「クリスチャンと絵をかく」『フレンド』2023年6月号,30-31
クリスチャンと絵をかく
ガブリエルは,今日はクリスチャンを助けられるかもしれません。
このお話は,ブラジルでの出来事です。
「では,これからアルメイダ姉妹のお話を聞きます」とビショップが言いました。
ガブリエルは紙とえんぴつを取り出しました。ガブリエルは,お話を聞きながら絵をかくのが好きなのです。お姉さんのアリスも同じでした。
アリスは今日,ライオンの絵をかいています。ガブリエルはきょうりゅうです。長い首としっぽをつけました。
そのときふと,ガブリエルが顔を上げました。小さな男の子がガブリエルたちの方へ歩いてきます。
「うわ。」ガブリエルはアリスにささやきました。「クリスチャンが来るよ。」
クリスチャンは4才です。クリスチャンは話すことができず,じっとすわっていません。集会の間,礼拝堂の中を歩き回るのです。時々,ガブリエルの絵の上にらくがきをすることもあります。
ガブリエルはえんぴつを背中にかくそうとしました。クリスチャンに取られたくなかったのです。
クリスチャンがえんぴつに手をのばしました。
「だめだよ!ぼくのなんだから!」ガブリエルは,クリスチャンの家族の方を指さして小さな声で言いました。「あっちに行ってすわりなよ。」
でもクリスチャンには理解できないようでした。ガブリエルのえんぴつを取ろうとし続けます。
集会が終わると,ガブリエルはお母さんとアリスと一緒に初等協会に行きました。
「どうしてクリスチャンは礼拝堂を歩き回ってよくて,ぼくは静かにしていなければいけないの?」ガブリエルはお母さんにたずねました。
「クリスチャンの物の考え方は,ほかの人とちがうのよ」とお母さんが言いました。「歩き回ることで,心が落ち着いて安心していられるの。」
「だけど,いっつもぼくたちのじゃまをするんだ」とガブリエルは言いました。
アリスが顔をしかめました。「クリスチャンはただ絵をかきたいだけなのよ。」
「でも,絵のかき方を知らないじゃないか!」
「もしかしたら,わたしたちでクリスチャンを助けられるかもしれないね」とアリスが言いました。
次の日曜日,ガブリエルはせいさん会でアリスのとなりにすわりました。パンと水が配られた後,ガブリエルは絵をかこうとえんぴつと紙を取り出しました。すると,クリスチャンがこちらに向かって歩いてくるのが見えました。
ガブリエルはえんぴつをかくそうとしましたが,そこで手を止めました。クリスチャンはにっこりとほほえんでいます。ガブリエルは,アリスが言ったことを思い出しました。もしかしたら,今日はクリスチャンが絵をかくのを助けられるかもしれません!
ガブリエルはクリスチャンに笑顔を返しました。そして,クリスチャンがアリスと自分の間にすわれるように場所を空けました。クリスチャンにえんぴつと紙をわたします。アリスはクリスチャンがえんぴつを持つのを助けました。3人は一緒に,ぼう人間をかきました。
クリスチャンが笑いながら手をたたきます。とてもうれしそうです。ガブリエルもわくわくしました。クリスチャンがえんぴつを持つのを,今度はガブリエルが助けました。みんなで一緒に犬の絵をかきました。ガブリエルはにっこりしました。クリスチャンと絵をかくのは楽しい時間でした。
集会が終わったとき,クリスチャンの手元にはたくさんの絵がありました。クリスチャンは絵をぎゅっとだきしめて,自分の家族がすわっているベンチを指さしました。ガブリエルとアリスは,クリスチャンを連れてそちらに行きました。クリスチャンはお母さんに絵を見せてにっこりしました。
ガブリエルは,クリスチャンと一緒に絵をかくことができてよかったと思いました。そして,良いもはんをしめしてくれるお姉さんがいることをうれしく思いました。