セッション4
子供を養い育てる
「幼い子供を大切にし,あなたの家庭に喜んで迎え入れ,心を尽くしてはぐくみ,愛してください。」
ゴードン・B・ヒンクレー大管長
セッションの目的
このセッションでは,親が以下を達成できるように助けます。
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子供を養い育てることの大切さを理解する。
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子供を養い育てるための様々な方法を知る。
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「感情のコーチング」と呼ばれる,子供を養い育てるための5つの段階を学び,応用する。
養い育てることの必要性
ゴードン・B・ヒンクレー大管長は子供を養い育てるように両親を励ましてこう語りました。「子供を愛の中で,主の
子供を養い育てるとは,愛と思いやりを込めて子供の必要にこたえることです。これには,物質面,情緒面,霊的面で子供の成長に必要なものを与え,愛し,教え,守り,助け,支え,励ますことが含まれます。
親は,子供が人生の様々なチャレンジに自分で対処できるように備えさせるうえできわめて重大な役割を果たします。適切に養い育てられた子供は,試練のときに耐え抜く方法を身に付けています。親に与えられた最も大切な務めの一つは,子供を養い育てることです。
残念ながら,忙しいという理由で子供に必要な世話をせず,ほうっておく父親や母親がいます。両親,教育者,教会と地域社会の指導者は長年にわたって,親にほうっておかれている子供の福利に頭を悩ませてきました。また,これよりもはるかに大きな問題が結婚生活の
聖文には,子供を養い育てることについて土台となる教義が記されています。詩篇の作者は親子の神聖な起源をこう説明しています。「あなたがたは神だ,あなたがたは皆いと高き者の子だ。」(詩篇82:6)パウロも同様に,人は「神の子である」と教えています(ローマ8:16)。神は子供の世話を地上の両親に託しておられます。親は子供を神のもとに戻すという神聖な責任を持っています。パウロは親に対して,「子供をおこらせないで,主の薫陶と訓戒とによって,彼らを育てなさい」と勧告しています(エペソ6:4)。主は預言者ジョセフ・スミスを通して同様の指示を与えておられます。「わたしはあなたがたに,あなたがたの子供たちを光と真理の中で育てるようにと命じた。(教義と聖約93:40)
現代の預言者もこの聖文の真理を再度明言しています。大管長会と十二使徒定員会は厳粛に宣言しています。「両親には,愛と義をもって子供たちを育て,物質的にも霊的にも必要なものを与え,また互いに愛し合い仕え合い,神の戒めを守り,どこにいても法律を守る市民となるように教えるという神聖な義務があります。夫と妻,すなわち父親と母親は,これらの責務の遂行について,将来神の
親は子供を養い育てるという神聖な責任を決して忘れてはなりません。ゴードン・B・ヒンクレー大管長は親に対して次のように勧告しています。「子供を養い,愛し続けてください。……どのような資産であろうと,子供以上に貴重なものはないからです。」3
子供を養い育てる方法
親は様々な方法で子供を養い育てることができます。以下はその例です。
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救いに関する正しい教義を子供に教える。エズラ・タフト・ベンソン大管長は,モルモン書に登場する,義にかなった父親たちが「『永遠の神の偉大な計画』すなわち堕落,再び生まれること,
贖 い,復活,裁き,永遠の命について」息子たちに教えたことを強調しました(アルマ34:9参照)。またエノスは父が正しい人であったことを知っていました。「父はわたしを父の言葉で,また主の薫陶と訓戒によって教えてくれたからである」(エノス1:1)。4 -
聖文研究,祈り,家庭の夕べ,教会活動への参加を通して霊的な成長を促す。
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子供に食物,衣服,住む場所を与える。
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キリストのような態度で子供に話しかけ,子供の話に耳を傾ける。
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適切な行動を教える。
