インスティテュート
第3章:家族歴史の探求を始める


3

家族歴史の探求を始める

はじめに

大管長会のジェームズ・E・ファウスト管長(1920-2007年)は次のように宣言しています。「ずっと昔にこの世を去った先祖について知るのは楽しいことです。だれにでも非常に興味深い家族の歴史があります。先祖を見いだすことは……皆さんが取り組める作業の中でも,特に興味深い頭の体操となるはずです。」(「自分という驚くべき存在」『リアホナ』2003年11月号,53)

皆さんが自分の家族歴史のジグソーパズルを組み立て始めるときには,まずいちばん近くにあって,いちばんなじみの深いピースから初めてください。つまり,自身の肉親一人一人と彼らの情報から始めます。皆さんがしていることは文字どおり世界中の何百万という人が楽しんでいることです。しかし皆さんの目的はもっと高いのです。つまり,主の子供たちの救いのために定められた主の業に携わることになるのです。

預言者ジョセフ・スミス(1805-1844年)は,わたしたちが亡くなった先祖の身代わりとして必要な儀式を執り行おうと努めるとき,旧約聖書の預言者であるオバデヤの預言を成就していると宣言しました。「さて,神の偉大な目的が速やかに成し遂げられようとしており,預言者の書に語られている事柄が成就しつつあります。神の王国が地上に確立され,昔の秩序が回復されている現在,主はわたしたちにこの義務と特権を明らかにし,わたしたちは死者のためにバプテスマを受けるように命じられています。こうして,末日の栄光について語ったオバデヤの言葉が成就するのです。『こうして救う者たちはシオンの山に上って〔来る。〕』〔オバデヤ1:21参照〕」(『歴代大管長の教え-ジョセフ・スミス』409)

注解

わたしたちは亡くなった先祖のために救いの儀式を行うとき,「シオンの山において救う者」となる〔3.1〕

イエス・キリストの名によってのみ,わたしたちは救いにあずかることができる。〔3.1.1〕

イエス・キリストは世の救い主であり,全人類のために贖いをされた御方です。ベニヤミン王は,天使が自分に告げたことを教えて,次のように証しました。「全能の主であるキリストの御名のほか,またその御名を通じてでなければ,どのような名も道も方法も,人の子らに救いをもたらすことはできない。」(モーサヤ3:17使徒4:122ニーファイ31:21も参照)十二使徒定員会のダリン・H・オークス長老は,現代にあってこの証を再確認しています。「わたしたちは主イエス・キリストを愛しています。主はメシヤであり,救い主であり贖い主です。わたしたちは主の御名によってのみ,救いを得ることができるのです。」(「世の光にしてまた世の生命」『聖徒の道』1988年1月号,70)

主はわたしの羊飼いである

主イエス・キリストによってのみ,わたしたちは救われる。

神殿活動は救い主の犠牲の精神に通じている。〔3.1.2〕

ゴードン・B・ヒンクレー大管長(1910-2008年)は,死者のために代わって行われる神殿の身代わりの業を救い主の贖いの犠牲と関連づけて,次のように言っています。「主の宮で行われる儀式に携わることにより,また,そのために家族の歴史記録の探究にあらかじめ携わることにより,わたしの知るかぎり,人はほかのいかなる活動にも増して主の犠牲の精神に近づくことができます。なぜでしょうか。それは,この業が時間と金銭とを惜しむことなくささげる人々によって遂行されているからです。彼らは,自分の力ではできない人々のために,何ら感謝も報いも求めることなく,その身代わりとして働いているのです。」(「エリヤの霊」『聖徒の道』1996年11月号,21)

わたしたちは「シオンの山において救う者」となることができる。〔3.1.3〕

預言者オバデヤは,「救う者はシオン山に上〔る〕」と預言しました(オバデヤ1:21)。皆さんは,すでにこの世を去った人々のためにこの預言の成就を助けることができます。預言者ジョセフ・スミスは次のように説明しています。「しかし彼らはどのようにしてシオンの山において救う者となるのでしょうか。神殿を建て,バプテスマフォントを築き,亡くなったすべての先祖のために行ってあらゆる儀式を受け,バプテスマ,確認,洗い,油注ぎ,聖任と結び固めの力をその頭に受けることによってです。そして先祖が第一の復活に出て来て,ともに栄光の座に上げられるように,彼らを贖うのです。」(『歴代大管長の教え-ジョセフ・スミス』473)

