にじの「こんにちは」
ダーシーは水たまりを飛びこえました。そして,クスクスと笑いました。雨の日はゆかいです。ダーシーとお母さんは,水の上で葉っぱのふねを競争させました。ダーシーは,自分の葉っぱがそばを流れていくときに声援を送りました。
ダーシーはそれぞれの手に色付きのチョークを持って,水たまりの間をつま先で歩きました。そして歩道や,さらには大きな岩さえもぬりました。その色は灰色の空の下でとてもきれいに見えました。ダーシーには,寒さが気になりませんでした。
ダーシーは,くもった空を見上げました。
「お母さん,天のお父様は今,わたしを見ることがおできになる?」とダーシーは聞きました。
「ええ。天のお父様は今,あなたを見ることがおできになるわ」とお母さんは言いました。
ダーシーは少しの間,考えました。それから手を上げて,ふりました。
「こんにちは!」と,ダーシーは空に向かって手をふりながら言いました。たぶん天のお父様はダーシーが手をふっているのをごらんになったことでしょう。
その後ようやく,ダーシーとお母さんは,あたたまるために家の中へ入りました。
ダーシーは紙を何枚かいきおいよく取って,あざやかなにじの絵をかきました。そして,お父さんが家に帰ってきたときに,その絵を見せました。ダーシーはお父さんに,楽しかった雨の日のことを何もかも話しました。
夕食が終わると,太陽がしずみかけていました。「しずむ夕日を見に行こう」とお父さんが言いました。
ダーシーたちは外に出ました。大地がシャワーを浴びたようなにおいがしていました。雲はもくもくとふくらんで,ピンク色にそまっていました。そして空にはとてもあざやかな,美しいにじがかかっていました!
「にじをつくられるのはどなたか覚えている?」とお母さんが聞きました。
「天のお父様がつくられる!」とダーシーは言いました。
ダーシーはだきしめるように,両腕で自分の体を包みこみました。「天のお父様がわたしに『こんにちは!』と返事をしてくださっているんじゃないかな!」