水曜日にはオスカーと呼んでください

リチャード・M・ロムニー

高齢でがんの影響もあるにもかかわらず，ケンは隣人に奉仕する有意義な方法を見いだしています。

ウィリアムズ兄弟は，近隣の28軒の人たちのためにごみ箱を片付けます。「わたしたちは救い主の模範に従い，人々に善を行う必要があります」とウィリアムズ兄弟は言います。

毎週水曜日，81歳のケン・ウィリアムズは同じシャツと帽子を身につけます。シャツにも帽子にも，「オスカー」という名前の，ごみ箱に住む有名なキャラクターが描かれています。オスカーは愛すべき不平家として知られています。一方でケンは，ただ愛すべき人として知られています。

ケンは自宅の玄関で待ちながら，耳を澄ませます。ごみ収集車の音が聞こえるのを待っているのです。音は重要です。ケンは法的に認定を受けた視覚障害者だからです。加えて，彼は14年間にわたって化学療法を受けています。それでもなお，ケンは進んで外に出て，隣人たち，それも28軒もの隣人たちを助けています。

通りを行き交う近隣の人たちは皆，ケンのことを知っていて，ケンに愛情を感じています。ケンはいつも皆のごみ箱を片付けてくれるのです。

ごみ収集車が通るとき

隣人のローラ・ウィリスが言います。「ごみ収集車が通り過ぎるのが見えたら，その次に見えるのは，ケンが白い杖を持って歩道を歩き，家から家へと回りながらごみ箱を片付ける姿です。」

「ごみ箱を片付ければ，地域の景観が保たれます」と，ケンの妻のデ・アンは言います。「そのうえ，道路も広く開けておくことができます。もし消防車が来たら，ごみ箱を全部はね飛ばさないと通れないといったことになりかねませんから。」

ケンがごみ箱を片付けて回ることで，家を留守にしなければならない人たちも安心できると，ローラは言います。「家にだれもいなくても，それを人に知られずに済みます。」

では，ケンは杖を持って歩きながら，どのようにごみ箱を動かすのでしょうか。「杖はおもに，体を安定させるために使っています」とケンは言います。「そしてごみ箱に寄りかかっているときも，体は安定します。」特別なコンタクトレンズの助けがあれば，ケンは一方の目で自分の進む道を十分に見ることができます。地面に雪が積もっているときには，滑って転倒しそうな所には行かないようにします。

「もしごみ箱を片付けられない日があれば，わたしが近所の人たちに声をかけるようにしています」とデ・アンは言います。

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夫婦

大きくなる役割

ケンは最初から通りのすべてのごみ箱を片付けていたわけではありません。徐々に範囲を広げていき，やがて現在のようになりました。「以前は，ごみ収集車が通り過ぎた後，ケンは自宅のすぐ近くの家を回って，ごみ箱を押して通りからどけていました」とデ・アンは説明します。「その範囲はゆっくりと広がっていきました。もう一軒，もう一軒と増やしていき，今の数になったのです。」

では，オスカーというニックネームはどのように付いたのでしょうか？「言い出したのは娘のコレットです」とデ・アンは言います。「それがそのまま定着したんです。」

ケンは，長年この地に住んでいる人や新しく越して来た人，おじいさんやおばあさん，子供たち，孫たちと友達になっています。「たくさんの人たちが，ケンのことをオスカーとして認識しているのは面白いですね」とローラは言います。

「ただケンらしく」

ケンはなぜ，この小さな奉仕の行いを繰り返しているのでしょうか。ケンの答えは深遠なものです。「わたしたちは救い主の模範に従い，人々に善を行う必要があります。それこそが，わたしがしようとしていることです。そうすることで，ほかの人たちに，自分にも善を行う機会があるのだと知ってもらえます。」

実際，ケンは人を助けるために生涯を費やしてきました。自動車業界のコンサルタントだったケンは，ディーラーたちと協力して事業を改善しました。教会員としては，召しを受け入れ，「隣人に教えを説くことによってではなく，救い主に従うことで得られる喜びを示すことによって」，福音を分かち合ってきました。

デ・アンは言います。「ケンが化学療法を受けていたとき，看護師たちと一人の医師から，ケンはほかの大勢の患者が化学療法を乗り切るのを助けていると聞きました。それはおもにケンの人柄のなせる業です。ケンは自分が何か特別なことをしているとさえ思っていませんでした。ケンはただケンらしくいたいだけなのです。」

ケンは今もなお4種類のがんを患っていますが，化学療法を受けるのは4年前にやめました。「腫瘍の専門医は，ケンは歩く奇跡だと言っています」とデ・アンは言います。

毎週水曜日には，オスカーの服を着て，近所の人たちを助けるためにトラックが通るのを待っている彼の姿を見ることができます。「わたしは，ただ出て行ってごみ箱を片付けようと思ったのではありません」とケンは言います。「それがまだ自分にできる数少ないことの一つだと思ったのです。隣人に奉仕できるかぎり，わたしは奉仕を続けます。」

筆者はアメリカ合衆国ユタ州在住です。