新しいアミーゴたち
このお話を書いた人はアメリカ合衆国ユタ州に住んでいます。
ブリジットはスペイン語が分かりませんでした。どうやって知り合いを作ればよいのでしょうか?
「あなたがたは,わたしが……旅人であったときに宿を貸し〔てくれた〕。」(マタイ25:35)
ブリジットの家族の車がベネズエラのカラカスの細い通りを走りぬけているとき,ブリジットは車のまどから外をながめました。そこには明るい色の家々や,緑色の大きな山々がありました。そこは美しいところでした。お母さんとお父さんは,ここでの生活は新しいぼうけんになると言いました。
けれども,ブリジットはまだ不安でした。その日は,新しい国の教会に初めて行く日だったのです。
お母さんはブリジットを見て,こう聞きました。「ねえブリジット,大丈夫?あまり元気がないみたいだけど。」
ブリジットは手をもじもじさせました。「わたし,こわいの。わたしはスペイン語が話せないんだもの。友達なんかできるはずないよ。」
お母さんはうでをのばして,ブリジットの手をにぎりました。「不安よね。でも,きっと大丈夫。深呼吸して。」
ブリジットは下を向いて自分の手を見ました。外はあたたかいのに,手は冷たく感じました。車が教会の駐車場に止まったとき,ブリジットはむねの鼓動が速くなり,おなかが気持ち悪くなりました。教会はどんな感じなんだろう?わたしには何も理解できないんじゃないかな?
礼拝堂に入るとき,ブリジットはよそからやって来た旅人のような気持ちでした。ほかの家族を見回すと,みんなスペイン語を話していました。それからブリジットは,自分と同じくらいの年に見える二人の女の子を見ました。
二人はブリジットを見ると,すぐにかけよってきました。二人は大きな笑みをうかべ,うれしそうな声で早口にしゃべりました。
けれども,ブリジットには二人の言うことが何も分かりません。わたしがスペイン語を話せないと分かったら,二人は向こうに行ってしまうのかな,とブリジットは思いました。
ブリジットは深く息をすいました。「ノー・アブロ・エスパニョール」と言って,ブリジットは首をふりました。「スペイン語は話せないの。」ブリジットの目に,なみだがあふれてきました。
女の子たちはただかたをすくめて,ますます明るくほほえみました。一人の子が自分を指して「ダイアナ」と言いました。それからもう一人の子を指して「アンドレア」と言いました。
ブリジットの不安は消えていきました。ブリジットは二人に笑顔を見せて,自分を指しました。「ブリジット。」
ダイアナとアンドレアはブリジットのとなりにすわりました。二人は「聖典」のスペイン語での言い方と,ほかのいくつかの言葉を教えてくれました。聖餐会が始まったとき,ブリジットは心に温かい気持ちと安らぎを感じていました。
初等協会の後,ブリジットと新しい二人の友達は,自分たちの親が話している間,教会の外の芝生にすわっていました。ダイアナとアンドレアは,ブリジットにスペイン語の言葉をさらにいくつか教えてくれました。それからダイアナは木を指して「イングレス〔英語で〕?」と聞きました。
ブリジットもほほえんで木を指し,「ツリー」と言いました。ブリジットは顔をかがやかせながらほかの物を指し,それを英語で言いました。ダイアナとアンドレアはその英語の言葉をくり返しました。それから二人は,スペイン語では何と言うのかをブリジットに教えてくれました。ブリジットはリブロ(本),カーサ(家),コチェ(車)など,いろいろな役に立つ言葉を学びました。特によかったのは,二人がアミーゴ(友達)という言い方を教えてくれたことでした。
それから間もなくして,家に帰る時間になりました。ブリジットはダイアナとアンドレアにじゃあねと手をふりました。
「ベネズエラの教会の一日目はどうだった?」お父さんが聞きました。
ブリジットはほほえみました。「すごくよかった!友達もできて,スペイン語を教えてくれたの!」
「それはすばらしい!良い日になったようで,とてもうれしいよ。」
ブリジットは,ダイアナとアンドレアがどのようにかんげいしてくれたかについて考えました。もう,よそからやって来た旅人のような気持ちではありません。ブリジットは,自分に友達ができるよう天のお父様が助けてくださったんだと分かりました。そしてブリジットは,カラカスでのこれからの日々が待ちきれない気持ちになりました!