セッション6
怒りに打ち勝つ
「怒ったときに口から出てくる辛らつで卑劣な言葉が残す傷は,一体どれほど深い苦痛を人に与えるのでしょうか。」
ゴードン・B・ヒンクレー大管長
セッションの目的
このセッションでは,親が以下を達成できるように助けます。
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歯止めの利かない怒りが家族に破壊的な影響を与えることに気づく。
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自分がどのように怒り出すかを認識し,怒りが引き起こす問題に対して責任を負う必要があることを理解する。
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怒りを抑え,打ち勝つ方法を学ぶ。
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怒りが引き起こす問題を繰り返さないために計画を立てる。
怒りが引き起こす問題
ゴードン・B・ヒンクレー大管長はこのように教えています。「短気は愛情を損ない,愛をけちらす悪癖です。」1 サタンは家族の中に怒りをかきたて,争いを起こそうとしています(2ニーファイ28:20;3ニーファイ11:29;モロナイ9:3参照)。
父親
父親は,怒りが込み上げてくるのを感じました。15歳の息子俊介が部屋に入って来るなり,「おれのいすに座るな。ばかやろう」と脅しながら,11歳の芳也の首をつかんでテレビの前のリクライニングチェアーからどかそうとしたのです。芳也は痛みに顔をしかめながら,か細い声で言いました。「兄さんのいすじゃないよ。」芳也が立ち上がって場所を移ろうとすると,俊介が手の甲で芳也の頭をたたきました。俊介はいすにどっかりと腰掛けると,リモコンを手に取ってチャンネルをロック音楽の番組に変え,ボリュームを上げました。父親は,数か月間ためてきた怒りが煮えたぎってくるのを感じました。額からは玉のような汗が吹き出し,腕はけいれんしてぶるぶる震え出しました。もう我慢できないと彼は思いました。俊介はまったく家族を大切に思わないばかりか,わたしにまでわざと逆らってくる。わたしがそのような振る舞いを許さないのは知っているはずだ。かんかんになった父親はものすごい勢いで俊介に向かっていくと,腕をつかんでひねり上げ,こう叫びました。「お前はいったい自分を何様だと思っているんだ。自分のことしか考えないで,人のことなんてどうでもいいと思っているだろう。」父親は俊介をいすから引きずり下ろしながらどなりました。「自分の部屋に行きなさい。お前の顔なんか見たくもない。」俊介は腕を振りほどいて,ふてぶてしく玄関のドアを開き,大きな音を立ててドアを閉めると外へ出て行きました。
数日後,父親は妻と二人でLDSファミリーサービス事務局のカウンセラーのもとを訪れ,そのときの様子を話しました。「物事を正しく判断できないほど子供に怒りを覚えてしまうんです」と父親は後悔した様子で言いました。「俊介とは,冷静に話すことができません。後で悔やむようなことを言ってしまうことが時々あります。問題はますます悪くなる一方です。」
ほとんどの親は時に子供に対して怒りを覚えます。対処しなければならない問題に気づくという点では,怒りを感じることにも意味があり,賢明な親は小さな問題が大きくなる前に適切な行動を起こすことができます。問題の中には,複雑で,簡単には解決できないものもあります。子供の反抗的で不作法な態度に,怒りを募らせることも度々ありますが,親は怒りに身を任せ,やり返し,争いを大きくしてはなりません。
七十人のリン・G・ロビンズ長老は怒りを次のように説明しています。「それは心の中で犯す罪であって,やがて憎しみの気持ちや行動へと発展していきます。また,それは高速道路でほかの運転者に怒りを向ける起爆装置であり,スポーツ競技場での激高した姿であり,家庭内暴力となって現れています。」2 ゴードン・B・ヒンクレー大管長は怒りのもたらす悲しい結末について警告を発し,こう尋ねています。「怒ったときに口から出てくる辛らつで卑劣な言葉が残す傷は,一体どれほど深い苦痛を人に与えるのでしょうか。」3 世界のいたるところで,親たちは怒りに任せ,言葉でも,肉体的にも,また性的にも子供を攻撃しています。政府機関からは,子供の虐待について毎年数百万にも上る報告がなされています。
怒りは「否定的な感情の中でも,人が最も陥りやすいもの」4 であると言われています。怒る人はほとんど例外なく自分の怒りを正当化します。怒りをあらわにすることで,満足感と高揚感を覚える人もいます。人をおびえさせることで,自分は強いと感じ,優越感を味わいます。しかし,怒りには習慣性があります。怒りという誘惑に負け,怒りのとりことなる人は,怒りによってむしばまれていくのです。
