もっといい一日にするための音楽
エリザベスは空のココナッツのからを泥道でけりました。転がるココナッツを目で追いながら,エリザベスは顔をしかめました。その日は,あまり良い日ではありませんでした。
いいえ,まったく良くありませんでした。
学校でラギからいじわるなことを言われたのです。その後,クラスのみんなの前で算数の問題を間違えたときには,ほかの子たちから笑われました。それから,図工の作品も台無しになってしまいました。
「ひどいわ!」エリザベスは言いました。悪い日なんてだれが発明したのでしょう。
エリザベスはかわいらしいハイビスカスの花をつみました。その日で,ただ一つの良い出来事でした。サモアでは悪い日でも,そこら中に美しい花を見つけることができます。
エリザベスはピンクの花をかみに差して,家に向かって歩きました。
「Talofa(やあ)!」お父さんが言いました。「どんな一日だった?」
エリザベスはうつむきました。「良くないわ。」エリザベスは庭のうるさいぶたの前を通りすぎ,玄関先のパパのとなりにすわりました。
パパは,エリザベスがその大変な一日について話す間,すわって耳をかたむけていました。
「大変だったね」とパパは言って,エリザベスをだきしめました。「パパにもそんな日があったよ。そのときに役に立ったことを知りたいかい?」
エリザベスはうなずきました。「うん,教えて!」
パパは,エリザベスがよく知っている歌を歌い出しました。パパはこの美しい愛の歌をいつもママに歌ってあげます。
エリザベスはわらいながらパパのかたをおしました。「パパったら!」
パパはにっこり笑って,「パパはまじめだよ!良い音楽を聞くと,気分が良くなるんだ。それに,音楽って……」
エリザベスは,パパが何を言おうとしているか分かっていました。ピアノの練習の時間です。
エリザベスは何よりも,ピアノをひけるようになりたいと思っていました。教会で歌をえんそうできるようになりたいのです。すでに,家族と一緒に歌うことは大好きでした。パパと歌うのは特に好きでした。でも,ピアノをひくのは歌うよりむずかしいのです。指が正しい音をさがすのに時間がかかりました。
「今日は練習する気分ではないかもしれないわ」とエリザベスは言いました。
パパは立ち上がりました。「何をえんそうしているか考えてごらん。賛美歌は神様を近くに感じるのを助けてくれるよ。」
それから,パパは夕飯のじゅんびを手伝うために,サンダルをぬいで家に入りました。
エリザベスもサンダルをぬいで家に入りました。ママがシチューをかきまぜている間,パパは野菜を切りました。
キーボードの上に「Fa‘afetai i Le Atua」の楽譜がのっていました。エリザベスはこのサモアの賛美歌が大好きでした。神に感謝をささげることについての賛美歌です。
エリザベスは電子キーボードのスイッチを入れて,ひき始めました。「何をえんそうしているか考えてごらん」とパパは言っていました。
そこで,考えてみました。エリザベスは,自分が感謝しているすべてのことについて考えました。家族。家。音楽。美しいサモア。
指はもっと簡単に正しい音を見つけられるようになってきました。しばらくすると,気持ちが変わり始めました。おだやかな気持ちになりました。エリザベスはにっこりしました。せいれいを感じていたのです。
野菜を切る音がやみました。パパはハミングを始めました。そして,となりに立って歌い始めました。
エリザベスはえんそうし続け,ママも一緒に歌い始めました。エリザベスは,神さまが自分や家族をどのように祝福してくださったかを色々と考え続けました。
ついにパパが身をかがめて「気分はよくなった?」とたずねました。
「ええ!」とエリザベスは答えました。「パパの言ったとおりね。良い音楽のおかげでたしかにもっといい日になったわ!」