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家族歴史の探究
はじめに
大管長会のヘンリー・B・アイリング管長は,神殿で主の業を進めるというたぐいまれな機会とそのために利用できるリソースについて,次にように言っています。「先祖を調べる機会や義務は,世界の歴史の中で最もすばらしいものです。これまでにない多くの神殿が世界中にあります。世界中でより多くの人が,エリヤの霊を感じ,先祖の生活の様子や出来事を記録するよう促されてきました。先祖を探すための資料がこれまでになかったほど多くあります。また主は知識をお与えになり,数年前には奇跡と思われていた科学技術によってその情報を世界中で利用できるようにしてくださいました。」(「結ばれた心」『リアホナ』2005年5月号,79)
本章を通じて,家族歴史の活動を頑張ってやり遂げる勇気が得られます。最初は簡単な作業かもしれません。しかし,続けるに従って,問題がだんだんと大きくなってくることでしょう。現在の知識を超えて先祖の系譜を明らかにしたり,そうした人々のために神殿の儀式を行えるだけの情報を見つけ出したりするためには,さらに努力と忍耐が必要になります。活動の効率を上げるために特定の目標を設定し,よく計画を立てて探究するようにしてください。本章の情報は,入手可能な記録の数々や,それらの記録に載っている情報の種類についてさらに深く学ぶのに役立つでしょう。
注解
家族歴史の活動は,身近な世代から離れれば離れるほど,困難なものになる〔11.1〕
問題があってもやり通す。〔11.1.1〕
ヘンリー・B・アイリング管長は,家族歴史の活動が難しくなっても努力を続けるよう勧告し,自分の力を超えた助けを受けると約束しています。
「身近な数世代を見つけた後,先祖の探求はもっと難しくなります。代価が高くなるのです。世代が古くなるにつれ,記録は不完全になります。同じ家系のだれかも先祖の探求をしていると,見つけた先祖がすでに神殿のすべての祝福を受けていると分かることもあります。そこで皆さんは難しくて大切な選択をしなければなりません。先祖の探求をやめて,難しい部分をもっと慣れた人に任せてしまうか,あるいは,またいつか時を改めて探求を行うかという誘惑に遭うのです。しかし同時に,どんなに困難でもこの仕事を続けなければとも感じることでしょう。
先祖の探求を続けるか決めるとき,探すのが実に困難な名前は,実在する人の名前であることを忘れないでください。皆さんはその人たちのおかげでこの世に存在し,いつか霊界で再会するのです。皆さんがバプテスマを受けたとき,先祖は希望をもって皆さんを見ていました。彼らは,自分を見つけて自由にするために子孫の一人が聖約を交わすのを見て喜ぶまで,何世紀もかかったのかもしれません。再会したときに先祖の目に浮かぶのは,感謝か大きな失望のどちらかです。彼らの心は皆さんと結ばれています。彼らの望みは皆さんの手にあります。先祖の探求を続けると決意するとき,皆さんは自分の能力を超えた力を得ます。」(「結ばれた心」『リアホナ』2005年5月号,79-80)
注意深い探求が結び固めの儀式につながる。〔11.1.2〕
大管長会のジェームズ・E・ファウスト管長(1920-2007年)は,両親を亡くした開拓者の先祖が実の両親に結び固められたときの経験を紹介しています。
「両親を亡くした幼い6歳の少女が,アメリカの大平原を横断する場面を思い浮かべてください。名前はエルシー・アン,母親は2歳のときに亡くなり,父親は再婚します。ですからしばらくの間,義母と生活を共にします。そして5歳のときに,父親がウィンタークォーターズで亡くなります。義母は再婚し,血縁関係にあるピーター・ロビソンとセリーナ・ロビソンにエルシーを託して引っ越してしまいます。1849年の7月,エルシー・アンはロビソン夫妻とともにウィンタークォーターズを離れ,西部へやって来ます。セリーナが10か月になる女の赤ちゃんを世話する姿を見て,エルシーは自分の母親のことが恋しくてたまらなかったことでしょう。『お母さんはどこにいるの』と尋ねさえしたのではないでしょうか。
慰め,助けてくれる親戚が一人もいない中で,不確かな未来に立ち向かわなければならなかったこの少女のことを思うとき,同情を禁じ得ません。エルシー・アンはわたしの曾祖母で,最近になるまでその実の母親がだれだか分かりませんでした。何年もの間,エルシー・アンの母親はジェーン・ロビソンだとばかり思っていたのです。よくよく調べてみると,エルシーのほんとうの両親が分かりました。長い歳月を要しましたが,エルシーはすでに,父親のジョン・エイカリーと母親のメアリー・ムーアとの結び固めを受けています。」(「自分という驚くべき存在」『リアホナ』2003年11月号,53)