怒りの間違った処理方法は,攻撃,内在化,受動的攻撃の3つに分類されます。
攻撃-怒りを表す方法は様々です。物理的な暴力(たたく,ける,平手打ちする,尻をたたく,髪や耳を引っ張る),感情的な言葉による虐待(どなる,悪口を言う,ののしる,脅迫する,非難する,ばかにする,人を操る,品位を傷つける),性的虐待(
内在化-怒りを自分自身に向けると,自己否定,うつ症状,または自己損傷行為(飲酒,麻薬の使用,自殺未遂,自分の身体を傷つける行為)へとつながります。
受動的攻撃-怒りが間接的な行動によって表現される場合もあります(遅刻,無責任,頑固,皮肉,不正直,かんしゃく,不平,非難,引き延ばし)。
親が怒りにまかせて子供を脅して従わせ,その結果子供が行動を変えたとしても,それは一時的なものでしかありません。脅迫されて従う子供は,後で反抗する場合が多いのです。
怒りの代償
怒りの代償は計り知れないほど大きいということが分かれば,親が子供に怒りをぶつけることは少なくなるでしょう。しかし残念なことに,多くの親は怒りの代償はさほど大きくないだろうと考えて,子供に怒りをぶつけています。友人や雇用主,警察官あるいは尊敬する教会の指導者に対して怒りを向けることは少なくても,子供に対してはすぐに怒りを爆発させる傾向があります。しかし,長期的に見て,子供に怒りをぶつけることの代償は,怒ることによって得られるかもしれない利点をはるかにしのぐ大きなものになります。代償として以下のような事柄が考えられます。
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御 霊 を失う。 -
自尊心や家族からの尊敬を失う。
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友情と援助を失う。
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自信を失う。
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罪悪感と孤独感を味わう。
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人間関係がこじれる。
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自分自身と人を傷つける。
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子供が,親に対して愛よりも恐れを抱く。
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子供が反抗し,非行に走り,早い年齢で家を出る。
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子供の成績が下がる。
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うつ症状,健康状態の悪化,
耽 溺 ,仕事上の問題などに見舞われる危険性が増す。
怒りの原因
親が怒る原因は,恐怖を与えて子供を管理するため,上の立場にあることを親が実感したいため,問題を避けて通るためなど様々です。自分の思いどおりにいかなかったときや,柔和さ(つまり,相手のひどい言動に対する忍耐)が欠けているときなどに,高慢や利己心が原因で怒りが生じることがあります。むしゃくしゃしたり,気持ちを傷つけられたり,落胆したりしたときに怒る人もいます。
人は,自分や人が脅威を感じたり,不公平だと感じたり,不当に扱われていると感じるときに,怒りを覚えます。脅威には身体的なものと感情的なものとがあるでしょう。例えば,身体を傷つけられる,屈辱を受ける,自分や人の評判が下がる,といったことは恐れの原因となります。冒頭の例にあったように,父親は「子供の行動を管理できる立派な父親」という自己イメージが崩れることに脅威を感じました。人から無能な親だと思われることを心配したのです。
ゆがんだ認識
危険に対する認識はゆがんでいることがよくあります。他人の意図していることを勝手に誤解して,怒りを募らせる場合が非常に多いのです。-「あの人はわたしを傷つけようとしている」「わたしのほしいものが手に入らないのは彼女のせいだ」「彼はわたしの気持ちなんてどうでもいいと思っている。」「彼はわたしを利用している。」
ほとんど何も考えずに怒る人もいます。この種の怒りは突然こみ上げてくるため,抑えるのが難しい場合が多くなります。そのほか,絶えず脅されているとか,不当な扱いを受けているとか,虐待されていると本人が考えていると,怒りがゆっくりと蓄積されていくことがあります。ある状況から抜け出せないまま,極度にゆがめられ,誇張された思いに捕らわれていると,怒りはさらに募ります。