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間違った行動に対する結果を課す。
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愛,尊敬,献身を示す。
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正しい模範を示す。
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労働の価値を教え,働く機会を与える。
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什 分 の一と貯蓄をはじめとする財政管理の原則を教え,それに従うようにしつける。 -
楽しく有益なレクリエーション活動を提供する。
子供が困難や問題に直面するときこそ,親が子供を養い育てる最良の機会となります。
試練のときに,子供を養い育てる
人は問題に直面するとき,話を聞いてくれ,助けや助言を与えてくれる友が必要です。スペンサー・W・キンボール大管長はこう説明しました。「神がわたしたちの必要にこたえられるのは,普通の場合,別の人を通してです。」5 子供たちが困ったときに,最も必要なのは親からの助けです。なぜなら,親はほかのだれよりも子供の幸せを願っているからです。親は必要とされるときに子供の味方となり,友とならなければなりません。子供の必要を満たすことは親に与えられた機会でもあり,義務でもあります。子供の必要に親がどうこたえるかによって,子供が抱く天の御父のイメージは大きく左右されます。御父から愛され,助けを受けられるという信頼感を子供が抱くうえで,親は大きな影響を及ぼします。
子供を養い育てる母親の役割について,十二使徒定員会のラッセル・M・ネルソン長老はこのように述べています。「……子供……が一日の業を終え,世の中の過酷な現実に傷ついて帰るとき,愛ある女性はこう言います。『わたしのもとに来なさい。あなたを休ませてあげましょう。』そのような女性はいずこにあっても,人生の
ワシントン大学の心理学者ジョン・ゴットマンは119の家族を20年にわたって調査した結果,子育てに最も成功したのは,子供が苦しみや悩みを抱えて最も助けを必要としているときに,適切な助けを与えることができた親であったということを発見しました。そのような両親は,いずれも子供を養い育てるために5つのことを行っており,それによって子供のためにすばらしい人生の基礎を固めていました。
ゴットマンは,彼らが行った事柄を「感情のコーチング」と名付けました。このような親に養い育てられた子供は,自分の感情を理解してそれに上手に対処し,良い対人関係を築き,問題を適切な方法で解決するすべを学んでいました。またほかの子供たちに比べて,肉体的に健康であり,学校の成績が良く,友人関係も良好で,素行上の問題も少なく,考え方も積極的で,精神状態も良好でした。7 ゴットマンの「感情のコーチング」の5段階とは以下のとおりです。8
第1段階-子供の感情に注意を払う
ゴットマンの研究において,上手に子育てをしている親は,子供の感情に気づき,適切に対応することができています。感情は生活に欠かせない大切な要素です。自分の感情に気づいてそれを受け入れている親は,子供の感情も容易に察知して受け入れることができます。つらい気持ちを感じながらも,それに対処しようとする親の姿を見て,子供も自分の感情をコントロールできるようになっていく場合がよくあります。
子供が悩みを抱えているときは,何らかのサインを出すものです。例えば,親を困らせる行動を執ったり,食事の好みが変わったり,自分の殻に閉じこもったり,学校の成績が下がったり,悲しい表情を見せたりします。
子供が悩んでいることに気づき,心から心配するとき,親は子供に共感しているのです。以下の事例が示しているように,他人の身になって考えるこの能力を持つことで,いっそう効果的に子供を養い育てることができます。
優太
4歳の優太が,母親や二人のきょうだいと一緒にテレビを見ようと部屋に入って来ました。いすの前に立ったまま,姉の恵子と話をしていると,兄の幸太がやって来て,優太の後ろにあったいすを動かして,そこに座りました。それを知らずにいすに腰掛けようとした優太は,思わず床にしりもちをついてしまいました。偶然の出来事に,優太以外は思わずみんな笑ってしまいました。みんなからばかにされたと思った優太は自分の部屋に駆け込むと,押し入れに入って泣き出しました。しばらくして,母親がドアをやさしくノックして入って来ました。そして優太の横にひざまずくと,
