「第196課—教育における誠実さ:わたしたちは正直であることを信じる」『教義と聖約 セミナリー教師用手引き』 (2025年)
「教育における誠実さ」『教義と聖約 セミナリー教師用手引き』
第196課:学業で成功を収める
教育における誠実さ
わたしたちは正直であるべきことを信じる
イエス・キリストの有能で信頼される弟子になろうと努力するとき,心に正直さと誠実さを持つことが重要です。この課は,生徒が教育において,より正直かつ誠実に行動できるよう助けるものです。
生徒に,学校で誠実さが試されるようなシナリオや状況を分かち合ってもらいます。必要に応じて以下の例を紹介してください。
あなたは大切な試験を控えています。クラスメートが教師の机の上に試験の解答のコピーがあることに気づき,携帯電話で写真を撮ります。彼はあなたと,ほか数人の生徒に,その画像を送ります。
あなたはクラスの宿題でレポートを書く必要がありますが,取り組んでいませんでした。友人から,あなたの代わりに原稿を書いてくれるオンラインソフトを使えばいいと提案されます。またはインターネット上の様々な記事から少しずつ貼り付け,自分の文章を少し入れて,自分で書いたレポートのように見せることもできるでしょう。友人は,以前そうしたことが何度かあるが,教師には気づかれなかったと言います。
この課では,教育における正直さと誠実さの重要性に焦点を当てることを説明します。生徒に,誠実さについて知っていることを分かち合ってもらいます。ジョセフ・B・ワースリン長老の次の言葉が助けになるでしょう。
十二使徒定員会のジョセフ・B・ワースリン長老(1917-2008年)は,誠実さを次のように定義しています〔訳注:引用部分では「高潔さ」と訳出しています〕。
「高潔さとは,その結果にかかわらず常に正しく良いことを行うことです。またそれは単に行動ばかりではなく,もっと大切な点は,心の奥底から正しい思いを抱くことです。つまり,高潔な人とは,正義感の強い信頼できる人であり,そのような人は決して契約や聖約を破ることはありません。……
この世は,高潔さを身に付けた男女を特に必要としています。詐欺,資金の横領,誇大広告など,ごまかしたり人を欺いたりして利益を得ようとする行為は日常茶飯事となっていますが,主はこれらの行為を憎まれます。」(ジョセフ・B・ワースリン「高潔な人 」『聖徒の道』 1990年7月号,34,36)
以下の提案は,教育において誠実に行動することの大切さについて,生徒が自分の考えを評価するのに役立ちます:学習帳の空白ページを見つけて,そこに「教育における誠実さがわたしにとって重要な理由」と書いてもらいましょう。自分にとって誠実さが大切な理由をすべて挙げ,それが終わったら,希望する数人にその中から幾つかクラスで発表してもらいます。
レッスンの間,アイデア,真理,聖句をリストに追加し続けるよう勧めます。
天の御父とイエス・キリストは,わたしたちが誠実に行動することを望んでおられる
天の御父とイエス・キリストの属性と教えを理解することは,誠実に行動する動機となることを説明します。生徒を二人一組か少人数のグループに分け,以下の活動を行うとよいでしょう。
以下の聖句を読んで,誠実に行動したいとさらに強く望めるようになる教えを見つけましょう:3ニーファイ27:18 ;エテル3:11-12 ;教義と聖約3:2 ;51:9 ;124:15,20 ;信仰箇条1:13 。
十二使徒定員会のニール・L・アンダーセン長老は,誠実さがわたしたちの霊的な成長に及ぼす影響について次のように教えています。
「正直であることによって不利な結果を被ると思えるときに真実で正直であることには,とてつもなく大きな霊的な力があります。皆さんはだれしも,そのような決断を迫られることでしょう。このような正念場で高潔さが試されるのです。状況が望む方向に動くかどうかに関係なく皆さんが正直と誠実さを選ぶとき,これらの大切な岐路が皆さんの霊的成長を支える重要な柱となることに気づくでしょう。」(ニール・L・アンダーセン「正直という神の標準 」『リアホナ』 2017年8月号,30参照)
生徒に,教育において誠実さを示したことに対し,主が祝福してくださるのを見た経験を分かち合ってもらいます。生徒が誠実さの例を確認できるよう,ChurchofJesusChrist.org にあるビデオ「正直――本気です 」(4:46)を見せるとよいでしょう。
4:46
自分の持つ,愛にあふれた天の両親の子供としての神聖な特質を,生徒に思い出してもらいましょう。これは,学校での彼らも含めて,彼らという人物の一部です。イエス・キリストに従い,正直で誠実に行動するとき,こうした特質は世のほかの人々と彼らをはっきり分けるでしょう。
ラッセル・M・ネルソン大管長は,次のように教えています。
「あなたは貴い存在であって,高潔な人になるのにふさわしいのです!高潔さをかけがえのない宝として守ってください。」(Russell M. Nelson, “Integrity of Heart ” [Brigham Young University devotional, Feb. 23, 1993], 7, speeches.byu.edu )
自分の正直さと誠実さを守り高める方法を考えることができるよう,次の質問の一部または全部の答えを学習帳に書いてもらいましょう。
今日,教育における誠実さについて感じたことの中で,覚えておきたいのはどのようなことですか。
天の御父とイエス・キリストについて学んだことの中で,不正直な行動を取るよう誘惑されたときに助けとなるのはどのようなことでしょうか。
学校での正直さと誠実さを高めるために,あなたが取ろうと思う行動を一つか二つ挙げてください。