人から脅威を感じて怒りを抱くと,体は行動に移る用意をします。血圧は上昇し,筋肉は緊張し,呼吸は速くなり,頭は脅威や不当な扱いに応戦しようと集中力を高めます。このような状態でいると,相手のちょっとした言動が発端となって怒りが爆発する可能性があります。そのほか,怒りをかき立てられる様々な出来事が,一つまた一つと,時間をかけてゆっくり蓄積されていくこともあります。怒りを引き起こす思いがふくらみ続け,やがて,普通なら気にも留めないささいなことが発端となって爆発するのです。
こういった心の動きに注目すると,怒りを抑える
ストレスを感じたときは,リラックスして自分を抑制できるようになるまで,ストレスが増すような状況をいったん回避します。その後,怒りを抱かずに状況を解決するように努力するのです。
怒りに打ち勝つ
以下の原則は,怒りに打ち勝つのに役立ちます。参加者に,自分にとって最も効果があると思われる原則を見つけて応用するよう提案します。
祈る
親は怒りを乗り越えられるように誠心誠意で祈る必要があります。詩篇の著者は,主が祈る者を人生の嵐あらしから救ってくださることについて,次のように教えています。「彼らはその悩みのうちに主に呼ばわったので,主は彼らをその悩みから救い出された。主があらしを静められると,海の波は穏やかになった。こうして彼らは波の静まったのを喜び,主は彼らをその望む港へ導かれた。」(詩篇107:28-30)断食と神権の祝福も,怒りに打ち勝つ助けになります。変わるための個人的な努力に加えて,神権の祝福を受け,祈りと断食を行うべきです。
根本的な問題を解決する
親は子供と話し合い,怒りの原因となっている問題を解決しなければなりません。ほとんどの問題は穏やかに解決することができます。助けを得るために,セッション3(「愛あるコミュニケーション」),セッション7(「対立を解消する」),セッション9(「行動の結果を課す」)を活用します。問題に取り組むためには,子供に対して,雇用主や友達,教会の指導者に接するのと同じように敬意を込めて話すべきです。
怒りに対して責任を持つ
怒りっぽい親は,まずそのことを認め,それに対する責任を引き受けなければなりません。怒りを克服できるのはその後です。子供にいら立つとき,どう応じるかは親の責任です。親は怒りを抑え,より良い対処の仕方を習得することができます。
怒ることは自分たちの文化の一部だと言い訳する人がいます。例えば,子供への暴力について,自分の国ではそのような行為は一般的だと言って正当化する親がいます。しかし,天の御父はそのような行為をお認めにはなりません。十二使徒定員会のリチャード・
「皆さんの天の御父は,皆さんをある特別な血統のもとに生まれるように選ばれました。その血統を通して,皆さんは人種的なものや文化的なもの,習慣的なものを受け継いでいます。その血統は豊かな受け継ぎを約束するとともに,大いなる喜びの基となります。しかしながら,皆さんには,そうした受け継ぎの中に,主の幸福の計画に反するがゆえに捨てなければならないものかどうかを決める責任がゆだねられているのです。……
……恐れや強制の下では,どんな家族も長く維持することはできません。そんなことをしても,論争と反感を生むだけだからです。愛が幸福な家族の基盤です。」5
問題に気づき,それを認めることができれば,悔い改めて,問題を克服するための行動を起こすことができます。
怒りのサイクルを自覚する
親が慢性的に怒りを覚えているとすれば,怒りのサイクルに陥っていると考えられます。このサイクルは4つの段階からなり,行動科学者によってその段階の呼び方は異なりますが,基本的な要素は同じです。怒りのコントロールに関するスペシャリスト,マレー・カレンとロバート・E・フリーマン-ロンゴはこのサイクルを以下のように大別しています。6 怒りを抑える最良の方法は,生理的な高まりが起こる前に,サイクルの早い段階で対処を試みることです。
正常なふりをする段階 生活は平穏に営まれますが,怒りが隠れていて,生活の仕方や考え方に影響を及ぼします。様々な出来事や状況が,すぐに習慣的でゆがんだ思考パターンを引き起こします。そしてそのようなゆがんだ思いを合理化し正当化します。
怒りが増大する段階ゆがんだ思いに意識を向けるにつれて,脅威や危険を感じ,怒りをもって反応するようになります。「娘は親のわたしの言うことなんて,どうでもいいと思っている」とか「わたしはここで
行動で表す段階どなりつけたり,品位を傷つけたり,身体的あるいは性的な暴行を加えたりすることによって,ほかの人に対して怒りを爆発させます。また,自己を中傷したり,自殺を図ったり,アルコールや薬物を乱用することで,怒りを内面に向けることもあります。
否定的な感情にさいなまれる段階罪悪感を抱き,恥ずかしく思います。自分を守るようになり,自分が善良な人物であることを証明するために一般的に良いことを行い,それによって怒りを覆い隠そうとします。短気を抑えようと決意しますが,決意が崩れると,再び「正常なふりをする」段階に戻ります。
