キエフの主の宮での奇跡
ドル・バシレ
(ルーマニア・ブカレスト)
わたしと家族は胸を高鳴らせながらルーマニアからウクライナのキエフに向けて車を走らせていました。2010年8月に行われる神殿の奉献式に出席するためでした。ルーマニア・モルドバ伝道部の聖徒が参入する神殿であると知っていたので,奉献式のためだけに14時間ほどかけて旅しました。現地に到着すると,同じようにルーマニアからやって来た別のグループと出会いました。わたしたちは皆,その神聖な行事のためにキエフにいることができて喜んでいました。
奉献式の日,ルーマニアから来たわたしたちは神殿の1階の部屋でモニターを通して奉献式を見ることになりました。何人かが落胆の声を発し始めました。彼らは日の栄えの部屋で預言者とともに奉献式に参列することを願っていました。こんなことなら,地元のルーマニアにとどまって,礼拝堂で中継を通して視聴すればよかったと言う人さえいました。
わたしは心の中で祈り始めました。「天のお父様,ルーマニアから来た会員たちがあなたの宮で忘れられない経験をするにはどのようにすればよいでしょうか。」
答えをまだ受けないうちに奉献式が始まりました。間もなくして,預言者トーマス・S・モンソン大管長(1927-2018年)が下りて来て,礎石を据えることが分かりました。もしかしたらそれが答えなのかもしれません。わたしは預言者が来て,ルーマニアの聖徒たちを歓迎してくれる方法が見つかるよう祈り求めました。
「わたしのためではなく,わたしの兄弟姉妹のためにお願いします」と祈りました。
定礎式の後,モンソン大管長は日の栄えの部屋へ戻る際にわたしたちのいる部屋のそばを通って行きました。突然,立ち上がって大管長を部屋に招き入れるべきだという促しを感じました。
わたしは立ち上がって言いました。「愛する預言者!どうぞこちらへ来てください。わたしたちはルーマニアから来ました。」
わたしの声は届いていないようでした。しかし,次の瞬間,大管長は引き返し,「ルーマニア!」と言いながら部屋に入って来ました。
大管長はわたしたち全員とあいさつを交わし,心から愛していることを伝えてくれました。感激している会員たちの表情を見て,わたしの胸はいっぱいになりました。「愛するお父様,あなたの宮でこの奇跡を与えてくださり,ありがとうございます」とわたしは祈りました。
預言者が部屋を出て行くとき,もう悲しんでいる人はだれもいませんでした。自分たちは神殿の中で最も祝福された部屋にいると思いました。それはいつまでも決して忘れない経験となりました。