何年も後になって,優太はその出来事を回想して,幼いころのいちばん大切な思い出だったと語っています。彼の家族は,お互いに愛情を表現することはめったにありませんでしたが,自分が最も必要としたそのときに,自分は理解され,愛されているのだと感じました。彼は決してこのことを忘れませんでした。
第2段階-子供の感情に気づき,子供との距離を縮めるチャンスを作る
子供が怒っているとき,話すのを避ける親がいます。拒否されるのを恐れているか,自分のせいで怒っているのではないかと不安なためでしょう。多くの親は子供の悪感情が早く消え去るようにと願います。しかし,こうした感情は何らかの助けがないとなかなか解消されません。子供が心の平静を失っているときこそ,親子のきずなを深め,子供を成長させるチャンスだと考えるようにしてください。傷ついた子供の心を
勝哉
よく晴れた暖かい土曜の朝のことでした。父親は生きる喜びを感じ,家族と一緒に1日を過ごすのを楽しみにしていました。全員が週末の家事を済ませたら,子供たちを連れて町の公園へピクニックに出かけようと考えていました。家族はこのような外出が大好きでした。いろいろな活動をして楽しめるからです。子供たちにできるだけ早く家事を片付けるように言ったとき,11歳の息子の勝哉がふくれっ
父- |
家事のことを話したとき,怒っていたようだけど,何か困ったことでもあるのかい。 |
勝哉- |
(そっけなく)いや,ちゃんと全部やるから,気にしなくていいよ。 |
父- |
怒っているようだね。どうしたんだい。(積極的に耳を傾け,子供に話させようとしている)。 |
勝哉- |
どうでもいいよ。家事を全部済ませさえすれば,お父さんは満足なんでしょう。だからちゃんとやるってば。 |
父- |
確かに,家事は全部済ませてほしいけど,大事なのはそれだけじゃないよ。お父さんにとっては,勝哉がどんな気持ちでいて,どうしていやな気分になっているのかっていうことも大切なんだ。怒っているようだし,しかも,お父さんに対して怒っているみたいだしね。何があったのか教えてくれないか。(自己弁護することなく,相手の気持ちが明らかになるように耳を傾けている。) |
勝哉- |
父さんが作った,あのくだらない家事分担表が気に入らないのさ。だから怒ってるんだよ。どうしてぼくがいちばん大変な仕事をしなくちゃいけないのさ。不公平だよ。 |
父- |
そんなことはないさ。恵と歩以外は,みんな同じくらいの仕事になるように表を作ったんだからね。二人はまだ小さいから外の仕事は無理だろう。 |
勝哉- |
違うよ。ぼくの仕事はみんなより多いよ。 |
父- |
じゃあ,勝哉はお父さんがわざとお前にだけ大変な仕事を割り当てたって思うのかい?(自己弁護せずに,耳を傾けている。) |
勝哉- |
そうだよ。 |
父- |
じゃあ,説明してくれるかい。(勝哉は表を見せて,二人の兄弟よりも自分の名前が多く書かれていることを説明する。父親は驚き,困惑した表情を見せる。)お前の言ったとおりだね。お父さんが間違っていたよ。ごめんよ。すぐに作り直すからね。(自己弁護せずによく話を聞き,自分の過ちを認める。) |
父親は仕事の分担表を作り直し,翌週は勝哉が仕事をしなくて済むように,分担から外しました。勝哉の怒りは収まり,機嫌も直りました。
第3段階-子供の身になって耳を傾け,気持ちを確認する
子供が気持ちを打ち明けたら,セッション3で学んだ,耳を傾けるスキルを使って,子供が言ったことを自分の言葉で言い換えます。前の例の父親と勝哉の会話を参考にするとよいでしょう。例えば,次のように言います。「友達が引っ越してしまったから,悲しいのね。」子供の言葉や気持ちについて分からないところがあれば,もう少し詳しく話させます。しかし,問いただすような尋ね方では,子供は自分を守ろうとして口を閉ざしてしまうかもしれません。よりもただ観察して,感じたままを伝える方が効果的です。例えばこのように言います。「成績のことを話し始めたら,ちょっと緊張しているように見えたけれど。」そして子供が続けて話すのを待ちます。子供は思うとおりに話せて,自分の身になって批判せずに聞いてもらえることが分かると,進んで話したがります。
愛子
7歳になる愛子が学校から帰って来ました。母親は娘がふさぎ込んでいるのに気づきました。そこでその理由を確かめようとしました。
母- |
随分浮かない顔をしているわね。しかめっ |
愛子- |
もう学校へ行きたくないの。 |
母- |
学校でいやなことがあったの。 |
愛子- |
学校じゃないの。理恵と亜紀よ。わたしのこと,嫌いなのよ。わたしの顔を見る度に意地悪なことを言うんだもの。どうしてか分からないわ。わたしは何もしていないのに。 |