怒りの記録をつける
怒りの記録をつけると,怒りのサイクルに対する意識が高まります。7 そうすれば,このセッションで学ぶ原則を用いて,怒りを早い段階で絶つことができます。
怒りをかき立てる思いを取り除く
ある行動に対して怒りを抱いたときは,その行動を別の観点から捕らえるようにします。例えば,親に対して粗野な態度を執る子供は学校で嫌なことがあったのかもしれません。親に逆らう子供は,自分は不良グループにしか受け入れてもらえないと感じてそうしているのかもしれません。親は心の平静を保ちにくい状況になっても,それを脅威と感じたり,怒って大げさに捕らえたりせずに,解決する必要のある問題,子供とさらに親しくなる機会だと考えるようにします。
怒りの感情に対処するにはタイミングが非常に大切です。怒りのレベルが高まってくると,理性を失います。感情がこのレベルまで達したら,その状況から離れて,気持ちを落ち着かせなければなりません。
スポーツ選手や音楽家が晴れ舞台で力を発揮する前に長時間練習するように,親も怒りをかき立てるような状況で適切に対処するには準備が必要です。カリフォルニア大学アービン校のレイモンド・ノバコは,怒りがわいてきたときにはそれに気づき,そのゆがんだ考えを,状況を正確に理解し,対処するための「理性的な言葉」と置き換えることを提案しています。8 心を落ち着けて,次のような言葉を頭の中で考えます。「この問題をどう解決できるだろうか。怒りを感じてきたが,どうすべきか分かっている。この状況を切り抜けられる。怒りを鎮める方法も知っている。ユーモアのセンスを持ち続けることもできる。」
実際に怒りが込み上げてきたら,次のような理性的な言葉を心の中で自分に語りかけます。「ここから抜け出すにはどうしたらいいだろう。怒ったところで何も得られないし,払いたくもない代償を払うことになる。前向きに考えよう。最悪の事態は避けたいし,結論を急ぎたくもない。今感じている怒りは,自分を見つめ直すべきときだというサインなのだ。論理的に解決できるはずだ。敬意をもって相手と向き合おう。」
その場から離れる
行動を起こすのに最適なのは,ストレスが強くなってきていると感じたときです。自分の怒りを監視する方法を学びましょう。怒りのレベルを測る温度計を思い浮かべてください。25度で抑えが利かなくなるようであれば,そうなる前にその状況から逃れるのです。子供にこう言います。「ちょっといらいらしてきたから,頭を冷やすのに少し時間をちょうだい。」ただし,「あなたがお母さんを怒らせたのよ」などと言って,子供を責めてはいけません。
冷静になれる活動を見つける
気持ちを落ち着かせるためにできることとして,
感謝の念を持つことや,子供の良いところを見つけようとすることは,怒りを鎮めるのに役立ちます。もう一つの方法は,十二使徒定員会のボイド・K・パッカー会長が勧告したように,神聖な音楽を聴くことで好ましくない思いを退けるという方法です。「音楽が始まり,歌詞が心の中に浮かび上がると悪い思いはこそこそと去っていきます。心の舞台はすっかり明るい雰囲気になるでしょう。心を高める清い音楽により,卑しい思いは姿を消すのです。」9
根底にある感情を伝える
恐れや恥ずかしさ,拒絶された,あるいは傷つけられたといった思いが,怒りという形で表されることがよくあります。自分の弱さを見せるのを恐れて,ほんとうの気持ちを人に話すのをためらう人がいます。
しかし穏やかな気持ちで,根底にある感情を打ち明けるとき,敵意だけでなく,ほんとうに悩んでいることについても話せるようになります。真の問題について話し合うとき,争いの解決はもっと容易になります。
多くの場合,怒るよりも正直であることの方がはるかに勇気を必要とします。親が心の中の隠れた思いを打ち明けるとき,子供が自己弁護するのをやめ,すすんで問題を解決しようとすることに,親はしばしば気づきます。また,家族との関係も改善されます。
自分の怒りにつながる様々な感情に気づき,それを表現するのが苦手な人もいます。目に見える子供の問題行動に対して親が感じる怒りの裏には,自分は親として失敗しているのではないか,子供は立派にやっていけないのではないかといった心配や不安が隠されている場合があります。
麻紀
麻紀は,放課後の活動に参加する度に母親が怒るので,ひどく恐れていました。しかし,母親は子育てのクラスに出席し始め,自分の怒りの原因である様々な感情について話してくれるようになりました。「あなたのおばあちゃんは10代で妊娠して,わたしが生まれたの。あなたが同じような問題を起こすんじゃないかと,とても心配で恐いのよ。あなたには絶対にそんな目に遭ってほしくないの」と打ち明けてくれました。麻紀が純潔の律法を完全に守っていることを話すと,母親は安心し,今後の活動を支援していく気持ちになりました。
霊的に変わるように努める