系統立てて探究すると,もっと効果的に作業が進む〔11.2〕
家族歴史の探究のために一連の流れを作り出す。〔11.2.1〕分類法
家族歴史活動を整理したり管理したりするために,一連の流れを作り出すと助けになります。必要に合わせて,以下の提案を活用したり,応用したりしてみてください。以下の手順は,家族歴史活動の基本的な探求パターンを一通り示すものです。1から3までの手順は,本コースのこれまでの章で学んできた情報の復習です。4から6までは,さらに探究を進めて,もっと難しい作業をするときに役立ちます。
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手順1:自分の先祖のことを思い出す。
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手順2:家庭にある情報源を用いる。
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手順3:親族に情報を求める。
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手順4:もっと調べたい家族や先祖を選ぶ。
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手順5:情報をすでに見つけた人がいないか調べる。
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手順6:その家族や先祖に関する情報を記録から探し出す。
手順1:自分の先祖のことを思い出す。〔11.2.2〕
自分の家族を特定するために,まず情報を思い出し,集め,整理することから始めましょう。一人一人が下記のような個人情報によって特定できます。
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名前(姓名のうちの名,ミドルネーム,姓,旧姓,通称)
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家族との関係
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出生,結婚,死亡といった重要な出来事の日付と場所
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先祖の生まれ故郷
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職業
系図表,家族の記録,そのほかコンピュータープログラムで利用できるツールを活用すれば,情報の記録や整理が簡単になります。まず自分と肉親の情報を書き出すことから始めて,それから両親の世代や祖父母の世代へとさかのぼってください。何が分かっているか,そしてどの情報が欠けているか,不完全かがすぐに分かります。
手順2:家庭にある情報源を用いる。〔11.2.3〕
家族の重要な情報(例えば,系図表や家族の記録でまだ見つかっていない情報など)が,家にないか探してみてください。役に立つ情報源とは,出生,結婚,死亡の各証明書,家族の聖書,葬儀式次第,死亡記事,結婚の案内状,戸籍謄本,位牌などがあります。
見つかった情報を系図表や家族の記録に書き加えましょう。覚え書き,あるいはフォームの情報源の欄,または家族歴史プログラムに,情報の入手元を記録しておきます。そうしておけば,自分でも,ほかの人でも,その情報をどこから入手したか,知ることができます。
手順3:親族に情報を求める。〔11.2.4〕
親族の一覧表と,その人が持っていそうな家族の情報の一覧表を作りましょう。次に,親族と接触を図ります。訪問,電話,手紙,電子メールなどが使えます。必ず,必要な情報を具体的に尋ねましょう(例えば,「ジェーンおばさんがいつ生まれたか知っていますか」といった質問)。その情報の書かれている文書をコピーしてもよいかどうか尋ねましょう。