母- |
理由は分からないけれど,二人からいじめられているのね。 |
愛子- |
わたしが真衣と友達になったことが気に入らないっていうことは分かっているの。真衣を自分たちだけの友達にしたいから,わたしとは付き合わせないようにしているのよ。 |
母- |
それはつらいわね。二人のせいで,真衣と仲良くできなくなるんじゃないかって,心配なのね。 |
愛子- |
わたしがいちばん嫌なのは,二人から嫌われていることなの。どうしてわたしが真衣と友達になることが気に入らないのかしら。二人だって真衣と遊べばいいのに。わたしは二人に何もしていないのよ。(泣き始める。) |
母- |
(しばらく,何も言わずに抱きしめた後で)わたしがあなただったら,やっぱり同じように傷つくし,悲しむと思うわ。どんなときも,仲間外れにされるのってつらいことよね。 |
愛子- |
わたし,どうしたらいいのかしら。 |
母- |
そうね,いい質問だわ。お母さんも考えてみないとね。あなたはどうしたらいいと思うの。 |
愛子- |
二人と仲良くしようと努力してみたわ。でも,ただ,嫌な作り笑いをするだけなの。もう無視してしまえばいいのかもしれない。真衣も,二人はひどいことしているんだから,無視するべきだって言ってたわ。真衣は今もわたしと友達だと言ってくれるし。でも,人から嫌われるのって,ほんとうに嫌よね。 |
母- |
難しいことね。 |
愛子- |
わたしはみんなから好かれたいの。 |
母- |
お母さんがいつも自分に言い聞かせているのはね,周りの人全員を喜ばすことはできないっていうことよ。どこのだれが何をしたとしても,それが気に入らないっていう人は必ずいるものよ。いちばん大切なのは,あなたが正しいと思うこと,天のお父様があなたに望んでおられるだろうと思えることをして,お父様に喜んでいただけるようにすることよ。そうしていれば,ほかの人たちがあなたのことをどう思おうと,あまり気にならなくなるわ。 |
愛子- |
これからもわたしからは仲良くしようとするけれど,たとえ意地悪されても気にしないようにするわ。 |
母- |
大丈夫? |
愛子- |
大丈夫だと思う。話したら気が楽になったわ。 |
母- |
じゃあ,時々様子を教えてね。応援してるわ。 |
愛子- |
ありがとう,ママ。 |
この例では,母親は学校のことで悩む娘の気持ちが少しでも楽になるように助けることができました。その後も理恵と亜紀は愛子に対してひどい態度を執り続けるかもしれませんが,愛子はそれまでとは違った受け止め方をすることで,前ほど傷つかずに済むでしょう。また,母親が理解してくれ,支えてくれるのを感じるでしょう。人から認められたいと望むよりも,正しいと感じることを行うことで,自尊心が高められることでしょう。
第4段階-自分の感情を言葉で表現させる
子供は感じていることを言葉で表現できるものだと,親が思い込んでいる場合があります。しかし,実際は気持ちをどのような言葉で言い表せばよいかを知らない場合も多いのです。親としてできるのは,気持ちを言葉にする手助けをすることです。例えば,あいまいですっきりしない気持ちを「悲しい」「怒っている」「不満だ」「怖い」「心配だ」「緊張している」といった言葉にしてやるのです。子供は自分の気持ちを言葉で表現できるようになると,自分で感情をコントロールしていると感じられるようになります。
感情を表現する言葉を教えるには,その感情を抱いているときが最も効果的です。友達が引っ越してしまうのが寂しくて泣いている娘に,母親は次のように言うことができます。「ほんとうに悲しいわね。とっても仲がよかったんですもの。」これを聞いて,娘は自分が理解されていると感じるだけでなく,自分の身に起こっていることを表現する言葉を獲得できるのです。
自分の気持ちを知り,言葉で表現することには「神経を落ち着かせ,動揺から早く立ち直らせる効果がある」9 とする研究結果も発表されています。以下の事例が示しているように,感情を表現する言葉を知らない子供は,感情を行動で表したり,「うるさい」「ほうっておいて」などの不適切な,あるいはもっと悪い言葉を使ったりすることがあります。
達郎
最近,両親は達郎が怒りを爆発させた後で,達郎をカウンセラーのところに連れて行きました。7歳の達郎がすぐにかんしゃくを起こすので,何とかそれをやめさせたいと考えたのです。その前日の午後,達郎が友達の幸治の家まで車で送ってほしいと頼んだところ,母親から断られたため,ひどく腹を立てて金切り声で叫び,母の悪口を言い,壁をけって暴れました。カウンセラーが達郎に,母親から断られたときどんな気持ちだったかを尋ねると,達郎は「分からない」と答えました。いちばん好きなことをしているときはどんな気持ちかを尋ねられても,同じ答えでした。さらに質問を重ねていくと,達郎は自分の感情を表現する言葉を知らないことが分かりました。
