たった一度のいのりで
プロディはもう一度ねるのがこわくなりました。またこわいゆめを見たらどうしよう。
「いのりなさい……お父様は聞いています」(『子供の歌集』6-7)
プロディは,びっくりしてベッドの上で身を起こしました。むねの鼓動が速くなります。
暗がりの中ですわっていると,雨が屋根にぽつぽつと当たる音がしました。まどの外にあるアフリカイチジクの木から雨がしたたる音が聞こえます。むし暑く,空気は生あたたかく感じます。プロディは深呼吸して,リラックスしようとしました。ただのゆめだったのです。
プロディはベッドからはい出して,両親の部屋をのぞきこみました。ママとパパは,すやすやとねています。妹のセリアもベッドの中で丸まっています。大丈夫。家族は無事です。
プロディはベッドによじ登り,またねようとしました。何度も何度も寝返りを打ちました。ゆめはほんとうに起こったことではないと分かってはいましたが,とてもこわいゆめだったのです。つかれていましたが,またねむりにつくのをおそれていました。またこわいゆめを見たらどうしよう。
プロディはあおむけになって天井を見ました。楽しいことを考えようとしました。「お父様,子供たちのいのりを聞いてくださるの?」大好きな初等協会の歌の歌詞を考えているうちに,突然温かい気持ちを感じました。キオスカ姉妹は,天のお父様はいつも見守ってくださっていると教えてくれました。いつでもどこでも,天父にいのることができます。
プロディはどうすればいいのか分かりました。ベッドから出て,いのるためにひざまずきました。
そして次のようにいのりました。「愛する天のお父様,ぼくは今,こわい気持ちでいっぱいです。ぼくの家族を守ってください。それから,ぼくがねむれるように,もう悪いゆめを見ないように助けてください。」
いのり終えると,ブロディはまたベッドによじ登りました。体の力がぬけて,心がおだやかになりました。間もなく,プロディはねむりにつきました。
朝が来ると,プロディはまどから差しこむあたたかい日の光を受けて,目覚めました。台所でおなべがガチャガチャと音を立てているのが聞こえたので,起き上がってお母さんをさがしに行きました。セリアはテーブルに着いて,残ったキャッサバを食べていました。お母さんはプロディの分を温めているところでした。
「おはよう」と,お母さんが言いました。「よくねられた?」
「とてもこわいゆめを見たんだ」とプロディは言いました。「でも,いのったら,天のお父様は,ぼくを安心させてくださったよ。」
「悪いをゆめを見たなんて,かわいそうに」とお母さんは言って,プロディを近くに引きよせてだきしめ,なかなか放そうとしませんでした。「でも,あなたがいのってくれてうれしいわ。天のお父様がほんとうに助けてくださったようね。」
「うん,助けてくださったよ」とプロディは言いました。「またねむることができたし,もう悪いゆめは見なかったよ。」プロディはお母さんをぎゅっとだきしめました。どんなにこわくても,たった一度のいのりで天のお父様を近くに感じられることを知ってうれしくなりました。