親族による口述歴史も大切で,もしかしたら一部の個人に関する唯一の情報源になる可能性もあります。可能な場合,その人が話をしている間,録音しておくとよいでしょう。その話をすぐに書き出し,次に情報源を明らかにします。例えば,「2011年11月30日祖母アン・(ハンブリン・)ザブリスキーによる口述記録」などとしておきます。
系図や家族の記録に情報を書き加えましょう。この情報をFamilySearch.org に保存することも考えましょう。保存しておけば,同じ先祖の系譜を持つほかの人が利用できるようになります。覚え書き,あるいはフォームの情報源の欄,または家族歴史プログラムに,その情報をくれた親族の名前を記録しておきます。
できるだけ正確に,記入漏れのないようにします。家族の記録シートの空欄をすべて埋める必要はないかもしれませんが,情報の各断片は,正しい人物を見つけたか確認し,その人や同じ家系のほかの人についてさらに情報を得るための助けになります。
手順4:もっと調べたい家族や先祖を選ぶ。〔11.2.5〕
系図表やほかの家族記録から,欠けている情報や不完全な情報を探します。次に,よく祈りながら,情報が欠けていたり不完全だったりする家族あるいは先祖を選びます。いちばん近い世代から始め,さかのぼっていきます。たいていの場合,より最近まで生きていた家族や先祖の方が情報を見つけ出しやすいからです。
手順5:情報をすでに見つけた人がいないか調べる。〔11.2.6〕
FamilySearch.org 上でその家族や先祖に関する情報がないかどうか探しましょう。ファミリーサーチのデータベースには,ほかの人が提出した情報も含まれていて,刊行されている家族歴史があれば教えてくれます。家族歴史図書館文献目録にある姓別検索では,教会の家族歴史図書館のコレクションの中からその姓が含まれている家族歴史をすべて一覧にします。また,地元の家族歴史センターでそれらの歴史資料の多くを閲覧できるよう手配することも可能です。
ほかのウェブサイトや公文書館や図書館で刊行されている家族歴史があるか探してみてください。インターネットの検索エンジンを利用してもよいでしょう。
もしどの家族歴史にも,探している家族や先祖に関する情報が見つからない場合,その家族や先祖が生活していたと考えられる地域の記録を探してみましょう。
手順6:その家族や先祖に関する情報を記録から探し出す。〔11.2.7〕
ファミリーサーチ・リサーチウィキは,探究のテクニックを教え,その人物が住んでいた場所および出生や結婚,死亡した時代に基づいて役立ちそうな記録を見つけるのを助けてくれます。リサーチウィキでは,地理的な場所と時代によって検索できます。利用可能なツールや学習資料も,次に手をつけるといい作業や探すといい記録とともに列挙します。
書式や役立ちそうなガイドをダウンロードし,印刷してください。数多くの書式とガイドをリサーチウィキから無料でダウンロードできます。これらの書式は探究の計画,記録,分析に役立ちます。
見つけ出した記録を一つずつくまなく調べたら,情報を評価し,必要な情報が含まれているかどうか判断します。新しい情報から何が分かるでしょうか。まだ足りない情報は何でしょうか。情報源は信頼できるものでしょうか。(その出来事から間もなく書かれた記録は,もっと後に作成された記録よりも正確な場合が多いものです。)この情報の内容はほかの記録と合致するでしょうか。(例えば,ある人の生年月日から10年しか経過していない結婚日は,恐らく誤りでしょう。)
これまで学んだことを活用して,次に何をするのか決めます。新しい情報によって,神殿の業のために名前を提出できるでしょうか。ほかの記録を調べた方がいいことを示唆しているでしょうか。その情報はほかの名前の探究にどう役立つでしょうか。
さらに探究を進めるときには,記録の原本と編さんされた記録の違いを知っておいた方がよいでしょう。
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記録の原本とは,人生の出来事を,起きたときかそれに近いときに,当事者が書いた記録のことを指します。記録の原本からは,出生,死亡,居住地,所有地,職業,移住,市民活動,宗教儀式,個人の業績といった情報が分かります。記録の原本には,国勢調査,教区記録,出生証明書,遺言状,権利証書,乗船記録などのように,政府や教会,社会団体あるいはそれに類する団体が保管しているものもあります。そのほかの記録の原本としては,日記,家族用聖書など,個人または家族が保管しているものもあります。