この業は末日聖徒にゆだねられている。〔3.1.4〕

ウィルフォード・ウッドラフ大管長

ウィルフォード・ウッドラフ大管長(1807-1898年)は,わたしたちが自らを贖うことができずに救い主に依存しているのと同様,先祖も神殿で彼らに代わって行われるわたしたちの身代わりの業に依存していると証しています。「皆さんの前には,……死者の贖いにかかわる業があります。神殿の建設に関する業があります。兄弟姉妹,これは大切な業です。この業は,自分自身でできない人々のために行われます。ちょうど,イエス・キリストが人の贖いのために御自分の命を捨てられたときになさったことと同じです。なぜなら人は自分自身を贖うことができないからです。霊界には,わたしたちの父親や母親や親族がいます。ですから,わたしたちには彼らに代わって果たすべき業があるのです。一個人として,わたしは死者を贖うという業に非常に関心を抱いてきました。わたしの兄弟姉妹たちも同じ関心を抱いてきました。……この業は末日聖徒にゆだねられています。この業のために,できることを行ってください。そうすれば幕の向こうに行くときに,父親や母親,親戚や友から,皆さんが行ったことに対する感謝を受けるでしょう。亡くなった人々の贖いのために神の手に使われる人は皆,預言が成就するときに,シオンの山の救う者として称賛されることでしょうオバデヤ〔1:21参照〕。」(『歴代大管長の教え-ウィルフォード・ウッドラフ』189)

わたしたちは主と共同事業を行っている。〔3.1.5〕

ジョン・A・ウイッツォー長老

十二使徒定員会のジョン・A・ウイッツォー長老(1872-1952年)は,わたしたちは前世でほかの人々の救いの業を助けることを聖約した,と教えました。「わたしたちは前世にいたあの大会議の日,全能の神とある合意を交わしました。主が一つの計画を提示され,……わたしたちはそれを受け入れました。その計画はすべての人にかかわるものであるため,わたしたちはその計画の下にあるすべての人の救いの当事者となったのです。そのとき,その場で,自分自身のためだけに救う者となるのではなく,全人類のためにも救う者となることに同意しました。わたしたちは主と共同事業を始めたのです。その計画に従って実践していく業は,単に御父の御業,救い主の御業となっただけではなく,わたしたちの業ともなりました。わたしたちはどれほど小さな存在であろうとも,永遠の救いの計画の目的を達成するという点では,全能の神との共同事業者なのです。」(“The Worth of Souls,” The Utah Genealogical and Historical Magazine,1934年10月号,189)

家族歴史活動を始めるには,まず自分自身の情報を集め,最初の数世代に焦点を合わせる〔3.2〕

自分が今どの段階か判断する。〔3.2.1〕

家族歴史活動を行うときの出発点は,皆さんにどれくらい経験があるか,またこれまで家族歴史の情報をどれくらい入手しているかによって決まります。今どこまで探求が進んでいるか判断してから,次の目標を決めてください。最も簡単に手に入る情報源から,少しずつ難しい段階へ進んでください。できるだけ早い段階で,あなたの家族の先祖についての情報が教会の家族歴史のウェブサイトにどの程度載っているのか調べることは,大切なことです(FamilySearch.org(3.3.1)の項,および本資料の第6章を参照)。

情報を収集し,保存することから始める。〔3.2.2〕

ボイド・K・パッカー会長

十二使徒定員会のボイド・K・パッカー会長は,家族歴史を探究するときに受ける霊感について語り,作業を始めるための初歩的な方法を提案しました。

「大切なのはとにかく始めるということです。ニーファイの理解していた原則を皆さんも理解するようになることでしょう。『わたしは,前もって自分のなすべきことを知らないまま,御霊に導かれて行った。』(1ニーファイ4:6

何から始めたらよいのか分からないならば,何よりもまず自分自身から始めることです。どのような記録をどのような方法で手に入れればよいか分からなければ,自分の手もとにある記録から始めるのです。……

次のような方法はいかがでしょうか。

ダンボール箱を一つ準備します。どんな箱でもかまいません。その箱をどこでもよいですから,必ず目に付く所,例えばソファーの上,あるいは台所のカウンターの上といった所に置きます。それから,数週間かけて,自分の人生に関するすべての記録,例えば出生証明書,祝福証明書,バプテスマ証明書,聖任証明書,卒業証明書などの記録を集めその箱に入れます。免状,すべての写真,表彰状,賞状,日記をつけてきたならばそれも入れます。自分の人生に関して見つけ出せる記録全部,あなたが生きていることを証明し,これまでに成し遂げてきたことを証明する書面,登録,記録を全部集めます。