キリストのもとに来るというプロセスには霊的な変化が伴います。そして,そのような変化を経験すると,穏やかで愛にあふれた行動を執るようになります。十二使徒定員会のマービン・J・アシュトン長老が説明しているように,真の改心を遂げるとき,わたしたちは「人に接するときには忍耐と親切,寛容さが増し,人の役に立ちたいという気持ちになるのです。」10 こうして怒りの問題は姿を消していきます。
モルモン書には,改心して弟子となることによってもたらされる心の「大きな変化」,すなわち「絶えず善を行う」性質について述べられています(モーサヤ5:2)。パウロは,
人は霊的な変化を遂げると,怒りを感じることが少なくなり,もっと上手に怒りをコントロールする自信が持てるようになります。この霊的な変化を経験し,維持するために,以下のことができます。
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毎日聖文を読み,その教えを生活に取り入れる。
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怒りの問題を含めて,生活のあらゆる面で助けを求めて毎日祈る。
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悔い改めて,
贖 いのもたらす癒 しの力を求める。 -
必要に応じてビショップから助言を求める。
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怒りの問題を乗り越えるため,個人的な目標を決める。一つの問題を乗り越えるために努力し,それを達成したら別の問題に取り組む。
-
主と同じ視点で周囲の人々を見ることができるように祈る。
-
神殿や教会の集会で主を礼拝し,聖約を新たにする。
再発を防ぐ
再発防止とは,思いと行動を変えることによって,また本人が見つけたその他の防止方法を用いて怒りのサイクルを段階的に絶つことです。防止方法とは,怒りを増大させないための手段です。再発防止と防止方法の実施には,家族や友人,職場の同僚,ビショップ,またはコース教師の助けが必要な場合もあります。再発防止がうまくいくのは,怒りのサイクルにおける最初の二つの段階,すなわち正常なふりをする段階と怒りが増大する段階においてです。人は危険因子(怒りを引き起こす出来事や感情)を認識して,サイクルを絶ち,再発を防ぐような応じ方を身に付けることができます。以下は,どのようにして再発を防ぐかの例です。
正常なふりをする段階怒りの問題を認識したときには,健全な方法で対処します。怒りを引き起こす原因が分かれば,危険性の高い状況を避ける,興奮を静める,小休止する,といった方法を用いて対処したり,逃れたりします。怒りの原因となる対立や問題の解決に積極的に取り組みます。11
怒りが増大する段階理性的な言葉を用いて,怒りの程度や激しさに歯止めをかけます。否定的な思いを正し,代わりに理性的な言葉(「これは対処できる」または「ほかの解決策を見つけられる」など)を思い浮かべます。怒りの奥に隠れている痛みを伴った感情を認め,そのような感情が正常なものであることを認めます。常習性のある行為(常習性のある行為をしている場面を夢想したり,怒りの感情を爆発させる方法を考えたりすることを含む)をやめます。問題について話し合うか,状況が変わらなければ,その問題について書きます。身体的な活動によってエネルギーを発散し,好きなことを行うことによって自信をつけます。12 霊的に再び生まれるように努めます。
神の平安
ジョセフ・F・スミス大管長は子供に怒ることなく,思いやりを持つことの大切さを強調して,こう語りました。「子供に話すとき,怒りや非難の気持ちで荒々しく話してはなりません。思いやりをもって話してください。……必要ならば一緒に涙を流してください。子供の心を和らげ,あなたに対して優しい気持ちを抱かせてください。
このセッションの原則と提案を実践するなら,怒りに支配されることなく,怒りを乗り越えられるようになります。以下の例では,ある人が怒りをどのようにして乗り越えたかが紹介されています。
「以前は出会う人すべてを傷つけたいような気分で歩いていました。怒りに満ちた人生を送っていました。妻や子供たちと話をする度に怒りが込み上げてきました。人々はわたしを避けるようになりました。わたしは自分を憎み,人々を憎みました。だれかれ構わず殴りたくなることも度々ありました。ちょっとしたことが引き金になって,怒りを爆発させていました。わたしはついに助けを求めました。カウンセリングを通して,長い間苦しんできた怒りの問題を打ち明けました。そしてこれまでとは違う考え方をすることや,人々を好意的に見ることを学びました。祈り,聖文の研究,