もし達郎が自分の気持ちをはっきりと正確に表現できたとしたら,このようなことにはならなかったかもしれません。気持ちを表現する言葉を学んだからといって,子供がもっと責任ある行動を執れるようになるかどうかは保証できませんが,自分の気持ちを言葉で表現できれば,感情をそのまま行動に移すことは少なくなります。また,子供が自分の気持ちを伝えてくれれば,親はもっと容易に子供を慰め,心の傷を癒すことができます。
第5段階-行動に限度を設けて,問題の解決方法を学ばせる
親の助けを借りながら不快な感情に対処できるようになるにつれて,子供は感情をコントロールする力がついてきます。子供は,社会的・情緒的に適切かつ健全な方法で,嫌な思いや感情に対処できるようになる必要があります。場合によっては,子供が問題を解決できるように助ける際,不適切な行動にある程度の限度を設けて,制限する必要があるでしょう。
勉
12歳の勉は野球の試合で飛んできたフライを落としたために,チームは負けてしまい,決勝に進むことができませんでした。グラウンドを出ようとしたとき,チームメートの一人が「やってくれたね,へたくそ野郎」と叫びました。自分の失敗でいらついていた勉は,その少年に向かって走って行くと,首と肩をつかんで,地面に押し倒そうとしました。観客席にいた勉の父はすぐに走り寄り,勉を引き離すと,しっかりと抱きかかえてこう言いました。「お前が傷ついて,腹を立てているのは分かる。でも,人を傷つけてはいけないよ。家に帰って,どうしたらいいか話し合おう。」
この父親は叱ったり,説教したりせずに,心から耳を傾け,勉の気持ちを認め,この難しい状況に違う方法で対処できるように助けました。それによって,勉との距離を縮めることができました。このような助けを続けることにより,勉は自分が理解され,大切にされていると感じ,もっと上手に気持ちをコントロールできるようになるでしょう。
問題の原因が分からない場合は,まず質問をしてその原因を明らかにし,解決方法を見つけてください。「なぜこんな気持ちになったのだろう」と質問するとよいでしょう。明らかに他人のせいではない場合は,人を非難する言葉を口にさせないように注意します。
原因がはっきりしたら,次のように尋ねます。「どうしたらこの問題を解決できると思う。」子供の答えによく耳を傾けます。また,幾つか提案をして,ほかの方法も考えてみるように助けます。子供が幼い場合は,対話を導きます。年長の子供には,思いつくかぎり様々な意見を出させる方法も役立ちます。親子で意見を出し合うときは,子供がどんな意見を出しても,ばかげているとか,不適切だなどと言って切り捨てることがないようにします。少しでも批判すると,自由な意見が出なくなります。最終的にどの方法が適切かは後で話し合って決めることができるので,親は子供の能力を信頼していることや,必ず良い解決策を見つけられると信じていると伝えます。できるだけ子供に責任を持たせて,親に依存している状態からだんだん自立できるように助けます。
過去に,問題に上手に対処できた経験があれば,それを思い出させることが役立つ場合もあります。そのとき,子供は問題に立ち向かうために何をしましたか。今ある問題にも同じ方法を使うことはできませんか。問題解決についての提案がセッション7に記されているので,参考にしてください。
第5段階の次の段階は,提案された解決方法を評価することです。親は子供に以下のような質問をします。10
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「その方法は,公平だろうか。」
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「うまくいくだろうか。」
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「安全だろうか。」
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「あなたはどう感じるだろうか。」
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「その方法はほかの人にどのような影響を与えるだろうか。」
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「その方法はだれかの助けになるだろうか。それともだれかを傷つけるだろうか。」
