アンドレイと悪い言葉
このお話を書いた人は,アメリカ合衆国ユタ州に住んでいます。
「くい改めて,もっとよくなって,いのります」(『子供の歌集』〔英語〕98)
「自分はらんぼうな言葉を使わないから,みんなよりえらいと思ってるだろう。」休み時間にニコライからそう言われて,
「そんなことないよ」とアンドレイは答えました。
「じゃあ1回くらい,悪い言葉を言ってみろよ。1回くらいならいいだろ。何も変わらないさ。みんな使ってるんだから。」
アンドレイはかたをすぼめて,「ぼくはただ使いたくないんだ」と言いました。
アンドレイは神様のみ名をきずつけるようならんぼうな言葉を使うのは間違っているし,せいれいを遠ざけてしまうと知っていました。アンドレイはせいれいにともにいていただきたかったので,らんぼうな言葉を使いませんでした。
アンドレイは転校したばかりで,6年生のクラスでアンドレイと友達になりたいのはニコライだけでした。でも,ニコライは毎日毎日,らんぼうな言葉を使うように言ってきました。アンドレイは毎日毎日,いやだというのが面倒になってきました。それに,ニコライが友達でなくなってしまって,自分は一人ぼっちになってしまうのが心配でした。
放課後,「1回でいいかららんぼうな言葉を言ってみろよ」と,ニコライが言いました。「そしたらもうほうっておいてやるよ。」
アンドレイはうるさく何度も言われるのがいやになってしまい,1回だけらんぼうな言葉を使ってしまいました。それほどひどくない言葉を。
ニコライはうなずきながら,「よし,これで仲間だ」と言いました。
それからというもの,ニコライのほかの友達もアンドレイに話しかけるようになりました。休み時間にはアンドレイと一緒に昼ご飯を食べたり,フットボールをしたりするようになりました。でも,ニコライの仲間と一緒にいるのは,砂地獄に足をふみ入れるようなものでした。みんなと付き合えば付き合うほど,みんなと同じように話したり行動したりするようになりました。それに全員がらんぼうな言葉を使いました。それもたくさん。おたがいにあざ笑い,ぶじょくし合っていました。先生について,ひどいことを言いました。おこって,意地悪なことをたくさんしました。ゆっくりと,アンドレイは前よりもよくおこるようになり,いろいろな理由を見つけては,神様のみ名をきずつけるような,らんぼうな言葉を使うようになりました。
あるばん,お父さんとお母さんが出かけているとき,アンドレイとお姉さんのカーチャがどの番組を見るかで言い合いになりました。アンドレイが考える間もなく,らんぼうな言葉が思わず出てしまいました。
カーチャはショックを受けた様子でした。「お母さんに言うわ。」
アンドレイは自分の部屋にかけて行き,ドアをバタンとしめました。みんなどうしたのでしょう。なぜいつもアンドレイをおこらせるのでしょう。両親が帰って来たとき,アンドレイがドアをいきおいよく開けると,カーチャが「お母さん,アンドレイったら,わたしにらんぼうな言葉を言ったのよ」と言う声が聞こえました。
「何ですって?」お母さんは,おどろいた声で言いました。「アンドレイは,そんな言葉は使わないわ。」
アンドレイはドアをしめ,ベッドにばったりとたおれこみました。らんぼうな言葉を使い始めてから,自分がどれほど変わってしまったかについて考えました。もう長いこと,せいれいを感じなくなっていました。
アンドレイはベッドの横にひざまずいていのりました。「愛する天のお父様,今まで意地悪でおこってばかりでほんとうにごめんなさい。神様のみ名をきずつけるような,らんぼうな言葉を使い始めてごめんなさい。もっといい子になります。」
アンドレイがいのると,温かい気持ちが心にあふれました。らんぼうな言葉を使い始めてから初めて,ほんとうの幸せを感じました。神様が自分を愛しておられることが分かり,せいれいを感じることができました。ゆるされたと感じ,自分は変われるし,良くなれると分かりました。
いのった後で,アンドレイはお母さんにほんとうのことを話し,カーチャにあやまりました。それから,アンドレイは気分が良くなりました。くい改めるのは気持ち良いことでした。
次の日,学校でアンドレイはニコライの仲間と昼ご飯を食べませんでした。その代わり,知らない友達のとなりにすわりました。時間はかかるでしょうが,自分と同じような,らんぼうな言葉を使わない,幸せな,良い友達を見つけられると知っていました。