コルドバ家族とすごしたクリスマスイブ
このお話を書いた人はペルーに住んでいます。
マリシエロもわたしも,たった一つのプレゼントしかありませんでした。どうやってそれを分け合えばよいのでしょう。
クリスマスイブになりましたが,わが家の小さなツリーの下には,たった二つのプレゼントしかありませんでした。一つは2才の妹,マリシエロの,そしてもう一つはわたしのでした。「お金がないから,これだけね」とお母さんが言いました。
そのばん,お母さんが『リアホナ』から,プレゼントが一つもなかったクリスマスのお話を読んでくれました。それを聞きながら,わたしは幸せで平安な気持ちを感じました。プレゼントがたった一つしかなくても,それほど大したことではないかもしれません。そのときお母さんが言いました。「クリスマスイブに,いつものようにゲームをするのではなくて,ワードの家族にプレゼントを持って行くっていうのはどうかしら。」
「でも,何をあげるの?」たずねると,
「そうね,少しは分けてあげられるものがあるわ」とお母さんは言いました。」
わたしは二つのプレゼントを見つめ,それからかべにかかったイエス様の絵を見ました。「きっと,イエス様なら,持っているものを分けてくださるはずね。」
わたしたちは,どの家族を訪問するべきかいのりました。その年,わたしたちの知っているたくさんの家族が,あまりめぐまれないじょうたいでした。いのった後,コルドバ家族を訪問するべきだと感じました。3人の子どもがいて,お父さんは仕事がなくなったばかりです。
わたしたちはお店に行ってパネトン(クリスマスのパン)と,焼いたチキンと,小さなプレゼントを3つ買いました。楽しみながら選びました。お母さんは持っていたお金を全部,ペルーのお金でおよそ30ペソ(約1,000円)使いました。
買い物を終えたわたしたちは,コルドバ家族のところに向かいました。わたしはマリシエロの手を取って,ドアに向かって歩きました。
コルドバしまいがわたしたちを見て,外に出て来てだきしめてくれました。「まあおどろいた。うれしいわ!どうぞ入って,すわってちょうだい」とかのじょは言いました。わたしたちが中に入ると,コルドバしまいはお母さんの手をにぎりしめ,わたしのかたをたたきました。「ローランドもむすめたちも,あなたたちに会えてきっと喜ぶわ」と言ってくれました。
家の中は,ゆかがはられておらず,土間(土がしかれたじょうたい)になっていました。電気もなく,ろうそくしかありません。コルドバ家族のことを考えると,わたしは少し悲しくなりました。もっと助けてあげられたらよかったのにと思いました。でもお母さんは,土間もろうそくも目に入っていないようです。ただ,コルドバしまいと一緒にいられてうれしそうでした。
「みなさんにフェリス・ナビダッド(スペイン語で「メリークリスマス」)と伝えたくて来たのよ。」お母さんが言いました。「友達でいられてうれしいわ。」お母さんが食べ物とプレゼントをコルドバしまいにわたすと,しまいはにっこりしてお礼を言いました。
ローランドとマデリーン,そしてラケルが別の部屋から走って来て,あいさつしました。マリシエロはわたしの足にまとわりついて,にこにこしていました。ローランドがおかしな顔をしてみせると,マリシエロは声を出して笑いました。すぐに,全員が話したり,冗談を言い合ったり,笑ったりしました。
「自分たちだけでゲームをするより,ずっといいわ」と思いました。来て良かったと思いました。たくさんのものを分け合うことができなくても,それで良かったのです。土間でもかまいません。クリスマスは,わたしたちが何を持っているかは関係ないのです。ただ一緒にいることが大切なのです。
帰るじゅんびができたとき,コルドバしまいはもう一度わたしたちをだきしめて,「本当にありがとう」と言ってくれました。声はふるえ,目にはなみだがあふれていました。わたしはつま先立ちをして,コルドバしまいのほおにキスをしました。
「フェリス・ナビダッド」と言いながら。