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「その方法はその問題に関係する人全員を尊重しているだろうか。」
それぞれの解決方法について検討した後,親は子供が最善の解決方法を選べるように助けます。親は自分の意見を伝えたり,導きを与えたりして,子供が親の知恵や経験を生かせるようにします。親自身,以前同じような問題を解決した経験があれば,それについて話します。そのとき何を選択し,何を学んだかを話して聞かせます。
親から見てうまくいかないだろうと思われる解決方法を子供が試そうとしている場合でも,子供に害を及ぼし,深刻な問題を引き起こすようなものでない限り,その方法を選ばせてみます。人は失敗から非常に多くのことを学ぶものです。結果が出た後で,「だから言ったでしょう」とは言わずに,ほかの方法で解決できるように子供を助けます。
親は自分と子供との関係を銀行口座のようにとらえることができます。子供に対して適切に接すること,子供の領域を尊重すること,子供の考えや気持ちに耳を傾けること,子供が抱える問題を通して教え導くこと,愛を込めてしつけることなどによって信頼の残高を増やしていきます。思いやり,愛,尊敬といった一つ一つの行いが信頼の残高を増やしていくことになるのです。問題解決の努力が失敗に終わり,子供が重大な間違いを今にも犯そうとしているとき,十分な信頼の残高があれば親はそこから引き出すことができます。親にとって大切なことを子供に頼むことは,「引き出す」ことの一つです。例えば,もし息子がとても信用できそうにない友達と週末を過ごしたいと言ってきたとき,両親の預金が十分にあれば,両親は行かないように頼むことができますし,息子は親の頼みを聞き入れるでしょう。
子供の問題を助ける際の指針
問題を抱えている子供を助ける際に,親がどの程度まで関わるべきか分からない場合があります。以下の原則を参考にしてください。
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両親には子供を助ける責任があります(モーサヤ4:14-15;教義と聖約68:25;93:40参照)。
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善悪を判断できる子供は,選択の自由をどのように使うかについて責任を問われます(2ニーファイ2:27;モロナイ7:12-17;教義と聖約58:27-29参照)。
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子供は成人へと成長する過程で,自分のことは自分でできるようにならなければなりません。成人したときに彼らは自立して,自らの「社会的,情緒的,霊的,肉体的,経済的」必要を満たせるようになる必要があります。11
子育てにおいて大切なのは子供が依存している状態から自立した状態に移行できるよう助けることです。正しい原則を教えて自立を促し,義にかない,責任をもって自分を治められるように子供を助けます。子供の問題を親が肩代わりしてしまったら,親は不必要な重荷を負うばかりでなく,責任と自立を学ぶ機会を子供から奪ってしまうことになります。基本的には,問題,不満,
時には,親が率先して問題解決に当たる必要があります。問題を解決する際,子供が幼すぎたり,経験不足だったり,未熟だったりする場合には,親が主導します。子供が親を脅したり,財産を奪ったり,物を壊したりする場合,あるいは他人を脅す場合も,親の干渉が必要です。このような場合,子供を助けるには,真っ向から子供と向き合い,間違った行為をやめさせる必要があります。セッション3で説明した「アイメッセージ」を用いて話し合うとよいでしょう。(両親がそろってその場にいるのであれば,「わたしは」ではなく「わたしたちは」を使います。)そのほかに,選択させる方法(セッション8参照),または結果を課す方法(セッション9参照)によって子供に責任を取らせることができます。
子供を養い育てるという業の永遠の価値
両親がこのセッションで提案されている内容を必要に応じて実行し,愛と親切と思いやりをもって子供を養い育てるときに,子供は好ましい反応を見せるでしょう。子供を養い育てる業は,早い時期から始め,それぞれの子供に合った方法で,生涯を通じて続けていく必要があります。
ゴードン・B・ヒンクレー大管長は,子供を愛し,養い育てるに当たり,天の御父と一致して働くことの必要性を強調しています。「これらの