すべてを1日でやってしまおうとしないでください。ある程度の時間をかけてください。このような記録はあちこちに散在しているのが普通です。ガレージでうず高く積まれた新聞紙の下に隠れている箱の中から記録が出て来る場合もあります。引き出しや屋根裏部屋といったような場所にしまい込んでいる記録もあります。また聖書の中やそのほかの場所に挟まったままの記録があるかもしれません。

このような記録をすべて集め,箱に入れます。持っていそうな記録を全部集めてしまうまで,箱は置いたままにしておきます。」(「あなたの家族歴史-始めること」『リアホナ』2003年8月号,15)

まず簡単なことから始める。〔3.2.3〕

ヘンリー・B・アイリング管長

大管長会のヘンリー・B・アイリング管長は,先祖に救いの機会を提供するために家族歴史活動を始めるに当たって,次の簡単な方法を提案しています。

「簡単なことから始めます。家族についてすでに知っていることを書き出してください。両親と祖父母の名前や生年月日,死亡年月日,結婚した日を書く必要があるでしょう。可能であれば場所も記録すべきです。覚えているものもあるでしょうし,親類に聞くこともできます。出生,結婚,それに死亡証明書を持っている親類がいるかもしれません。コピーを取って〔またはスキャンして〕整理してください。先祖の生涯について分かったことがあれば,書き留めて保管してください。ただ名前を集めているのではありません。この世では会ったことのない〔すでに亡くなった〕人たちが,愛する友人になるのです。皆さんの心が彼らの心と永遠に結ばれます。

手始めに,過去にさかのぼって身近な数世代を探すことができます。それによって,助けを必要としている多くの先祖が分かります。教会のワードや支部には,神殿に提出する名前を準備するのを助けてくれる人が召されています。こうして先祖は神殿で聖約を受けます。そして霊の獄から開放され,家族,つまりあなたの家族と永遠に結ばれるのです。

先祖を調べる機会や義務は,世界の歴史の中で最もすばらしいものです。これまでにない多くの神殿が世界中にあります。世界中でより多くの人が,エリヤの霊を感じ,先祖の生活の様子や出来事を記録するよう促されてきました。先祖を探すための資料がこれまでになかったほど多くあります。また主は知識をお与えになり,数年前には奇跡と思われていた科学技術によってその情報を世界中で利用できるようにしてくださいました。」(「結ばれた心」『リアホナ』2005年5月号,79)

教会のファミリーサーチのウェブサイトは,家族歴史の記録と情報の重要な供給源である〔3.3〕

new.FamilySearch.org のウェブサイトを活用する。〔3.3.1〕

現在のところ,教会で提供しているファミリーサーチのウェブサイトは3つあって,これらを通して皆さんの家族歴史の活動を大いに助けてくれる情報や技術にアクセスできます。FamilySearch.orglds.org/familyhistoryyouth は一般向けのサイトで,だれでもアクセスできますが,new.FamilySearch.org は主として教会員を対象にしています。会員記録や神殿の儀式の記録にアクセスするには,LDSアカウントが必要になります。LDSアカウントがあれば,世界中から集まった5億人分以上の名前を利用して探究作業ができるようになります。また,神殿の儀式のために名前を提出したり,自分の家族に関する情報を加えたりすることができます。(最新の情報については,本コースの教師か家族歴史スペシャリストに尋ねてください。)

タブレット端末を使うヤングアダルトの女性

本コースの教師,あるいはステーク,ワード,支部の家族歴史相談員に助けてもらって,LDSアカウントを作成することができます。あるいは,LDS.org にアクセスして,サインインするをクリックし,さらにLDSアカウントに登録するをクリックして,あとは指示に従います。LDSアカウントを設定するには,会員記録番号と生年月日が必要になります。会員記録番号については,皆さんのワードや支部の書記から聞くか,神殿推薦状を確認してください。

教会の家族歴史ウェブサイトで自分の家族の系譜を探すことにより,時間の無駄を省き,作業の重複を防ぐことができます。自分の先祖に関する貴重な情報がすでに入力されていることを知って,皆さんは驚くことでしょう。(さらに詳しくは,本書第6章の「コンピューターと家族歴史の探求」を参照してください。)

