天のお父様にささげるペソ
このお話を書いた人はアメリカ合衆国ノースカロライナ州に住んでいます。
「いましめを守る人を神は守りみちびかん」(『子供の歌集』68-69)
トルティーヤ(中南米のうすやきパン)を食べていたアナは,最後の一口をほおばりました。やわらかくて,おいしいトルティーヤでした。アナはおばあちゃんのトルティーヤが大好きです。朝ごはんで,一番好きなメニューでした。
アナはアブエラおばあちゃんがお皿をあらうのを見ていました。
いつもと同じ朝でした。でも,一つだけちがっていました。
アブエラおばあちゃんはいつも,歩いて市場に買い物に行くのですが,今日はちがいました。今日は食べ物を買うお金がなかったのです。
「あした,何を食べるのかしら?」とアナは思いました。
そのとき,アナは思い出しました。アナは,お金がある場所を知っていたのです。昨日の夜,アブエラおばあちゃんが,小さな白いぬのに何まいかのペソを入れるのを見たのでした。
「アブエラおばあちゃん,わすれたの?食べ物を買うお金,あるわよ。」
「どのお金のこと?」アブエラおばあちゃんが聞きました。
アナは急いでお金を取りに行きました。お金が入っている小さなふくろをふってみました。チャリン。チャリン。
アブエラおばあちゃんはにっこりしました。「それは,わたしたちの什分の一よ,アナ。主のお金なの。」
「でも,わたしたち,あした何を食べるの?」アナは聞きました。
「心配はいらないわ」とアブエラおばあちゃんが言いました。「それはね,天のお父様が助けてくださるという信仰があるからよ。」
次の日の朝,アブエラおばあちゃんはアナに最後のトウモロコシの粉で作ったトルティーヤをくれました。そして,いすにすわりました。おばあちゃんは,赤い花をワンピースにつけながら,自分の小さいころの話をしてくれました。全然心配していないようでした。
そのとき,アナはドアをたたく音が聞こえたので,ドアのところに急いで行ってみました。
「ペドロおじさん!」
「二人のところに行かないといけないと感じたんだ」とペドロおじさんは言いました。おじさんは,ふくろを3つテーブルの上に置きました。一つには,トルティーヤを作るためのトウモロコシの粉が入っていました。もう一つには,肉が入っていました。3つ目には,市場から買ってきたばかりの新鮮な野菜が入っていました。
「まあ,やさしい子だこと」とアブエラおばあちゃんは言いました。「最高においしいミートボールスープを作ってあげましょうね。」
「母さんのスープは世界一だよ」とペドロおじさんが言いました。
アナは笑いながら手をたたきました。
それから手を止め,笑うのもやめました。一つ知りたいことがあったのです。「アブエラおばあちゃん,ペドロおじさんが今日来るって知っていたの?だから心配していなかったの?」
「いいえ」とおばあちゃんは言いました。「什分の一をおさめるとき,天のお父様が祝福してくださるという信仰があるの。そして,本当に祝福してくださったわ。」
アナはおばあちゃんをだきしめました。自分はメキシコで一番幸せな女の子だと思いました。アナとアブエラおばあちゃんは天のお父様に信仰を持っていました。今,アナはアブエラおばあちゃんのおいしいスープが楽しみでなりませんでした。