記録の原本には,家族歴史の探究のための最も正確な情報が記されている可能性が高いでしょう。その出来事があったときにあなたの先祖の最も近くで生きていた人々が書き残したものだからです。記録の原本の多くは教会でマイクロフィルム化されており,今は電子資料として,FamilySearch.org で閲覧や検索が可能となっています。現在,ボランティアの協力により,ファミリーサーチ索引プログラムによってさらに多くの記録が閲覧可能となっています。
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編さんされた記録とは,ほかの資料から集めた情報をまとめたもので,多くの場合,その出来事から何年もたってから作成されたものです。例としては,家族歴史,伝記,郷土史,団体の出版物,季刊誌,家系図,コンピューター化された索引などがあります。編さんされた記録は原本からの引用,あるいはほかの編さんされた記録からの引用,またはその両方という場合があります。例えば,刊行された家族歴史の場合,住民票,国勢調査記録,家族の文書,そして各地の歴史などから編さんされている場合があります。編さんされた記録は,記録の原本ほど正確ではない場合もあるかもしれませんが,それでもほかでは入手できない資料が含まれている可能性があるので,家族歴史の探究においては貴重な資料です。
家族歴史の業を探究するに当たって,多様な役立つ記録がある〔11.3〕
現代技術を用いると,アクセスも速くなる。〔11.3.1〕
現代技術により,集積した無数の記録に速やかにアクセスすることが可能になり,探究プロセスが向上しました。経験を分かち合ってくれたり,質問に答えてくれたりして,皆さんの家族歴史の活動を進める助けとなりそうな人と交流を持つこともできます。
次に紹介する経験は,家族歴史の探究に科学技術をうまく利用すると,実に素早く助けが得られるという一つの例です。教会の家族歴史部の課長の一人が,ある日,1800年代後半にカンザス州で生まれた大おじに関する情報を探しているときに「ツイート」(短い電子メッセージ)を投稿しました。こう書かれていました。「系図について熟慮中。カンザス州バートン郡で1888年10月16日に亡くなったワレン・ドッジの死亡証明書がどこで手に入るか知りたい。」彼が驚いたのは,6分以内に最初のリプライが届いたことでした。そして6時間たたないうちに,必要な記録を入手するために欠かせない情報がすべて分かったのです。1911年までバートン郡では死亡証明書を発行していなかったことを知りました。彼は探究先を遺言記録に変えました。こうしてバートン郡の記録事務所に電話をし,数日もしないうちに,文書を手に入れたのです。
前の章で述べたように,ファミリーサーチのウェブサイト(FamilySearch.org)には,探究を行うための様々なリソースと,その使い方を説明するチュートリアルがあります。
ユタ州プロボにあるブリガム・ヤング大学でも,大学のウェブサイト(familyhistorylab.byu.edu)上に,家族歴史チュートリアルが幾つかあり,探究が可能な家族歴史記録の種類とその内容,およびそれを利用して先祖を探究する方法などが教えられています。このウェブサイトは,ブリガム・ヤング大学の家族歴史部の段階式レッスンにリンクされており,そこでは,探究プロセスで様々な作業を進めていく方法,それぞれの記録がどこにあるのか知る方法などが掲載されています。インターネット環境さえあればだれでも無料でレッスンを受けられます。
また商業用の役に立つ家族歴史ウェブサイトも幾つかあります。中にはソフトウェアの基本バージョンを無料で提供している場合もあります。本コースの教師や,支部,ワード,ステークの家族歴史スペシャリストに相談して,推薦してもらってください。
家族歴史の情報を探究するために,数多くの資料がある。〔11.3.2〕
どのようなものであれ,人物を特定し,一般の人が利用できる記録は,家族歴史の情報に役立つ資料となり得ます。最も役に立つ記録というのは,名前だけでなく,人物に関連のある日付(例えば,出生,結婚,死亡などの日付)とその人が暮らし,引っ越し,旅した場所の地名が書かれた記録です。
以下に,家族歴史の探究に利用できるもっと一般的な記録について紹介します。
コンピューター記録。証明書,索引などの記録は,インターネット上で検索可能な形で公開されていることが多くあります。さらに,インターネットにはまた,電子メールリスト,掲示板,ウェブページ,探究のためのその他の資料が提供されています。そうしたコンピューターツールを最も総合的に扱っている場の一つが,教会の提供するファミリーサーチです。