技術の進歩で業の発展が加速した。〔3.3.2〕

教会の家族歴史部がファミリーサーチを管理しています。「重要な歴史記録をインターネット上で閲覧可能にするという作業を速めるため,ファミリーサーチは常に今ある技術を改良し,さらに多くの献身的なボランティアを集めようとしている。

長年にわたり,教会家族歴史部は,最高品質の記録保存を高速で行う新たな技術を開発してきた。その結果,特別設計のデジタルカメラ,革新的なスキャン技術,新たなコンピューターソフトウェアが生まれた。……

家族歴史への取り組みを前進させるために開発された多数の新たなウェブベース・プログラム〔がある〕。……

このほかにも多くのプロジェクトがあり,家族歴史をこれまで以上に楽しいものにしている。……『この技術の進歩は,だれでもどこでも利用できるようにしたという点で画期的です。』」(ヘザー・ホイットル・リグリー「先端技術によりファミリーサーチ(FamilySearch)のボランティアが偉業を成し遂げる」『リアホナ』2009年12月号,チャーチ・ニュース,1-3)

様々な手続きが簡略化された。〔3.3.3〕

ラッセル・M・ネルソン長老

家族歴史の探求を改善し,加速させようという教会の努力は,わたしたちが家族に抱く基本的な愛を反映したものです。十二使徒定員会のラッセル・M・ネルソン長老は,教会のそうした努力によりだれでも家族歴史の探求に参加しやすくなったとして,次のように説明しています。

「この業が大切であるからこそ,教会は神殿を人々に近い場所に建設してきました。そして,家族歴史の探究はかつてなく容易になっています。神殿の儀式のために人名を見つけ,準備する方法も改善されています。……

……手続きが易しくなり,ほぼすべての教会員が神殿・家族歴史活動に参加できるようになっています。」(「先祖と愛によって結ばれる」『リアホナ』2010年5月号,92)

家族歴史の探求にどの程度の時間と労力を注ぐかは,知恵を用いて判断すべきである〔3.4〕

祈りをささげる男性

主の御霊を求めることは,家族歴史活動に関する優先順位を定める助けになる。

死者を贖う業には数多くの務めがある。〔3.4.1〕

ダリン・H・オークス長老

わたしたちが行う必要のある家族歴史の業には様々な面があります。例えば,情報と記録の探求と収集,個人の歴史を書くこと,神殿の活動を行うことなどです。ダリン・H・オークス長老は,家族歴史活動に励むわたしたちの助けになるよう,普遍的な原則をいくつか教えましたが,これに従うことで,わたしたちは変化していく生活状況に合わせて自分の活動をうまく調整できるようになります。長老はさらに,主の業を進める決意を生涯にわたって貫くようにと勧めています。

「今から幾つかの一般的な原則を述べたいと思います。それはすべての末日聖徒に,自分自身のための儀式を受けるとともに,先祖のために永遠の儀式を受けるよう励ましを与えるに違いありません。儀式とのかかわりは不可欠なのです。……

第1の原則。神殿活動または家族歴史活動を推進するためのわたしたちの働きは,主の業を成し遂げるにふさわしいものでなければなりません。限られた時間の中で達成できなかったという理由で,神の子供たちを責めたてるようなことがあってはなりません。ひと口に教会員といっても,一人一人が置かれている状況は様々です。年齢,健康状態,教育,住んでいる場所,家族に対する責任,経済力,個人的にあるいは図書館を通じてどれだけの資料を利用できるかなどという点をはじめとして,実に様々な状況にあります。……

第2の原則。死者を贖うための業の中には,なすべき事柄が数多くあり,教会員は皆,特定の時間に個々の状況に適した方法を祈りによって選択し,自らの責任を果たしていくべきです。この業は主の御霊の導きと,神権指導者の指導の下に行われるべきものです。神権指導者は家族の歴史に関する召しを教会員に与え,教会という組織体の中でこの業にかかわる指示を与えていきます。わたしたちに求められているのは,すべての人にすべてのことをするよう強いることではなく,すべての人に何かを果たすよう励ましを与えることです。……