使徒パウロは,神の平安は「人知ではとうてい測り知ることのできない」ものであると述べています(ピリピ4:7)。怒りにもがき苦しんできた人は,安らぎを感じるようになり,この感情から解き放たれることがどれほどの解放感をもたらすかを知るようになります。怒りによって縛られてきた親はこの問題から解放され,心の平安を味わうことができます。
聖霊の力強い影響力を忘れてはならず,また過小評価してもなりません。親として主の助けを求めるとき,聖霊は怒りを抑え,乗り越えられるように,慰め,支え,導いてくださいます(ヨハネ14:26-27;教義と聖約8:2-3参照)。
怒りの記録の記入例
必要な情報 |
状況1 |
状況2 | ||||||||||||||||||
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日付および怒りを引き起こした出来事または人物 |
10月19日 夫との口論 |
10月20日 子供たちの行儀の悪さ。 | ||||||||||||||||||
怒りの程度 |
軽い |
厳しい |
軽い |
厳しい | ||||||||||||||||
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怒りを増大させた思い |
夫はばかだ。わたしのことなんてどうでもよいと思っている。 |
子供たちは決して耳を傾けない。わたしへの敬意がない。 | ||||||||||||||||||
怒りの根底にあった感情 |
愛されていない,無視されている,感謝されていない。 |
利用されている,無視されている。 | ||||||||||||||||||
怒りにどのように対処したか |
夫にどなりつけた。夫にばかと言った。 |
行儀よくできるまで自分たちの部屋に行くように穏やかに言った。 | ||||||||||||||||||
怒りに対処する際に心の中で考えたこと |
夫は罰を受けるに値する。夫はわたしを傷つけた。わたしは夫に借りを返しているだけだ。 |
子供だから仕方ない。わたしに逆らおうとしているのではない。 | ||||||||||||||||||
怒りを抑えるのに成功したか |
まったくできなかった |
非常によくできた |
まったくできなかった |
非常によくできた | ||||||||||||||||
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役立ったと思われること |
行ったことは何も役に立たなかった。状況を悪化させた。 |
タイムアウトを取った。散歩に出かけ,その後,子供たちと話をした。 | ||||||||||||||||||
怒りを押さえつけたか,爆発させたか,解消したか |
怒りを爆発させた後,感情を押さえつけた。 |
わたしの不満について徹底的に話し合った。 | ||||||||||||||||||
次回,改善できること |
相手の言動に左右されない。話す前に冷静になる。 |
なし。今回はうまくできた。 |
マレー・カレン,ロバート・E・フリーマン-ロンゴ共著,MenandAnger:UnderstandingandManagingYourAnger(マサチューセッツ州ホルヨーク,NEARIPress, 2004年),33-34を基に編集。ISBN#1-929657-12-9
怒りの記録
必要な情報 |
状況1 |
状況2 | ||||||||||||||||||
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日付および怒りを引き起こした出来事または人物 | ||||||||||||||||||||
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怒りを増大させた思い | ||||||||||||||||||||
怒りの根底にあった感情 | ||||||||||||||||||||
怒りにどのように対処したか | ||||||||||||||||||||
怒りに対処する際に心の中で考えたこと | ||||||||||||||||||||
怒りを抑えるのに成功したか |
まったくできなかった |
非常によくできた |
まったくできなかった |
非常によくできた | ||||||||||||||||
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役立ったと思われること | ||||||||||||||||||||
怒りを押さえつけたか,爆発させたか,解消したか | ||||||||||||||||||||
次回,改善できること |
マレー・カレン,ロバート・E・フリーマン-ロンゴ共著,MenandAnger:UnderstandingandManagingYourAnger(マサチューセッツ州ホルヨーク,NEARIPress, 2004年),33-34を基に編集。ISBN#1-929657-12-9