公の記録。公の記録とは,政府,地方自治体が保管している記録のことです。保管場所は,政府,自治体の役所,文書館,図書館などです。文献目録や索引がインターネット上,あるいはその記録を保管している場所で用意されていることが多くあります。以下は,そうした公の記録の一般的な例です。
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出生証明書は,たいていの場合,生まれた人の名前,日付,出生地,両親の名前(母親の旧姓が分かる場合もあります),居住地などが記載されています。
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結婚証明書には普通,結婚の日付と場所,新郎と新婦の名前と年齢,居住地,証人の名前,時には親の名前などが記されています。
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死亡証明書には,故人の名前が記されており,場合によっては,死亡した日と場所,居住地,死因,親の名前,職業,埋葬日と場所,そして時には出生の日付と場所が記されていることもあります。
教会には,公の記録をマイクロフィルム化した膨大なコレクションがあります。教会の家族歴史センターで閲覧が可能ですし,電子化した索引をFamilySearch.org で見ることができます。
現在,こうした記録をだれでもインターネット上で利用できるよう,公の記録の電子化と索引作りが進行中です。索引に先祖の名前を見つけたものの,家族歴史図書館に実際の記録のフィルムがない場合,その記録が保管されている役所に手紙を書く必要があるかもしれません。
注-家族歴史図書館の文献目録上では,数多くの公の記録が「人口動態記録」をクリックすると出てきます。
国勢調査記録。数多くの政府が,過去200年かそれ以上にわたって,国勢調査の記録をまとめています。初期の国勢調査記録は,世帯主の名前を挙げて,家族の名前,性別,出生地,おおよその年齢だけが記載されているということがよくあります。時代が下ると,国勢調査の記録はもっと完全な情報を記載するようになっています。
国勢調査の記録を利用するときには,家族の一部の情報しか記載されていないことがあるという点に注意してください。以下は,国勢調査記録を参考にする場合の注意点です。
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国勢調査が行われた日に在宅でなかった家族は国勢調査に含まれていないことがある。
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国勢調査には亡くなった家族は含まれない。
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国勢調査に記載されている妻が,子供の母親ではない場合がある。
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親戚や下宿人が子供と記載されている場合がある。
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情報が隣人から聞き取ったものであったり,国勢調査担当者の推測であったりする場合がある。
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名前の表記が様々に違っていることがある。
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年齢は多くの場合に概算であり,出生地も推定である場合が多い。
移民記録。船会社は,国を超えて旅行する乗船客の名簿を長く保管しています。1800年代初頭からは,各国で到着客名簿(その港に到着した移民の一覧表)の作成を開始しています。こうした記録の大半は,文書あるいは電子記録の形で保管されています。移民記録には,個人の名前,年齢,職業,出身地,乗船(出発)した港などの情報が記載されている場合があります。