教会の召しのほかに,個人的にどれほどのことができるのか,また何ができるのかという点については,ベニヤミン王の偉大な説教の中に語られている原則を指針とすべきです。ベニヤミン王は貧しい人を助けることなど,『神の御前に罪なく歩めるよう』,しなければならないことについて民に教えた言葉の最後に,次のように言いました。『これらのことはすべて,賢明に秩序正しく行うようにしなさい。人が自分の力以上に速く走ることは要求されてはいないからである。』(モーサヤ4:27)預言者ジョセフ・スミスがモルモン書の翻訳に苦闘していたときに,主は彼に次の言葉を授けられました。『あなたは翻訳できるように与えられた力と手段以上に急いだり,それ以上に働いたりすることのないようにしなさい。しかし,最後まで励みなさい。』(教義と聖約10:4

指導者は教会員に対して,これらの霊感あふれる言葉を指針として御霊のささやきに従い,各自の『力と手段』を考え,『賢明に秩序正しく』神殿活動,家族歴史活動として自分に何ができるかを決めるよう励ます必要があります。このようにして,『最後まで励』むなら,成功を収めることができるでしょう。……

神殿活動,家族歴史活動に関して個人的に何を行うかを計画するときには,ただ遠大なだけではなく,とにかく生涯続けて行うという観点から見通しを立てなければなりません。教会の使命を達成するためにどれほどの時間と力を注げるか,すなわち人生の特定の時期に何ができるか,また何をしなければならないかということは,状況の変化に応じ,時とともに変わっていきます。……

……教会員は皆,……教会の使命……を,生涯をかけて行うべき個人的な務め,特権として考える必要があります。また自分がどのような状況に置かれ,どれほどの力を持っているかを考慮に入れながら,主の御霊と神権指導者の導きのもとに,自分の働きを時々評価することも必要です。」(「賢く秩序正しく」『聖徒の道』1989年12月号,18-23)

十二使徒定員会のM・ラッセル・バラード長老は,教会における奉仕について,次のような勧告をしています。これは家族歴史の活動にも当てはまります。

「わたしたちの資源である時間,収入,労力,関心を思慮深く配分してください。皆さんに一つのちょっとした奥義をお教えします。すでに知っている人もいるでしょう。もしもまだ知らないのであれば,そろそろ知っておくべきときです。その奥義とは,皆さんの家族の必要が何であれ,また教会の責任が何であれ,『すべて完了』という状態はいつまでたっても訪れないということです。しなければならないことというのは,常に何かしら出て来るものです。……

わたしが考えるに,鍵となるのは自分の能力と限界を知って理解し,自分のペースをつかみ,永遠の旅路において,家族やほかの人々を賢く助けるために自分の時間と関心,持っているものを,適切な優先順位に基づいて配分することです。」(「おお,賢くありなさい」『リアホナ』2006年11月号,19)

墓石の脇にたたずむ青年

日付などの細かい情報を集めることで,神殿の儀式のために名前を準備することができるようになる。

霊感は家族歴史の扉を開く。〔3.4.2〕

ボイド・K・パッカー会長

十二使徒定員会のボイド・K・パッカー会長は,霊感によって家族歴史活動が導かれ,個人の生活の中でそれを成し遂げるのための道が開かれるとして,次の経験をその一例として紹介しています。

「家族歴史や神殿の業について証が欲しければ,何らかの行動が必要なのです。では,その後に何が起こるかを,例を挙げてお話ししましょう。

かつてコネチィカット州ハートフォードステークのステーク大会に出席したときのことです。大会の3か月前に,ステーク会長会の全員がこのテーマ,すなわち家族歴史活動について話す割り当てを受けました。そして,ステーク会長会顧問で,その大会でステーク祝福師に召された兄弟が次のような興味深い出来事を話してくれました。

この兄弟は,家族歴史について『改宗』はしていたのですが,取りかかることができないでいました。何から始めたらよいのか分からなかったのです。自分の記録の中から自分の生涯について話を準備するよう依頼されたこの兄弟は,幼児期から青年期にかけての資料を何一つ見つけ出すことができませんでした。あるのは出生証明書だけでした。彼はイタリア移民の家族のもとに生まれた11人の子供の一人です。家族で教会員は自分一人だけでした。

話の責任を果たすために,彼は自分の生涯についての資料をすべて集めようとしました。少なくとも,始めようとしたのです。ただ,八方ふさがりのように思われました。できるのは,自分自身の記憶をたどり,手もとにあるほんのわずかな記録をつなぎ合わせて,自己の生涯の物語をまとめ上げることだけでした。