希望する数人の生徒に,自分の書いた答えを発表してもらいます。話し合った真理について証し,自分の計画に基づいて行動するよう生徒を励ましましょう。
「天の御父は,御自分の娘や息子たちに,常に学ぶことを求めておられます。 学問を求め,学問を愛する理由には,この世的な理由と霊的な理由の両方があります。教育とは,単にお金を稼ぐためのものではありません。教育は,さらに天の御父に似た者となるという,皆さんの永遠の目標の一部なのです。
誠実に生きるとは,個人的な心地良さや人気,都合よりも,心を尽くして真理を愛するということです。 また,正しいというだけの理由で,正しいことを行うということです。」(『青少年の強さのために—選択の指針』 31 )
ラッセル・M・ネルソン大管長は,次のように教えています。
「内省に最適なのは,個人の祈りの時間です。朝は,正直,純潔,徳,あるいは単に人に奉仕することについて祈ります。夜には,このすべての特質について簡単な見直しを行うこともあるでしょう。まず,霊的な高潔さが保たれるように祈り,それからそのために努力します。綻びが見つかったら,脅威にさらされたその縄をさらなる崩壊から守るために,迅速な修復プロセスを始めた方がよいでしょう。」(Russell M. Nelson, “Integrity of Heart ” [Brigham Young University devotional, Feb. 23, 1993], 4, speeches.byu.edu )
十二使徒定員会のデビッド・A・ベドナー長老は,学業における不正直さがどのような影響を及ぼすかについて,次のように教えています。
「学業における不正行為は,無節操で不誠実であり,自己欺瞞と裏切りの一種です。不正という基盤の上に何を積み上げたとしても,そのような生徒には最終的にキャリアや職業での成功を望むことはできません。」(David A. Bednar, “Be Honest ,” New Era , Oct. 2005, 6)
大管長会のジェームズ・E・ファウスト管長(1920-2007年)は,次のように説明しています。
「わたしたちは皆,正直であるとはどういうことかを知る必要があります。正直とはうそをつかない以上のことです。それは真理を告げ,真理を語り,真理に生き,真理を愛することです。……
正直であることについて率直に話したいと思います。正直は生活でわたしたちを導く道徳の羅針盤です。……しかし,この世の学問で抜きんでるという大きな圧力は,時として,……正直や高潔という点において妥協するよう人々を誘惑します。
カンニングは自分を欺くことです。学校は学ぶためにあります。ほかのだれかの努力や学識に頼るのは,自分を欺くことです。」(ジェームズ・E・ファウスト「正直-道徳の羅針盤 」『聖徒の道』 1997年1月号,48参照)
生徒が高潔でいることの大切さを理解できるように,以下を掲示するとよいでしょう。
十二使徒定員会のロナルド・A・ラズバンド長老は,次のように教えています。
「今日,あなたはどこに立っていますか。主はあなたと,主の教会の真の会員としてのあなたの高潔さを信頼することがおできになるでしょうか。……
世の基準が四方八方で崩れていくのを目の当たりにするとき,断固として立ち上がり,信仰を擁護し,福音の高潔さを守ることがしばしば求められます。ヒラマン書にある勧告を思い出してください。皆さんが『神の御子でありキリストである贖い主の岩の上に』建てられるとき,『大嵐が〔近づいても〕,あなたたちを引きずり落とすことはない。なぜならば,あなたたちは……その岩の上に建てられて〔いる〕からである。』〔ヒラマン5:12 〕」(Ronald A. Rasband, “Integrity of Heart ,” [Brigham Young University devotional, March 13, 2018], 4, speeches.byu.edu )
今日の世の中で高潔さを堅固に保つ方法について話し合ってもらいます。
ホワイトボードに棒人間か生徒の絵を描きます。芸術的な才能を発揮してくれる生徒がいれば,代わりに描くよう依頼してもいいでしょう。この絵は生徒を表していると説明します。
生徒に次の質問をしましょう。
高潔さが試されるような試練に直面したときには,イエス・キリストの模範に従うよう生徒を励まします。
盗用とは何か,それが教育における誠実さとどのように関連しているか理解するために助けが必要な場合は,次の説明と表を紹介するとよいでしょう。
無断で,あるいは原著者に言及せずに,他人の言葉を自分の言葉として使うことを盗用 と言います。盗用は不正直であり,不正行為の一種です。盗用を行ったために,落第したり,退学を命じられた生徒もいます。また,盗用が原因で職を失った人もいます。
ホワイトボードの真ん中に一本の線を引きます。左側に「盗用になる 」,右側には「盗用にならない 」と書き込みます。以下の表を印刷し,それぞれのケースの「文章だけ」(「盗用になる」「盗用にならない」という文言は使わない)を切り取るとよいでしょう。生徒に,それぞれのケースをホワイトボードの適切なところに並べてもらいましょう。
盗用になる
盗用にならない
インターネットや他人の課題で見つけたものをコピーして,自分で書いたと主張する。
他人の言葉を使い,それがだれの言葉か言及する。
他人の言葉をコピーして,段落の中の単語を一つか二つ変える。
あるテーマについて読み,原著者への言及も含めて,学んだことを自分の言葉で書く。
ほかのところで見つけた特定の事実や統計を,情報源に言及せずに使用する。
特定のだれかの発言ではない一般的な言葉。以下はその例。
自分の文章に,他人のアイデアや考えだけを使う。
おもに自分自身の考えやアイデアを使う。