2010–2019
信仰,不屈の精神,充実感――ひとり親の皆さんへ
2012年4月


8:36

信仰,不屈の精神,充実感――ひとり親の皆さんへ

皆さんは,正義と真理の中で子供を育てようと努力しています。過去を変えることはできないけれども,将来を作り出すことはできると知っているからです。

ひとり親の教会員の皆さん,大半はシングルマザーであり,様々な状況の中,独りで子育てと家事をこなしている勇敢な女性の皆さんにお話ししたいと思います。夫と死別または離別した人もいるでしょう。あるいは未婚のまま母親になるという苦難に遭遇し,今は福音の原則に従って生活し,より良い人生を送っておられる人もいるでしょう。徳や福音への忠実さを犠牲にしなければならないような結婚生活を避けるという選択をされている皆さんが祝福されますように。そのような結婚生活は,支払う代価があまりにも大きいのです。

時には「どうしてわたしが?」と自問することもあるでしょう。しかし,人生の苦難を通してわたしたちは神に近づくように成長するのです。神は人の選択の自由を尊重しておられるので,わたしたちは苦難に遭遇し,苦悩を伴う大きな試練を経験することで人格が形成されます。ニール・A・マックスウェル長老が述べたように,わたしたちはすべての事実を知らないために,物事の理由をすべて理解することはできません。1

置かれた状況やその理由が何であれ,皆さんはすばらしい人々です。毎日生活の苦難に直面し,本来なら夫婦二人でやるべきことをほとんど一人でこなしています。母親だけでなく父親の役も果たさなくてはなりません。家事を切り盛りし,家族を見守り,時には生計を立てるのに苦労し,さらには教会で重要な奉仕を行う才覚さえ見いだす驚異的な力を発揮しています。子供を養育しながら,子供と一緒に,そして子供のために泣き,祈ります。子供のために最上のものを望みますが,自分が最善の努力をしても決して十分ではないことで毎晩,悩むのです。

あまり個人的な話はしたくありませんが,わたしもそのような母子家庭で育ちました。子供のときから10代の大部分,母は貧しい状況の中独りで子育てをしました。お金のやり繰りを慎重にしました。心の中で寂しさと向き合いながら,時には支えとなる伴侶がいないことに打ちひしがれることもありました。でも,そうした苦難にもかかわらず,母は毅然としていました。生粋のスコットランド人特有の不屈の精神です。

ありがたいことに,母の後半生は以前より祝福されていました。妻を亡くした新会員と結婚したのです。二人はイギリスのロンドン神殿で結び固めを受け,後に儀式執行者として短期間ですが奉仕しました。ほぼ四半世紀の間一緒に暮らし,この世を去るまで幸せで満された,充実した人生を過ごしました。

世界中の教会には,同じような境遇にありながら,毎年同じように,苦境から立ち直る力を示している善良な女性たちがたくさんいます。

こうした状況は,人生の旅路に就いたときに抱いた希望や計画,祈りや期待とは必ずしも同じではありません。山や谷,紆余曲折のある人生はたいてい,試練の場である現世の試しの結果です。

それでも皆さんは,正義と真理の中で子供を育てようと努力しています。過去を変えることはできないけれども,将来を作り出すことはできると知っているからです。そうした努力の過程で,たとえすぐに目に見える形を取らないとしても,過去を埋め合わせる祝福が得られるのです。

神の助けがあるので,将来に不安を抱く必要はありません。皆さんの子供は成長して,皆さんを幸いな女性と呼ぶでしょう。そして,子供たちが成し遂げた多くの業績が皆,母親に対する賛辞となることでしょう。

皆さんは教会員としてほかの会員よりもどこか劣っているとか,主の祝福を受ける資格が何か足りないとか,決して思わないでください。神の王国に住む人に上下の差はありません。

