加わったとき,彼らは新約聖書に記されている御霊の賜物をぜひとも経験したいと思っていました。礼拝行事に,奇妙な活動や,騒がしい活動,混乱させるような活動を導入した人もいました。これらの行事は人々の感情を揺さぶることはあっても,教化はしませんでした。聖徒たちは,御霊の現れを理解するには未熟だったのです。偽りの霊について,預言者ジョセフ・スミスは,次のように述べています:「少し注意をしながら,幾らかの知恵を用い,わたしは兄弟たちと姉妹たちがそれらを克服できるようにすぐに支援しました。……偽りの霊は,啓示の光によって容易に見分け,拒むことができました。」(in History, 1838–1856 [Manuscript History of the Church], vol.A-1,93 ,josephsmithpapers.org 〔訳注―「啓示の背景」の「初期のオハイオの改宗者の間に見られた宗教的熱狂」に掲載あり〕)
生卵1個と,固ゆで卵1個の2個の卵をクラスに持って行きます。生卵は真理を表し,固ゆで卵は欺きを表していることを生徒に説明します。生徒に,見ただけでどちらがどちらか分かるか尋ねます。これは,真理と誤りの違いを見分けるのが難しい場合があることを表しています。どちらの卵が生卵で,どちらが固ゆで卵かを見分ける方法が一つあることを生徒に示します。卵を横にして回転させると,生卵は1,2秒間しか回転しません。一方,固ゆで卵は数秒間回転します。同様に,わたしたちは何が真実で何が間違っているかを見きわめる方法を理解する祝福を受けています(デビッド・ディクソン,「固ゆでの欺き 」『青少年の強さのために』 2022年10月,24-25参照)。
教化する〔訳注―英語で“edify”〕とはどういう意味か,生徒が理解できるように,基となる言葉,ediifice(大建造物) ,または建物について考えてもらうとよいでしょう。教化されるとは,高められる,あるいは建てられるという意味であることを生徒が理解できるように助けます。また,その言葉がどういうことを意味しないかを知ることでも,言葉の理解に役立つかもしれません。例えば,高める ,建てる ,改善する といった言葉を,強く印象を与える ,ショックを与える ,操る など,人に影響を及ぼそうとする他のやり方を表す言葉と交ぜ合わせて書くとよいでしょう。その後生徒に,教化されることを指すと思う言葉を選んでもらいましょう。救い主の教えは人を教化しますが,サタンのコミュニケーションは教化しないことを生徒が理解できるように助けましょう。
生徒が教義と聖約50:24 で使われている光 をよりよく理解できるように,モロナイ7:12-15 または1ヨハネ1:5 を参照してもらうとよいでしょう。生徒に,紙の真ん中に縦線を引いてもらいます。片側に「光をもたらすもの」と書き,もう一方に「光を取り去るもの」と書いてもらいます。その後,時間を取って,それぞれの欄に思いつくことを書き加えていってもらうとよいでしょう。