帰化記録。帰化記録には,(移民した人が母国への忠誠を放棄する)帰化宣誓書,市民権獲得申請書,宣誓証書(市民権獲得申請の一部として法廷で行う証言を記録したもの)があります。この情報には,申請者の年齢,名前の変更,出生地,上陸(到着)した港,配偶者の有無,郵送先住所などが含まれています。年代によっては,帰化申請の処理は地方レベルで行ったり,国レベルで行ったりしていた可能性があります。例えば,アメリカ合衆国の場合,当初,帰化記録は国,州,郡と様々なレベルで処理されていました。1906年に合衆国移民帰化局は帰化申請を索引化して管理を始め,各件につき重要文書を複写しています。
遺言記録。遺言記録とは,亡くなった人の財産(所有物)が相続人の間でどのように分割されたかを示す裁判所の記録です。遺言状には多くの場合,財産をどのように伴侶,子供,親族に譲り渡すか記してあります。執行調書には,だれが遺言を執行するか指名されています(多くの場合,生存している伴侶か長男)。遺言記録には子供全員の名前が記されていない場合が多くあります。すでに亡くなった子供や,相続分を前もって受け取った子供は,名前が除外されていることがよくあります。また,生存している伴侶が,名前の挙げられている子供のすべて,あるいは一部の親でない可能性もあります。
不動産記録。不動産記録とは,権利証書や抵当設定証書といったもので,個人や家族の移住を確認するために利用できます。時には,不動産記録には当事者同士の関係が記載されている場合があります。例えば,夫と妻が一区画を共同名義にするとか,ある個人がその家族に土地を売却するといったことです。場合によっては,こうした関係が記載されていなくても,推測できることもあります。不動産記録には,資産状況,隣人,仕事関係者,氏名といった手がかりが記載されていることもあります。
軍務記録。家族歴史の探究にとって最も価値のある軍務記録とは,軍人,あるいはその遺族である伴侶の書いた年金申請記録です。軍務記録に記されている情報としては,個人の生年月日,結婚の日付,入隊時の年齢,所属部隊,身体的特徴(例えば,髪の色,瞳の色,身長,特徴的なあざなど),従事した作戦と戦闘,軍務によって負った障がい,同期の軍人の証言,居住地,そして場合によっては相続人の名前と生年月日が記載されています。
教会記録。教会記録は,世界の多くの地域で,公の記録より数百年前から存在しています。大部分の教派が,教区記録として,洗礼,結婚,死亡などを記載します。それに関連した日付と名前に加えて,教会記録には,両親の名前と住所,職業,証人や名付け親の名前(多くの場合,親戚です)などの情報も含まれている場合もあります。そのような教会記録は今でも地方の教会に保存されている場合もありますが,多くは中央記録保管所に集積されています。家族歴史図書館では,世界中の数多くの教区記録をマイクロフィルム化しています。
進捗状況を把握し,家族歴史関連の文書を保管するシステムを構築する〔11.4〕
情報を追跡し,保管するためにコンピュータープログラムを活用する。〔11.4.1〕
家族歴史の情報を簡単に保管し検索する最善の方法を,コンピューターのプログラムが提供しています。教会からも商業用でも,様々なプログラムが入手可能ですし,それぞれ使い勝手も特長も異なります。
これまで何を探究してきたか,何を閲覧してきたか,何を見つけてきたか,といったことを把握できるコンピューターファイルも,貴重な資料になる場合があります。特に家族歴史の探究に多大の時間と努力をささげてきたときにはそうです。
電子記録が消失してしまわないようにするために,常時少なくとも一つはバックアップを作成するようにしてください。
コンピューターの記録を補足する。〔11.4.2〕
ハンギングフォルダーや箱に収めるフォルダーなどを使うと,効果的なファイルシステムが構築できます。出生証明書の謄本を掲げたり,遺言状の手書き原本のコピーをのぞいたり,先祖の書いた日記の原本を読んだりすることは,実に楽しい経験です。
そうした文書をスキャンして電子化することは,記録を保管し,共有する方法の一つです。それによって,情報源としていつでも引き出せます。
コンピューターと紙のファイルを上手に使い分けることで,効果的に家族歴史の記録の保管と検索ができます。一般的な良い基準となるのは,家族のだれかが簡単にアクセスでき,理解できるようなシステムを構築しているかどうかです。
家族歴史活動の経験豊富な人に尋ねてください。その人がしていること,あるいは勧めることは何か,聞いてください。それから,自分には何がいちばん役に立つか判断したらよいでしょう。