そんなときに,とても不思議なことが起こりました。療養施設にいた年老いた母親がイタリアの故郷にもう一度帰りたいとしきりに願うのです。その望みがあまりにも強かったので,医師たちは母親の願いを拒否しても何もいいことはないだろうと判断しました。そして子供たちは母親のこの最後の願いを聞き届けることにしたのです。さらにどうしたわけか,きょうだい全員の決定で母親のイタリア行きには(家族で唯一教会に所属している)この兄弟が同行すべきだということになりました。

こうして突然,先祖の国へ帰ることになりました。すばらしい機会が向こうからやって来たのです!イタリア滞在中に,母親が洗礼を受けた教区教会と父親が洗礼を受けた教区教会を訪れました。多くの親戚に会いました。教区の記録は500年前にさかのぼるものだということが分かりました。記録を調べようと市庁舎へ足を運ぶと,皆とても協力的でした。市の職員から,その前の年の夏にある聖職者と修道女が二人で市庁舎にやって来て,この兄弟と同じ姓の記録を探していたということを聞きました。その二人も家族の歴史を集めていると言っていたというのです。二人の住んでいる町の名前を教えてもらいました。糸口が見つかったのです。さらにはイタリアに自分の姓と同じ名の町があることも分かってきました。

しかし,祝福はそれだけにとどまりませんでした。ソルトレーク・シティーで総大会に出席した彼は,帰途,親族の多くが住んでいるコロラドに立ち寄りました。そこで,無理に願ったわけでもないのに,親族の組織ができ,親族の集まりが計画され,すぐに開催されたのです。

そしてその集まりのときに,よくあることですが,おば,おじ,兄弟,姉妹といった親族の中から,彼自身の生涯についての写真や情報を提供してくれる人々が出てきたのです。そのようなものがあるとは夢にも思いませんでした。また,これもよくあることですが,家族歴史は霊感によって与えられた業であると理解できるようになったのです。」

さらにパッカー会長は,次の約束と,自分自身の家族が家族歴史に携わる中で天の導きを受けたときの証について,このように述べています。

「家族歴史の業を始めれば主はすぐに祝福を与えてくださいます。わたしの家族の場合もまさにそのとおりでした。まず自分たちのできるところから,持っているものから始めようとしましたが,そのとき以来,多くの事柄が明らかにされてきました。……

いったん行動し始めると,情報が集まって来るようになりました。わたしたちは今でも決して家族歴史探究の専門家ではありません。ただ,家族のためにできることをしているだけです。そしてこれはわたしの証ですが,今できるところから,つまり各自が自分自身から,持っている記録から取りかかり,整理を始めるならば,起こるべきことが起こるのです。」(「あなたの家族歴史-始めること」『リアホナ』2003年8月号,12-15)

使徒からの勧めと約束があなたに与えられている。〔3.4.3〕

デビッド・A・ベドナー長老

皆さんが死者を贖うという偉大な業に携わっていくと,エリヤの霊とアブラハム,イサク,ヤコブに与えられた祝福について,いっそう深く理解できるようになることでしょう。十二使徒定員会のデビッド・A・べドナー長老は,次のように説明しています。

「わたしは教会の若い人々に,エリヤの霊について学び,経験するよう勧めます。学び,先祖を探し出し,亡くなった皆さんの親族のために主の宮で身代わりのバプテスマを行う準備をするように勧めます(教義と聖約124:28-36参照)。ほかの人々が家族歴史を確認するのを助けるように,皆さんに切に勧めます。

皆さんが信仰をもってこの勧めに従うとき,皆さんの心は先祖に向かうでしょう。アブラハム,イサク,ヤコブに交わされた約束が,皆さんの心の中に植えられるでしょう。血統の宣言を伴う祝福師の祝福は,皆さんとこれらの先祖を結びつけ,皆さんにとっていっそう重要なものとなるでしょう。先祖に対する愛と感謝が増すでしょう。救い主についての証と従いたいという気持ちが強くなり,不動のものとなるでしょう。わたしは約束します。皆さんはますます強まるサタンの影響力から守られるでしょう。この聖なる業に参加し,これを大切にするとき,青少年の時代にも生涯にわたっても守られるでしょう。」(「子孫の心は向かうであろう」『リアホナ』2011年11月号,26-27)