皆さんが集会に出席し,外見上は申し分なく幸せに見える家族の姿を目にしたり,家族の理想について語る話を聞いたりするとき,家族を重視し,天の御父が子らの幸福のために作られた計画の中で家族が中心的な役割を果たすことを教える教会の一員であることをうれしく思うように望んでいます。苦難に満ち,倫理観が衰退するこの世の中で,わたしたちが持っている教義,権能,儀式,聖約は,世の人々に最良の希望を与え,皆さんの子供たちと子供たちが作る家族に将来幸福をもたらします。

2006年9月の中央扶助協会集会でゴードン・B・ヒンクレー大管長は,当時7歳から16歳までの7人の子供を持つ離婚した母親の経験について話しました。向かいの隣人に届け物をした母親はこう言いました。

「歩いて帰って来るとき,明かりのともった我が家が目に入りました。すると数分前に家を出たとき,子供たちが口々に言っていた言葉が耳にこだましました。『ママ,晩御飯は?』『図書館に連れて行って。』『今日中に画用紙が要るんだけど。』疲れ切って自宅を眺めると,どの部屋にも電気がついていました。わたしが帰って自分たちの必要を満たしてくれるのを待っている一人一人の子供のことを考えると,のしかかる肩の荷に耐えられそうにありませんでした。

わたしは涙でかすんだ目で空を見上げて,こう言ったのを覚えています。『愛するお父様,今夜はできません。とても疲れました。無理です。帰って,独りで全員の世話をするなんてできません。今晩だけでけっこうですから,少しみそばで休ませてください。……』

すると,実際に返答する声を聞いたわけではありませんが,心にこう聞こえました。『いいえ,娘よ。今来てはいけません。……その代わり,わたしがあなたのところへ行きましょう。』」2

姉妹の皆さん,家族を育て,善と平安,機会に満ちた愛ある家庭を作るために皆さんが行っているすべてのことに感謝しています。

皆さんは孤独感を抱くことがよくあると思いますが,実際にはまったくの孤独では決してないのです。忍耐と信仰をもって前進するとき,主が一緒に歩いてくださり,必要な祝福が天から授けられたりします。

失望してうつむくのではなく,希望をもって主を見上げるとき,物の見方や人生観が変わります。

皆さんの多くは,人を変える大きな真理をすでに見いだしてきました。ほかの人の重荷を軽くするために生きるとき,自分自身の重荷が軽くなるという真理です。状況は変わらなくても,態度が変わったのです。以前よりも広い心で受け入れ,よく理解し,自分が持っていないものを気にかけるよりはむしろ,持っているものに深く感謝する気持ちになると,自分自身の試練に直面することができます。

絶望的な人生を送っているように見える人を慰めようと努めるときに,自分自身が慰められ,わたしたちの杯はほんとうにあふれる(詩篇23:5参照)ことを皆さんは見いだしてきました。

義にかなった生活を通して,皆さんと皆さんの子供たちはいつの日か,完全な永遠の家族となる祝福にあずかるでしょう。

会員と指導者の皆さん,ひとり親の家族に対して,裁いたり批判したりせずに,助けるためにできることがもっとあるのではないでしょうか。母子家庭の子供たちの良き相談相手になり,特に若い男性に良き男性の行動や生き方の手本を示してはどうでしょうか。父親のいない家庭にふさわしい模範となっているでしょうか。

もちろん,ひとり親が父親である場合もあります。兄弟の皆さん,わたしたちは皆さんのためにも祈っており,皆さんに敬意を表しています。このメッセージは皆さんにも向けたものです。

ひとり親の皆さん,人が遭遇する最も困難な境遇の中で最善を尽くすときに,天が祝福してくださると証します。ほんとうに皆さんは独りではありません。イエス・キリストの贖いと愛の力が皆さんの生活を祝福し,永遠に変わらぬ約束の希望で心を満たしてくれるでしょう。勇気と信仰と希望を持ってください。不屈の精神をもって現在の生活に耐え,確信をもって未来に目を向けてください。イエス・キリストの御名により,アーメン。

  1. ニール・A・マックスウェル, Notwithstanding My Weakness (1981年)68

  2. ゴードン・B・ヒンクレー「主の愛の御腕」『リアホナ』2006年11月号,117参照